残業100時間は当たり前?一日の生活スケジュールと健康リスク3つ

残業100時間は当たり前?一日の生活スケジュールと健康リスク3つ

著者情報

籾山 善臣

籾山 善臣 弁護士

リバティ・ベル法律事務所

神奈川県弁護士会所属
不当解雇や残業代、退職勧奨対応等の労働問題を数多く担当している。
【著書】長時間残業・不当解雇・パワハラに立ち向かう!ブラック企業に負けない3つの方法

残業100時間が常態化すると、残業の多さに慣れてしまい「周囲も同じくらい働いている」「繁忙期だから仕方がない」と考えてしまうこともあります。

しかし、残業100時間は帰宅して寝るだけの日が続いたり、休日も休息だけで一日が終わってしまうなど、仕事以外の生活に使える時間は減ってしまいやすいです。

ホウペン

この記事の要点

・残業100時間は、月20日・1日8時間勤務なら平日に1日5時間ずつ残業する計算で、月の総労働時間は約260時間になります。9時から18時勤務であれば、平日は23時頃まで働く生活になります。

・特別条項付きの36協定があっても、時間外労働と休日労働の合計は単月100時間未満とされているため、残業100時間に達すれば違法の可能性があります。

・残業100時間が続いている場合には、健康への影響を確認しつつ、残業時間の証拠を集め、退職や残業代請求を含めた対応を検討することになります。

この記事を読めば、残業100時間がどのような働き方なのか、現状から抜け出すための手順がよく分かるはずです。

目次

1章 残業100時間は一日何時間?生活スケジュール

1章 残業100時間は一日何時間?生活スケジュール
残業100時間は、月20日勤務の場合、1日平均5時間の残業をしていることになります
。

所定労働時間が9時から18時までの会社であれば、その後さらに5時間働くため、仕事が終わるのは23時頃になります。

また、1日8時間、月20日勤務であれば所定労働時間は160時間であり、残業100時間を加えると月の総労働時間は約260時間になります。

休日出勤をしない前提でも、平日は毎日13時間程度働く計算です。

例えば、月に100時間の残業をしている方の平日のタイムスケジュールを見てみましょう。

【平日】5時間×20日

時間内容補足
7:00起床十分に休息を取れないまま、眠気や疲れが残った状態で起床する生活になります。
7:00~8:00朝食・身支度起床後は休む間もなく出勤準備に入るため、朝にゆっくり過ごす時間を取りにくくなります。
8:00~9:00通勤前日の長時間勤務による疲れが残ったまま、再び職場へ向かうことになります。
9:00~12:00勤務睡眠時間が短く、前日の疲れが十分に取れない状態で朝から仕事を始めることになります。
12:00~13:00昼休憩昼休憩を終えた時点でも、その後に定時まで5時間、さらに残業5時間の勤務が残っています。
13:00~18:00勤務午後の勤務を終えて定時を迎えても1日の仕事は終わらず、ここからさらに5時間働くことになります。
18:00~23:00残業通常の8時間勤務を終えた後に、さらに半日分に近い5時間の勤務が続きます。
23:00~0:00通勤・帰宅13時間の勤務を終えてから帰宅するため、自宅に着く頃には日付が変わります。
0:00~1:00夕食・入浴など帰宅後は翌日の出勤までの時間が限られており、食事や入浴を済ませるとすぐに就寝時間になります。
1:00~1:30自由時間平日に自分のために使える時間を確保しようとすると、睡眠時間を削らざるを得ません。
1:30就寝7時に起きる場合には睡眠時間が5時間30分程度となり、この生活が平日5日間続きます。

残業100時間の生活になると、休日出勤がなくても、平日は朝から23時頃まで仕事に時間を取られ、帰宅後に食事や入浴を済ませると自由に使える時間はわずかです。

月20日勤務であれば1日5時間の残業が続くため、仕事を終えてから家族と過ごしたり、趣味や家事に時間を使うことも難しくなります。

残業100時間は、仕事を中心に生活が組み立てられる働き方になってしまうのです。

毎日のように残業が続く場合の問題点や対処法については、以下の記事で詳しく解説しています。

2章 残業100時間は当たり前?健康リスク3つ

残業100時間は、当たり前に受け入れるべき働き方ではありません。

長時間労働が続くと、十分な休息が確保できず、疲労が抜けないまま次の日を迎える状態になります。

このような生活が続けば、身体だけでなく精神面にも負担がかかり、健康を損なうことがあります。

例えば、残業100時間による健康リスクとしては以下の3つがあります。

リスク1:睡眠不足と疲労の蓄積・メンタル不調
リスク2:脳・心臓疾患
リスク3:うつ病などの精神障害

2章 残業100時間は当たり前?健康リスク3つ

それでは、残業100時間によって生じる健康リスクについて順番に説明していきます。

2-1 リスク1:睡眠不足と疲労の蓄積・メンタル不調

残業100時間の生活では、睡眠時間を十分に確保できず、疲労を翌日に持ち越しやすくなります。

長時間働いた後には通勤や食事、入浴なども必要となるため、睡眠時間を確保しようとすると自由時間を削らなければなりません。

反対に、帰宅後に家族と過ごしたり、趣味や家事に時間を使えば、その分だけ就寝時刻が遅くなります。

睡眠不足が続くと、日中の強い眠気や集中力の低下、判断ミスなどが生じやすくなり、仕事にも影響が出ることがあります。

また、十分に休息できないまま出勤することになり、身体のだるさや疲れが取れない状態も続きやすくなります。

さらに、長時間労働と睡眠不足が重なると、気分の落ち込みや意欲の低下、苛立ちなど、メンタルに不調が現れることもあります。

病名がつくような状態に至っていなくても、寝ても疲れが取れない、仕事中に集中できない、気持ちが落ち込むといった変化が続いている場合には、残業100時間による疲労が出ている状態といえます。

2-2 リスク2:脳・心臓疾患

残業100時間は、脳梗塞や心筋梗塞などの脳・心臓疾患との関連が強いとされる水準に達しています。

長時間労働が続くと、十分な休息を取れない状態が続き、疲労が蓄積して身体への負担が大きくなりやすいです。

厚生労働省の労災認定基準では、発症前1か月におおむね100時間、又は発症前2か月から6か月の平均で月80時間を超える時間外労働がある場合、業務と脳・心臓疾患の発症との関連性が強いと評価されています。
脳・心臓疾患の労災補償について|厚生労働省

対象となる脳・心臓疾患には、脳出血、くも膜下出血、脳梗塞、心筋梗塞などがあります。

残業100時間の状態が続いている場合、「疲れているだけ」と考えるのではなく、健康に大きな負担がかかっている状態と捉える必要があります。

特に、頭痛や胸の痛み、息苦しさなど普段と異なる症状がある場合には、医療機関への受診も検討しましょう。

2-3 リスク3:うつ病などの精神障害

残業100時間が続くと、うつ病などの精神障害を発症するリスクも高くなります。

長時間労働は心身を休ませる時間が確保できず、強いストレスを受け続ける状態になるためです。

精神障害を発症すると、気分の落ち込みや意欲の低下、不眠、食欲の低下などの症状が現れることがあります。

厚生労働省の精神障害に関する労災認定基準でも、1か月に80時間以上の時間外労働が生じるような長時間労働は、心理的負荷を評価する対象とされています。
心理的負荷による精神障害の認定基準について|厚生労働省

そのため、残業100時間は、精神障害との関係でも軽視できない状態といえます。

もっとも、残業が100時間に達している場合でも、直ちに労災認定されるわけではなく、労働時間以外の業務上の出来事なども含めて判断されることになります。

症状が強くなると、出勤や業務を続けることが難しくなり、休職が必要となることもあります。

3章 残業100時間を超えたら違法?

3章 残業100時間を超えたら違法?残業100時間に達する働き方は、原則として労働基準法の上限規制に違反します。

時間外労働の上限は原則として月45時間、年360時間です。

これを超えて働かせるには、臨時的な特別の事情について定めた特別条項付きの36協定が必要です。

ただし、特別条項付きの36協定があっても、時間外労働と休日労働の合計は、単月100時間未満にする必要があります。

また、2か月から6か月の各期間について、時間外労働と休日労働の平均を月80時間以内にしなければなりません。

時間外労働には年720時間という上限もあり、月45時間を超えられるのは年6か月までです。

そのため、時間外労働と休日労働の合計が100時間ちょうどの場合も、「100時間未満」という基準に抵触します。

また、単月では100時間未満でも、複数月の平均が80時間を超えれば上限規制に抵触することがあります。

なお、管理監督者や公務員など、職種や立場によっては上限規制が異なる場合があります。

36協定や時間外労働の上限については、以下の記事で詳しく解説しています。

4章 残業100時間の上限規制が異なる可能性のあるケース3つ

残業時間の上限規制は、職種や立場によっては、適用されなかったり別のルールが設けられている場合があります。

例えば、残業100時間の上限規制が異なる可能性のあるケースとしては以下の3つがあります。

ケース1:管理職・管理監督者
ケース2:公務員
ケース3:公立・私立学校の教員

4章 残業100時間の上限規制が異なる可能性のあるケース3つ

それでは、残業100時間の上限規制が異なる可能性のあるケースについて順番に説明していきます。

4-1 ケース1:管理職・管理監督者

労働基準法上の管理監督者に該当する場合、労働時間に関する規制の適用が除外され、残業時間の上限規制も適用されません。

しかし、管理職の名称が付されている場合であっても、労働基準法上の管理監督者に該当しなければ、残業時間の上限規制は適用されます。

管理監督者に該当するかは、部長や課長などの役職名ではなく、実際の働き方や権限、待遇などから判断されます。

具体的には、以下のような事情が判断要素となります。

・経営者と一体的な立場にあるといえるほど、重要な職務や責任、権限を与えられているか
・出退勤について厳しい制限を受けていないなど、労働時間について相応の裁量があるか
・賃金などについて、その立場にふさわしい待遇を受けているか

管理職という肩書が付いていても、実際には権限がなく、勤務時間についても裁量がない場合には、いわゆる「名ばかり管理職」として管理監督者に該当しないことがあります。

なお、管理監督者に該当する場合でも、午後10時から午前5時までの深夜労働には、深夜割増賃金に関する規定が適用されます。

管理職が管理監督者に該当する条件や、管理職でも残業代を請求できるケースについては、以下の記事で詳しく解説しています。

4-2 ケース2:公務員

公務員には民間企業とは異なるルールが適用されることがあります。

一般職の国家公務員には、労働基準法の労働時間規制は原則として適用されず、人事院規則によって超過勤務の上限が定められています。

国家公務員の超過勤務は、原則として月45時間、年360時間までです。

ただし、業務量や実施時期などを自ら決めることが難しい業務の比重が高い部署では、以下の上限が設けられています。

・1か月100時間未満
・年720時間以下
・2か月から6か月の平均が月80時間以下
・月45時間を超えるのは年6か月まで

さらに、大規模災害への対応など緊急に処理する必要がある特例業務では、これらの上限を超えて超過勤務を命じることが認められる場合があるとされています。

地方公務員についても、自治体の規則などによって時間外勤務の上限が定められています。

例えば、東京都では原則として月45時間、年360時間を上限とし、他律的な業務の比重が高い職場では月100時間未満、年720時間などの上限を定めています。

大阪府でも原則は月45時間、年360時間であり、例外的な業務の比重が高い部署では月100時間未満、年720時間などとされています。

このように、公務員であれば残業100時間が自由に認められるわけではなく、所属先や部署、従事する業務によって適用される上限を確認する必要があります。

4-3 ケース3:公立・私立学校の教員

公立学校の教員と私立学校の教員では、残業時間に関するルールが異なります。

公立学校の教員には給特法に基づく仕組みがあり、民間企業の労働者と同じ時間外労働の上限規制が適用されるわけではありません。

文部科学省の指針では、時間外在校等時間について原則として月45時間、年360時間の上限が定められています。

臨時的な特別の事情がある場合でも、1か月100時間未満などの上限があります。

他方で、私立学校の教員には労働基準法が適用されるため、特別条項付きの36協定があっても、時間外労働と休日労働の合計を単月100時間未満とする上限規制が適用されます。

公立・私立のいずれの教員についても、残業100時間が認められる仕組みにはなっていないのです。

5章 残業100時間の残業代はいくら?手取りの目安

残業100時間分の残業代は、基本給や所定労働時間などによって変わります。

また、実際の手取り額は、税金や社会保険料などが差し引かれるため、残業代の支給額そのものとは異なります。

例えば、残業100時間の残業代と手取りの目安について、以下の内容を説明します。

5-1 残業代の計算方法
5-2 基本給20万円の方|残業代16万8750円
5-3 基本給30万円の方|残業代25万3125円
5-4 基本給40万円の方|残業代33万7500円

5章 残業100時間の残業代はいくら?手取りの目安

それでは、残業100時間の残業代と手取りの目安について順番に説明していきます。

5-1 残業代の計算方法

残業100時間の残業代は、1時間あたりの基礎賃金に割増率を掛けて計算します。

法定労働時間を超える時間外労働については、月60時間までは25%以上の割増率が適用されます。

他方で、月60時間を超える部分については、50%以上の割増率が適用されます。

そのため、残業100時間の場合には、60時間までと残り40時間を分けて計算することになります。

残業100時間の残業代を求める計算式は、以下のとおりです。

1時間あたりの基礎賃金×1.25×60時間+1時間あたりの基礎賃金×1.5×40時間

ただし、深夜労働や法定休日労働が含まれる場合には割増率が変わるため、実際の残業代は働いた時間帯や曜日によって異なります。

残業代を計算する際の時給の出し方や割増率については、以下の記事で詳しく解説しています。

5-2 基本給20万円の方|残業代16万8750円

基本給が20万円の方の場合、月100時間の残業をすると、残業代だけで基本給の8割を超える金額が加算されます。

1時間あたりの基本の時給は1250円となり、残業代の単価は1563円(60時間まで)から1875円(60時間超)となるためです。

例えば、月100時間の残業をすると、合計で約16万8750円の残業代が発生します。

(20万円÷160時間×1.25×60時間+20万円÷160時間×1.5×40時間)

基本給と合わせると総支給額は約36万8750円となり、税金や社会保険料などを差し引いた手取りは30万円前後が目安となります。

5-3 基本給30万円の方|残業代25万3125円

基本給が30万円の方の場合、月100時間の残業をすると、残業代だけで基本給の8割を超える金額が加算されます。

1時間あたりの基本の時給は1875円となり、残業代の単価は2344円(60時間まで)から2813円(60時間超)となるためです。

例えば、月100時間の残業をすると、合計で約25万3125円の残業代が発生します。

(30万円÷160時間×1.25×60時間+30万円÷160時間×1.5×40時間)

基本給と合わせると総支給額は約55万3125円となり、税金や社会保険料などを差し引いた手取りは44万円前後が目安となります。

5-4 基本給40万円の方|残業代33万7500円

基本給が40万円の方の場合、月100時間の残業をすると、残業代だけで基本給の8割を超える金額が加算されます。

1時間あたりの基本の時給は2500円となり、残業代の単価は3125円(60時間まで)から3750円(60時間超)となるためです。

例えば、月100時間の残業をすると、合計で約33万7500円の残業代が発生します。

(40万円÷160時間×1.25×60時間+40万円÷160時間×1.5×40時間)

基本給と合わせると総支給額は約73万7500円となり、税金や社会保険料などを差し引いた手取りは57万円前後が目安となります。

6章 残業100時間から抜け出す手順4つ

残業100時間の状態が続いている場合、心身に不調をきたす前に、その状態から抜け出すために行動していくことが大切です。

心身に余裕があるうちであれば、退職や転職、残業代請求に向けた準備も進めやすくなるためです。

例えば、残業100時間から抜け出す手順としては以下の4つがあります。

手順1:弁護士に相談する
手順2:残業時間の証拠を集める
手順3:退職と残業代の請求を通知する
手順4:転職する

6章 残業100時間から抜け出す手順4つ

それでは、残業100時間から抜け出す手順について順番に説明していきます。

6-1 手順1:弁護士に相談する

残業100時間の状態から抜け出したい場合には、まず労働問題に詳しい弁護士への相談がおすすめです。

長時間労働が続いているケースでは、未払い残業代の有無や退職までに準備しておくことなど、確認すべき点が多岐にわたります。

弁護士に相談すれば、現在の働き方や給与の支払状況を踏まえて、どのような対応を進めるべきか法的な助言を受けられます。

退職してからでは入手が困難になる資料もあるため、退職前に相談しておくと、その後の手続を進めやすくなります。

また、弁護士に依頼すれば、残業代請求や会社との交渉などを代理してもらうこともできます。

残業100時間の勤務を続けながら会社とのやり取りまで自分で行うのは負担が大きいため、退職する前の段階で相談しておくとよいでしょう。

未払い残業代の相談先や、弁護士へ相談する前に確認しておきたいことについては、以下の記事で詳しく解説しています。

6-2 手順2:残業時間の証拠を集める

弁護士に相談したら、退職する前に残業時間の証拠を集めましょう。

残業代を請求する場合には、実際の残業時間を証拠から説明する必要があります。

残業時間の証拠としては、例えば以下のようなものがあります。

・タイムカード
・勤怠管理システムの記録
・パソコンのログイン・ログアウト履歴
・業務メールやチャットの送受信履歴
・入退館記録
・業務日報やスケジュール
・勤務時間を記録したメモ

特に、勤怠記録上の退勤時刻より後まで仕事をしている場合には、パソコンのログやメールの送信時刻など、実際の終業時刻が分かる資料も集めておくとよいでしょう。

退職すると会社のパソコンや勤怠システムを確認できなくなることがあるため、集められる証拠は在職中に保存しておくことがおすすめです。

残業代請求で必要となる証拠や、証拠が不足している場合の考え方については、以下の記事で詳しく解説しています。

6-3 手順3:退職と残業代の請求を通知する

残業時間の証拠を集めたら、退職の意思と未払い残業代の請求を会社へ通知しましょう。

通知は、内容証明郵便に配達証明を付けて送る方法がおすすめです。

内容証明郵便を利用すれば、いつ、誰から誰に、どのような内容の書面を送ったのかを証拠として残すことができます。

書面には、例えば以下の事項を記載することになります。

・退職する意思
・退職日
・未払い残業代を請求する旨
・残業代を請求する対象期間
・請求金額
・支払期限
・振込先口座

弁護士に依頼している場合には、弁護士から会社へ内容証明郵便を送り、その後の残業代請求の交渉も任せることができます。

なお、残業代は毎月の給与支払日ごとに時効が進行するため、請求せずにいると、古い月の残業代から順に時効期間が経過していきます。

そのため、未払い残業代がある場合には、早めに会社へ請求する必要があります。

残業代請求の時効や、請求する際に失敗しやすいケースについては、以下の記事で詳しく解説しています。

6-4 手順4:転職する

今の会社で残業100時間の状態を改善することが難しい場合には、転職して働く環境そのものを変えることも考えましょう。

会社の人員体制や業務量が変わらなければ、自分の力で残業時間を減らすことには限界があるためです。

まずは転職サイトで求人を見たり、転職エージェントから他社の労働条件を聞いたりするだけでも、現在の職場以外にどのような選択肢があるのかを確認することができます。

転職先を選ぶ際は、給与や仕事内容だけでなく、実際の残業時間や休日出勤の有無なども確認しておきましょう。

固定残業代が設定されている場合には、何時間分の残業代が含まれているのかも確認しておく必要があります。

残業100時間の環境から離れて働き方を変えることは、自分らしい生活を守るための有効な手段であり、逃げや甘えではありません。

残業が多い会社を辞める方法や、転職先を選ぶ際のポイントについては、以下の記事で詳しく解説しています。

7章 残業100時間についてよくある疑問5つ

残業100時間についてよくある疑問としては、以下の5つがあります。

Q1:残業100時間がつらいのは甘え?
Q2:1か月だけ100時間に達した場合も違法?
Q3:固定残業代に100時間分が含まれていれば問題ない?
Q4:100時間に達する残業命令は拒否できる?
Q5:残業100時間を理由に辞めると会社都合退職になる?

7章 残業100時間についてよくある疑問5つ

それでは、これらの疑問を解消していきましょう。

7-1 Q1:残業100時間がつらいのは甘え?

A.残業100時間がつらいと感じることは、甘えではありません。

残業100時間は、平日に毎日5時間程度の残業を続けるような働き方であり、心身への負担が大きい状態です。

長時間労働への感じ方には個人差がありますが、周囲の人が同じように働いているからといって、自身も耐えなければならないわけではありません。

また、長時間労働が続く職場では、その働き方に慣れてしまい、「これくらい普通だ」と感じることもあります。

しかし、疲労が抜けない、眠れない、仕事に集中できないなどの変化が出ている場合には、働き続けられる状態とはいえません。

残業100時間をつらいと感じた場合には、実際に感じたことを甘えと決めつけず、働き方を見直す必要があります。

7-2 Q2:1か月だけ100時間に達した場合も違法?

A.1か月だけであっても、時間外労働と休日労働の合計が100時間に達すれば、原則として上限規制に違反します。

特別条項付きの36協定がある場合でも、時間外労働と休日労働の合計は単月100時間未満にしなければならないためです。

そのため、「繁忙期の1か月だけだから問題ない」ということにはなりません。

また、100時間未満に収まっている場合でも、2か月から6か月の各平均は月80時間以内にする必要があります。

残業100時間については、その月だけを見るのではなく、前後の月を含めた残業時間も確認する必要があります。

7-3 Q3:固定残業代に100時間分が含まれていれば問題ない?

A.固定残業代に100時間分の残業代が含まれていても、実際に100時間の残業をさせてよいことにはなりません。

固定残業代は、一定時間分の残業代をあらかじめ支払う仕組みであり、残業時間の上限を広げる制度ではないためです。

そのため、固定残業代が100時間分に設定されていても、実際の時間外労働と休日労働の合計が100時間に達すれば、原則として上限規制に抵触します。

また、裁判例では長時間労働を恒常的に行わせることを予定して80時間分の固定残業代を設定したケースでは、公序良俗に反し無効と判断されています(東京高裁平成30年10月4日判決(イクヌーザ事件))。

そのため、「100時間分の固定残業代が支払われているから問題ない」ということにはならないのです。

固定残業代の時間数が長い場合の問題点や確認すべきポイントについては、以下の記事で詳しく解説しています。

7-4 Q4:100時間に達する残業命令は拒否できる?

A.100時間に達することになる残業命令は、原則として拒否することができます。

時間外労働と休日労働の合計は、特別条項付きの36協定がある場合でも、単月100時間未満にしなければならないためです。

残業命令を拒否できる可能性があるケースとしては、例えば以下のようなものがあります。

・会社が36協定を締結・届出ていないにもかかわらず、法定時間外労働を命じられた場合
・36協定で定められた時間や事由の範囲を超えて残業を命じられた場合
・残業を命じる業務上の必要性が認められない場合
・残業をすると時間外労働の法律上の上限を超える場合
・医師から残業の禁止や制限を指示されているなど、残業を拒否する正当な理由がある場合

今回のように、残業によって時間外労働と休日労働の合計が100時間に達する場合は、法律上の上限を超えるケースに該当します。

会社から残業を命じられたからといって、100時間に達するまで従わなければならないわけではないのです。

残業を含む業務命令を拒否できる場合や、拒否する正当な理由については、以下の記事で詳しく解説しています。

7-5 Q5:残業100時間を理由に辞めると会社都合退職になる?

A.残業100時間を理由に退職した場合には、自分から退職を申し出た場合でも、雇用保険上の「特定受給資格者」として扱われることがあります。

離職日の属する月の前6か月間に、1か月でも時間外労働と休日労働が100時間以上となり、それを理由に退職した場合は、特定受給資格者となる基準に該当するためです。

このほか、3か月連続して月45時間を超えている場合や、連続する2か月から6か月の平均が月80時間を超えている場合も対象となります。

そのため、残業100時間が続くことに耐えられず自分から退職を申し出た場合でも、自己都合退職として扱われるとは限らないのです。

なお、最終的な離職理由は、ハローワークが本人と会社双方の主張や資料を確認したうえで判断することになります。

残業100時間を理由に退職する場合には、タイムカードや勤怠記録など、残業時間を説明できる証拠を在職中に集めておくとよいでしょう。

会社が会社都合退職にしたくない理由や、自己都合退職として扱われた場合の考え方については、以下の記事で詳しく解説しています。

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9章 まとめ

以上のとおり、今回は、残業100時間の生活スケジュールや健康リスクを説明したうえで、残業代の目安や現状から抜け出す手順について解説しました。

この記事が、残業100時間がどのような働き方なのか、現状から抜け出すための手順について知りたいと考えている方の助けになれば幸いです。

以下の記事も参考になるはずですので読んでみてください。

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籾山 善臣

籾山 善臣 弁護士

リバティ・ベル法律事務所

神奈川県弁護士会所属
不当解雇や残業代、退職勧奨対応等の労働問題を数多く担当している。
労働問題に関する問い合わせは月間100件以上あり(令和3年10月現在)。
【著書】長時間残業・不当解雇・パワハラに立ち向かう!ブラック企業に負けない3つの方法
【連載】幻冬舎ゴールドオンライン:不当解雇、残業未払い、労働災害…弁護士が教える「身近な法律」、ちょこ弁|ちょこっと弁護士Q&A他
【取材実績】東京新聞2022年6月5日朝刊、毎日新聞 2023年8月1日朝刊、週刊女性2024年9月10日号、区民ニュース2023年8月21日

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