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2025年3月8日
労働一般
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投稿日:2026/09/27
残業代

残業代を請求したいのに、手元にタイムカードなどの証拠がないというケースがあります。
しかし、タイムカードがなくても、パソコンのログや業務メール、入退館記録などから労働時間を確認できることがあり、手元に資料がなければ会社に開示を求める方法もあります。

この記事の要点
・残業代請求では労働時間などを示す証拠が必要ですが、タイムカードだけが証拠になるわけではありません。
・手元に証拠がない場合でも、会社側の資料を確認したり、他の記録を組み合わせたりして残業時間を示せることがあります。
この記事を読めば、残業代請求の証拠がない場合やタイムカードがない場合に、どのような証拠を集め、どのように請求を進めればよいのかがよくわかるはずです。
目次

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残業代請求では証拠が必要ですが、手元にタイムカードがないというだけで請求を諦める必要はありません。
会社側に勤怠記録が残っていることもありますし、タイムカード以外の資料から残業時間を確認できることもあるためです。
まずは、「手元に証拠がない」のか、「残業時間を裏付ける資料がほとんど存在しない」のかによって見通しも変わってきます。
残業代請求で証拠がない場合に押さえておきたいポイントとしては、以下の3つがあります。

それでは、これらのポイントについて順番に見ていきましょう。
残業代請求を考えた時点で手元に証拠がなくても、会社側に残っている資料を使えることがあります。
会社には、労働者の始業時刻や終業時刻を確認し、記録することが求められているためです。
例えば、自分ではタイムカードの写しを保管していなくても、会社の勤怠システムや出勤簿などに過去の勤務記録が残っていることがあります。
退職後に社内システムへアクセスできなくなった場合も、手元に記録がないことだけを理由に残業代請求ができなくなるわけではありません。
そのため、証拠がないと思った場合には、まず会社側にどのような勤務記録が残っているのかを確認しましょう。
タイムカードは始業時刻や終業時刻を客観的に確認しやすい資料ですが、残業代請求に必ず必要な証拠ではありません。
労働時間を確認できる資料は、タイムカード以外にもあるためです。
例えば、パソコンの使用記録や入退館記録、業務上のメールなどから、仕事をしていた時間を確認できることがあります。
また、一つの資料だけでは正確な労働時間が分からなくても、複数の記録を照らし合わせることで勤務状況を示せる場合もあります。
そのため、残業代請求でタイムカードがない場合には、勤務時間と結び付くほかの記録が残っていないかを確認しましょう。
残業時間を裏付ける客観的な資料がほとんど残っていない場合には、残業代請求の難易度は上がります。
会社が残業時間を争った場合には、請求する側でも、いつ、どの程度働いていたのかを具体的に示す必要があるためです。
例えば、数年前の勤務について「毎日遅くまで働いていた」という記憶だけでは、日ごとの始業時刻や終業時刻を明らかにすることが難しくなります。
一方で、自分で付けた記録や同僚の証言なども含め、残っている資料や情報から勤務実態を検討できることはあります。
裁判所が証拠のない残業時間を当然に推計してくれるわけではないため、どのような資料が残っているのかを一つずつ確認していきましょう。
残業代を請求するには、残業をしていたことだけではなく、残業時間や賃金の計算に必要な労働条件、すでに支払われた残業代も確認する必要があります。
これらが分からないと、未払いとなっている残業代の金額を計算できないためです。
残業代請求で証拠が必要になる事項としては、以下の3つがあります。
それでは、それぞれどのような資料を確認することになるのか順番に見ていきましょう。
残業代を請求するには、まず、実際に何時から何時まで働いていたのかを確認する必要があります。
残業代は、法定労働時間を超えて働いた時間や、法定休日・深夜に働いた時間などをもとに計算するためです。
そのため、単に「毎日残業していた」というだけではなく、できる限り日ごとの始業時刻と終業時刻を確認できる資料が必要になります。
例えば、タイムカードや勤怠システム、パソコンの使用記録などから、出勤日ごとの勤務時間を確認していきます。
ただし、会社にいた時間のすべてが労働時間になるわけではないため、記録された時間のうち実際に仕事をしていた時間を検討しましょう。
残業代を計算するには、労働時間だけではなく、所定労働時間や賃金額などの労働条件も確認する必要があります。
同じ時間だけ残業していても、基本給や手当の内容、所定労働時間などによって残業代の金額が変わるためです。
例えば、月給制の場合には、基本給や各種手当、1か月の所定労働時間などを確認して、残業代を計算する際の1時間当たりの賃金を求めます。
また、休日や始業・終業時刻も確認することで、時間外労働や休日労働に当たる時間を判定しやすくなります。
これらは、労働条件通知書や雇用契約書、就業規則、賃金規程などに記載されていることがあります。
勤務時間の証拠だけを集めるのではなく、残業代の計算条件が分かる資料も確認する必要があります。
残業代を計算する際の1時間当たりの賃金単価については、以下の記事で詳しく解説しています。
残業代請求では、会社からすでに支払われている残業代の金額も確認します。
請求できるのは、本来支払われるべき残業代と、すでに支払われた残業代との差額だからです。
例えば、本来の残業代が1か月8万円であるのに対して、会社から時間外手当として3万円しか支払われていなければ、差額を確認することになります。
すでに支払われた金額は、給与明細や賃金台帳などから確認できます。
なお、固定残業代や残業に関係する名称の手当が支給されている場合には、その手当が残業代としてどのように扱われるのかを別途確認することもあります。
固定残業代が支給されている場合の考え方や計算方法については、以下の記事で詳しく解説しています。
タイムカードがなくても、実際に働いていた時間を確認できる資料が残っていれば、残業代請求の証拠として使えることがあります。
勤務時間は、勤怠記録だけではなく、パソコンの使用状況やメールの送信時刻、入退館記録などにも表れるためです。
タイムカードがない場合に残業の証拠になるものとしては、以下の9つがあります。

それでは、それぞれどのように残業時間の証拠になるのか順番に見ていきましょう。
タイムカードがなくても、勤怠システムや出勤簿に始業時刻と終業時刻が記録されていれば、残業時間を確認する有力な資料になります。
会社が紙のタイムカードを使っていなくても、パソコンやスマートフォンから出退勤時刻を入力する仕組みを採用していることがあるためです。
また、業務日報に作業開始時刻や終了時刻、その日の業務内容などが記載されていれば、実際に仕事をしていた時間を確認する資料として使えます。
勤怠システムの記録と業務日報の内容が一致していれば、勤務実態をより具体的に説明しやすくなります。
仕事でパソコンを使用している場合には、ログインやログアウトの記録が残業時間を確認する手掛かりになります。
パソコンを起動して業務システムへログインした時刻や、仕事を終えてログアウトした時刻から、仕事をしていた時間帯を確認できることがあるためです。
特に、ほとんどの業務をパソコンで行う職種では、パソコンの使用時間と実際の勤務時間が近くなることがあります。
ただし、ログインしたまま仕事をしていなかった時間や、ログアウトした後に別の仕事をしていた時間もあり得るため、ログだけから労働時間が自動的に決まるわけではありません。
メールや入退館記録などもあわせて確認すると、その日の勤務状況を説明しやすくなります。
業務メールや社内チャットなどの履歴も、残業をしていた時刻を示す資料になります。
所定の終業時刻を過ぎた後に、仕事に関するメールを送信したり、チャットで業務上のやり取りをしたりしていれば、その時刻に仕事をしていたことを説明できるためです。
また、顧客管理システムやファイルの更新履歴などに操作日時が残っていることもあります。
もっとも、午後9時にメールを1通送っていたからといって、終業時刻から午後9時まで継続して働いていたことまで当然に証明できるわけではありません。
送受信の頻度や内容、ほかの記録と組み合わせて、どの時間帯に業務を行っていたのかを確認することになります。
オフィスへの入退館記録やセキュリティカードの履歴も、勤務時間を確認する資料として使えることがあります。
出勤時と退勤時にカードを読み取る仕組みであれば、いつ会社に入り、いつ会社を出たのかを客観的に確認できるためです。
勤怠記録では午後6時退勤となっているのに、退館記録では午後9時となっている場合には、その差について実際の勤務状況を確認する材料になります。
ただし、会社の中にいた時間がすべて労働時間になるわけではなく、休憩や私的な滞在が含まれている場合もあります。
そのため、入退館時刻に加えて、その時間帯にどのような業務をしていたのかも確認することになります。
仕事に伴う移動が多い場合には、交通系ICカードやETC、タコグラフなどの記録が勤務状況を示す資料になることがあります。
これらには移動した時刻や場所が記録されるため、出勤、退勤、営業先への移動などの時間を確認できるためです。
例えば、会社から帰宅する際に毎日同じ駅を利用していれば、その乗車時刻が退勤時間を検討する際の手掛かりになることがあります。
また、運転を業務とする労働者では、タコグラフなどの運行記録から車両を動かしていた時間帯を確認できます。
ただし、移動時刻だけでは仕事を始めた時刻や終えた時刻を確定できないことも多いため、ほかの記録とあわせて利用するのが基本です。
シフト表や予定表、会社からの残業指示も、労働時間を確認する資料になります。
これらの資料から、いつ勤務する予定だったのか、会社からどの時間帯まで仕事をするよう求められていたのかを確認できるためです。
例えば、上司からチャットで「今日中にこの作業を終わらせてほしい」と指示され、その後も業務を続けていた記録があれば、時間外に仕事をする必要があった事情を説明しやすくなります。
ただし、シフト表や予定表は勤務予定を示す資料であり、それだけで実際の始業時刻や終業時刻が決まるものではありません。
実際の勤務を示すメールやパソコンの記録などと照らし合わせることで、残業の状況が分かりやすくなります。
スマートフォンなどに残された位置情報も、勤務場所や移動時刻を確認する資料として使えることがあります。
GPSや位置情報の履歴から、いつ会社や営業先に到着し、いつその場所を離れたのかを確認できることがあるためです。
外回りや直行直帰が多く、会社のタイムカードでは勤務時間を把握しにくい場合には、仕事で訪れた場所の履歴が勤務状況を示す手掛かりになります。
一方で、その場所にいたことと仕事をしていたことは同じではないため、位置情報だけで労働時間のすべてを証明できるとは限りません。
訪問予定やメール、業務報告などと照らし合わせて、その時間に仕事をしていたことを確認していきます。
自分で記録したメモや日記、残業記録アプリも、残業時間を示す資料として扱われることがあります。
特に、実際に勤務した当日やその直後に、始業時刻、終業時刻、休憩時間、業務内容などを継続して記録していれば、勤務状況を具体的に説明できます。
例えば、「9月1日、8時50分出勤、21時15分退勤、18時以降は資料作成」といった形で日ごとの記録を残しておく方法もあります。
反対に、残業代請求をする直前になって数か月分を記憶だけでまとめて作成した記録は、当時から継続して付けていた記録と比べて内容の正確さが問題になりやすくなります。
記録した時期や方法が分かる状態で残し、ほかの資料とも一致しているかを確認することになります。
同じ職場で働いていた同僚などの証言から、残業の状況を説明できることもあります。
一緒に仕事をしていた人であれば、普段の退勤時刻や、所定時間後にも仕事をしていた状況を直接見ていることがあるためです。
例えば、毎晩一緒に午後9時頃まで作業をしていた同僚であれば、その勤務状況について説明してもらえることがあります。
もっとも、同僚がすべての日の勤務時間を見ているとは限らず、記憶が曖昧になることもあります。
そのため、証言だけに頼るのではなく、メールや勤務記録などと一致する部分がないかも確認しましょう。
自分の手元にタイムカードなどがなくても、会社が保管している勤怠記録や賃金台帳などを入手できれば、残業代請求の証拠として利用できることがあります。
会社には一定の労働関係書類を保存する義務があり、退職後であっても記録が残っている場合があるためです。
会社が任意に資料を出さない場合には、弁護士から開示を求めたり、裁判手続を利用したりする方法もあります。
手元に残業の証拠がないとき会社から記録を入手する方法としては、以下の4つがあります。

それでは、それぞれの方法について順番に見ていきましょう。
手元に残業の証拠がない場合には、まず会社に勤怠記録などの開示を求める方法があります。
会社側には、タイムカードや勤怠システムの記録、賃金台帳など、労働時間や残業代の計算に関する資料が残っていることがあるためです。
例えば、請求する期間を示したうえで、勤怠記録、賃金台帳、給与明細、残業申請の記録などの提出を求めることが考えられます。
ただし、労働者が求めれば、会社が保有するすべての資料を当然に開示しなければならないというわけではありません。
また、保存期間が経過している資料や、そもそも会社が作成していない資料については、入手できないこともあります。
そのため、どの期間のどの資料が必要なのかを具体的に示して開示を求めることになります。
自分で開示を求めても会社が応じない場合には、弁護士から会社へ勤怠資料などの提出を求める方法があります。
弁護士が残業代請求の通知とあわせて、計算に必要な資料を具体的に示して開示を求めることができるためです。
例えば、タイムカード、勤怠システムのデータ、賃金台帳、就業規則、賃金規程などについて、対象期間を指定して提出を求めることがあります。
会社から資料が提出されれば、その内容をもとに残業時間や残業代を計算して請求を進めることができます。
もっとも、弁護士から開示を求めたというだけで、会社にすべての資料を提出させる強制力が生じるわけではありません。
会社が資料を出さない場合には、証拠保全や裁判手続による取得を検討することになります。
会社にある勤怠記録などが失われるおそれがある場合には、裁判所へ証拠保全を申し立てる方法があります。
証拠保全とは、後から証拠を調べることが難しくなる事情がある場合に、裁判所に証拠調べを先に行ってもらう手続です。
例えば、会社が勤怠記録を廃棄するおそれがあり、その記録がなくなると残業時間の証明が難しくなる場合には、証拠保全を検討することがあります。
申立てをすれば必ず認められるわけではなく、後から証拠を利用することが困難になる事情などを裁判所に示す必要があります。
また、単に「会社が資料を出してくれない」というだけで、当然に証拠保全が認められるものでもありません。
証拠が失われる具体的なおそれがある場合に利用を検討する手続と考えておくとよいでしょう。
会社との交渉で資料を入手できない場合には、労働審判や訴訟の中で会社に資料の提出を求めることも考えられます。
残業代をめぐる裁判手続では、双方が自分の主張を裏付ける証拠を提出して審理が行われるためです。
例えば、会社がタイムカードや勤怠システムの記録を保有しているのであれば、それらを提出するよう求めることがあります。
労働審判でも、残業時間が争点となれば、会社側から勤怠資料などが証拠として提出されることがあります。
訴訟では、会社が必要な文書を任意に提出しない場合に、法律上の要件を満たせば文書提出命令を申し立てる方法もあります。
ただし、求めればどのような文書でも提出させられるわけではないため、会社が保有していると考えられる資料と、その資料が残業代請求にどのように関係するのかを明確にしておく必要があります。
残業時間を正確に記録した資料が十分に残っていなくても、ほかの証拠や会社の労働時間管理の状況を踏まえて、裁判所が残業時間を推認・推計した裁判例があります。
ただし、証拠がない場合に裁判所が当然に残業時間を計算してくれるわけではなく、どの程度の資料が残っているか、会社が適切に労働時間を管理していたかなどが個別に検討されています。
証拠が乏しい場合の残業時間について判断した裁判例としては、以下の2つがあります。
それでは、それぞれの裁判例を見ていきましょう。
ゴムノイナキ事件は、会社がタイムカードなどによる出退勤管理をしておらず、残業時間を正確に確認できる記録が不足していた事案です。
大阪高裁は、タイムカードによる管理をしていなかったのは会社側の責任であり、会社が残業許可を得ずに残業している従業員の存在を把握しながら放置していた事情などを指摘しました。
そのため、具体的な終業時刻や勤務内容が明らかでないことだけを理由に、時間外労働が全く証明されていないと扱うことは相当ではないと判断しました。
そして、上司が作成した文書などの証拠や勤務状況を総合して、一定期間について平均して午後9時まで働いていたと推認しました。
もっとも、労働者が主張した勤務時間をそのまま認めたわけではなく、残された証拠から認定できる範囲で残業時間を判断しています。
この裁判例からも、タイムカードがないことだけで残業代請求が否定されるわけではありませんが、残業の実態を示すほかの事情や証拠が必要になることが分かります。
スタジオツインク事件では、タイムカードの打刻がない日があるうえ、会社が労働時間管理に使っていた月間作業報告書を提出しなかったため、勤務時間の一部を正確に確認できない状況となっていました。
東京地裁は、残業をしたことを証明する責任は原則として労働者側にあるとしたうえで、会社が合理的な理由なく容易に提出できる労働時間管理の資料を提出しない場合には、合理的な方法で労働時間を推計できる場合があるとしました。
この事案では、会社が月間作業報告書を保有していたにもかかわらず、これを破棄したなどとして提出していないことも考慮されています。
また、労働者がインフォマーシャル制作の業務に従事し、相当な作業量があり、徹夜作業をすることもあったという勤務実態も確認されました。
裁判所は、タイムカードに記録がある日の勤務状況などを基礎とした推計方法について、業務実態に照らして合理性があると判断しています。
その一方で、裁判所は、推計する場合でも実際の勤務状況に合った根拠のある方法でなければならないとしており、証拠がない部分を自由に推計できるとしたものではありません。
したがって、客観的な証拠が不足している場合でも、残された記録や勤務実態、会社側の資料管理の状況などを積み重ねて残業時間を示すことになります。
残業代の証拠は多く集めればよいというものではなく、資料の内容や集め方にも注意が必要です。
在社時間と労働時間は必ずしも一致せず、記録を後から書き換えると証拠としての信用性にも影響するためです。
また、会社の資料には機密情報や第三者の個人情報が含まれていることもあります。
残業代の証拠を集めるときの注意点としては、以下の4つがあります。
それでは、それぞれの注意点について順番に見ていきましょう。
入退館記録などから会社にいた時間が分かっても、その時間のすべてが残業時間になるとは限りません。
残業代の対象となる労働時間は、会社の指揮命令下に置かれていた時間を基準に判断されるためです。
例えば、終業後に会社で私的な用事を済ませていた時間や、仕事から離れて自由に過ごしていた時間があれば、その時間まで当然に労働時間になるわけではありません。
反対に、パソコンをログアウトした後でも、上司の指示を受けて別の作業を続けていれば、その時間が労働時間となることがあります。
そのため、入退館時刻やパソコンの使用時刻だけではなく、その時間帯に何をしていたのかも確認しておく必要があります。
証拠を集める際には、会社にいた時間ではなく、実際に業務をしていた時間を説明できる資料を意識しましょう。
残業代請求に使う記録は、当時の状態のまま保存し、後から内容を書き換えないようにしましょう。
後から作成された記録や内容が変更された資料は、いつ、どのように作られたものなのかが争われやすくなるためです。
例えば、以前から付けていた勤務時間のメモについて、残業代請求の前に実際より長い退勤時刻へ書き換えると、記録全体の信用性まで疑われることがあります。
不足している情報を思い出して補足したい場合には、元の記録を残したまま、後から補足した部分と作成日が分かる形で別に記録する方法があります。
メールやチャット、勤怠画面などについても、内容を加工するのではなく、日時や送信者などが確認できる状態で保存する方が経緯を説明しやすくなります。
残業代の証拠になりそうな資料であっても、会社の機密情報や第三者の個人情報を自由に持ち出してよいわけではありません。
業務資料には、顧客情報、取引先の情報、技術情報、ほかの従業員の個人情報などが含まれていることがあるためです。
例えば、残業時刻を示すためだけに、顧客名や取引内容が大量に記載されたデータをまとめて私物の端末へコピーすることは避けるべきです。
会社から秘密として管理されている情報については、不正競争防止法上の営業秘密として保護されている場合もあります。
残業時間を確認するために必要な資料であっても、どの範囲まで保存する必要があるのかを考え、関係のない情報まで持ち出さないようにしましょう。
退職を予定している場合には、在職中にどのような勤務記録が存在するのかを確認しておくとよいでしょう。
退職すると、社内の勤怠システム、業務メール、チャット、社内予定表などにアクセスできなくなることが多いためです。
例えば、在職中は過去の勤務履歴を勤怠システムで確認できても、退職日にアカウントが停止されれば、自分では確認できなくなることがあります。
業務メールやチャットについても、退職後に会社側でアカウントが削除されることがあります。
手元に残業の証拠がほとんどない場合でも、残っている資料を確認し、会社側の記録を特定しながら請求の準備を進めることができます。
最初から残業時間を完全に証明できる状態にするのではなく、現在確認できる情報から勤務状況を把握し、不足する資料を会社に求めていく流れです。
証拠がない状態から残業代を請求する流れとしては、以下の5ステップがあります。
それでは、残業代請求を進める流れを順番に見ていきましょう。
最初に、自分の手元に残っている資料を一通り確認しましょう。
タイムカードがなくても、残業時間や労働条件を確認する手掛かりが残っていることがあるためです。
例えば、給与明細、雇用契約書、労働条件通知書、業務メール、チャット、シフト表、交通系ICカードの履歴、自分で付けた勤務記録などを確認します。
資料ごとに、いつの期間について、始業時刻、終業時刻、業務内容などの何が分かるのかを確認していきます。
一つの資料だけでは勤務時間が分からなくても、複数の資料を照らし合わせることで残業の状況が見えてくることがあります。
次に、自分では持っていないものの、会社側には残っていると考えられる資料を確認します。
残業代請求では、会社が管理している勤怠記録などが労働時間を確認する有力な資料になるためです。
例えば、タイムカード、勤怠システムのデータ、パソコンの使用記録、入退館記録、残業申請書、賃金台帳などが考えられます。
自分が勤務していた当時にどのような方法で出退勤や残業を管理していたのかを思い出すと、会社が保有している資料を特定しやすくなります。
会社に開示を求める際にも、「勤務記録を出してください」とだけ伝えるより、資料名や対象期間を具体的に示した方が求める内容が明確になります。
集められる資料を確認したら、残業時間と未払い残業代を概算します。
会社へ請求する前に、どの期間について、どの程度の残業代が未払いになっていると考えているのかを把握しておくためです。
始業時刻と終業時刻から各日の労働時間を算出し、給与明細や雇用契約書などから残業代の計算に必要な賃金額を確認します。
この段階で会社側の資料がそろっていなければ、最終的な請求額まで確定できないこともあります。
残業時間と請求額を概算したら、会社に未払い残業代を請求します。
手元の証拠だけでは正確な金額を計算できない場合には、請求とあわせて会社が保有する勤怠記録などの開示を求めることもあります。
例えば、「〇年〇月から〇年〇月までの未払い残業代すべてを請求する」と伝えたうえで、同じ期間のタイムカードや勤怠システムの記録、賃金台帳などの提出を求めます。
会社から資料が提出された場合には、その内容と手元の記録を照らし合わせ、残業時間や請求額を改めて確認します。
会社側から「残業していない」「残業代は支払い済みである」などの反論があれば、その根拠となる資料も確認することになります。
会社との交渉で解決できない場合には、労働審判や訴訟によって残業代を請求する方法があります。
会社が残業そのものを否定する場合や、労働時間・残業代の金額について双方の主張が大きく異なる場合には、裁判手続の中で証拠に基づいて判断してもらうことになります。
労働審判では、労働審判委員会が双方の主張や証拠を確認し、まず話合いによる解決を試み、まとまらなければ労働審判を行います。
労働審判とは何かについては、以下の記事と動画で詳しく解説しています。
訴訟では、タイムカードなどの勤怠記録だけではなく、パソコンの記録、メール、入退館記録、自分で付けた記録など、それぞれの証拠を踏まえて労働時間が審理されます。
残業代の訴訟については、以下の記事で詳しく解説しています。
残業代請求では、タイムカードがない場合の扱いや、自分で付けたメモ、退職後の資料取得などが問題になることがあります。
残業代請求の証拠がない場合によくある疑問としては、以下の6つがあります。
それでは、これらの疑問を解消していきましょう。
A.タイムカードがないだけで、直ちに違法になるわけではありません。
会社は始業時刻と終業時刻を把握する必要がありますが、ICカードやパソコンの使用記録など、タイムカード以外の方法で管理することもできます。
問題となるのは、タイムカードがないうえに、会社が労働時間を適切に把握していない場合です。
A.自分で付けたメモしかなくても、残業代を請求することはできます。
ただし、メモに書かれた残業時間がそのまま認められるとは限りません。
勤務当時から継続して記録していたか、業務メールなど他の資料と内容が一致しているかなどが確認されます。
A.PCログや入退館記録は、残業時間を示す証拠として使えることがあります。
ただし、パソコンを使用していた時間や会社にいた時間が、すべて労働時間になるわけではありません。
業務メールや日報なども確認し、その時間に実際に仕事をしていたかを検討することになります。
A.退職後でも、会社に勤怠記録の開示を求めることはできます。
タイムカードや出勤簿などは、退職後も会社に保存されていることがあります。
ただし、会社が任意に開示しない場合もあるため、その場合には弁護士から開示を求めたり、裁判手続で提出を求めたりする方法を検討します。
A.残業代の未払いを労働基準監督署へ申告すると、必要に応じて会社の勤怠記録や賃金台帳などが確認されることがあります。
法令違反が確認されれば、会社に是正が求められることもあります。
ただし、労働基準監督署が労働者に代わって残業代請求を進めてくれるわけではありません。
残業代の未払いについて労働基準監督署へ相談する方法や注意点については、以下の記事で詳しく解説しています。
A.現在、残業代は原則として3年前までさかのぼって請求できます。
法律上の消滅時効は5年とされていますが、現在は経過措置により当分の間3年となっているためです。
残業代は各支払期日から時効が進むため、古い残業代を請求する場合には早めに対応する必要があります。
残業代請求の時効や、請求する際に注意したい点については、以下の記事で詳しく解説しています。
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以上のとおり、今回は、残業代請求で証拠がない場合について、タイムカードがないときの対処法5つを解説しました。
この記事が残業代請求の証拠がなくて悩んでいる方の助けになれば幸いです。
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