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2026/06/07
不当解雇

経歴詐称を理由として懲戒解雇をされることがあります。
会社は多くのコストをかけて採用活動を行っています。企業の規律を維持するためにも経歴の詐称を簡単に見過ごすことはできないのです。

この記事の要点
・学歴の詐称や職歴・職務能力の詐称、資格の詐称、犯罪歴の不申告、反社会的勢力所属歴に不申告、懲戒解雇の不申告は、重大な経歴詐称として懲戒解雇の対象となりやすいです。
・「重大ではない経歴の詐称」や「会社から聞かれていなかったこの不申告」、「問題なく長期間勤務していた場合」は、懲戒解雇は不当なりやすいです。就業規則や懲戒手続きに問題がある場合も同様です。
・経歴詐称は解雇や給与、損害賠償といった民事上の問題だけではなく、詐欺罪、軽犯罪法違反、私文書偽造罪などの刑事上の罪も問題となります。
この記事を読めば、経歴詐称を理由として懲戒解雇された場合にどうすればいいのかがよくわかるはずです。
目次

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経歴詐称を理由として、懲戒解雇をされることがあります。
会社は履歴書や面接での言葉を信用して採用を決めているため、嘘の経歴を伝える行為は、会社との信頼関係を根底から壊してしまうからです。
ただし、嘘があったからといってどんな場合でもクビにできるわけではありません。
懲戒解雇をすることができるのは、重大な経歴詐称に限られています。
例えば、採用されたいという気持ちから、本当は持っていない国家資格を持っていると嘘をついて入社したケースを考えてみましょう。
その資格がなければできない業務である場合、会社に大きな実害が出たり、職場のルールが厳しく乱されたりするため、懲戒解雇が認められやすくなります。
一方で、「趣味は読書です」と言ってしまったものの、実際にはそれほど本を読んでいなかったというケースを考えてみましょう。
このような些細な嘘は、仕事の能力や採用の合否に関係がありませんし、会社の経営に大きなトラブルを引き起こすこともありません。
このように、経歴の詐称は懲戒解雇の理由になり得るものですが、実際に処分が認められるのは、あくまで会社に深刻な影響を与えるような大きな嘘に限られます。
重大な経歴詐称とは、会社が真実を知っていれば雇用しなかったか、少なくとも同一の労働条件では雇用しなかったであろうと客観的に認められる場合をいいます。
例えば、重大な経歴詐称にあたりやすいものとしては以下の6つがあります。

それでは、それぞれの具体的なケースについて順番に見ていきましょう。
学歴の詐称は、会社が設けている採用基準や給与の仕組みを乱すことになるため、懲戒解雇が認められやすい傾向にあります。
多くの会社では、高卒や大卒といった学歴ごとに採用枠を決めたり、基本給のスタート金額に差をつけたりしているからです。
もし実際の学歴と違う内容を伝えて入社してしまうと、会社全体の公平なルールが壊れてしまうため、重い処分を受けやすくなります。
例えば、本当は高校を卒業しているのに「大学を卒業した」と偽って、大卒限定の求人に応募して採用されたケースを考えてみましょう。
この場合、本来であれば入社できなかったはずの条件を満たしたことになりますし、大卒としての給与を受け取ることにもなるため、会社を大きく欺いたと判断されます。
このように、学歴を偽る行為は会社の仕組みそのものを揺るがす行為となるため、懲戒解雇の対象になりやすいといえます。
これまでの職歴や自分の仕事の能力を大きく偽ることも、懲戒解雇が認められる原因になります。
中途採用では、労働者が「どのような仕事を経験してきたか」という点が、採用するかどうかを決める一番の判断材料になるからです。
入社後に「伝えていた実績がすべて嘘だった」と分かれば、会社が期待していた業務をこなすことができず、経営にも具体的な支障が出てしまいます。
例えば、以前の職場でほんの数か月しか在籍していなかったにもかかわらず、履歴書に「5年間リーダーとして勤務した」と嘘の期間や役職を書いたケースを考えてみましょう。
この嘘を信じて即戦力として雇った会社は、仕事が進まないことで予定していたプロジェクトをストップさせたり、周囲のスタッフに余計な負担をかけさせたりすることになります。
このように、仕事の実績や経験を偽ることは、会社の業務に直接的なトラブルを引き起こすため、重大な詐称とされる可能性が高いです。
業務を行う上で必要となる資格を偽っていた場合は、高い確率で懲戒解雇が認められます。
特定の資格がないと法律上やってはいけない仕事が存在するため、無資格の状態で働かせることは、会社を大きな違法状態の危険にさらすことになるからです。
万が一トラブルが起きたとき、会社だけでなく、サービスを受けるお客さんや社会全体に対して取り返しのつかない実害を与えてしまいます。
例えば、車の運転が必要な職種であるのにもかかわらず、実際には免許を持っていないのに「運転免許がある」と嘘をついて採用されたケースを考えてみましょう。
この状態のまま社用車を運転して万が一事故を起こしてしまえば、無免許運転という重大な犯罪になり、会社も法律上の厳しい責任を追及されてしまいます。
過去に犯罪をした前科を隠して入社することも、内容によっては懲戒解雇の理由となります。
履歴書には通常、賞罰欄があります。「罰」とは、確定した刑事罰のことをいいますので、前科があるのであれば記載する必要があります。
例えば、お金を取り扱う経理の職種に応募した人が、過去に別の職場で業務上横領を起こして有罪判決を受けていた事実を隠していたケースを考えてみましょう。
会社としては、そのような前科を知っていれば財産を任せる職種には採用しなかったといえるため、隠されていたことが分かった時点で雇い続けるのは難しくなります。
過去に反社会的勢力に所属していた経歴を隠して入社した場合も、懲戒解雇が認められやすいケースといえます。
現代の企業には、社会的責任として暴力団などの反社会的勢力との関係を完全に断ち切ることが強く求められているからです。
もしそのような経歴を持つ人を雇い続けていると、会社の社会的信用がガタ落ちになったり、他の従業員が安心して働けなくなったりします。
例えば、入社時の面接や誓約書で「反社会的勢力とは一切関係がない」と言明していたにもかかわらず、実際には過去に所属していた事実を隠していたケースを考えてみましょう。
これが周囲や取引先に発覚した場合、会社は「反社会的勢力を受け入れている企業」として扱われ、すべての取引を停止されるような大打撃を受ける危険があります。
前の職場で「懲戒解雇」になった過去を隠して転職活動を行うことも、重大な詐称にあたる可能性があります。
懲戒解雇されたという事実は、「過去に何らかの重大なルール違反やトラブルを起こした人物である」ということを示す、採用側にとって重要な情報だからです。
例えば、前の会社でお金を着服してクビになった事実があるにもかかわらず、履歴書の職歴欄に「一身上の都合により退職」と記載して入社したケースを考えてみましょう。
新しく雇った会社としては、問題を起こすリスクの高い人物を騙されて採用してしまったことになるため、職場の規律を維持するためにもそのまま働き続けさせるわけにはいきません。
経歴に嘘が見つかったからといって、会社が労働者を自由に懲戒解雇できるわけではなく、会社の処分が不当となりやすいケースもたくさん存在します。
懲戒解雇は、懲戒処分の極刑であり、法律ではこれが許されるケースはとくに限定されているためです。
例えば、懲戒解雇が不当となりやすいケースとしては以下の5つがあります。

それでは、それぞれの具体的な内容について順番に見ていきましょう。
仕事の成果や会社の運営にほとんど影響を与えないような、重大ではない嘘を理由とした懲戒解雇は、不当であると判断されます。
労働者の立場を奪う懲戒解雇という処分は、犯したミスや嘘の重さと釣り合いが取れていなければ、厳しすぎる処分として無効になるからです。
例えば、履歴書の趣味の欄に、話のきっかけにしようと思って、実際にはやったことがない「フットサル」を書いたとしましょう。
このような嘘は、実際の業務内容や採用の合否に直接関わるものではありませんし、会社の利益を損なわせることもありません。
そのため、後からこの嘘がバレたとしても、会社が労働者をクビにすることは認められません。
採用活動の段階で会社側から特に質問されていなかった事柄について、自分から進んで申告しなかった場合は、経歴詐称による解雇は認められにくいでしょう。
労働者には、自分に不利になるようなプライベートな過去を、自ら進んで全て会社に告げなければならない義務まではないと考えられる傾向にあるためです。
会社側が面接や提出書類で確認を怠っていたのであれば、それは会社の確認不足であり、労働者だけの責任にはできません。
例えば、以前の職場で体調を崩してしばらく休職していた期間がある人が、面接で健康状態について何も質問されなかったため、そのまま入社したケースを考えてみましょう。
入社後に休職の履歴が分かったとしても、履歴書に嘘の記載をしたわけではなく、聞かれなかったから答えなかっただけといえます。
このように、会社が質問をしなかった事柄について後から問題視し、解雇を言い渡してくるような対応は不当となりやすいです。
入社したときに経歴の嘘があったとしても、その後に問題なく長期間にわたって勤務を続けていた場合は、懲戒解雇が認められにくくなります。
過去の嘘によって一度は信頼関係が揺らいだとしても、長年の真面目な勤務態度や残してきた実績によって、会社への貢献や信頼が十分に積み重なっていると判断されるからです。
例えば、入社時に職歴の期間を少し長めに偽って採用されたものの、その後は無遅刻無欠勤で、周囲のスタッフとも良好な関係を保ちながら10年間もエースとして働き続けてきたケースを考えてみましょう。
この場合、当時の嘘がなくても十分に会社で活躍できる能力があったことが証明されているため、過去の嘘だけを理由にいきなりクビにすることは認められにくいでしょう。
懲戒の事由と種別を就業規則に明記したうえで、周知しなければ懲戒解雇をすることは許されないとされています。
事前にどのようなことをすると懲戒になるのかが分からないと労働者の自由が制限されてしまうためです。
例えば、社長のパソコンの中にだけ就業規則のデータが保管されており、一般の従業員は存在すら知らされていなかったり、見たいと言っても拒否されたりする職場を考えてみましょう。
このような環境では、どれほど悪質な経歴詐称があったとしても、会社は労働者を懲戒解雇することはできません。
会社が労働者を懲戒解雇する際、適正な手続きを経ていないと不当となります。
懲戒解雇については、懲戒処分という性質上、普通解雇と異なり、手続が厳格です。
例えば、就業規則で弁明の機会の付与や懲戒委員会への付議が規定されていることがあります。
このような場合に手続きを無視して懲戒解雇を行えば不当となる可能性があります。
経歴詐称を理由とする懲戒解雇の判例については、これまでに多数蓄積されています。
これらの判例を見ることでどのような場合に経歴詐称を理由とした懲戒解雇が認められるのがイメージをもちやすくなるでしょう。
例えば、経歴詐称を理由とした解雇の判例としては、以下の7つがあります。
| 判例年月日 | 結論 | 裁判所の判断 | 備考 | |
| 1 | 東京高判昭和56年11月25日労民32巻6号828頁[日本鋼管鶴見造船所事件] | 解雇有効 | 学歴詐称は企業の採用判断を妨げる「重要な事項」の詐称と認められました。採用後の勤務が良好でも、採用時の信頼関係を根本から損なうためです。経歴詐称による解雇は有効とされました。 | 重要な経歴詐称の意味について参考になります。 |
| 2 | 大阪高判昭和37年5月14日高民集15巻6号391頁[神戸製鋼所事件] | 解雇有効 | 学歴詐称が懲戒事由になるには、単なる嘘だけでなく、企業秩序を乱すことが必要です。本件では中卒を装い、多額の賃金差額を得たことが秩序違反とされました。重要な経歴の詐称として、解雇は有効とされました。 | 学歴詐称に関する考え方が参考になります。 |
| 3 | 東京地判平成16年12月17日労判889号52頁[グラバス事件] | 解雇有効 | 職務経歴における技術力の詐称を重く判断した事案です。原告はJAVA言語の高度な実務経験を偽って申告していました。業務遂行に不可欠な経歴の虚偽は、採用判断を誤らせる重大な背信行為として、「重要な経歴詐称」に当たるとしました。 | 職務経歴の詐称に関する考え方が参考になります。 |
| 4 | 仙台地判昭和60年9月19日労民集36巻4・5号573頁[有限会社マルヤタクシー事件] | 解雇無効 | 更生した労働者の利益を重視した判決です。特段の事情がない限り、消滅した前科を告げなかったことは解雇理由にならないとしました。 | 犯罪歴の不申告に関する考え方が参考になります。 |
| 5 | 岐阜地判平成25年2月14日裁判所ウェブサイト掲載判例 | 解雇無効 | 裁判所は、聞かれていない不利益な事実を申告する義務はないと判断しました。単なる申告漏れ(不作為)による経歴詐称を理由とした懲戒解雇は、処分が重すぎるため無効とされました。企業の確認不足も指摘されました。 | 勤務歴の不申告に関する考え方が参考になります。 |
| 6 | 名古屋高判昭和51年12月23日労判269号59頁[弁天交通事件] | 解雇有効 | 前職の懲戒解雇歴の隠匿は重大な経歴詐称であり、信頼関係を根底から破壊するものです。事前に判明していれば採用しなかったと客観的に認められる場合、入社後の勤務状況にかかわらず、解雇は有効であるとされました。 | 懲戒解雇歴の不申告に関する考え方が参考になります。 |
| 7 | 東京地決昭和30年3月31日労民6巻2号164頁[東光電気事件] | 解雇無効 | 入社から約6年が経過した後の解雇でした。長年の勤務で築かれた信頼や執行猶予の満了を裁判所は重視しました。長期間の勤務実態がある場合、経歴詐称を理由とする解雇は権利濫用になると示した判断です。 | 長期間経過後の経歴詐称を理由とする懲戒解雇の考え方が参考となります。 |
それでは、これらの判例について順番に説明していきます。
【事案】
造船業の現場作業員が東大中退を隠しました。中卒と偽り、家族の職業も詐称して応募しました。会社は重要な経歴詐称を理由に諭旨解雇しました。
これを不当として労働者が争いました。
【結論】
解雇は有効であり正当とされました。
【理由】
重要な経歴詐称とは、真実を知れば不採用としたであろう事項です。
高学歴は単純作業の適性や現場の統制に疑念を抱かせるため、採用判断を左右する重要な事項にあたります。
実際に職場秩序を乱していなくても、契約時の判断を誤らせた以上、約定解除権の行使として解雇は有効とされました。
【事案】
製鋼会社の工員が、採用時に最終学歴を「高等小学校卒」から「中学校卒」と偽りました。
そのまま約8年勤務し、中卒扱いで賃金の過払いを受けていました。会社は発覚後に懲戒解雇し、工員がその無効を訴えました。
【結論】
懲戒解雇は有効とされました。
,
【理由】
最終学歴は、労働力の評価や待遇決定の重要な指標です。真実を知れば、会社は同一条件で契約しなかったと認められます。
これを「重要な前歴」の詐称と判断しました。また、嘘により長年賃金の過払いを受け、企業秩序を具体的に乱したことも重視されました。
これらの点から、解雇は有効とされました。
【事案】
ソフトウェア開発会社が、開発言語の能力を偽った契約社員を懲戒解雇しました。
原告は解雇を無効として、残期間の賃金や手当を請求しました。
技術経歴書に記載された職歴の真偽が争点となった事案です。
【結論】
懲戒解雇は有効としました。
【理由】
業務に不可欠な開発能力は、採用の根幹をなす重要事項です。
原告は高度な経験を自称しましたが、実務では初歩的な質問を繰り返しました。
調査で特定の職歴が虚偽と判明しました。これは就業規則の「重要な経歴詐称」に該当します。
【事案】
タクシー会社の運転手が、採用時に刑の消滅していた前科五犯を秘匿しました。また、学歴や職歴も一部偽って履歴書に記載していました。
会社はこれらを理由に解雇を強行しました。労働者は解雇の無効を訴えました。
【結論】
解雇は無効とされました。
【理由】
刑の消滅制度は更生を助けるためのものです。職種に照らし、前科が評価に重大な影響を及ぼす特段の事情もありませんでした。
学歴等の詐称も、重大な義務違反とは言えません。
よって、解雇は合理性や相当性を欠き、無効と判断されました。
【事案】
遊技場のホール従業員が、採用時に風俗店での勤務歴を隠したことが発覚しました。
会社は重大な経歴詐称であるとして懲戒解雇を行いました。従業員は、解雇は不当であるとして訴えを起こしました。
【結論】
懲戒解雇は無効とされました。
【理由】
不利益な事実を隠したいと考えるのは当然です。企業から具体的に問われない限り、自発的に職歴を申告する義務はありません。
本件は単に言わなかった不作為に留まり、積極的な虚偽回答ではありませんでした。実害も軽微なため、懲戒解雇という重い処分は合理性を欠き無効とされました。
【事案】
旅客運送業者が、他社での乗務員経験を隠した運転手を懲戒解雇しました。
会社は経験者を採用しない方針でした。労働者は、前職での懲戒解雇の事実も隠して入社していました。
【結論】
懲戒解雇は有効とされました。
【理由】
企業には採用の自由があり、労働者は真実を告知する義務があります。
経歴詐称が採否に重大な影響を与え、信頼関係を壊す場合は解雇事由となります。
前職の懲戒解雇を隠すことは秩序を乱す危険が強く、入社後1年を経過しても解雇は有効とされました。
【事案】
電気機器製造業の工場に勤務する従業員が、入社時の履歴書に住居侵入罪の有罪判決を隠したことを理由に、入社6年後に懲戒解雇されました。
この従業員は、労働組合のリーダーとして活発に活動していました。
【結論】
懲戒解雇は無効とされました。
【理由】
経歴詐称は、確かに当初は解雇事由に該当し得ました。しかし、6年間の勤務で信頼が築かれ、執行猶予も満了しています。今更の解雇は酷であり、妥当性を欠きます。
また、処分の時期が組合役員の改選日であったことから、組合活動を理由とする不当労働行為であるとも認められました。
経歴の嘘を理由に突然クビを言い渡されてしまったら、慌てずに正しい法律の手順に沿って対応していくことが最善の方法です。
会社からの一方的な処分に対して、感情的に言い返したり諦めてしまったりすると、本来であれば受け取れるはずの権利を失ってしまう危険があるからです。
例えば、経歴詐称で懲戒解雇された場合の具体的な対処の手順としては以下のとおりです。

それでは、それぞれの詳しい手順について順番に見ていきましょう。
会社から解雇を告げられたら、まずはできるだけ早い段階で不当解雇問題に詳しい弁護士に相談することが重要です。
法律の専門家にあなたの状況を客観的に見てもらうことで、会社の下した処分が本当に有効なのか、それとも不当なものなのかを正しく判断できるからです。
例えば、会社から「経歴に嘘があったからクビだ。明日から来なくていい」と言われ、ショックを受けているケースを考えてみましょう。
この段階で弁護士に相談すれば、会社が作成した解雇理由書などを細かく分析し、「この程度の嘘であれば解雇は厳しすぎるので、裁判で勝てる可能性が高い」といった具体的な見通しを立ててもらえることもあります。
まずは弁護士に相談することが、会社と対等の立場で向き合う出発点です。

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弁護士に見通しを立ててもらったら、次は会社に対して「解雇は不当である」という意思を伝える通知書を送ります。
口頭で「納得いかない」と言うだけでは、会社側に無視されてしまったり、後から「そんなことは聞いていない」と言い逃れされたりする恐れがあるからです。
例えば、弁護士から懲戒解雇は濫用として無効であるとの通知を内容証明郵便により送付することが多いです。
これにより、「私は解雇を受け入れていません。今でも働く意思がありますので、働けなかった期間の給与も請求します」という立場を明確にできます。
このような通知書を送付しておくことで、後から、解雇を受け入れていたと言われたり、退職に同意していたと言われたりすることを防ぐことができます。
通知書を送った後は、こちらの代理人となった弁護士を通じて、会社側との交渉を行います。
お互いの言い分をぶつけ合いながら、裁判になる手前の段階で、双方が納得できる着地点を模索します。
例えば、会社側が「解雇は撤回しないが、これまでの勤務態度を考慮して、給与の3か月分の解決金を支払うので円満退職にしてほしい」と提案してくることがあります。
弁護士はあなたに代わって「3か月分では少なすぎるので、6か月分にしてください」といった金額の引き上げや、退職理由を「会社都合」に書き換えるといった細かい条件の交渉を行ってくれます。
このように、弁護士に交渉を任せることで、あなたは会社と直接会って嫌な思いをすることなく、有利な条件での解決を目指すことができます。
会社との話し合いがどうしてもまとまらない場合は、最終手段として裁判所に「労働審判」や「訴訟(裁判)」を提起します。
労働審判という仕組みを使えば、通常の裁判よりもはるかに短い期間で柔軟な解決を目指すことができます。
例えば、訴訟外の交渉だと会社側が頑なに「1円も払わないし、解雇も絶対に撤回しない」と主張し、話し合いがストップしてしまうというケースがよくあります。
ここで労働審判を申し立てると、裁判官などの専門家が双方の間に入り、原則として3回以内の短い話し合いの中で、解雇の有効性について判断し、訴訟になった場合の見通しを会社に伝えながら説得をしてくれます。
そのため、労働審判で早期に解決できる事案も多いのです。
労働審判については、以下の記事で詳しく解説しています。
労働審判とは何かについては、以下の動画で詳しく解説しています。
労働審判での解決が難しい場合には、訴訟により決着をつけることになりますので、1年以上かかることもあります。
不当解雇の訴訟については、以下の記事で詳しく解説しています。
不当解雇の訴訟については、以下の動画で詳しく解説しています
経歴詐称のちょうかいかいこについてよくある疑問としては、以下の8つがあります。

これらの疑問を順番に解消していきましょう。
A.経歴に嘘をつく行為は、会社をクビになるだけでなく、刑事上の犯罪に問われる可能性があります。
嘘の書類を作って会社を騙し、本来は得られないお金や立場を不正に受け取ることは、法律を破る行為になるからです。
例えば、私文書偽造罪、詐欺罪、軽犯罪法違反となることがあります。
A.入社時に隠し通せたと思った嘘であっても、その後の手続きや書類の提出によって会社にバレることが多いです。
役所や前の会社が発行する公的な書類には、あなたの過去の正確な記録がすべて残っているからです。
転職後に会社から「前の職場の源泉徴収票」や「年金手帳」を出すように求められるケースを考えてみましょう。
これらの書類には、前に働いていた会社の名前や正しい在籍期間が書かれているため、履歴書に書いた嘘がすぐに見つかってしまいます。
入社後にスキルレベルが低すぎたり、業務態度が悪く不審に感じたりして、調査をされて発覚することもあります。
懲戒解雇が再就職先にバレる理由については、以下の記事で詳しく解説しています。
A.経歴の嘘が会社にバレてしまったとしても、直ちにこれまでに受け取っていた給与を返す必要があるとは限りません。
労働法のルールにより、「実際に働いた時間」に対しては、会社は給与を支払わなければならないからです。
経歴を詐称するべきではありませんが、給与の返還を求められた場合には、これに応じる前に一度弁護士に相談した方がいいでしょう。
A.会社から損害賠償を請求されたとしても、実際に会社に損害が出ていなければ、お金を支払う必要はありません。
裁判で損害賠償が認められるのは、あなたの嘘が原因で会社に損害が発生したと立証された場合だからです。
例えば、営業職の人が「前の職場で売上トップだった」と嘘をついて入社したものの、入社後は平均的な成績で真面目に働いていたケースを考えてみましょう。
会社はあなたを雇ったことで損害が生じていたとは言えず、後から嘘がバレても、会社からの損害賠償請求は認められない可能性があります。
会社からの損害賠償については、以下の記事で詳しく解説しています。
A.毎日の勤務態度が真面目であっても、嘘の内容によっては経歴詐称を理由にクビにされることがあります。
勤務態度が良好であっても、経歴を詐称した事実がなくなるわけではないためです。
ただし、問題なく長期間にわたり勤務していた場合には、懲戒解雇は濫用として不当となることがあります。
A.過去にうつ病などのメンタルの病気にかかっていたことを申告せずに就職しても、それだけの理由で懲戒解雇されることはありません。
病歴は要配慮個人情報であり(個人情報保護法20条2項)、現在の業務をこなせる健康状態であれば、わざわざ過去のことをすべて会社に告げる義務はないからです。
例えば、3年前にうつ病だったものの、現在はすっかり完治しており、薬を飲まなくても元気に働ける人が面接で病歴を言わなかったケースを考えてみましょう。
入社後に過去の通院が会社に知られたとしても、現在の仕事に支障が生じていないのであれば、これを理由にクビにすることは不当です。
うつ病を理由とする解雇については、以下の記事で詳しく解説しています。
A.まだ入社していない内定の段階であっても、重大な経歴詐称が発覚した場合は、会社から内定を取り消されることがあります。
内定を取り消すだけの客観的に合理的な理由があり、これが社会通念上も相当であると判断されやすいためです。
内定取り消しも基本的には解雇に準じて考えられていますが、入社前となるため解雇よりも広く有効性が認められる傾向にあります。
内定取り消しと損害賠償については、以下の記事で詳しく解説しています。
A.経歴詐称に時効はありません。
ただし、問題なく長期間にわたり勤務していた場合には、懲戒解雇は濫用として不当となることがあります。
例えば、あなたが5年前に職歴を偽って入社し、その嘘に上司が3年前の時点で気がついていたにもかかわらず、そのまま普通に働かせ続けていたケースを考えてみましょう。
今になって会社と別のトラブルが起きたからといって、3年前から知っていた古い嘘を理由にいきなりクビにすることは、不当な処分となりやすいでしょう。
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以上のとおり、今回は、経歴詐称で懲戒解雇された場合について、判例やバレた場合の罪と簡単な対処手順を解説しました。
この記事が経歴詐称で懲戒解雇を言い渡されてしまい悩んでいる方の助けになれば幸いです。
以下の記事も参考になるはずですので読んでみてください。
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