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2026/06/10
ハラスメント

パワハラを理由に退職する際には、退職届の書き方に気を付ける必要があります。
退職届の書き方次第では、失業保険や損害賠償の取り扱いが変わってくる可能性もあります。有期契約の場合には、そもそも退職が認められない可能性も出てきます。

この記事の要点
・パワハラを理由に退職する場合には、一身上の都合とは書かず、パワハラを理由として退職する旨を明確に記載しましょう。
・退職願ではなく退職届を出すようにしましょう。必ずしも書面で出す必要はありませんが、証拠に残る方法で送るようにしましょう。
この記事を読めば、パワハラを理由とした退職届の書き方がよくわかるはずです。
目次

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パワハラを理由として退職するときは、退職届の書き方に注意しましょう。
書き方ひとつで退職後の生活費のサポートや、会社への責任追及のしやすさが大きく変わるからです。
例えば、パワハラの退職届の例文としては、以下の2つがあります。
それでは、それぞれの例文とポイントについて順番に見ていきましょう。
パワハラを受けたことを会社にはっきりと認めさせ、退職後もしっかりと権利を主張したい場合は、原因がパワハラである旨を明記した退職届を提出するのがベストです。
書面にパワハラの事実を書き残しておくことで、会社側の都合による退職(会社都合退職)として認められやすくなるからです。
さらに、のちに会社へ慰謝料などを求める際にも、この退職届が大切な証拠の一部になります。
例えば、以下のような文面で作成するといいでしょう。
退職届
私儀 この度、直属の上司である〇〇課長からの度重なる暴言や、過度な叱責といったパワーハラスメント行為を受けました。これにより精神的苦痛を受け、就労の継続が困難となりましたので、2026年〇月〇日をもって退職いたします。
2026年〇月〇日 〇〇部〇〇課 (あなたの氏名) 印
株式会社A社 代表取締役 (代表者の氏名)殿 |
誰からどのような行為を受けたのかを具体的に記載し、それが原因で辞めざるを得なくなったことを明確にしておくことで、退職理由がパワハラであることの証拠となります。
会社とこれ以上深く揉めるのを避け、まずはスムーズに退職の手続きを完了させたい場合には、表現を少し和らげた文面にするのが良いでしょう。
会社と円満な関係を維持した方が得策であることも多くこのような場合にはあえて刺激の少ない言葉を選ぶこともあります。
例えば、以下のような文面であれば、波風を立てずに意思を伝えることができます。
退職届
私儀 この度、社内における就業環境の悪化により、心身の健康を維持して就労を継続することが困難となりました。つきましては、2026年〇月〇日をもって退職いたします。
2026年〇月〇日 〇〇部〇〇課 (あなたの氏名) 印
株式会社A社 代表取締役 (代表者の氏名)殿 |
この書き方であっても、一身上の都合ではなく就業環境が原因であることを示しているため、会社都合退職としたり、損害賠償請求をしたりすることと整合します。
退職理由がパワハラにあることは、労働者に有利に働くことがあります。
法律や雇用保険の制度では、ハラスメントの被害に遭った人を守るための特別な仕組みが用意されているからです。
例えば、パワハラを理由とした退職が有利となる理由としては、以下の3つがあります。

それでは、それぞれの理由について順番に見ていきましょう。
パワハラを理由に辞める場合、ハラスメントの事実をきちんと証明できれば、雇用保険の手続きにおいて「会社都合退職」として扱ってもらえます。
特定受給資格者の例として「上司、同僚等からの故意の排斥又は著しい冷遇若しくは嫌がらせを受けたことによって離職した者」が挙げられているためです。
ハローワークインターネットサービス – 特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要
会社都合退職になると、ハローワークで失業保険の申請をした後に、何ヶ月も待たされることなくすぐにお金を受け取ることができます。
さらに、給付を受けられる期間も「自己都合」の場合に比べて長くなる仕組みになっています。
例えば、通常であれば手続きから支給までに1ヶ月以上の給付制限期間が発生するところ、会社都合であれば約7日間の待期期間が過ぎた後に、速やかに支給が開始されます。
| 会社都合退職 | 自己都合退職 | |
| 失業保険がもらえるまでの期間 | 手続きから約7日間でもらえる | 手続きから7日間+1ヶ月以上待つ |
| 失業保険がもらえる日数 | 最長で330日分もらえる | 最長で150日分もらえる |
| 会社の退職金 | 満額受け取れることが多い | 会社のルールによって減らされることがある |
| 国民健康保険料の負担 | 最長で2年間、大幅に減らしてもらえる | 減らしてもらえず、そのまま全額を納める |
パワハラで退職を余儀なくされた場合は、会社や加害者に対して、精神的な苦痛に対する慰謝料などの損害賠償を請求できることがあります。
会社には、労働者が安全で健康に働けるように職場環境を整える義務(安全配慮義務)があるためです。
パワハラを知りながら放置していた会社や、実際にハラスメントを行った上司に対しては、法律上の責任を追及して金銭的な賠償を求めることができます。
例えば、パワハラが原因でうつ病などのメンタル不調になってしまったケースでは、治療費や、働けなくなった期間の給与に相当する損害賠償などを請求できることがあります。
のちに損害賠償を求める話し合いをするにしても、退職届にパワハラを理由として記載をしておくことで、一貫した態度を貫くことができます。
契約社員やパートタイマーなど、あらかじめ働く期間が決まっている有期契約の方であっても、パワハラがあれば契約期間の途中ですぐに辞められる可能性が高くなります。
民法では、契約期間中であっても「やむを得ない事由」があるときは、直ちに契約を解除して退職できると定められているからです。
パワハラによって働く環境が悪化し、勤務を続けることが心身ともに難しくなった状態は、このやむを得ない事由に当てはまると考えられます。
例えば、1年契約の途中で「まだ半年残っているから辞められない」と言われて引き止められても、パワハラの事実があれば、会社の同意がなくても法律上は退職が認められる可能性があります。
「期間満了まで耐えなければいけない」と思い詰める必要はありませんので、パワハラがある場合には、退職を検討しましょう。
契約社員は途中で退職できるかについては、以下の記事で詳しく解説しています。
パワハラで会社を辞めるときに出す退職届には、いくつかの大切なポイントがあります。
自分では些細なことだと思っていても、法的には重要な意味を持つこともあります。
パワハラを理由とした退職届のポイントとしては、以下の3つがあります。

それでは、それぞれのポイントについて順番に見ていきましょう。
パワハラを理由に会社を辞める場合は、文面に「一身上の都合により」というお決まりのフレーズを使わないようにしてください。
「一身上の都合」と書いてしまうと、会社から「自分の意思で勝手に辞めたのだから自己都合退職ですね」と処理されてしまう原因になるからです。
一度その書類を提出してしまうと、のちにハローワークなどで「本当はパワハラだった」と主張しても、覆すためのハードルがとても高くなってしまうこともあります。
例えば、会社のテンプレートに「一身上の都合」と印刷されている場合は、そこを二重線で消して「上司からのパワーハラスメントにより」と書き直す、あるいは自分で最初から書類を自作するなどの対応をするといいでしょう。
退職届を作成して会社へ提出する際には、必ず手元にそのコピーを保管し、出したという事実を客観的な証拠として残しておきましょう。
会社側がのちに「そんな書類は受け取っていない」と言い張ったり、勝手に書類を破棄して「自己都合の退職届」を偽造したりするリスクを防ぐためです。
口頭でも退職は成立しますし、手元にコピーを残しておかなくても退職届は有効ですが、後から記載内容やニュアンスが争いとなることもあります。
会社に提出する書類のタイトルは、「退職願」ではなく、「退職届」にした方がいいでしょう。
「退職願」は「辞めたいのですがいいですか」と会社にお願いをするニュアンスが強くなります。
「退職届」は「辞めます」というあなたの確定した意思を一方的に通告するニュアンスが強くなります。
勿論、書類のタイトルだけで決まるわけではありませんが、なるべく退職届という文言にしといた方がいいでしょう。
なお、より会社の承諾に関わらず一方的に退職するニュアンスを強めるためには、「退職いたします」ではなく、「辞職いたします」と記載する方法があります。
パワハラを理由とした退職届を出すときは、その提出の仕方に細心の注意を払う必要があります。
どれだけ正しい内容の書類を作っても、会社に届かなかったり受け取りを拒否されたりすると、退職の手続きが進まなくなってしまうこともあるためです。

パワハラの退職届は、実際に会社を辞めたいと考えている日の2週間前までには提出しておくのが穏当です。
民法において、働く期間が決まっていない労働者は退職を申し出てから2週間が経過すれば、会社の許可がなくても雇用契約が終了すると定められているからです。
会社の就業規則に「1ヶ月前に出すこと」と書かれている場合でも、2週間前に出せば退職できるのが通常です。
例えば、2026年7月15日に会社を退職したいと考えているのであれば、逆算して2026年7月1日には退職届が会社に届いている状態にしておきましょう。
パワハラのせいで会社に行くのが辛く、上司に直接手渡しすることが難しい場合には、郵便局から「内容証明郵便」を使って退職届を郵送しましょう。
内容証明郵便を使えば、どのような内容の書類を、いつ会社が受け取ったのかを郵便局が証明してくれるからです。
これを利用すれば、会社が「そんな退職届は見ていない」「中身はただの欠勤届だった」などとしらを切るような言い訳をされずにすみます。
例えば、郵便局の窓口へ行き、同じ文面の退職届を3部用意して手続きを行うことで、1部は会社へ、1部は郵便局へ、残りの1部は自分の手元の控えとして保管することができます。
内容証明郵便であれば、わざわざ会社に出向いて怖い上司と顔を合わせる必要はありません。
内容証明郵便の書き方については、以下の記事で詳しく解説しています。
相手が内容証明の受領を拒否した場合には、レターパックライトで送付しましょう。
内容証明は対面での受け渡しのため受領を拒否されてしまったり、留守の場合には戻ってきてしまったりします。
一方でレターパックライトは郵便受けに投函されますので、受け取りの拒否をすることが難しいです。
レターパックライトにより退職届を発送し、追跡番号を控えておきましょう。
会社へ行くことがどうしても怖く、書面の退職届を用意して郵送する気力すら湧かないときは、メールやLINE(ライン)を使って退職の連絡をすることもできます。
法律上は必ずしも紙の書類で退職を伝えなければいけないという決まりはなく、文章として文字に残る方法であれば証拠にも残るためです。
例えば、以下のような文面を作成して、人事担当者や会社の代表宛てに送信するのが効果的です。
| 件名:【退職のご連絡】(あなたの氏名)
本文: お疲れ様です。(あなたの氏名)です。 突然のご連絡となり、また書面ではなくこのような形でのご連絡となることをお詫び申し上げます。
私は、社内において度重なるパワーハラスメント行為を受け、精神的な苦痛から心身の健康を損なってしまいました。これ以上、就労を継続することがどうしても困難となったため、大変恐縮ですが、本日をもって退職の申し出をいたします。
民法の規定に則り、本日より2週間が経過する2026年〇月〇日をもって退職とさせていただきます。
今後は心身の療養に専念したいため、誠に勝手ながら、本日以降の勤務については有給休暇の消化、または欠勤とさせていただきます。今後の必要な手続きや、お手続き書類の送付につきましては、自宅宛てに郵送にてご対応いただけますようお願い申し上げます。
これまでお世話になりました。 |
メールやLINEであっても「パワハラが原因であること」「辞める日付」「今後の連絡は郵送にしてほしいこと」を明確に記載することで、パワハラを理由に退職したことの証拠とできます。
パワハラを理由とした退職届を会社に提出した後は、退職する前後に必要な手続きを一つずつ進めていきましょう。
退職後の手続きを怠ってしまうと、健康保険の切り替えが遅れて病院にかかれなくなったり、失業保険の金額が少なくなって損をしたりするリスクもあります。
例えば、パワハラを理由とした退職届を出した後は、以下の手順で対処していきましょう。

それでは、それぞれの具体的な手順について順番に見ていきましょう。
退職届を出して会社に行かなくなるタイミングで、会社から借りている全ての物品を速やかに返却してください。
物品を手元に持ったままにしておくと、会社から「制服やパソコンを盗まれた」「業務に支障が出たから弁償しろ」などと、言いがかりをつけられるトラブルの原因になるからです。
郵送で返却する際にも、トラブルを避けるため、中に何を入れたかのリストを同封し、追跡記録が残る方法で送るようにしましょう。
会社を完全に退職した後は、速やかにお住まいの市区町村の役所などへ行き、健康保険と年金の切り替え手続きを行ってください。
退職した日の翌日からは会社の社会保険の資格を失ってしまうため、次の保険へ加入する手続きをしなければ無保険の状態になってしまうからです。
退職後、会社から資格喪失届が届きますので役所の窓口へ行き、国民健康保険への加入と、国民年金への切り替えの手続きを行います。
退職から1〜2週間ほどして会社から「離職票」という書類が自宅に届いたら、そこに書かれている「離職事由(辞めた理由)」の欄を確認してください。
会社側が嫌がらせをして、パワハラがあったにもかかわらず「一身上の都合による退職(自己都合)」と記載してハローワークに提出しているケースがよくあるからです。
もしも自己都合にされてしまっていたら、「異議有」の欄にチェックをして、ハローワークの窓口で、「本当はパワハラです」と異議を申し立てましょう。
手元にある退職届の控えや医師の診断書などをハローワークに提示することで、「会社都合退職」に直してもらえることがあります。
会社が退職の手続きを進めてくれなかったり、パワハラに対して損害賠償を請求したいと考えたりした場合は、弁護士に相談してください。
弁護士に依頼をすることで、退職に関する会社との揉め事を一挙に引き受けてもらえるだけでなく、損害賠償請求も全て任せられるからです。
例えば、退職手続きの代行や慰謝料請求の交渉、裁判手続の代理などをしてもらうことができます。
あなたが上司や会社と直接交渉をする必要が一切なくなるため、精神的な負担をなくして有利に話を進めることができます。

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退職の手続きが落ち着き、心身の状態もしっかりと回復してきたら、パワハラを行った加害者や会社に対して損害賠償(慰謝料など)の請求を検討しましょう。
職場におけるパワーハラスメントは不法行為となり、加害者本人が法的責任を負うのは当然のこと、会社も安全配慮義務違反などの責任が問題となります。
まずは損害賠償を請求する旨の通知書を送付することになります。
パワハラを訴える方法については、以下の記事で詳しく解説しています。
パワハラの退職届についてよくある疑問としては、以下の6つがあります。

これらの疑問を順番に解消していきましょう。
A.パワハラを理由に退職する場合であっても、残っている有給休暇をすべて使い切って退職することは当然に可能です。
有給休暇は法律で認められた労働者の権利であり、会社側がこれを拒否することはできないからです。
例えば、退職届に「●月●日から●月●日までは有給休暇の消化に充てます」と記載して提出すれば、この期間については有給の消化に充てることができます。
A.退職した後であっても、過去に受けたパワハラに対する損害賠償(慰謝料など)を請求することは可能です。
民法では、不法行為による損害賠償を請求できる期間について、損害及び加害者を知った時から3年とされているためです。
退職した後であれば、会社で上司や社長と顔を合わせる心配もないので、損害賠償を請求する心理的なハードルも大きく下がります。
A.退職届については、会社に受理されるまでであれば撤回することができます。
受理された後であっても、詐欺や錯誤、強迫などがあれば取消すことができます。
ただし、退職届の撤回や取り消しは簡単ではありませんので、慎重に提出するようにしましょう。
A.診断書については、退職届とあわせて提出する必要は必ずしもありません。
ただし、パワハラを説明したり、円滑に手続きをすすめたりするために有用であれば、あわせて診断書も送ることもあります。
会社に診断書を出せと言われた場合に拒否できるかについては、以下の記事で詳しく解説しています。
A.退職届の文面には、うつ病などの具体的な病名までを細かく書く必要は必ずしもありません。
ただし、損害賠償請求まで考えている場合、有期雇用契約期間中でやむを得ない事由を補充したい場合などには、病名まで記載しておくこともあります。
パワハラでうつ病になった場合の対処法については、以下の記事で詳しく解説しています。
A.転職の際に退職理由を聞かれた場合には、嘘をつくことはできませんので正直に答える必要があります。
パワハラを理由に退職したい場合には、これと整合する形で、かつ、前向きな返答になるよう意識すると良いでしょう。
例えば、「前職では就業環境において心身に過度な負担がかかる状況があり、健康を守るために退職いたしました。今後は、御社のようにチームワークを重視する環境で、自分のスキルを活かして貢献したいと考えております」などと伝えます。
パワハラに強い弁護士を探したい場合には、是非、労働弁護士コンパスを活用ください。
労働問題は非常に専門的な分野であり、弁護士であれば誰でもいいというわけではありません。
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以上のとおり、今回は、パワハラの退職届の例文やテンプレートを説明したうえで、退職理由や3つのポイントを解説しました。
この記事がパワハラで退職したいと考えている方の助けになれば幸いです。
以下の記事も参考になるはずですので読んでみてください。
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