労働審判は自分でできる?弁護士なしで進める方法とAI活用の注意点

労働審判は自分でできる?弁護士なしで進める方法とAI活用の注意点

著者情報

籾山 善臣

籾山 善臣 弁護士

リバティ・ベル法律事務所

神奈川県弁護士会所属
不当解雇や残業代、退職勧奨対応等の労働問題を数多く担当している。
【著書】長時間残業・不当解雇・パワハラに立ち向かう!ブラック企業に負けない3つの方法

労働審判は弁護士なしでも自分で申し立てることができ、AIを使えば申立書の作成や期日の準備もしやすくなっています

ただし、請求内容や証拠の出し方を誤ったまま手続を進めると、後から弁護士に依頼しても修正が難しくなることがあります。

ホウペン

この記事の要点

・労働審判は自分でも進められますが、短期間で主張や証拠を準備する必要があり、誰にでも向いているわけではありません。

・AIは申立書や証拠説明書の作成などに活用できますが、法的判断や調停への合意まで任せるのはやめましょう。

この記事を読めば、労働審判を弁護士なしで自分で進める方法と、AIを活用する際の注意点がよくわかるはずです。

目次

1章 労働審判は自分でも申し立てできるが簡単ではない

1章 労働審判は自分でも申し立てできるが簡単ではない (2)

労働審判は、弁護士なしでも自分で申し立てることができます

裁判所も、弁護士に依頼せず本人が申立てを行えると案内しており、弁護士を付けることは制度上の必須条件ではありません。

ただし、労働審判は原則として3回以内の期日で審理を終えるため、申立ての段階から自分の主張と証拠を準備し、会社から提出される答弁書にも短期間で対応する必要があります

例えば、不当解雇を争う場合には、解雇された経緯だけでなく、会社が主張する解雇理由に対する自分の言い分や、その言い分を裏付ける証拠を示していくことになります。

AIを使えば、出来事を時系列にまとめたり、主張と証拠の対応を確認したりする作業は進めやすくなりますが、どの請求をするのか、どの事実が法的に意味を持つのかまで正しく判断できるとは限りません。

そのため、労働審判を自分で進めることは可能ですが、手続の速さや法的判断の難しさを踏まえ、自分で対応できる範囲を見極める必要があります

労働審判とは何かについては、以下の記事と動画でも詳しく解説しています。

2章 労働審判を自分で行うメリット・デメリット6つ

労働審判を自分で行えば、弁護士費用を抑えやすく、AIを使って準備の負担を減らすこともできます

一方で、法的な判断や会社への反論まで自分で対応しなければならない難しさがあります。

例えば、労働審判を自分で行うメリット・デメリットとしては、以下の6つがあります。

メリット1:弁護士費用を抑えやすい
メリット2:AIにより準備作業の負担を減らしやすい
デメリット1:請求内容や手続の選択を誤るおそれがある
デメリット2:AIが不正確な事実や法律を示すことがある
デメリット3:短期間で会社の反論に対応する必要がある
デメリット4:調停条件の妥当性を判断しにくい

2章 労働審判を自分で行うメリット・デメリット6つ

それでは、労働審判を自分で行うメリット・デメリットについて順番に見ていきましょう。

2-1 メリット1:弁護士費用を抑えやすい

労働審判を自分で行えば、弁護士費用を抑えやすくなります

本人が申立書を作成して期日に出頭すれば、弁護士への着手金や報酬金などはかかりません。

ただし、裁判所へ納める申立手数料や郵便料金などは必要です

費用を抑えて労働審判を利用したい方にとっては、自分で申し立てるメリットがあります。

労働審判の弁護士費用については、以下の記事と動画でも詳しく解説しています。

2-2 メリット2:AIにより準備作業の負担を減らしやすい

AIを活用すれば、労働審判の準備作業を進めやすくなります

例えば、出来事を時系列に並べたり、主張と証拠を対応させたりする作業に利用できます。

会社から想定される反論を洗い出すことにも使えるため、一から自分だけで準備するより負担を減らせます。

ただし、AIは法的判断を任せるものではなく、準備を補助するものとして使うのがよいでしょう

2-3 デメリット1:請求内容や手続の選択を誤るおそれがある

自分で労働審判を行う場合には、請求内容や手続の選択を誤るおそれがあります

労働審判では、何を求めるのか、その根拠となる事実は何かを明確にする必要があるためです。

例えば、解雇を争う場合でも、職場復帰を求めるのか、金銭による解決を目指すのかで方針は変わります。

申立て後の審理にも影響しますので、最初の方針は慎重に決める必要があります。

2-4 デメリット2:AIが不正確な事実や法律を示すことがある

AIが生成した内容は、必ずしも正確とは限りません

入力していない事実を補ったり、存在しない裁判例や誤った法律を示したりすることがあります。

自然な文章で表示されるため、誤りに気付きにくいこともあります。

AIの回答をそのまま申立書に使わず、自分が把握している事実や公的な情報と照らして確認しましょう

2-5 デメリット3:短期間で会社の反論に対応する必要がある

労働審判では、短期間で会社の反論に対応する必要があります

労働審判は原則として3回以内の期日で進み、第1回期日から具体的な審理が行われるためです。

会社から答弁書が届いたら、その内容を確認し、反論や追加の証拠を準備することになります。

そのため、申立ての段階から会社の反論も想定しておくとよいでしょう

2-6 デメリット4:調停条件の妥当性を判断しにくい

自分で労働審判を行う場合には、示された調停条件が妥当なのか判断しにくいことがあります

労働審判では、審理と並行して話合いによる解決が試みられるためです。

例えば、解決金を支払って退職する条件が示された場合には、金額だけでなく、請求が認められる見込みや訴訟へ移行する負担も踏まえて判断することになります。

自分だけでは判断が難しい場合には、合意する前に弁護士へ相談する方法もあります。

3章 労働審判を自分で行えるか判断するチェック項目6つ

労働審判を自分で行えるかは、争点の複雑さや証拠の有無、準備に使える時間などから判断する必要があります

弁護士なしで申し立てることはできますが、短期間で主張や証拠を示す必要があるため、自分で対応できる事件かを先に確認しておくことが必要です。

例えば、確認したい項目としては以下の6つがあります。

チェック1:求める結論と根拠を自分の言葉で説明できる
チェック2:争点が少なく事実関係が複雑ではない
チェック3:主張を裏付ける証拠がそろっている
チェック4:AIが補った内容と自分が把握する事実を区別できる
チェック5:第1回期日までに準備する時間がある
チェック6:調停不成立や訴訟移行後の方針を考えている

3章 労働審判を自分で行えるか判断するチェック項目6つ

それでは、労働審判を自分で行えるか判断するチェック項目について順番に見ていきましょう。

3-1 チェック1:求める結論と根拠を自分の言葉で説明できる

自分が何を求め、なぜその請求が認められると考えるのかを説明できるか確認しましょう

労働審判では、申立書を提出するだけでなく、期日でも自分の言い分を説明することになるためです。

例えば、不当解雇を争うのであれば、解雇の経緯や問題だと考える理由を自分の言葉で説明できる必要があります。

AIが作った文章を読むだけではなく、自分自身で内容を説明できるかが一つの目安になります。

3-2 チェック2:争点が少なく事実関係が複雑ではない

争点が少なく、事実関係が比較的分かりやすい事件は、自分で対応しやすい傾向があります

労働審判は原則3回以内の期日で進むため、多数の争点について細かな事実確認が必要な事件では準備の負担が大きくなるためです。

例えば、未払い賃金の金額と支払義務だけが主な争点である場合と、複数の処分や差別の有無まで争われる場合では難しさが異なります。

争点が多い場合には、労働審判が適した手続なのかも含めて検討しましょう。

3-3 チェック3:主張を裏付ける証拠がそろっている

自分の主張を裏付ける証拠がそろっているかも確認しましょう

労働審判では、言い分だけでなく、その内容を裏付ける資料を提出することが求められるためです。

例えば、残業代請求であれば勤怠記録や給与明細、不当解雇であれば解雇通知書や会社とのメールなどが考えられます。

申立てをする前に、主張する事実と対応する証拠を確認しておくことが必要です。

3-4 チェック4:AIが補った内容と自分が把握する事実を区別できる

AIを使う場合には、AIが作った内容と自分が実際に把握している事実を区別できる必要があります

生成AIは、入力していない内容を推測して補ったり、不正確な説明を示したりすることがあるためです。

例えば、AIが会社との会話について具体的な表現を補っていても、自分が実際に聞いた内容でなければ事実として書くべきではありません。

AIの文章ではなく、証拠や自分の記憶に基づいて事実を確認できることが、自分で進める際の前提になります。

3-5 チェック5:第1回期日までに準備する時間がある

第1回期日までに十分な準備時間を確保できるか確認しましょう

第1回期日は、特別な事情がない限り、申立てから40日以内の日に指定されます。

その間に、会社から届く答弁書を確認し、反論や追加の証拠を準備する必要があります。

仕事を続けながら対応する場合には、短期間で準備できる時間を確保できるかも考えておきましょう

3-6 チェック6:調停不成立や訴訟移行後の方針を考えている

労働審判だけで解決しなかった場合の方針も考えておく必要があります

調停が成立しない場合には労働審判が行われることがあり、その内容に異議が申し立てられると訴訟へ移行します。

例えば、会社が金銭解決に応じない場合や、提示された条件を受け入れられない場合に、その後も争うのかを考えておく必要があります。

労働審判だけで終わることを前提にせず、その後の手続まで見通せるか確認しておきましょう

労働審判の訴訟移行については、以下の動画でも詳しく解説しています。

4章 労働審判を自分で申し立てる手順8つ

労働審判を自分で申し立てる場合には、証拠や申立書を準備したうえで、裁判所への提出と第1回期日への対応まで進めます

申立て後も答弁書への反論などが必要になるため、最初から全体の流れを把握しておくと対応しやすくなります。

例えば、手順としては以下の8つがあります。

手順1:履歴事項全部証明書を取得する
手順2:証拠をそろえる
手順3:労働審判申立書を作成する
手順4:申立手数料と郵便料を確認する
手順5:裁判所に提出する
手順6:補正対応と期日調整をする
手順7:答弁書を確認して必要な反論を準備する
手順8:第1回期日に出頭する

4章 労働審判を自分で申し立てる手順8つ

それでは、労働審判を自分で申し立てる手順について順番に見ていきましょう。

4-1 手順1:履歴事項全部証明書を取得する

相手方が会社などの法人である場合には、履歴事項全部証明書などの登記事項証明書を取得します

労働審判の申立てでは、会社の名称や所在地、代表者などを確認する必要があるためです。

登記事項証明書は法務局で取得できますので、申立書を作成する前に会社の登記内容を確認しておきましょう。

相手方が法人ではない場合には、この書類は不要です。

4-2 手順2:証拠をそろえる

次に、自分の主張を裏付ける証拠をそろえます

労働審判は短期間で進むため、申立ての段階から必要な証拠を提出することが基本となります。

例えば、不当解雇であれば解雇通知書やメール、残業代請求であればタイムカードや給与明細などが考えられます。

どの事実をどの証拠で示すのかを確認しながら準備しましょう

4-3 手順3:労働審判申立書を作成する

証拠をそろえたら、労働審判申立書を作成します

申立書には、何を求めるのか、その理由となる事実は何かなどを記載します。

裁判所では労働審判申立書の書式や記載例も公開されていますので、作成する際の参考にできます。

申立書の具体的な書き方については、別の記事で詳しく解説します。

4-4 手順4:申立手数料と郵便料を確認する

申立書を提出する前に、申立手数料と郵便料を確認します

申立手数料は、労働審判で求める内容や金額によって変わります。

郵便料についても申立先の裁判所によって確認が必要であり、現金で納める方法や郵便切手で納める方法があります。

具体的な金額や納付方法は、申立先の裁判所に確認しましょう

4-5 手順5:裁判所に提出する

必要な書類と費用の準備ができたら、管轄する裁判所へ申し立てます

労働審判は、地方裁判所の本庁や一部の支部で取り扱われています。

申立書だけではなく、証拠書類や相手方が法人の場合の登記事項証明書なども必要です。

提出前に、申立先の裁判所が案内している必要書類を確認しておきましょう

4-6 手順6:補正対応と期日調整をする

申立て後に裁判所から書類の修正や追加を求められた場合には、指示に従って対応します

その後、第1回期日が指定され、裁判所から呼出しを受けることになります。

第1回期日は、特別な事情がない限り、申立てから40日以内の日に指定されます。

裁判所から届く書類を確認し、期限が指定された場合には期限内に対応しましょう

4-7 手順7:答弁書を確認して必要な反論を準備する

会社から答弁書が届いたら、内容を確認して第1回期日に向けた反論を準備します

答弁書には、会社が認める事実や争う事実、会社側の主張などが記載されます。

自分の主張と食い違う部分を確認し、反論に必要な証拠があれば追加で準備します。

裁判所から補充書面の提出を求められた場合には、指定された期限までに提出しましょう

4-8 手順8:第1回期日に出頭する

準備ができたら、第1回期日に出頭します

第1回期日では、労働審判委員会が当事者から話を聞き、争われている点や証拠を確認します。

申立書に書いた内容について具体的に質問されることもありますので、自分の言葉で説明できるよう準備しておきましょう。

話合いによる解決ができそうな場合には、第1回期日から調停が行われることもあります

5章 労働審判でAIに任せやすい作業と任せない方がよい判断6つ

労働審判を自分で進める場合でも、すべてをAIに任せるのではなく、作業の補助として使うのがおすすめです

AIは大量の情報をまとめることには向いていますが、法的な判断や最終的な方針まで正しく決められるとは限りません。

例えば、AIに任せやすい作業と任せない方がよい判断として、以下の6つがあります。

任せやすい作業1:出来事を時系列に並べる
任せやすい作業2:主張と証拠を対応させる
任せやすい作業3:会社の反論や期日の質問を洗い出す
任せない方がよい判断1:請求内容と法的要件を決める
任せない方がよい判断2:証拠の信用性や勝敗を評価する
任せない方がよい判断3:調停条件や異議申立てを決める

5章 労働審判でAIに任せやすい作業と任せない方がよい判断6つ

それでは、労働審判でAIに任せやすい作業と任せない方がよい判断について順番に見ていきましょう。

5-1 任せやすい作業1:出来事を時系列に並べる

AIは、労働トラブルについて起きた出来事を時系列に並べる作業に活用できます

労働審判では、入社からトラブルの発生、会社とのやり取りまでの経緯を分かりやすく把握する必要があるためです。

例えば、メールや自分のメモから日付と出来事を入力し、年月日順に並べてもらう方法があります。

まず時系列を作ることで、抜けている出来事や確認すべき資料も見つけやすくなります。

5-2 任せやすい作業2:主張と証拠を対応させる

自分の主張と証拠の対応関係を確認する作業にもAIを活用できます

労働審判では、主張する事実について、どの証拠で裏付けるのかを示す必要があるためです。

例えば、「残業をしていた」という主張に対して、勤怠記録やメールなどの証拠を一覧にして対応させることができます。

証拠が見当たらない主張も確認できるため、申立て前の準備に役立ちます。

5-3 任せやすい作業3:会社の反論や期日の質問を洗い出す

会社から予想される反論や、期日に聞かれそうな質問を洗い出す作業にもAIを使えます

労働審判では、第1回期日から当事者の主張や証拠について具体的な確認が行われるためです。

例えば、自分の主張をAIに示し、「会社側から考えられる反論を挙げてください」と指示する方法があります。

ただし、AIが示した反論が実際にされるとは限らないため、準備の参考として利用しましょう。

5-4 任せない方がよい判断1:請求内容と法的要件を決める

何を請求するのか、法律上どの事実が必要なのかという判断をAIだけに任せるのはおすすめできません

労働審判の申立書では、求める内容だけでなく、その請求を理由づける具体的な事実も示す必要があるためです。

例えば、解雇を争う場合でも、事案によって確認すべき事実や証拠は異なります。

請求内容を誤るとその後の手続にも影響するため、不安がある場合には申立て前に弁護士へ確認してもらうとよいでしょう。

5-5 任せない方がよい判断2:証拠の信用性や勝敗を評価する

証拠がどの程度信用されるのか、労働審判でどちらの主張が認められそうかという判断も、AIだけに任せない方がよいでしょう

証拠は1つだけで判断するのではなく、他の資料や当事者の説明なども踏まえて評価されるためです。

例えば、メールが1通あったとしても、その前後のやり取りによって意味が変わることがあります。

AIに問題点を洗い出してもらうことはできますが、勝敗まで決めてもらう使い方は控えた方がよいでしょう。

5-6 任せない方がよい判断3:調停条件や異議申立てを決める

調停に合意するか、労働審判に異議を申し立てるかという最終的な判断も、AIだけに任せるべきではありません

調停が成立すれば手続は終了し、労働審判への異議申立てにも期限があるためです。

例えば、解決金を受け取って退職する条件が示された場合には、金額だけでなく、訴訟へ進んだ場合の見通しや負担も踏まえて判断することになります。

一度判断すると後から対応が難しくなることもあるため、迷う場合には決める前に弁護士へ相談しましょう。

6章 労働審判を自分で進める際に使えるAIプロンプト3つ

労働審判でAIを使う場合には、申立書、証拠説明書、期日の準備のように目的を分け、出力形式や禁止事項まで具体的に指示する必要があります

簡単な指示だけでは、資料にない事実や不正確な法的評価が混ざることがあるためです。

例えば、使えるプロンプトとしては以下の3つがあります。

プロンプト1:労働審判申立書を作成する
プロンプト2:証拠説明書を作成する
プロンプト3:第1回期日の想定質問を作成する

それでは、労働審判を自分で進める際に使えるAIプロンプトについて順番に見ていきましょう。

6-1 プロンプト1:労働審判申立書を作成する

AIで申立書の原案を作る場合には、いきなり完成文を求めず、不足している情報を先に確認させる方法が適しています

請求内容や証拠が曖昧なまま作成させると、事実と推測が混ざりやすいためです。

裁判所の書式や手元の資料をAIが確認できる場合には、以下のプロンプトを利用できます。

パスロー

プロンプト1:労働審判申立書を作成する

あなたは、日本の労働審判手続に詳しい書面作成補助者です。

以下に示す裁判所の書式、事実関係、証拠資料の内容だけを基に、申立人側の労働審判手続申立書の原案を作成してください。

【基本方針】

・資料に記載されていない事実を作らないでください。
・日付、金額、発言内容、役職、勤務状況を推測で補わないでください。
・確認できない事項は「要確認」と表示してください。
・事実と法的な評価を分けてください。
・申立人に不利な事実も省略しないでください。
・勝敗や認められる金額を断定しないでください。
・法令を示す場合は、条文番号と公的な情報源を示してください。
・実在を確認できない裁判例は示さないでください。
・資料の内容が食い違う場合は、どちらかを選ばず、矛盾点として示してください。

【第1段階:作成前の確認】

最初に、以下の事項が資料から確認できるか点検してください。

①申立人と相手方の名称、住所、代表者
②雇用契約の開始日、契約期間、職種、賃金
③申立人が求める結論
④請求の種類と対象期間
⑤請求額と計算根拠
⑥申立てを理由づける具体的な事実
⑦会社側から予想される反論
⑧予想される争点
⑨争点ごとの証拠
⑩申立て前の交渉経緯
⑪申立先となる裁判所を判断するための事情
⑫消滅時効など期限に関係する事情

原案を作成するために不足している事項がある場合には、推測で補わず、優先度の高い確認質問を10問以内で示してください。

請求内容や申立ての趣旨を決めるための情報が不足している場合には、申立書の原案を作成せず、確認質問への回答を待ってください。

【第2段階:申立書原案の作成】

必要な情報がそろった後に、裁判所の書式に合わせて、以下の順番で作成してください。

第1 申立ての趣旨

・裁判所に求める結論を、項目ごとに番号を付けて記載してください。
・金銭請求の場合は、元本、遅延損害金の起算日、利率の確認状況を分けてください。
・確認できない金額や起算日は「要確認」としてください。

第2 申立ての理由

1 当事者と雇用関係
2 労働条件
3 問題となった出来事の経緯
4 申立てを特定するために必要な事実
5 申立てを理由づける具体的な事実
6 会社との交渉経緯
7 申立てに至った理由

出来事は時系列に沿って記載してください。

各事実の末尾には、裏付けとなる証拠を「甲第〇号証〇頁」の形式で示してください。

証拠から確認できない事実には、「本人の説明による」「裏付け資料要確認」などと表示してください。

第3 予想される争点と関連する事実

争点ごとに、以下の項目を記載してください。

・申立人の主張
・会社側から予想される主張
・双方の説明が食い違う事実
・申立人の主張を裏付ける証拠
・追加で確認した方がよい事実や証拠

第4 請求額の計算

金銭請求がある場合には、以下を表にしてください。

・請求の項目
・対象期間
・基礎となる金額
・計算式
・請求額
・根拠資料
・要確認事項

資料だけでは計算できない場合には、無理に金額を出さず、不足している情報を示してください。

【文章の作成ルール】

・一文を短くしてください。
・同じ事実を繰り返さないでください。
・感情的な表現や相手方への非難は入れないでください。
・事実を記載した後に、必要な範囲で法的な評価を記載してください。
・証拠による裏付けの強さを、断定せずに示してください。
・裁判所へ提出する書面として、簡潔で読みやすい文章にしてください。

【作成後の点検】

申立書原案の後に、以下の4つを別に示してください。

①本人が確認すべき事実
②不足している可能性がある証拠
③申立人に不利となる可能性がある事情
④申立書と証拠の食い違い

【参照する内容】

・裁判所の労働審判手続申立書の書式
・事実関係が分かる資料
・証拠として提出することを検討している資料
・請求額の計算資料
・会社との交渉経緯が分かる資料

確認質問に回答した後に原案を作成させることで、資料にない事実が加わる危険を減らせます。

作成後は、裁判所の書式や元の資料と照らし合わせ、請求内容と証拠の対応を確認しましょう。

6-2 プロンプト2:証拠説明書を作成する

証拠説明書を作成する場合には、証拠の内容を要約させるだけでなく、どの事実を証明するための資料なのかを具体的に示させます

立証趣旨が広すぎると、申立書のどの主張に対応する証拠なのか分かりにくくなるためです。

証拠資料と申立書の原案をAIが確認できる場合には、以下のプロンプトを利用できます。

パスロー

プロンプト2:証拠説明書を作成する

あなたは、日本の労働審判手続における証拠説明書の作成補助者です。

以下に示す労働審判手続申立書の原案と証拠資料の内容を基に、証拠説明書の原案を作成してください。

【基本方針】

・証拠資料に書かれていない内容を推測しないでください。
・作成年月日、作成者、原本・写しの別が不明な場合は「要確認」としてください。
・既に付いている甲号証番号は変更しないでください。
・証拠番号がない資料には仮番号を付け、「仮番号」と明記してください。
・証拠の内容と申立書の記載が食い違う場合は、その点を指摘してください。
・同じ資料を重複して証拠として扱わないでください。
・証拠から直接確認できない法的な結論を立証趣旨に書かないでください。

【第1段階:証拠資料の確認】

各証拠について、以下を確認してください。

①甲号証番号
②資料の名称
③原本・写しの別
④作成年月日
⑤作成者
⑥資料のページ数
⑦申立書で引用されている箇所
⑧証拠から直接確認できる事実
⑨証拠だけでは確認できない事項
⑩他の証拠との重複や矛盾

不明な項目がある場合には、証拠説明書を作成する前に確認質問を示してください。

【第2段階:提出用原案の作成】

裁判所の証拠説明書の書式に合わせて、以下の項目を表にしてください。

・号証
・標目
・原本又は写し
・作成年月日
・作成者
・立証趣旨
・備考

【立証趣旨の作成ルール】

・その証拠によって確認できる具体的な事実を書いてください。
・「会社の対応が違法であること」など、法的な結論だけを書かないでください。
・申立書に記載された具体的な事実と対応させてください。
・複数の事実を証明する場合には、内容を分けて記載してください。
・資料の一部だけが関係する場合には、該当ページや該当箇所を示してください。
・メールやチャットの場合には、送信者、受信者、日時、確認できる発言内容を示してください。
・勤怠資料の場合には、対象期間と確認できる出退勤時刻を示してください。
・給与資料の場合には、対象月と確認できる賃金項目を示してください。
・録音や動画の場合には、収録日時、発言者、該当時間を示してください。
・証拠から確認できない内容は立証趣旨に含めないでください。

【第3段階:申立書との照合】

提出用原案とは別に、以下の項目を含む照合用一覧を作成してください。

・甲号証番号
・対応する申立書の項目
・裏付ける事実
・該当ページ又は該当箇所
・証拠による裏付けの有無
・追加で確認した方がよい事項

【作成後の点検】

証拠説明書の原案の後に、以下の5つを一覧にしてください。

①申立書に記載されているが、対応する証拠が見当たらない事実
②証拠はあるが、申立書で触れられていない事実
③証拠同士で内容が食い違う部分
④作成者や作成年月日などの確認が必要な資料
⑤立証趣旨が重複している証拠

【参照する内容】

・裁判所の証拠説明書の書式
・労働審判手続申立書の原案
・甲号証として提出することを検討している資料
・各資料の名称と甲号証番号

証拠説明書が作成されたら、甲号証番号、日付、作成者、立証趣旨を実際の資料と照らして確認します

特に、証拠から分からない内容まで立証趣旨に含まれていないかを確認しましょう。

6-3 プロンプト3:第1回期日の想定質問を作成する

第1回期日の準備では、提出予定の書面や会社の答弁内容を基に、聞かれそうな質問を作成させます

質問の一覧だけでなく、質問される理由や確認すべき資料まで示させると、準備しやすくなるためです。

申立書、証拠説明書、甲号証などをAIが確認できる場合には、以下のプロンプトを利用できます。

パスロー

プロンプト3:第一回期日の想定質問を作成する

あなたは、労働審判委員会の立場から第1回期日の準備を補助する役割です。

以下に示す申立書、証拠説明書、甲号証その他の資料の内容を基に、第1回期日に申立人へ行われる可能性がある質問を作成してください。

会社の答弁書や乙号証の内容が示されている場合には、それらも考慮してください。

【基本方針】

・資料にない事実を作らないでください。
・申立人の回答を勝手に作らないでください。
・質問に対する有利な回答へ誘導しないでください。
・申立人に不利となる可能性がある点も質問に含めてください。
・答弁書がない場合の会社側の反論は、「予想される反論」と明記してください。
・答弁書がある場合には、実際に争われている部分を優先してください。
・勝敗や解決金額を断定しないでください。
・質問の根拠となる資料の箇所を示してください。

【第1段階:争点の確認】

最初に、以下を一覧にしてください。

①申立人が求めている結論
②申立人の主張の中心
③会社が認めている事実
④会社が争っている事実
⑤双方の説明が食い違う部分
⑥証拠による裏付けが弱い部分
⑦申立人に不利となる可能性がある事情
⑧調停による解決を検討する際の確認事項

会社の答弁書がない場合には、③から⑤について、資料から予想できる範囲と予想できない範囲を分けてください。

【第2段階:想定質問の作成】

第1回期日に聞かれる可能性がある質問を、優先度の高い順に20問から30問作成してください。

質問は以下の項目に分けてください。

①申立ての趣旨と希望する解決に関する質問
②雇用契約や労働条件に関する質問
③問題となった出来事の経緯に関する質問
④会社と説明が食い違う事実に関する質問
⑤証拠の内容や作成経緯に関する質問
⑥申立人に不利となる可能性がある事実に関する質問
⑦会社との交渉経緯に関する質問
⑧調停条件に関する質問

各質問について、以下の項目を示してください。

・想定質問
・質問される理由
・優先度
・根拠となる申立書又は答弁書の箇所
・関係する甲号証又は乙号証
・回答前に本人が確認すべき事実
・確認しておく資料
・回答内容によって続けて聞かれる可能性がある質問

優先度は、以下の3段階で示してください。

A:第1回期日に聞かれる可能性が高い
B:争点の内容によって聞かれる可能性がある
C:調停や追加確認の際に聞かれる可能性がある

【第3段階:厳しい質問の作成】

申立人の主張に弱い部分や矛盾がある場合には、労働審判委員会から厳しく確認される可能性がある質問を別に10問作成してください。

質問ごとに、以下を示してください。

・問題となっている点
・質問の目的
・説明が不足している事実
・確認した方がよい証拠

申立人に有利な表現へ書き換えず、問題点をそのまま示してください。

【第4段階:会社側への質問】

労働審判委員会が会社側へ確認すると考えられる質問も、5問から10問作成してください。

その質問に対して会社がどのように回答するかは作らず、質問の目的だけを示してください。

【模擬期日の進め方】

私が「模擬期日を開始してください」と指示した場合には、優先度Aの質問から1問ずつ質問してください。

私が回答した後は、以下の点だけを指摘してください。

①質問に答えられているか
②説明が不足している事実はないか
③申立書や証拠との矛盾はないか
④確認した方がよい証拠はないか
⑤追加で聞かれる可能性がある質問

私に代わって回答を作らず、確認すべき点を示した後に次の質問へ進んでください。

【参照する内容】

・労働審判手続申立書
・証拠説明書
・甲号証
・会社の答弁書
・乙号証
・補充書面
・請求額の計算資料

質問への回答はAIに任せず、自分の記憶と証拠に基づいて説明できるように準備します

想定質問を使って模擬期日を行えば、説明が曖昧な部分や証拠との食い違いも確認しやすくなります。

7章 労働審判でAIを使う際の注意点5つ

労働審判でAIを活用する場合には、便利さだけでなく、情報の取扱いや回答の正確性にも注意が必要です

申立書や証拠を読み込ませると準備は進めやすくなりますが、AIの回答をそのまま信用すると、事実や法律を誤ることがあります。

例えば、注意点としては以下の5つがあります。

注意点1:学習に使われない設定にする
注意点2:入力にない事実を補わないよう指示する
注意点3:法令や裁判例は公的な情報で確認する
注意点4:生成された文章をそのまま提出しない
注意点5:勝率や妥当な解決額をAIだけで決めない

7章 労働審判でAIを使う際の注意点5つ

それでは、労働審判でAIを使う際の注意点について順番に見ていきましょう。

7-1 注意点1:学習に使われない設定にする

労働審判の資料をAIに読み込ませる前に、入力内容がAIの学習に使われない設定にしましょう

申立書や証拠には、氏名や給与、会社とのやり取りなどの情報が含まれていることが多いためです。

例えば、ChatGPTでは、データコントロールから「すべての人のためにモデルを改善する」をオフにできます。

設定方法はAIサービスによって異なるため、利用前にデータの利用方法も確認しておきましょう。

7-2 注意点2:入力にない事実を補わないよう指示する

AIには、資料に書かれていない事実を補わないよう明確に指示しましょう

生成AIは、前後の内容からもっともらしい事実を作って回答することがあるためです。

例えば、実際には資料に書かれていない上司の発言を、会話の流れから補ってしまうことがあります。

「資料にない事実は作らず、不明な点は要確認と表示してください」などと指示しておくとよいでしょう。

7-3 注意点3:法令や裁判例は公的な情報で確認する

AIが示した法令や裁判例は、公的な情報で確認しましょう

AIが条文の内容を誤ったり、実在しない裁判例を示したりすることがあるためです。

法令であればe-Gov法令検索、裁判例であれば裁判所の裁判例検索などで、実際に存在する情報か確認します。

申立書に法律や裁判例を記載する場合には、AIの回答だけを根拠にしないようにしましょう。

7-4 注意点4:生成された文章をそのまま提出しない

AIが作成した申立書や証拠説明書は、そのまま裁判所へ提出しないようにしましょう

元の資料を読み違えていたり、本人の意図とは異なる内容になっていたりすることがあるためです。

例えば、証拠から確認できない事実を断定していた場合には、期日でその根拠を説明できなくなることがあります。

必ず元の資料と照らし合わせ、自分でも内容を説明できる状態にしてから提出しましょう。

7-5 注意点5:勝率や妥当な解決額をAIだけで決めない

労働審判の勝率や、受け入れるべき解決額をAIだけで判断するのはやめましょう

労働審判の見通しは、法律だけでなく、証拠の内容や当事者の説明、会社の反論などによって変わるためです。

例えば、AIから「解決金は〇か月分が妥当です」と示されても、その金額が自分の事件に適切とは限りません。

調停に合意するか、労働審判へ異議を申し立てるか迷う場合には、その判断をする前に弁護士へ相談するとよいでしょう。

労働審判の解決金相場については、以下の記事と動画でも詳しく解説しています。

8章 労働審判で後からのリカバリーが難しくなりやすい場面4つ

労働審判を自分で進める場合には、早い段階から申立内容や証拠を十分に確認しておく必要があります

労働審判は原則3回以内の期日で進み、調停への合意や異議申立てには後から簡単に修正できない場面もあるためです。

例えば、リカバリーが難しくなりやすい場面としては以下の4つがあります。

場面1:誤った請求内容や主張の軸で申立書を提出した後
場面2:主張や証拠が不足したまま第1回期日を終えた後
場面3:内容を十分に確認せず調停に合意した後
場面4:労働審判への異議申立期間を過ぎた後

8章 労働審判で後からのリカバリーが難しくなりやすい場面4つ

それでは、労働審判で後からのリカバリーが難しくなりやすい場面について順番に見ていきましょう。

8-1 場面1:誤った請求内容や主張の軸で申立書を提出した後

申立書の請求内容や主張の軸を誤ると、その後の修正が難しくなることがあります

労働審判では、申立書に請求内容だけでなく、理由となる事実や予想される争点、証拠まで記載して審理を始めるためです。

申立て後に主張を補充できる場合はありますが、大きく方針を変更すると追加の準備が必要になります。

AIで申立書を作成した場合でも、提出前に請求内容や法的な構成を確認しておきましょう。

8-2 場面2:主張や証拠が不足したまま第1回期日を終えた後

第1回期日までに主張や証拠を十分に準備していないと、その後の対応が難しくなりやすいです

労働審判は原則3回以内で進むため、第1回期日から争点や証拠について具体的な審理が行われます。

第1回期日後に主張や証拠を追加できる場合もありますが、残された期日は多くありません。

そのため、会社の答弁書まで確認し、第1回期日の前に反論と証拠を準備しておくことが望ましいでしょう

8-3 場面3:内容を十分に確認せず調停に合意した後

調停に合意する場合には、条件を十分に確認してから判断しましょう

労働審判手続で調停が成立し、その内容が調書に記載されると、裁判上の和解と同じ効力が生じるためです。

例えば、解決金の額だけを見て合意すると、退職日や支払期限など他の条件について後から問題になることがあります。

一度成立した調停を単に気が変わったという理由でやり直すことはできませんので、合意前に条件全体を確認する必要があります。

8-4 場面4:労働審判への異議申立期間を過ぎた後

労働審判の内容に納得できない場合には、異議申立期間を過ぎないように注意しましょう

労働審判への異議申立ては、審判書を受け取った日又は期日で告知された日から2週間以内に行う必要があります。

この期間内に適法な異議申立てをすると労働審判は効力を失い、事件は訴訟へ移行します。

一方、期間内に異議を申し立てなければ労働審判は確定しますので、異議を申し立てるか迷っている場合には早めに弁護士へ相談しましょう

9章 費用を抑えながら弁護士の助言を受ける方法4つ

労働審判を自分で進める場合でも、判断が難しい場面だけ弁護士へ相談する方法があります

最初からすべてを依頼せず、申立て前や答弁書が届いた後などに相談すれば、費用を抑えながら法的な見落としを減らしやすくなります。

例えば、弁護士の助言を受ける方法としては以下の4つがあります。

方法1:申立て前に請求内容と証拠だけ相談する
方法2:申立書を提出する前に確認してもらう
方法3:答弁書が届いた後に第1回期日の準備を相談する
方法4:調停への合意や異議申立ての前に相談する

それでは、費用を抑えながら弁護士の助言を受ける方法について順番に見ていきましょう。

9-1 方法1:申立て前に請求内容と証拠だけ相談する

労働審判を申し立てる前に、請求内容と証拠について弁護士へ相談する方法があります

最初の方針を誤ると、その後の申立書や証拠の準備にも影響するためです。

例えば、不当解雇で何を請求するのか、現在ある証拠でどこまで主張できるのかなどを確認してもらいます。

相談後の書面作成や申立てを自分で行えば、すべてを依頼する場合より費用を抑えられることがあります。

9-2 方法2:申立書を提出する前に確認してもらう

AIなどを使って申立書を自分で作成し、提出前だけ弁護士に確認してもらう方法もあります

申立書では、請求内容や事実関係、証拠との対応に誤りがあると、その後の審理にも影響するためです。

例えば、主張が不足していないか、証拠と食い違っていないかなどを確認してもらいます。

ただし、申立書だけの確認に対応していない法律事務所もあるため、相談を申し込む際に確認しましょう。

初回無料相談だと申立書のチェックなどは含まれていないことが多いので、有料相談で対応してもらえないかなどを相談してみると良いでしょう

9-3 方法3:答弁書が届いた後に第1回期日の準備を相談する

会社から答弁書が届いた段階で、一度弁護士へ相談する方法もあります

答弁書が届くと会社が争っている点が分かり、第1回期日までに何を反論すべきか検討しやすくなるためです。

申立書、甲号証、答弁書、乙号証などを持参し、会社の主張への反論や追加すべき証拠を確認してもらいます。

第1回期日までの時間は限られているため、答弁書が届いたら早めに相談するとよいでしょう。

9-4 方法4:調停への合意や異議申立ての前に相談する

調停に合意するか、労働審判に異議を申し立てるか迷った段階だけ弁護士へ相談する方法もあります

これらは、その後の解決内容や訴訟への移行に影響する判断だからです。

例えば、裁判所から解決金を提示された場合には、金額や退職条件、訴訟へ進んだ場合の見通しなどを確認してもらいます。

特に異議申立てには2週間の期限があるため、判断に迷った場合には期限を待たずに相談しましょう。

10章 労働審判を自分で行う場合によくある疑問5つ

労働審判を自分で進める場合には、裁判所に聞ける範囲や弁護士へ依頼する時期などに迷うことがあります

手続を始めてから困らないよう、本人申立てで疑問になりやすい点をあらかじめ確認しておきましょう。

例えば、よくある疑問としては以下の5つがあります。

Q1:裁判所の窓口は申立書の内容まで教えてくれる?
Q2:AIが作った申立書をそのまま提出してもよい?
Q3:会社に弁護士が付いていても自分で対応できる?
Q4:申立て後や第1回期日後でも弁護士に依頼できる?
Q5:自分で行う場合の費用や法テラスの利用方法は?

それでは、労働審判を自分で行う場合によくある疑問について順番に見ていきましょう。

10-1 Q1:裁判所の窓口は申立書の内容まで教えてくれる?

A.裁判所では手続の案内を受けられますが、請求内容について法律相談をすることはできません

書式や提出方法などは確認できますが、「どの請求をすればよいか」「どう主張すれば認められるか」までは教えてもらえないためです。

裁判所が申立書の内容を一緒に考えてくれることを前提に、自分で申し立てるのは難しいでしょう。

請求内容や法律上の構成に迷う場合には、弁護士へ相談することを検討しましょう。

10-2 Q2:AIが作った申立書をそのまま提出してもよい?

A.AIが作った申立書を、内容を確認せずそのまま提出するのはおすすめできません

AIが資料を読み違えたり、資料にない事実や誤った法律を記載したりすることがあるためです。

AIで原案を作成することはできますが、申立書に書かれた事実や請求内容については本人が説明することになります。

提出前に原資料と照らし合わせ、自分の言葉で説明できる内容になっているか確認しましょう。

10-3 Q3:会社に弁護士が付いていても自分で対応できる?

A.会社に弁護士が付いていても、申立人が弁護士なしで労働審判を続けることはできます

労働審判では、申立人本人が自分で手続を行うことが認められているためです。

ただし、会社側の弁護士から法的な反論や証拠が提出されると、自分だけで対応する負担は大きくなります。

答弁書を読んでも反論方法が分からない場合には、その段階で弁護士への相談を検討するとよいでしょう。

10-4 Q4:申立て後や第1回期日後でも弁護士に依頼できる?

A.労働審判を自分で申し立てた後でも、途中から弁護士へ依頼することはできます

ただし、労働審判は原則3回以内の期日で進むため、依頼する時期が遅いほど準備できる時間は少なくなります。

特に、第1回期日が終わった後では、既に出した主張や証拠を前提にその後の対応を考えなければならないことがあります。

自分だけでは対応が難しいと感じた場合には、できるだけ早い段階で相談する方がよいでしょう。

10-5 Q5:自分で行う場合の費用や法テラスの利用方法は?

A.自分で労働審判を行う場合でも、裁判所へ納める申立手数料や郵便料がかかります

申立手数料は請求する内容や金額によって異なるため、申立先の裁判所で確認しましょう。

また、収入や資産などの条件を満たす場合には、法テラスの無料法律相談や弁護士費用等の立替制度を利用できることがあります。

弁護士費用の負担が理由で本人申立てを考えている場合には、法テラスを利用できないか確認してみるとよいでしょう。

11章 労働審判に強い弁護士を探すなら労働弁護士コンパス

労働審判に強い弁護士を探したい場合には、是非、労働弁護士コンパスを活用ください

労働問題は非常に専門的な分野であり、弁護士であれば誰でもいいというわけではありません。

労働弁護士コンパスでは、労働問題に注力している弁護士を探すことは勿論、地域や個別の相談内容から、あなたにマッチする最高の弁護士を探すことができます

初回無料相談や電話・オンライン相談可能な弁護士であれば、少ない負担で気軽に相談をすることができます。

どのようにして弁護士を探せばいいか分からないという場合には、まずは試しにこの労働問題弁護士コンパスを使ってみてください。

12章 まとめ

以上のとおり、今回は、労働審判は自分でできるかについて、弁護士なしで進める方法とAI活用の注意点を解説しました。

この記事が自分自身で労働審判をできるか悩んでいる方の助けになれば幸いです。

以下の記事も参考になるはずですので読んでみてください。

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著者情報

籾山 善臣

籾山 善臣 弁護士

リバティ・ベル法律事務所

神奈川県弁護士会所属
不当解雇や残業代、退職勧奨対応等の労働問題を数多く担当している。
労働問題に関する問い合わせは月間100件以上あり(令和3年10月現在)。
【著書】長時間残業・不当解雇・パワハラに立ち向かう!ブラック企業に負けない3つの方法
【連載】幻冬舎ゴールドオンライン:不当解雇、残業未払い、労働災害…弁護士が教える「身近な法律」、ちょこ弁|ちょこっと弁護士Q&A他
【取材実績】東京新聞2022年6月5日朝刊、毎日新聞 2023年8月1日朝刊、週刊女性2024年9月10日号、区民ニュース2023年8月21日

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