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2025年3月8日
労働一般
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投稿日:2026/07/29
ハラスメント

病気を理由に欠勤や通院を責められたり、退職を迫られたりして、職場での対応に悩む方は少なくありません。
会社から不利益な扱いを受けると、どこまでがハラスメントに当たるのか、どのように身を守ればよいのか不安になるでしょう。

この記事の要点
・病気を理由にした言動は、内容や職場での関係によってパワーハラスメントなどに当たる可能性があります。
・記録や診断書を残し、社内窓口や労働局、弁護士へ相談することで、休職・復職・退職などの場面に応じた対応を検討できます。
この記事を読めば、病気を理由にハラスメントを受けたときの判断基準と対処法がよくわかるはずです。
目次

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病気ハラスメントとは、病気や症状、通院、欠勤、休職などを理由に、職場で嫌がらせや不利益な扱いを受けることです。
法律に「病気ハラスメント」という名称や独立した定義があるわけではなく、一般的に使われている名称です。
病気を理由にした言動が、すべて直ちに違法になるわけではありません。
会社は、安全に働けるかを確認したり、必要な配慮を検討したりするため、病状や就労上の制限について確認することもあります。
一方で、業務上必要な範囲を超えて病気を責めたり、人格を否定したりした場合には、パワーハラスメントに当たる可能性があります。
また、病歴を本人の了解なく周囲へ伝える行為は、パワーハラスメントの「個の侵害」やプライバシー侵害として問題になることがあります。
病気ハラスメントは、暴言だけでなく、通院や休職を責めること、病歴を広めること、不利益な人事を行うことなど、さまざまな形で表れます。
一方、健康状態を確認したり、就労能力に応じて仕事を調整したりすることまで、直ちにハラスメントになるわけではありません。
どのような言動が問題になりやすいかを知ると、自分が受けている扱いを判断しやすくなります。
病気ハラスメントの具体例としては、以下の7つがあります。

それでは、病気ハラスメントの具体例について順番に見ていきましょう。
病気や症状をからかう言動は、病気を理由にしたハラスメントに当たる可能性があります。
本人の努力では抑えられない症状を笑ったり、病気と人格を結び付けて否定したりすることは、業務上の指導とはいえないためです。
例えば、咳や手の震えなどの症状を人前でまねする、精神疾患を理由に能力や人間性を否定するといったケースです。
本人が不快だと伝えた後も繰り返す場合や、ほかの労働者の前で侮辱する場合は、就業環境への影響も大きくなります。
病気についての冗談という形であっても、内容や回数によっては、パワーハラスメントの「精神的な攻撃」として問題になります。
パワハラにあたる言動については、以下の記事で詳しく解説しています。
治療に必要な通院や欠勤、休職を繰り返し責める行為も、病気ハラスメントに当たる可能性があります。
会社が欠勤の理由や復帰の見通しを確認すること自体は、勤怠管理や人員配置のために必要な場合があります。
しかし、必要な確認を超えて本人を責めたり、病気になったことへの罪悪感を持たせたりする言動は、適正な労務管理とはいえません。
例えば、通院の申出をするたびに嫌味を言う、休職中の労働者に対して職場への迷惑を繰り返し強調するというケースです。
病気の内容や職場への影響を踏まえず、一方的に本人の責任であるかのように扱うと、精神的な負担を強めてしまいます。
病歴や診断内容を必要なく職場へ広める行為は、病気ハラスメントやプライバシー侵害として問題になる可能性があります。
病歴や健康状態は、取扱いに配慮が必要な個人情報だからです。
例えば、上司へ提出した診断書の内容を、業務上知る必要のない同僚に伝えるというケースがあります。
職場全体の前で病名を明かしたり、社内チャットへ診断内容を書き込んだりする行為も問題になり得ます。
一方、本人の同意を得たうえで、人事担当者や産業医などへ必要な範囲で情報を共有することは、就業上の配慮に必要な場合があります。
医師から就業制限を受けている労働者に対し、十分な検討をせず出勤や残業を強いる行為は、病気ハラスメントとして問題になる可能性があります。
会社には、労働者が業務によって病気を悪化させないよう配慮することが求められるためです。
例えば、診断書に残業を控える必要があると記載されているのに、長時間の残業や深夜勤務を命じるというケースがあります。
会社は、主治医の意見だけで判断せず、産業医の意見や仕事内容を踏まえて就業方法を決めることもできます。
しかし、医師の意見を確認せず、病気を怠けと決め付けて無理な勤務を命じることは適切ではありません。
病気を理由として仕事を取り上げたり、職場から隔離したりする行為も、病気ハラスメントに当たる可能性があります。
業務上の理由がないまま仕事を与えないことや、能力と関係なく低い評価を付けることは、嫌がらせとして行われることがあるためです。
例えば、病気を申告した直後から担当業務をすべて外され、長期間何も仕事を与えられないというケースです。
必要な連絡から外す、ほかの労働者と接触できない場所へ移すといった対応も、人間関係からの切り離しとして問題になることがあります。
一方、治療や健康確保のために、本人や医師と話し合ったうえで業務量を減らすことは、必要な配慮に当たります。
病気であることだけを理由に降格や減給、不利益な異動を行うことは、病気ハラスメントとして問題になる可能性があります。
人事上の措置には、就業規則や雇用契約に基づく理由が必要であり、本人の就労能力や業務上の必要性を踏まえて判断しなければならないためです。
例えば、仕事を続けられる状態であるにもかかわらず、病名を伝えた直後に役職を外したり、合理的な理由なく賃金を下げたりするケースです。
人事異動の形を取りながら、通勤が難しい勤務地へ配置するなど、退職へ追い込む目的で行われることもあります。
病気が法律上の障害に当たる場合には、障害を理由とした差別的な取扱いが禁止されることもあります。
病気を理由に執拗に退職を迫ったり、解雇をほのめかしたりする行為は、病気ハラスメントに当たる可能性があります。
会社が労働者へ退職を提案すること自体は直ちに違法ではありませんが、労働者には退職勧奨を断る自由があります。
例えば、病気で休むなら辞めるよう求める、退職に応じなければ解雇すると繰り返し告げるというケースです。
長時間にわたって退職を迫る、複数人で取り囲む、家族へ連絡すると告げるなどの方法も問題になります。
病気になったことだけで直ちに解雇できるわけではなく、就業規則の内容や就労能力、配置転換の可能性などを踏まえた判断が必要です。
退職する意思がない場合には、その場で退職届や合意書へ署名しないよう注意する必要があります。
休職するなら退職しろと言われた場合については、以下の記事で詳しく解説しています。
病気ハラスメントの違法性は、一つの法律だけでなく、言動の内容や会社の対応に応じて複数の法的根拠から判断します。
病気を理由にした言動でも、侵害された権利や会社が負う義務はケースごとに異なるためです。
根拠を知ると、会社や行為者に何を求められるのかを検討しやすくなります。
病気ハラスメントに関係する法的根拠としては、以下の5つがあります。

それでは、病気ハラスメントが違法になる法的根拠について順番に見ていきましょう。
病気を理由にした嫌がらせは、労働施策総合推進法上のパワーハラスメントに当たる可能性があります。
職場のパワーハラスメントとは、優越的な関係を背景とした言動であり、業務上必要かつ相当な範囲を超え、労働者の就業環境を害するものです。
例えば、上司が病気を繰り返し侮辱する行為や、断ることが難しい関係を利用して無理な勤務を強いる行為が考えられます。
会社には、相談窓口の設置、事実関係の確認、被害者への対応、再発防止などの措置を講じる義務があります。
また、労働者が病気ハラスメントを相談したことや、調査に協力したことを理由として、解雇などの不利益な扱いをすることも禁止されています。
会社が相談を放置した場合には、防止措置を適切に講じなかったことが問題になります。
病気ハラスメントによって権利や法律上保護される利益を侵害された場合には、行為者へ損害賠償を請求できる可能性があります。
民法第709条は、故意または過失によって他人の権利などを侵害し、損害を生じさせた者に賠償責任を負わせています。
例えば、病気を理由に人格を否定する発言を繰り返し、労働者に精神的な苦痛を与えたケースが考えられます。
損害賠償責任が認められるには、言動の違法性、行為者の故意または過失、損害の発生、言動と損害との因果関係などが必要です。
また、上司や同僚が業務の執行に関連してハラスメントを行った場合には、民法第715条により会社が使用者責任を負うことがあります。
そのため、行為者本人だけでなく、会社も慰謝料などの請求先になる可能性があります。
パワハラで訴える方法については、以下の記事と動画で詳しく解説しています。
会社が病気の悪化を防ぐための対応を怠った場合には、安全配慮義務違反になる可能性があります。
労働契約法第5条は、労働者が生命や身体などの安全を確保しながら働けるよう、会社に必要な配慮を求めています。
ここでいう安全には、身体だけでなく心の健康も含まれます。
例えば、会社が医師による残業制限を把握しているにもかかわらず、長時間労働を続けさせたケースが考えられます。
病気ハラスメントの相談を受けた後も事実を確認せず、症状が悪化する状況を放置した場合にも、安全配慮義務違反が問題になることがあります。
安全配慮義務違反によって損害が生じた場合には、民法第415条に基づく損害賠償請求を検討します。
安全配慮義務違反で訴えたい場合については、以下の記事で詳しく解説しています。
病歴や診断内容を必要のない範囲まで共有する行為は、プライバシー侵害になる可能性があります。
病歴などの健康情報には、不当な差別や不利益につながるおそれがあるため、取扱いに特に配慮しなければならない情報が含まれます。
会社は健康情報を利用する目的をできる限り具体的に定め、その目的に必要な範囲を超えて取り扱わないことが原則です。
例えば、上司だけに提出した診断書の内容を、本人の了解なく社内チャットで同僚へ知らせるケースが考えられます。
厚生労働省のパワーハラスメント指針でも、本人の了解を得ずに病歴などをほかの労働者へ暴露する行為は、「個の侵害」に当たる例とされています。
一方、本人の了解を得たうえで、就業上の配慮に必要な範囲に限り、人事担当者や産業医へ伝えることまで問題になるわけではありません。
病気による心身の機能の障害が長期にわたり、職業生活に相当な制限がある場合には、障害者雇用促進法が適用される可能性があります。
病気にかかっている人のすべてが、同法上の障害者に当たるわけではありません。
同法上の障害者に当たる場合、会社は賃金、配置、昇進、教育訓練などについて、障害を理由とする不当な差別的取扱いをしてはなりません。
また、会社には、障害によって仕事をするうえで生じている支障を改善するため、合理的配慮を行う義務があります。
例えば、通院に合わせて勤務時間を調整することや、障害の特性に応じて業務の進め方を変更することを検討すべきです。
ただし、会社に過重な負担が生じる場合は除かれ、具体的な配慮の内容は労働者と会社が話し合って決めることになります。
病気を理由に一律に仕事から外したり、必要な配慮を検討せずに退職を迫ったりした場合には、差別禁止や合理的配慮の義務に反する可能性があります。
病気ハラスメントに当たるかは、病気に関する言動があったという事実だけではなく、目的や方法、回数、労働者が受けた不利益などを踏まえて判断します。
会社による健康状態の確認や業務の調整には、労務管理上の必要性がある場合もあるためです。
違法性を判断するポイントとしては、以下の6つがあります。

それでは、病気ハラスメントの違法性を判断するポイントについて順番に見ていきましょう。
病気に関する言動が業務上必要な範囲を超えている場合には、ハラスメントと判断されやすくなります。
会社には、勤務できる状態かを確認し、担当業務や勤務時間を決める必要があるため、病状や就業上の制限を確認すること自体には合理的な目的があります。
しかし、確認する目的が正当でも、人格を否定する言葉を使うことや、ほかの労働者の前で病名を追及することまで許されるわけではありません。
例えば、残業できるかを確認するだけで足りるのに、病気になった責任を繰り返し追及するというケースなどはハラスメントとなりやすいでしょう。
必要な情報を、必要な相手に、穏当な方法で確認したかを見ることになります。
業務上の目的と関係のない侮辱や嫌がらせは、適正な業務指示や健康管理とはいえません。
言動の内容だけでなく、病気との関連や表現、回数、続いた期間も判断材料になります。
同じ言葉でも、発言された場面や口調、発言者との関係によって、労働者が受ける負担が異なるためです。
例えば、病気を理由に能力がないと決め付ける発言を、多くの同僚がいる前で長期間繰り返すというケースは、ハラスメントとなりやすいでしょう。
本人がやめるよう求めた後も続けられている場合は、嫌がらせの性質が認められやすくなります。
一方、回数が1回だけであっても、解雇を強く迫る発言や人格を激しく否定する発言であれば、就業環境を害することがあります。
発言を一つずつ切り離すのではなく、一連の経緯を通して判断することが必要です。
病気を理由とする勤務制限や人事上の措置が適切かは、医師の意見と実際の就労能力を踏まえて判断します。
病名が同じでも、症状や治療内容、担当する仕事への影響は労働者ごとに異なるためです。
例えば、主治医が時間外労働を避ければ勤務できると判断しているのに、会社が検討を行わず、すべての仕事から外すというケースは、ハラスメントとなりやすいでしょう。
会社は、主治医の意見だけで結論を出すのではなく、産業医の意見、仕事の内容、通勤への影響、本人の希望なども踏まえて対応を決めます。
また、配置転換や労働時間の短縮によって就業を続けられないかも検討します。
病気にかかっているという理由だけで、働けないと決め付けることは適切ではありません。
同じような状況にあるほかの労働者との扱いの違いは、病気を理由とする嫌がらせかを判断する手掛かりになります。
病気のある労働者にだけ厳しい条件を課している場合、業務上の必要性とは別の意図が疑われるためです。
例えば、ほかの労働者には認めている通院のための休暇を、病気を申告した特定の労働者にだけ認めないという場合には、ハラスメントとなりやすいでしょう。
病気を申告した直後から、本人だけ会議へ呼ばなくなった場合も、扱いの違いが生じた理由を確認する必要があります。
ただし、仕事内容、症状、勤務上の制限が異なれば、対応に違いが生じることもあります。
単に結果が違うかだけではなく、その違いに合理的な理由があるかを見ることになります。
病気を理由にどのような不利益を受けたかも、違法性を判断するポイントです。
降格や減給、解雇などは、労働者の収入や今後の生活へ直接影響するため、行う理由や手続が厳しく問われます。
例えば、病気を申告した直後に、就労能力を確認しないまま役職を外し、賃金を下げる場合には、ハラスメントになる可能性もあります。
遠方への異動や仕事の取上げなどが、退職へ追い込む目的で行われていることもあります。
人事処分がなくても、侮辱や隔離によって就業環境が害された場合には、ハラスメントに当たる可能性があります。
労働者が相談した後の会社の対応は、会社が負う責任を判断するうえで確認が必要です。
会社には、相談窓口を設け、相談内容に応じて事実関係を確認し、被害を受けた労働者への配慮や再発防止を行うことが求められています。
例えば、録音やメールを提出して相談したにもかかわらず、会社が関係者への聞き取りをせず、長期間放置するということは問題です。
相談した労働者を異動させるだけで終わらせたり、相談を理由に低い評価を付けたりした場合も問題になります。
なお、会社が後から対応しても、すでに行われたハラスメントがなかったことになるわけではありません。
病気ハラスメントについて会社への是正要求や損害賠償請求を行う場合には、問題となる言動と受けた不利益を客観的に示す証拠が役立ちます。
相手が発言を否定したり、会社が人事上の理由を別に説明したりすることがあるためです。
病気ハラスメントの証拠になるものとしては、以下の7つがあります。

それでは、病気ハラスメントの証拠になるものについて順番に見ていきましょう。
録音や録画は、病気に関する発言の内容や話し方を客観的に残せる証拠です。
相手が発言を否定した場合でも、実際に使われた言葉やその場の状況を確認できます。
例えば、上司から病気をからかわれた面談や、退職を繰り返し迫られた話合いを録音するという方法があります。
問題となる発言だけでなく、その前後も含めて記録すると、発言の目的や経緯が分かりやすくなります。
録音した日時、場所、参加者、話合いの目的も別に記録しておきましょう。
録音データは編集せずに原本を残し、別の端末や記録媒体にも保存してください。
体調を崩すおそれがある場合には、録音するために無理に面談へ参加せず、自分の安全を優先しましょう。
メールや社内チャット、SNSのメッセージは、発言者、日時、言動の内容を示す証拠になります。
病気を理由にした嫌味や出勤の強要、退職を求める連絡などが文字で残るためです。
画面の一部だけではなく、送信者、受信者、送信日時、前後のやり取りが分かる形で保存しましょう。
スクリーンショットを撮るだけでなく、メッセージを出力したり、PDF形式で保存したりする方法もあります。
休職や退職によって会社のアカウントが使えなくなることもあるため、閲覧できるうちに保存することが必要です。
録音やメールが残っていない場合には、出来事を記録した時系列メモが役立ちます。
問題となる言動の直後に具体的な内容を書いておけば、記憶が曖昧になることを防げるためです。
メモには、日時、場所、発言者、発言内容、周囲にいた人、自分の対応、その後の体調を記載します。
「ひどいことを言われた」と書くだけではなく、覚えている範囲で実際の発言を記録しましょう。
自分が直接見聞きした内容と、ほかの人から聞いた内容は分けて記載してください。
日記、手帳、スマートフォンのメモなどに継続して記録すると、ハラスメントの回数や期間も示しやすくなります。
後からまとめて作成するよりも、出来事があった日ごとに記録する方が信用性が高まります。
診断書やカルテ、通院記録は、病気の状態や症状が悪化した時期を示す資料です。
病気ハラスメントによって心身の症状が生じたり、以前からの病気が悪化したりしたと主張する場合には、職場での出来事と受診経過との関係が確認されます。
医療機関を受診するときは、職場で何が起きたのか、その後にどのような症状が出たのかを医師へ具体的に伝えましょう。
例えば、退職を迫られた後から眠れなくなった場合には、その時期や職場での発言内容を説明します。
診療明細書、処方箋、お薬手帳、通院に利用した交通費の記録なども、治療の経過を示す資料になります。
ただし、診断書だけで病気ハラスメントの事実まで証明できるわけではありません。
録音やメッセージなど、職場での言動を示す証拠と組み合わせることが必要です。
人事評価や異動通知などの資料は、病気を申告した後に受けた不利益を示す証拠になります。
病気を伝える前後で、評価、賃金、役職、担当業務などが変わっていれば、その理由を検討する手掛かりになるためです。
例えば、病気を申告した直後に人事評価を下げられたり、遠方への異動を命じられたりしたケースなどです。
評価表、辞令、業務命令書、給与明細、面談記録、会社からの説明文書などを保存しておきましょう。
過去の人事評価や担当業務が分かる資料も残すと、病気を申告する前後の変化を比較できます。
人事上の理由を口頭でしか説明されなかった場合には、説明内容を確認するメールを会社へ送信しておきましょう。
就業規則や休職関係の書類は、会社が定めた手続に沿って対応したかを確認する証拠になります。
休職できる条件、休職期間、復職の基準、欠勤時の手続などは、就業規則に定められていることがあるためです。
例えば、休職の条件を満たしているのに申請を拒否された場合には、申請書と会社の回答を保存します。
勤怠記録からは、医師から残業を制限されていた期間に、実際には何時間働いていたのかを確認できます。
タイムカード、パソコンの利用記録、業務日報、勤務表なども勤怠を示す資料になります。
休職申請書、復職願、主治医の意見書、産業医面談の記録、会社とのメールも保存しておきましょう。
就業規則が後から変更されることもあるため、問題が起きた当時の内容が分かる資料を確保してください。
病気ハラスメントを見聞きした同僚などの証言も、事実関係を確認する証拠になります。
当事者以外の人が同じ発言や扱いを確認していれば、労働者本人だけの主張ではないことを示せるためです。
例えば、上司が病気をからかった場面に同席していた同僚や、病気を理由に仕事から外すよう指示された担当者が考えられます。
目撃者がいる場合には、氏名、所属、見聞きした日時、内容を自分のメモへ残しましょう。
証言を頼む際には、事実と異なる内容を求めたり、特定の説明をするよう誘導したりしてはいけません。
病気ハラスメントを受けたときは、相手へ反論することよりも、治療を続けながら証拠と相談経路を確保することが先です。
体調が悪化すると、働き続けることや会社と話し合うことが難しくなるため、無理を避けて段階的に対応します。
早い段階で状況を記録し、必要な配慮を文書で求めれば、会社の対応も確認しやすくなります。
主な対処法としては、以下の8つがあります。

それでは、病気ハラスメントを受けた場合の対処法について順番に見ていきましょう。
病気ハラスメントによって体調が悪化している場合には、出勤や相手との話合いよりも治療を優先しましょう。
無理に出勤を続けると、病気が悪化し、その後の復職や交渉にも影響することがあるためです。
まずは医療機関を受診し、現在の症状や職場で受けている言動を医師へ伝えてください。
倒れそうになったり、強い不安で仕事を続けられなくなったりした場合には、その場から離れて家族や医療機関へ連絡することも必要です。
相手と一対一で話すことに不安がある場合は、面談の延期、書面でのやり取り、第三者の同席などを会社へ求めましょう。
体調が悪い状態で、退職届や合意書へその場で署名することは避けてください。
会社へ相談する前に、病気ハラスメントを示す証拠を確保しておきましょう。
相談後にメッセージが削除されたり、会社のアカウントへアクセスできなくなったりすることがあるためです。
録音、メール、社内チャット、人事評価、勤怠記録などを、閲覧できるうちに保存してください。
医師には病名だけではなく、仕事を続けるために必要な配慮を具体的に書いてもらいましょう。
診断書に病名と療養期間しか書かれていないと、会社がどのように対応すべきか判断しにくいためです。
例えば、残業を避ける必要があること、夜勤が難しいこと、通院日の確保が必要なことなどを記載してもらいます。
勤務できる時間、避けるべき作業、配慮が必要な期間についても意見を求めるとよいでしょう。
会社は医師の意見だけで結論を出すとは限りませんが、具体的な意見があれば、労働時間の短縮や配置の変更について話し合いやすくなります。
休職や復職を検討するときは、会社の就業規則を確認しましょう。
休職できる条件、休職期間、復職の手続、休職中の賃金などは、会社ごとに異なるためです。
診断書を提出する期限や、産業医面談を受ける必要があるかも確認してください。
配置転換、短時間勤務、在宅勤務、通院休暇などについて、別の社内規程が設けられていることもあります。
就業規則が見つからない場合は、人事担当者に閲覧方法を確認しましょう。
会社は、労働者が必要なときに就業規則の内容を確認できる状態にしておく必要があります。
会社への申出は、口頭だけでなくメールや書面でも行いましょう。
文書に残すことで、いつ、どのような被害を申告し、何を求めたのかを後から確認できるためです。
書面には、問題となる言動の日時と内容、現在の症状、医師の意見、求める対応を記載します。
求める対応としては、言動の中止、行為者との接触回避、残業の制限、病歴の共有停止などが考えられます。
病気の詳細をすべて説明する必要はなく、就業上の配慮に必要な範囲で伝えれば足りることもあります。
提出した文書やメールは手元に保存し、会社から回答があった場合は、その内容も残しておきましょう。
直属の上司だけで解決が難しい場合には、社内相談窓口、人事、労働組合へ相談しましょう。
行為者が直属の上司である場合、その上司に直接訴えても調査や是正が進まないことがあるためです。
相談するときは、時系列メモや録音などを提示し、事実調査と当面の接触回避を求めます。
会社には、相談を受けた後、事実関係を確認し、被害を受けた労働者への配慮や再発防止を行うことが求められています。
また、相談したり、調査に協力したりしたことを理由に、不利益な扱いをすることは禁止されています。
相談内容を誰に共有するのかも確認し、病歴が必要のない範囲まで広がらないよう求めましょう。
社内へ相談しても対応されない場合や、会社へ直接相談することに不安がある場合は、公的な窓口を利用しましょう。
都道府県労働局などに設置された総合労働相談コーナーでは、パワーハラスメント、解雇、配置転換、賃金の引下げなどを相談できます。
相談は電話または面談で行うことができ、利用は無料です。
事案に応じて、労働局による助言・指導や、紛争調整委員会によるあっせんを案内されることもあります。
相談する際は、会社名、雇用形態、問題となる言動、会社へ相談した経緯、希望する解決を伝えられるよう準備しましょう。
公的窓口への相談だけで会社との交渉や慰謝料請求まで行われるわけではないため、求める解決に合った窓口を選ぶ必要があります。
総合労働相談コーナーの評判については、以下の記事で詳しく解説しています。
解雇や退職強要、降格、減給などを受けている場合には、早めに労働問題に詳しい弁護士へ相談しましょう。
人事処分の有効性や慰謝料請求の見通しは、就業規則、医師の意見、証拠の内容などによって異なるためです。
弁護士へ相談すれば、病気ハラスメントに当たる可能性、集めるべき証拠、会社へ求める内容について助言を受けられます。
必要に応じて、会社への通知、交渉、労働審判、訴訟などを依頼することもできます。
特に、退職届への署名を求められている場合や、解雇日を告げられている場合には、書類を提出する前に相談してください。
病気によって自分で会社とやり取りすることが難しいときも、弁護士へ窓口を任せる方法があります。
病気ハラスメントを受けた場合には、嫌がらせを止めるだけでなく、不利益な処分の撤回や損害の回復を求められる可能性があります。
どの解決が適しているかは、受けた言動、体調への影響、今後も働き続けたいかによって異なります。
自分が望む状態を明確にすると、会社への申入れや法的手続の方針を決めやすくなります。
病気ハラスメントで求められる解決としては、以下の5つがあります。

それでは、病気ハラスメントで求められる解決について順番に見ていきましょう。
会社に対しては、病気を理由にした嫌がらせの中止と、安心して働ける環境の確保を求めることができます。
ハラスメントが続いている場合、金銭による解決だけでは職場で受ける負担がなくならないためです。
例えば、問題となる発言を止めること、行為者からの連絡を制限すること、面談に第三者を同席させることなどを求めます。
被害を受けた労働者が望む場合には、行為者を別の部署へ異動させることや、座席や勤務時間を分けることも考えられます。
厚生労働省の指針でも、被害者と行為者を引き離す配置転換、行為者の謝罪、労働条件上の不利益の回復などが会社の対応例として示されています。
ただし、会社に謝罪を法的に強制できるとは限らないため、謝罪の方法や内容は会社との交渉によって決めることが一般的です。
被害を受けた労働者だけを望まない部署へ異動させるなど、新たな不利益が生じないよう確認する必要があります。
退職に追い込む異動については、以下の記事で詳しく解説しています。
病気を理由に不当な人事上の措置を受けた場合には、その撤回や不利益の回復を求められることがあります。
会社には人事を決める権限がありますが、病気への嫌がらせや退職へ追い込む目的で自由に処分できるわけではありません。
例えば、病気を申告した直後に根拠なく評価を下げられ、役職と賃金も引き下げられたというケースがあります。
この場合には、評価の根拠、過去の評価との違い、就業規則上の手続、病気を申告した時期との関係を確認します。
懲戒処分は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当でない場合には無効となります。
解雇についても、客観的に合理的な理由がなく、社会通念上相当といえなければ無効です。
会社が自主的に撤回しない場合には、交渉や労働審判、訴訟を通じて、解雇の無効確認や未払い賃金の支払いなどを求めることがあります。
解雇されたらどうなるかについては、以下の記事で詳しく解説しています。
病気ハラスメントによって精神的な苦痛や経済的な損害を受けた場合には、行為者や会社へ損害賠償を請求できる可能性があります。
民法では、故意または過失によって他人の権利や法律上保護される利益を侵害した者に、損害を賠償する責任を定めています。
例えば、病気を理由に侮辱を繰り返され、精神疾患を発症して休職したというケースでは、慰謝料、治療費、休業による収入の減少などが問題になります。
会社がハラスメントを知りながら放置した場合には、安全配慮義務違反に基づく請求を検討することもあります。
また、上司や同僚が業務に関連してハラスメントを行った場合には、会社が使用者責任を負うことがあります。
請求が認められるには、ハラスメントの違法性だけでなく、損害の内容や言動との因果関係を示す必要があります。
慰謝料の金額は一律ではなく、言動の悪質性、回数、継続期間、症状、不利益の程度、会社の対応などを踏まえて決まります。
パワハラの慰謝料相場については、以下の記事と動画で詳しく解説しています。
病気ハラスメントによって精神疾患を発症した場合には、労災保険の給付を申請できる可能性があります。
ハラスメントによる強い心理的負荷が原因で精神障害を発症したと認められれば、業務上の病気として扱われるためです。
労災が認定されると、治療に関する療養補償給付や、働けない期間に関する休業補償給付などを受けられることがあります。
精神障害の労災認定では、発症前おおむね6か月間の出来事や、ハラスメントの内容、回数、継続性、会社の対応などが確認されます。
繰り返されるハラスメントは一連の出来事として評価され、長期間続いていることは心理的負荷を強める事情になります。
病気によって働けない場合には、休職中や退職後の生活を支える制度を確認しましょう。
利用できる制度は、病気が仕事を原因とするものか、現在働ける状態か、健康保険の加入期間などによって異なります。
業務外の病気やけがで働けず、会社から十分な給与を受けられない場合には、健康保険の傷病手当金を受けられる可能性があります。
傷病手当金は、待期期間を経た後、支給開始日から通算して1年6か月まで支給されます。
退職後も受給を続けるには、退職日までに継続して1年以上健康保険へ加入していることや、退職時に支給条件を満たしていることなどが必要です。
退職日に出勤すると、退職後の継続給付を受けられないことがあるため注意してください。
雇用保険の基本手当は、働く意思と能力があり、求職活動をしている人を対象とする制度です。
病気ですぐに働けない状態が30日以上続く場合には、基本手当を直ちに受けるのではなく、受給期間の延長を申請する方法があります。
病気を理由として退職した場合は特定理由離職者に、ハラスメントや退職勧奨によって退職した場合は別の離職区分に当たる可能性があるため、離職票と証拠を持参してハローワークへ確認しましょう。
病気ハラスメントの相談先は、解決したい問題に応じて選ぶ必要があります。
ハラスメントの中止を求める場合と、労災申請や慰謝料請求をする場合では、対応できる窓口が異なるためです。
相談先の特徴を知れば、窓口を何度も移る負担を減らせます。
病気ハラスメントの主な相談先としては、以下の5つがあります。

それでは、病気ハラスメントの相談先について順番に見ていきましょう。
職場で嫌がらせが続いている場合は、会社の相談窓口や人事へ相談する方法があります。
会社には、ハラスメントの相談に対応し、事実を確認したうえで被害者への配慮や再発防止を行うことが求められているためです。
相談するときは、問題となる言動の日時、内容、行為者、証拠、希望する対応を伝えます。
例えば、発言の中止、行為者との接触回避、病歴の共有停止、勤務方法の変更などを求めることが考えられます。
相談先の担当者が行為者と近い関係にある場合は、別の窓口や上位の部署へ申し出ましょう。
労働組合がある場合は、組合へ相談し、会社との話合いに同席してもらったり、団体交渉を求めたりする方法もあります。
社内へ相談した日時と回答内容は、メールやメモで残しておきましょう。
会社が病気ハラスメントの相談に対応しない場合は、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)へ相談できます。
雇用環境・均等部(室)は、職場のパワーハラスメントや会社の防止措置について相談を受け付けています。
労働局に設置された総合労働相談コーナーでも、いじめや嫌がらせ、解雇、配置転換、賃金の引下げなどを無料で相談できます。
状況によっては、労働局長による助言・指導や、紛争調整委員会によるあっせんを利用できることがあります。
あっせんでは、第三者が間に入り、労働者と会社の話合いによる解決を支援します。
ただし、労働局が労働者の代理人として会社と交渉したり、慰謝料の支払いを強制したりする制度ではありません。
会社があっせんへ参加しない場合には、手続が打ち切られることもあります。
労働局のあっせんによる解決金の相場については、以下の記事で詳しく解説しています。
病気ハラスメントに労働基準法違反や労災の問題が伴う場合は、労働基準監督署へ相談しましょう。
労働基準監督署は、賃金、労働時間、職場の安全や衛生、労災保険などを扱う機関です。
例えば、医師から残業を制限されているのに長時間労働を強いられている場合や、時間外労働の賃金が支払われていない場合などです。
病気ハラスメントによって精神疾患を発症したときは、労災保険の請求について相談することもできます。
一方、病気をからかわれたという問題だけで、労働基準法違反がない場合には、労働基準監督署による対応が難しいことがあります。
嫌がらせの中止や慰謝料の支払いを求めたい場合は、労働局や弁護士への相談も検討しましょう。
相談内容に応じて窓口を使い分けることが必要です。
相談すべき労働基準監督署については、以下の記事で確認ください。
病気ハラスメントを受けて退職した場合は、雇用保険と離職理由についてハローワークへ相談しましょう。
雇用保険の給付制限や給付日数は、退職に至った理由によって変わることがあるためです。
会社が作成した離職票に自己都合退職と記載されていても、ハローワークがその記載だけで最終的な離職理由を決めるわけではありません。
例えば、繰り返される嫌がらせや退職勧奨によって退職した場合は、実際の経緯をハローワークへ説明します。
録音、メール、会社への相談記録、退職を求められた書面など、離職理由を示す資料があれば提出しましょう。
ハローワークは、本人と会社の主張や提出資料を確認して離職理由を判断します。
病気ですぐに働けない場合は、基本手当を直ちに受給できないこともあるため、受給期間の延長を含めて相談してください。
慰謝料請求や解雇の撤回など、法的な解決を求める場合は、労働問題に詳しい弁護士へ相談しましょう。
請求できる内容や適切な手続は、ハラスメントの内容、証拠、病気との因果関係、会社の対応によって異なるためです。
弁護士へ相談すれば、病気ハラスメントの違法性や人事処分の有効性、慰謝料請求の見通しについて助言を受けられます。
会社への通知や交渉を依頼し、嫌がらせの中止、処分の撤回、損害賠償などを求めることもできます。
交渉で解決しない場合には、労働審判や訴訟を利用することがあります。
労働審判については、以下の記事と動画で詳しく解説しています。
退職届や合意書への署名を求められているときは、提出すると元の状態へ戻すことが難しくなる場合があります。
退職する意思がない場合や解雇を告げられた場合は、書類を提出する前に相談しましょう。
病気ハラスメントに関するよくある質問としては、以下の5つがあります。

これらの質問について順番に回答していきます。
A.会社へ病名を伝える法律上の義務が、常にあるわけではありません。
ただし、休職や勤務上の配慮を求める場合には、仕事への影響や必要な配慮を説明する必要があります。
病名を伝えたくないときは、勤務時間の制限や避けるべき作業だけを医師に書いてもらう方法もあります。
会社に診断書を出せと言われた場合については、以下の記事で詳しく解説しています。
A.病気で働けないからといって、直ちに解雇されるわけではありません。
休職制度、回復の見通し、配置転換や勤務時間の短縮が可能かなどを踏まえて判断されます。
合理的な理由がなく、相当ともいえない解雇は無効になる可能性があります。
A.同僚からの言動でも、パワーハラスメントに当たることがあります。
例えば、複数の同僚から病気をからかわれ、反論することが難しいケースです。
パワハラに当たらなくても、侮辱や病歴の言いふらしが違法になる可能性はあります。
A.慰謝料の金額に、一律の基準はありません。
発言の内容や回数、続いた期間、病気への影響、休職や退職の有無などから判断されます。
録音や診断書などの証拠も、金額を検討するうえで関係します。
A.ペイシェントハラスメントとは、患者や家族が医療従事者へ行う、社会通念上許されない言動です。
例えば、暴言、暴力、脅迫、不合理な要求などがあります。
病気を理由に労働者が職場で嫌がらせを受ける病気ハラスメントとは、別の問題です。
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以上のとおり、今回は、病気を理由にハラスメントを受けた場合について、違法性と対処法を解説しました。
この記事が病気を理由としたハラスメントに悩んでいる方の助けになれば幸いです。
以下の記事も参考になるはずですので読んでみてください。
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