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2025年3月8日
労働一般
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投稿日:2026/07/23
ハラスメント

部下からパワハラを訴えられ、「申告された時点で自分が不利になるのではないか」と困ってしまう管理職は少なくありません。
身に覚えがない場合でも、会社の調査や懲戒処分への不安が重なり、何を話し、どの資料を残すべきか迷うはずです。

この記事の要点
・パワハラは訴えたもん勝ちではなく、申告内容、業務上の必要性、言動の程度、証拠などから判断されます。
・訴えられた側は、申告者へ直接連絡せず、記録を保全したうえで、会社の調査に落ち着いて対応することが基本です。
この記事を読めば、パワハラを訴えられたときの判断基準と正しい初動がよくわかるはずです。
目次

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パワハラは訴えたもん勝ちではありません。
パワハラは、申告しただけで認定されるものではないためです。
会社は、双方の説明や関係する資料を確認したうえで判断されます。
パワハラの申告や相談は、事実確認を始めるきっかけにすぎません。
申告した人の話だけで、パワハラが自動的に認定されるものではありません。
会社は、具体的な発言、前後の経緯、業務上の必要性、メールや録音などを確認します。
裁判で慰謝料を請求する場合も、違法な言動や損害があったことを証拠で示す必要があります。
例えば、部下のミスを注意したケースでは、注意した事実だけでなく、言葉の内容、場所、回数などが判断材料になります。
訴えられた側は、申告を軽く考えず、関係する資料を示しながら事実を説明しましょう。
申告されたことと、パワハラが認定されることは別です。
会社が調査を始めても、パワハラがあったと決まったわけではありません。
会社には、相談を受けた場合に事実を確認することが求められています。
そのため、申告した人と訴えられた側の双方から話を聴きます。
説明が食い違う場合には、同席者への確認やメール、チャットなどの調査も行われます。
調査中に申告者との接触を控えるよう指示されることもありますが、直ちに処分を意味するものではありません。
パワハラ問題の「勝ち」は、慰謝料を受け取ることだけではありません。
申告した人が求める結果は、状況によって異なります。
例えば、問題となる言動の中止、謝罪、配置の変更、社内処分、慰謝料などがあります。
ただし、異動や懲戒処分の内容は会社が判断するため、申告した人が自由に決められるものではありません。
金銭の支払いがなくても、言動が止まり、職場環境が改善されることがあります。
反対に、パワハラとは認定されなくても、言葉の選び方について改善を求められることもあります。
得られる結果は一つではないため、単純に「申告した側が勝つ」とはいえません。
パワハラかどうかは、相手が不快に感じたかだけで決まるものではありません。
法律上は、優越的な関係、業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動、就業環境への支障という3つの要素をすべて満たすかを確認します。
訴えられた側も、この基準を知ることで、指導の目的や言い方、前後の状況を具体的に説明しやすくなります。
法律上の要素としては以下の3つがあります。

それでは、パワハラと判断される3つの要素について順番に見ていきましょう。
優越的な関係とは、相手が言動に抵抗したり、拒否したりすることが難しい関係をいいます。
典型的なのは、上司から部下への言動です。
ただし、上司と部下の関係だけに限られません。
業務に必要な知識を持つ同僚や、複数の部下による言動も、相手が拒否しにくい場合には該当することがあります。
例えば、管理職が人事評価への影響を背景に、部下へ強い言葉を使うケースがあります。
上司から部下への言動であっても、それだけでパワハラになるわけではなく、実際の関係や状況を確認します。
業務上の注意でも、その目的や方法が行き過ぎていれば、パワハラと判断されることがあります。
判断する際には、指導の目的、言葉の内容、場所、回数、時間、前後の状況などを確認します。
例えば、納期の遅れを注意する必要があっても、大勢の前で人格を否定する言葉を繰り返すケースを想定してみましょう。
このような言動は、指導として許される範囲を超えていると判断される可能性があります。
一方で、問題となる事実と改善方法を伝える適正な業務指導は、直ちにパワハラにはなりません。
訴えられた側は、何のために、どのような言葉で指導したのかを具体的に説明することになります。
就業環境が害されるとは、言動によって働くうえで見過ごせない支障が生じることです。
単に不快に感じたというだけではなく、一般の労働者が同じ言動を受けた場合にも、仕事へ大きな影響が出る程度かを確認します。
例えば、強い叱責が続き、出勤が難しくなったり、仕事に集中できなくなったりするケースがあります。
言動の回数や期間も判断材料になります。
ただし、内容が非常に強い場合には、1回の言動でも就業環境が害されたと判断されることがあります。
訴えられた側も、言動の内容だけでなく、相手の心身や仕事への影響を確認する必要があります。
パワハラは訴えたもん勝ちではありませんが、訴えられた側にはそう感じられる場面があります。
会社は申告を受けると調査を始め、必要に応じて当事者を離すことがあるためです。また、プライバシーへの配慮から、申告内容のすべてが伝えられない場合もあります。
例えば、パワハラが「訴えたもん勝ち」と感じられやすい理由4つとしては、以下の4つがあります。

それでは、パワハラが訴えたもん勝ちと感じられやすい理由を順番に見ていきましょう。
会社は、パワハラの相談を受けた場合、放置せずに事実を確認する必要があります。
そのため、申告があると、人事との面談や関係者への聞き取りが始まることがあります。
訴えられた側から見ると、申告した人の話だけで会社が動いたように感じるかもしれません。
しかし、調査を始めることと、申告内容を認めることは別です。
会社は、申告者だけでなく、訴えられた側からも事情を聴くことが求められているのです。
訴えられた側は、調査が始まったことだけで結論が出たと思い込む必要はありません。
会社は、調査への影響や当事者の負担を避けるため、双方を一時的に離すことがあります。
例えば、指揮命令系統を変更するケースや、申告者への直接の連絡を控えるよう求めるケースなどです。
訴えられた側は、この措置を受けると、すでにパワハラが認定されたように感じるかもしれません。
しかし、調査中の接触制限は、事実が確定する前に行われる場合もあります。
役職や賃金に影響があるときは、措置の理由、期間、調査後の扱いを会社へ確認しましょう。
パワハラの調査では、申告者と訴えられた側のプライバシーを守る必要があります。
そのため、申告者の発言や提出資料のすべてが、訴えられた側へ伝えられるとは限りません。
申告内容が十分に分からないと、何に反論すればよいか迷ってしまいます。
ただし、具体的な事実を知らないままでは、正確な説明もできません。
日時、場所、問題とされた言葉や行動など、回答に必要な範囲を会社へ確認しましょう。
分からない内容を推測して反論するのではなく、開示された事実に沿って説明することが基本です。
インターネットでは、パワハラを訴えて解決した体験談が目に入りやすい傾向があります。
一方で、証拠が足りなかった事案や、業務指導の範囲内と判断された事案は、詳しく紹介されないことがあります。
そのため、申告すれば必ず認定されるように見えてしまいます。
しかし、実際の判断では、具体的な言動、前後の経緯、証拠、業務上の必要性などが確認されます。
似たような出来事でも、事情が異なれば結論は変わります。体験談だけ過信せず、自分の事案に関する資料と事実を確認しましょう。
パワハラの有無は、一つの証拠だけで決まるとは限りません。
録音やメールだけでなく、前後の経緯、心身への影響、会社へ相談した時期なども合わせて考慮されます。
例えば、証拠としては、以下の6つがあります。

それでは、パワハラの判断に使われる証拠について順番に見ていきましょう。
録音や動画は、実際の言葉やその場の様子を確認できる証拠です。
発言の内容だけでなく、口調、声の大きさ、会話の流れなども分かります。
例えば、厳しい注意があった場合でも、業務上の問題を伝えたのか、人格を否定したのかを確認しやすくなります。
一部だけでは受け取り方が変わることがあるため、前後を含む元のデータを残しましょう。
訴えられた側にとっても、申告された言葉を使っていないことや、発言の前後に業務上の説明があったことを示せる場合があります。
録音や動画は編集せず、日時や場所が分かる形で保存することが必要です。
メールやチャットの履歴は、誰がいつ、どのような指示をしたのかを確認できる証拠です。
送信日時や相手の返信も残るため、やり取りの流れを確かめやすくなります。
例えば、強い言葉が繰り返されていたことや、勤務時間外にも連絡が続いていたことが分かる場合があります。
一方で、業務の期限、ミスの内容、指導の目的が書かれていれば、訴えられた側の説明を支える資料にもなります。
必要な部分だけを切り取らず、前後のやり取りも残しましょう。
録音がない場合には、出来事を時系列に沿って記したメモが役立ちます。
いつ、どこで、誰が、何を言い、その場に誰がいたのかを具体的に書きます。
出来事から時間がたつと記憶が薄れるため、できるだけ早く記録することが必要です。
例えば、発言の内容に加えて、業務上の問題、指導に至った経緯、相手の反応も書いておきます。
訴えられた側が事情聴取に備えてメモを作る場合には、申告を受けた後に作成したことを明確にし、覚えていない部分を推測で補わないようにしましょう。
具体的なメモは、ほかの資料や目撃証言と照らし合わせる手掛かりになります。
診断書や通院記録は、心身に不調が生じたことを示す資料です。
受診日、症状、治療の経過、休職した期間などを確認できます。
例えば、問題となる言動の後から通院が始まり、欠勤や休職が続いていることが分かる場合があります。
ただし、診断書だけで、誰がどのようなパワハラをしたのかまで直ちに分かるわけではありません。
録音、メール、メモなどと合わせて、言動と不調の関係を確認することになります。
訴えられた側も、診断の内容自体を決めつけて否定せず、問題とされた言動や前後の経緯を別に説明する必要があります。
同僚などの証言は、当事者の説明が食い違う場合に役立ちます。
発言を直接聞いた人や、その場の様子を見た人から話を聴くことで、事実を確認しやすくなるためです。
例えば、注意が大勢の前で長時間続いたことや、落ち着いた面談だったことを同席者が説明できる場合があります。
ただし、同じ場面を見ていても、覚えている内容や受け止め方が異なることがあります。
目撃者がいる場合には、弁護士を通じて陳述書の作成に協力してもらうなどして、証拠課する方法があります。
会社へ相談した記録は、いつ、どのような内容を伝えたのかを確認できる資料です。
相談メール、面談記録、会社からの回答などは、申告から調査までの流れを示します。
人事評価や異動資料は、問題となる言動の前後に、業務や待遇がどのように変わったのかを確認する材料になります。
例えば、申告後に急に低い評価を受けたことや、申告前から業務上の問題が指摘されていたことが分かる場合があります。
ただし、人事評価が低いことだけでパワハラが否定されたり、異動があったことだけでパワハラが認められたりするわけではありません。
ほかの証拠と合わせて、出来事の流れを確認することが必要です。
パワハラを訴える方法は一つではなく、求める結果に合う手続を選ぶ必要があります。
社内調査、会社との交渉、行政による話合い、裁判、刑事手続では、費用や強制力が異なるためです。
訴えられた側も、どの手続が始まったのかを知れば、今後の対応を判断しやすくなります。
方法としては、以下の5つがあります。
| 方法 | 主な費用 | 期間の傾向 | 相手の参加 | 強制力 |
| 社内窓口・人事 | 原則無料 | 会社の調査による | 調査への協力を求められることがある | 会社の権限による |
| 労働組合 | 組合費など | 交渉状況による | 会社は正当な理由なく団体交渉を拒否できない | 合意を強制することはできない |
| 労働局 | 無料 | 比較的短い | あっせんへの参加は任意 | 解決案の受入れは任意 |
| 弁護士・裁判所 | 弁護士費用や裁判費用 | 数か月以上かかることがある | 裁判手続では対応が必要 | 確定した判断は強制執行できる場合がある |
| 警察 | 相談は原則無料 | 捜査状況による | 捜査機関が判断する | 刑事手続上の強制力がある |
それでは、パワハラを訴える方法と得られる結果を順番に見ていきましょう。
社内の相談窓口や人事への申告は、職場での言動を止めたい場合に利用しやすい方法です。
会社へ申告すると、相談者や訴えられた側への聞き取り、関係資料の確認などが行われます。
パワハラが確認された場合には、指導、配置変更、懲戒処分などが検討されます。
例えば、申告した人と訴えられた側の指揮命令関係を一時的に変更することがあります。
ただし、申告した人が希望した処分を、会社が必ず行うわけではありません。
訴えられた側は、申告者へ直接連絡せず、会社の調査を通じて説明することになります。
労働組合へ相談すると、組合を通じて会社との話合いを進められます。
一人で会社へ申入れをすることが難しい場合に、組合が交渉を支えるためです。
交渉では、事実確認、配置変更、職場環境の改善、金銭による解決などを求めることがあります。
正当な団体交渉の申入れであれば、会社は理由なく拒否できません。
ただし、労働組合が希望する内容を会社に強制できるわけではなく、解決には合意が必要です。
訴えられた側は、申告した人や組合と個人的に交渉せず、会社を通じて対応していくのが通常です。
会社だけでは解決できない場合には、労働局の制度を利用できます。
総合労働相談コーナーでは、パワハラを含む労働問題について無料で相談できます。
労働局から会社へ解決の方向を示す助言・指導や、専門家が話合いを支えるあっせんを利用できることもあります。
ただし、あっせんへの参加や解決案の受入れは任意です。
相手が参加しない場合には、あっせんが行われずに終了することがあります。
また、労働局の制度は主に労働者と会社の紛争を対象としており、上司個人との争いを直接解決する制度ではありません。
慰謝料や会社の責任を求める場合には、弁護士への相談や裁判手続を検討します。
弁護士へ依頼すると、証拠を確認したうえで、会社や訴えられた側との交渉を任せられます。
交渉で合意できない場合には、労働審判や民事訴訟へ進む方法があります。
労働審判は、原則として労働者と会社との紛争を対象とする手続です。
上司個人への慰謝料請求については、民事訴訟を検討することがあります。
裁判所の判断が確定すれば、相手が支払わない場合に強制執行を申し立てられることがあります。
ただし、訴えれば自動的に認められるものではなく、具体的な主張と証拠が必要です。
暴行や脅迫などの犯罪に当たる可能性がある場合には、警察への相談を検討します。
パワハラという名称が付いているだけで、すべての言動が刑事事件になるわけではありません。
例えば、殴られたケースや、危害を加えると告げられたケースでは、日時や場所、録音、写真、診断書などを持って相談します。
緊急の危険がある場合には110番、緊急ではない相談には#9110を利用できます。
警察への相談で得られるのは、警告や捜査などの刑事上の対応です。
配置変更や慰謝料を求める場合には、社内申告や民事上の手続も別に検討する必要があります。
パワハラを申告した後は、相手と直接争うより、安全の確保と記録を優先しましょう。
申告後は、会社の回答や人事上の変化を残し、自分が求める対応を具体的に伝える必要があります。
心身の不調があるときは、無理をせず医療機関などへ相談してください。
パワハラを訴えた後に被害側が気を付ける注意点としては、以下の4つがあります。

それでは、パワハラを訴えた後の注意点を順番に見ていきましょう。
申告した後は、相手と直接話し合おうとせず、会社を通して対応しましょう。
直接連絡すると、言い争いになったり、申告を取り下げるよう求められたりするおそれがあるためです。
例えば、申告した理由を問い詰められた場合には、その場で説明を続けず、人事や相談窓口へ連絡します。
二人きりになることに不安がある場合は、席や報告先を一時的に変えてもらう方法もあります。
身の危険を感じるときは、その場を離れ、周囲の人や警察へ助けを求めてください。
申告後は、自分だけで解決しようとせず、安全を優先しましょう。
申告した後の会社とのやり取りは、できる限り記録しておきましょう。
会社がいつ、どのような調査や対応をしたのかを後から確認しやすくなるためです。
面談があった場合には、日時、参加者、質問された内容、会社の回答をメモします。
メールや面談案内、人事評価、異動の通知なども削除せず保存してください。
申告後に異動や評価の低下があっても、それだけで申告への報復とは決まりません。
ただし、申告との関係を確認できるよう、変更の時期や会社から説明された理由を残しておきましょう。
会社には、自分がどのような解決を望んでいるのかを具体的に伝えましょう。
希望が分からないと、会社が必要な対応を検討しにくいためです。
例えば、問題となる言動を止めてほしい、相手との接触を避けたい、調査結果を説明してほしいという希望があります。
謝罪、配置変更、職場への復帰支援などを求めることも考えられます。
ただし、異動や懲戒処分の内容は、会社が事実確認や社内規程を踏まえて判断します。
何を最も優先したいのかを伝えることで、自分が求める解決に近づきやすくなります。
眠れない、食欲がない、出勤することが怖いなどの不調がある場合は、早めに相談しましょう。
無理を続けると、症状が重くなり、働き続けることが難しくなることがあるためです。
まずは医療機関を受診し、症状やパワハラと思われる出来事を医師へ伝えます。
会社で産業医や産業保健スタッフを利用できる場合は、勤務方法や休職について相談する方法もあります。
診断書だけでパワハラの事実が証明されるわけではありませんが、心身の状態や休養の必要性を会社へ説明する資料になります。
体調が悪いときは、手続を急ぐことよりも、治療や休養を優先してください。
パワハラを訴えられたときは、すぐに反論するのではなく、証拠を残したうえで事実を具体的に説明しましょう。
会社は、申告した側と訴えられた側の双方から話を聴き、関係資料も踏まえて調査します。
パワハラで訴えられた側が取るべき対応としては、以下の5つがあります。

それでは、パワハラで訴えられた側が取るべき対応を順番に見ていきましょう。
最初に、問題となった言動に関係する資料を残しましょう。
時間がたつと、メールが消えたり、当時の記憶が薄れたりするためです。
具体的には、メール、チャット、業務指示、面談記録、予定表、人事評価などを確認します。
例えば、部下を注意した理由や、その前にどのようなミスがあったのかが分かる資料を残します。
なお、自分に不利な内容であっても、削除したり、書き換えたりしてはいけません。
申告内容が分からない場合は、回答に必要な範囲で会社へ確認しましょう。
何を問題とされているのか分からなければ、正確に説明できないためです。
確認する内容は、問題となった日時、場所、言葉、行動、その場にいた人などです。
申告した人のプライバシーを守るため、会社が資料のすべてを開示しない場合もあります。
その場合も、どの言動について回答を求められているのかを確認します。内容を推測して広く反論すると、説明に矛盾が生じるおそれがあります。
会社から示された事実に沿って、一つずつ回答しましょう。
「業務上の指導だった」と述べるだけでは、十分な説明にならないことがあります。
パワハラかどうかは、指導の目的だけでなく、言葉の内容や方法も含めて判断されるためです。
何を改善する必要があり、なぜその時点で指導したのかを具体的に説明します。どのような言葉を使い、どのくらいの時間、どこで話したのかも伝えましょう。
例えば、納期の遅れを注意した場合は、期限、遅れによる影響、事前の指導内容などを説明します。
事情聴取だけで説明しきれない場合は、意見書を提出する方法があります。
口頭での説明は、伝え漏れが生じたり、言葉の意味が正しく伝わらなかったりすることがあるためです。
意見書には、問題とされた事実、自分の認識、業務上の目的、前後の経緯を順番に書きます。
メールや業務記録などの資料があれば、どの説明を支えるものか分かるように添えましょう。
申告者への非難や性格への評価を書くと、かえって印象を悪くするおそれがあります。
「嘘をついている」と決めつけず、自分が確認できる事実に絞って書いてください。
戒告、減給、降格、出勤停止、懲戒解雇などが検討されている場合は、早めに弁護士へ相談しましょう。
処分が出た後では、会社の判断を変えることが難しくなる場合があるためです。
懲戒処分には、客観的に合理的な理由と、処分内容の相当性が必要です。
弁護士へ相談すれば、会社へ提出する意見書の内容や、追加で確認すべき資料について助言を受けられます。
例えば、処分の予告を受けた場合や、退職を求められた場合は、回答する前に相談する方法があります。
会社の顧問弁護士は会社側の立場で対応するため、自分の相談相手とは限りません。
自分の立場で助言をする弁護士へ相談し、今後の対応を検討しましょう。
パワハラを訴えられた直後は、焦って行動すると会社の調査で不利になるおそれがあります。
パワハラを訴えられた場合に避けるべき行動としては、以下の4つがあります。

それでは、パワハラを訴えられた場合のNG行動を順番に見ていきましょう。
申告者へ直接連絡することは避けましょう。
事実を確かめるための連絡でも、申告の取下げを求める圧力や報復と受け取られるおそれがあるためです。
例えば、申告した理由を本人へ問いただしたり、二人だけで話し合おうと誘ったりすることは控えてください。
謝罪を伝えたい場合も、まず会社へ相談します。業務上の連絡が必要なときは、人事や別の上司を通す方法を確認しましょう。
会社には双方から事情を聴き、プライバシーに配慮しながら事実を確認することが求められています。
申告内容がよく分からないまま、すべて認めることは避けましょう。
一度認めた内容は、その後の調査や懲戒処分で判断材料になることがあるためです。
例えば、「強い言い方をした可能性はある」という認識と、「人格を否定する発言をした」という事実は同じではありません。
覚えていること、覚えていないこと、申告内容と異なることを分けて説明します。分からない点は無理に答えず、資料を確認してから補足すると伝えましょう。
事情聴取の記録や始末書へ署名するときも、内容を読んで誤りがないか確認してください。
会社から退職を勧められても、その場で応じる必要はありません。
退職勧奨は解雇ではなく、応じるかどうかは労働者が決められるものだからです。
例えば、「今すぐ退職届を書けば処分を軽くする」と言われても、条件を確認せずに署名することは避けましょう。
退職日、退職理由、退職金、解決金などの条件を書面で確認します。退職届や合意書を提出すると、後から元に戻すことが難しくなる場合があります。
懲戒処分や退職勧奨が問題となっているときは、回答期限を確認し、弁護士へ相談してから判断しましょう。
退職勧奨されたらどうすればいいのかについては、以下の記事で詳しく解説しています。
会社から連絡を受けた直後に、感情のまま反論することは避けましょう。
記憶だけで答えると、後から資料と食い違い、説明への信用が下がるおそれがあるためです。
まず、問題とされた日時、場所、言葉、同席者、前後の業務状況を確認します。
そのうえで、メールやチャット、予定表、業務記録などと照らし合わせましょう。
申告者の性格や動機を決めつけるのではなく、自分が確認できる事実に絞って説明してください。
会社は相談者と行為者の双方から事情を聴き、説明が食い違うときは客観的な裏付けを確認したり、第三者からも確認したりすることになります。
会社は、申告した人の説明だけでパワハラの有無を決めるものではありません。
双方から事情を聴き、関係する資料を確認したうえで、必要な対応や処分を判断します。
調査の流れを知れば、事情聴取を受けただけで結論が出たと思い込まず、落ち着いて対応できます。
会社が行うパワハラの訴えへの対応は、以下の5つです。

それでは、会社が行うパワハラ調査と処分の流れを順番に見ていきましょう。
会社は、相談した人だけでなく、行為者とされた側からも事情を聴きます。
一方の説明だけでは、事実を正しく判断できないためです。
相談者には、問題となった日時、場所、言動、前後の状況などを確認します。
行為者とされた側には、その言動をしたか、どのような目的があったかなどを確認します。
双方の説明が異なる場合、会社は第三者や関係資料を確認します。
当事者の記憶だけでは、どちらの説明が正しいか判断しにくいためです。
例えば、同席していた従業員への聞き取りや、メール、チャット、録音の確認が行われます。
業務指示書、予定表、面談記録などが確認されることもあります。
訴えられた側が目撃者を知っている場合は、本人へ直接連絡せず、会社へ氏名を伝えましょう。
複数の資料を照らし合わせることで、言動の内容や前後の経緯が確認されます。
会社は、調査中に当事者のプライバシーを守る必要があります。
そのため、申告内容や提出された資料のすべてが、訴えられた側へ開示されるとは限りません。
ただし、訴えられた側が回答できるよう、問題となった言動はできる限り具体的に示す必要があります。
また、調査への影響を避けるため、当事者の席や報告先を一時的に変えることがあります。
訴えられた側は会社の指示に従い、申告者への直接連絡を避けましょう。
調査後は、確認できた事実に応じて会社が対応を決めます。
パワハラが確認された場合には、関係の改善、配置の変更、謝罪などが検討されます。
行為者とされた側には、注意、指導、懲戒処分などが行われることがあります。
ただし、申告されたという理由だけで懲戒処分を行えるわけではありません。
会社は、言動の内容、回数、影響、本人の認識、過去の経緯などを確認して処分を決めます。
パワハラを確認できなかった場合でも、研修や指導方法の見直しなどの再発防止が行われることがあります。
会社は、パワハラについて相談したことを理由に、不利益な取扱いをしてはいけません。
会社の調査に協力して事実を話した労働者についても同様です。
例えば、相談したことだけを理由に解雇や不利益な配置変更を行うことは認められません。
ただし、申告後に異動や評価の変更があっただけで、直ちに報復と決まるわけではありません。
変更の理由や時期、会社から受けた説明を確認する必要があります。
不利益な扱いが疑われる場合は、会社とのやり取りや人事資料を残しておきましょう。
パワハラを訴える前には、費用、解決までの期間、慰謝料の見通し、時効を確認しましょう。
これらは、選ぶ手続や証拠、被害の内容によって変わるため、申立てをすれば必ず希望どおりになるわけではありません。
社内の相談窓口への申告では、通常、申告するための手数料はかかりません。
都道府県労働局の総合労働相談コーナーも、無料で利用できます。
相談のほか、労働局による助言・指導やあっせんも無料です。
例えば、会社へ相談しても解決しない場合に、総合労働相談コーナーで今後の方法を確認できます。
ただし、弁護士へ同行を依頼する費用や、資料を準備する実費は別にかかることがあります。
労働局のあっせんについては、以下の記事で詳しく解説しています。
弁護士費用は、依頼する事務所や手続の内容によって異なります。
一般的には、相談料、着手金、報酬金、実費などがあります。
交渉だけを依頼する場合と、労働審判や民事訴訟まで依頼する場合でも金額は変わります。
裁判所へ支払う費用も、請求額や利用する手続によって異なります。
そのため、依頼する前に、どこまでの対応が費用に含まれるのかを見積書などで確認しましょう。
収入や資産が一定の基準以下の場合には、法テラスの無料相談や費用の立替制度を利用できる可能性があります。
法テラスの利用条件については、以下の記事で詳しく解説しています。
パワハラ問題の解決期間や勝率は、一律には示せません。
証拠の内容、争われる事実、相手の対応、選ぶ手続によって結果が変わるためです。
労働審判は原則として3回以内の期日で進み、平成18年から令和6年までに終了した事件の平均審理期間は82.6日です。
ただし、異議が出ると民事訴訟へ移り、解決までの期間が長くなることがあります。
また、話合いによる解決や一部だけ認められた場合もあるため、単純な勝ち負けでは表せません。
「勝率」だけを見るのではなく、証拠と希望する解決を踏まえて見通しを確認しましょう。
労働審判とは何かについては、以下の記事で詳しく解説しています。
パワハラの慰謝料に、すべてのケースで共通する金額はありません。
行為の内容、回数、続いた期間、健康への影響などを踏まえて判断されるためです。
休職や退職があった場合も、パワハラとの関係が確認されます。
例えば、同じ職場の出来事でも、受けた言動や心身への影響が異なれば、認められる金額が変わることがあります。
健康被害との関係が認められれば、慰謝料のほかに治療費や休業損害が問題になる場合もあります。
パワハラの慰謝料相場については、以下の記事で詳しく解説しています。
パワハラの損害賠償請求には時効があります。
不法行為を理由に請求する場合は、原則として、損害と行為者を知った時から3年です。
生命や身体を害された場合には、この期間が5年になることがあります。
また、行為があった時から20年が経過すると、原則として請求できなくなります。
会社の安全配慮義務違反など、契約上の責任を理由に請求する場合は、別の時効が問題になることがあります。
請求の相手や根拠によって期間が変わるため、出来事から時間がたっている場合は早めに確認しましょう。
パワハラの裁判では、訴えた側の主張だけで結論が決まるわけではありません。
裁判所は、実際の言動、指導の必要性、前後の経緯、心身への影響、証拠などを確認します。
威圧的な言動が繰り返された事案では責任が認められる一方、必要な業務指導の範囲内であれば、請求が認められないこともあります。
ここでは、判断が分かれた以下の2つの裁判例を紹介します。
それでは、それぞれの裁判例を順番に見ていきましょう。
日本ファンド事件は、東京地方裁判所平成22年7月27日判決です。
消費者金融会社で働く従業員3名が、上司からパワハラを受けたとして、上司と会社へ損害賠償を求めました。
上司は、威圧的な叱責や侮辱的な発言を行ったほか、従業員の身体に触れる行為などをしていました。
裁判所は、一部の言動について、業務上の指導として許される範囲を超えた不法行為に当たると判断しました。
また、従業員1名については、パワハラと抑うつ状態や休職との関係も認められました。
その結果、上司と会社に対し、慰謝料や休業損害などの支払いが命じられています。
具体的な言動や健康への影響が証拠から確認されたことで、パワハラと会社の責任が認められた裁判例です。
雄松堂書店事件は、東京地方裁判所平成25年9月26日判決です。
元従業員が、人格を否定する言動や差別的な扱い、違法な退職勧奨などを受けたとして、会社へ慰謝料などを求めました。
一方で、元従業員には、営業活動を報告しないことや、上司の確認を得ずに退勤することなど、勤務態度に問題がありました。
裁判所は、会社が業務上の指導を行う必要があり、その方法も相当な範囲を超えていないと判断しました。
また、退職勧奨についても、脅迫や人格を否定する言動は認められないとされました。
そのため、元従業員が主張した行為について、不法行為の成立は認められませんでした。
厳しい指導を受けたとの主張があっても、指導の理由や方法によっては、パワハラと判断されないことを示す裁判例です。
パワハラについては、録音の有無、退職後の請求、申告後の異動、懲戒処分など、判断に迷いやすい点があります。
また、適正な業務指導や「逆パワハラ」、会社の調査方法について不安を感じる方もいるでしょう。
ここでは、よくある以下の8つの質問に回答します。

それでは、パワハラと訴えたもん勝ちに関する疑問を順番に見ていきましょう。
A.録音がなくても、パワハラを申告したり、慰謝料を請求したりすることはできます。
ただし、申告した内容が自動的に認められるわけではありません。
メールやチャット、時系列メモ、診断書、目撃者の説明なども判断材料になります。
A.退職後でも、在職中のパワハラについて慰謝料を請求できる可能性があります。
退職したことで、在職中に生じた損害賠償請求権が直ちになくなるわけではありません。
ただし、請求には時効がありますので注意しましょう。
A.パワハラについて相談したことや、会社の調査に協力したことを理由とする不利益な取扱いは禁止されています。
例えば、相談したことへの報復として解雇や不利益な配置変更を行うことは認められません。
ただし、申告後に異動や評価変更があっただけで、直ちに報復と判断されるわけではありません。業務上の理由があるか、申告との間に関係があるかを確認します。
会社から説明された理由や面談内容、人事資料を残しておきましょう。
退職に追い込む異動については、以下の記事で詳しく解説しています。
A.パワハラを申告されたという事実だけで、直ちに懲戒処分が決まるものではありません。
会社は、相談者と行為者の双方から事情を聴き、第三者の説明や関係資料も確認します。
そのうえで、確認できた言動や就業規則に基づいて処分を検討します。
A.「逆パワハラ」は法律上の正式な名称ではありませんが、部下の言動がパワハラに当たることはあります。
パワハラは、上司から部下への言動だけに限られないためです。
業務に欠かせない知識を持つ部下や、集団となった部下に対して、上司が抵抗しにくい関係にある場合も考えられます。
逆パワハラについては、以下の記事で詳しく解説しています。
A.会社の調査が一方的だと感じる場合は、具体的な申告内容を確認し、自分の説明を書面で提出しましょう。
会社には、相談者と行為者の双方から事実関係を確認することが求められています。
問題とされた日時、場所、言葉、行動が分からなければ、回答に必要な範囲で開示を求めます。
そのうえで、事実と異なる点、業務上の目的、前後の経緯を資料とともに伝えてください。
聞き取りの追加や第三者への確認を求めても改善されず、懲戒処分が予想される場合は、早めに弁護士へ相談しましょう。
A.客観的に見て必要かつ相当な業務指示や指導は、パワハラには当たりません。
部下のミスを注意したことや、仕事の改善を求めたことだけで、パワハラになるものではありません。
ただし、指導の目的が正しくても、人格を否定する言葉や大勢の前での長時間の叱責は問題になる可能性があります。
A.6類型に似た言動があっても、それだけでパワハラと決まるわけではありません。
6類型は、身体的な攻撃、精神的な攻撃、人間関係からの切り離し、過大な要求、過小な要求、個の侵害という代表的な分類です。
実際には、優越的な関係、必要かつ相当な範囲の超過、就業環境への支障という3つの要素をすべて満たすかを確認します。
反対に、6類型へ明確に分けにくい言動でも、3つの要素を満たせば問題になる可能性があります。
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以上のとおり、今回は、パワハラは訴えたもん勝ちではないことを説明したうえで、認定基準や証拠6つと簡単な対処法を解説しました。
この記事がパワハラは訴えた者の言ったとおりに認定されることになるのか悩んでいる方の助けになれば幸いです。
以下の記事も参考になるはずですので読んでみてください。
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