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2025年3月8日
労働一般
厚生労働省のブラック企業リスト(2024)!地域と掲載企業の傾向
ブラック企業リスト掲載の事案は、労働安全衛生法違反が多く、実際のイメージとは異なる部分があります。今回は、ブラック企業リストとその内容について説明したうえで、ブラック企業を見極めるための簡単なチェックリストについて解説していきます。
更新日:2026/07/04
残業代

「課長になったから、もう残業代は出ないよ」などと会社から告げられ、納得できないまま働き続けている人はいないでしょうか。
実は、「管理職=残業代ゼロ」という運用は、法律の観点から見ると誤っているケースが多いのが実情です。
結論からいえば、管理職であっても、法律上の厳格な条件を満たしていない限り、残業代を受け取る権利があります。「課長だから」「店長だから」という理由だけで残業代が支払われていない場合、本来受け取れるはずの賃金を長期にわたって受け取り損ねている可能性があります。
本記事では、労働問題を数多く担当する弁護士が、管理職が残業代を請求できる条件・理由から、自分が「名ばかり管理職」にあたるかを確認するチェックリスト、実際に認められた裁判例、未払い残業代の請求手順までわかりやすく解説します。「自分は本当に請求できないのだろうか」と感じている人は、ぜひ参考にしてください。

この記事の要点
● 「管理職だから残業代は出ない」という運用は、法律上誤っているケースが多く、残業代が支払われないのは労働基準法上の「管理監督者」に該当する場合のみです。
● 管理監督者かどうかは肩書ではなく、①経営者との一体性、②採用・評価などの実質的権限、③労働時間の自由裁量、④役職に見合う待遇の4要素で総合的に判断されます。
● 管理監督者に該当する場合でも、深夜労働(午後10時〜午前5時)の割増賃金は請求できます。
● 未払い残業代の請求権には3年の消滅時効があるため、思い当たる方は早めに弁護士へ相談することが重要です。
管理職の残業代については、以下の動画でも詳しく解説しています。
目次

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管理職であっても残業代を請求できるかどうかは、「課長」「部長」といった肩書きではなく、労働基準法の定める要件によって判断されます。
つまり、会社側の「管理職だから残業代は出ない」という説明が、法律上の根拠を持つとは限らないのです。
まずは、残業代に関する基本的なルールを、法的根拠とともに確認していきましょう。なお、「管理職だから」以外の理由で残業代が支払われていないケースについては、以下の記事で詳しく解説しています。

最初に押さえておきたいのは、会社で「管理職」と呼ばれていることと、労働基準法上の「管理監督者」にあたることは別問題という点です。
管理職とは、会社内での役職名や社内上の呼び名です。例えば、課長、部長、店長、マネージャー、エリアマネージャーなどが管理職と呼ばれることがあります。
これに対して、管理監督者とは、労働基準法上、労働時間・休憩・休日に関する規定の適用が除外される可能性がある人をいいます。簡単にいうと、会社の経営者に近い立場で働いており、労働時間についても大きな裁量がある人です。
つまり、会社から「あなたは管理職だから残業代は出ない」と言われても、それだけで残業代をあきらめる必要はありません。肩書きではなく、実際の仕事内容、権限、働き方、待遇によって判断されます。
| 管理職 | 管理監督者 | |
| 意味 | 会社内の役職名・社内上の呼び名 | 労働基準法上、残業代の適用除外となる可能性がある地位 |
| 判断方法 | 会社が任命すれば管理職になる | 肩書きではなく、実際の権限・働き方・待遇で判断される |
| 典型例 | 課長、部長、店長、マネージャー、エリアマネージャーなど | 経営者と一体的な立場で、労務管理や重要事項に関与している人 |
| 残業代 | 原則として請求できる | 労働時間・休日労働の割増賃金は請求できない場合がある |
| 深夜手当 | 請求できる | 管理監督者でも深夜割増賃金は請求できる |
| 重要ポイント | 役職名だけでは残業代は消えない | 会社側が管理監督者性を主張しても、実態次第で否定される |
このように、管理職と管理監督者は同じ意味ではありません。
課長、店長、マネージャーなどの肩書きがあっても、実際には上司の指示に従って働いているだけであったり、出退勤を厳しく管理されていたりする場合には、管理監督者とはいえない可能性があります。
【参考】労働基準法における管理監督者
管理職であっても、原則として残業代は請求できます。
例外的に、残業代が出ない可能性があるのは、労働基準法上の「管理監督者」にあたる場合です。
労働基準法41条2号では、監督若しくは管理の地位にある者について、労働時間・休憩・休日に関する規定を適用しないとされています。
そのため、管理監督者にあたる場合には、時間外労働や休日労働について、通常の残業代を請求できないことがあります。
もっとも、管理監督者にあたるかどうかは厳しく判断されます。会社が一方的に「管理職」と呼んでいるだけでは足りません。
例えば、以下のような事情がある場合には、管理監督者ではなく、名ばかり管理職として残業代を請求できる可能性があります。
| 事情 | 管理監督者が否定されやすい理由 |
| 部下がいない | 実質的に人を管理しているとはいえないため |
| 採用や評価を決められない | 人事・労務管理上の重要な権限が弱いため |
| 出退勤を管理されている | 労働時間について自由な裁量がないため |
| 遅刻・早退で給与を控除される | 一般従業員と同じように時間管理されているため |
| 管理職手当が少額 | 残業代が出ないことに見合う待遇とはいえない可能性があるため |
| 現場作業が中心である | 経営者と一体的な立場とはいえない可能性があるため |
また、仮に管理監督者にあたる場合でも、午後10時から午前5時までの深夜労働については、深夜割増賃金を請求できる可能性があります。
そのため、会社から「管理職だから残業代は出ない」と言われた場合でも、本当に管理監督者にあたるのか、深夜労働分の請求ができないかを確認しましょう。
「課長だから残業代は出ない」と言われている方は、以下の記事で具体的なケースや裁判例をあわせてご確認ください。
管理監督者に該当するかどうかは職務内容、権限、勤務態様、待遇などを踏まえて総合的に判断されます。以下では、管理監督者にあたるかどうかの判断の際に重視される4つの要素について確認します。

管理監督者として認められるためには、単に部下をまとめる役割を担うだけでは足りません。
経営方針の決定や事業運営に関与するなど、経営者と一体的な立場で業務を行っていると認められる実態が必要です。
たとえば、重要な経営会議への参加、事業計画の策定への関与、予算執行の権限などが実態として認められるかどうかが判断のポイントになります。現場の実務が業務の中心で、経営上の判断にほとんど関与していない場合は、この要素を満たさないと判断される可能性が高いでしょう。
管理監督者には、部下の採用・解雇・人事評価・労務管理といった重要な権限が実質的に与えられていることが求められます。
形式上は権限があるとされていても、実際には上位職の承認なしには何も決められない、意見を述べる機会があるだけで最終決定に関与できないといった状況では、実質的な権限があるとは言えません。
稟議や承認のプロセスを含め、自分の判断でどこまで決裁できるかが重視されます。
労働時間に関する自由裁量があるかどうかも、管理監督者に該当するかどうかの重要な判断要素です。
管理監督者は、労働時間規制の枠外に置かれる存在であるため、出退勤の時刻や休憩の取り方を自ら決定できることが前提とされています。
タイムカードや勤怠管理システムで出退勤を記録・管理されている、遅刻や早退に対して一般社員と同様のペナルティが課される、といった実態がある場合は、この要素を欠くと判断されやすくなります。
肩書上は管理職でも、実際には時間的拘束を受けていると評価されれば、管理監督者とは認められない可能性が高まります。
管理監督者には、その地位にふさわしい待遇が与えられていることも求められます。
残業代が支払われない代わりに、役職手当や賞与などによって一般社員より高い水準の処遇を受けていることが、要件の一つとされています。
残業代が支払われないにもかかわらず、手当を加味しても一般社員と賃金水準がさほど変わらないような場合は、管理監督者としての待遇要件を満たさないと判断されやすくなります。
管理監督者として認められるためにふさわしい待遇の水準やNG例については、以下の記事で詳しく解説しています。

ここまで説明してきた4つの要素をもとに、自分が管理監督者か、それとも「名ばかり管理職」かを確認できるチェックリストを用意しました。
以下の項目に多く当てはまる場合、管理監督者とは認められず、残業代を請求できる可能性があります。
| チェック項目 | ポイント | |
| ☑ | 部下がいない | 名ばかりの管理職で、実際には個人プレイヤーとして働いていないか |
| ☑ | 採用権限がない | 面接に同席するだけで、採否の最終判断は本社や上司がしていないか |
| ☑ | 人事評価の決定権がない | 評価コメントを書く程度で、昇給・降格・配置転換を決められないか |
| ☑ | 遅刻控除がある | 遅刻や早退で給与が減らされていないか |
| ☑ | 出退勤時刻を管理されている | タイムカード、勤怠システム、出勤表で厳格に管理されていないか |
| ☑ | シフト制で働いている | 自分も現場シフトに入り、欠員時に穴埋めをしていないか |
| ☑ | 営業時間を決められない | 店舗の開店・閉店時間を本社が決めていないか |
| ☑ | 価格や仕入れを決められない | 商品価格、仕入れ先、販売方針を本社が決めていないか |
| ☑ | 会議に出ても発言権が弱い | 経営会議に出席していても、報告だけで意思決定に関与していないか |
| ☑ | 役職手当が少額 | 残業代が出ないことに見合う待遇といえるか |
| ☑ | 一般従業員との給与差が小さい | 部下と給与がほとんど変わらない、残業代込みだと給与が逆転する |
| ☑ | 有給や休みを自由に取れない | 自分の判断で休めず、上司や本社の承認が必要か |
ただし、これらのチェックリストはあくまで目安です。最終的には、職務内容や権限、勤務態様、待遇などの実態を踏まえて総合的に判断されます。
名ばかり管理職に該当する可能性がある場合、過去にさかのぼって未払い残業代を請求できるケースがあります。思い当たる項目が複数ある場合は、早めに労働問題に詳しい弁護士へ相談しましょう。
なお、部下がいないにもかかわらず管理職として扱われている方は、管理監督者に該当しないと判断されやすいケースの一つです。詳しくは以下の記事をご確認ください。

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「管理職だから残業代は出ない」という会社の扱いが、裁判で覆された事例は少なくありません。以下では、名ばかり管理職として管理監督者に該当しないと判断され、残業代請求が認められた代表的な裁判例を紹介します。

【事案の概要】
元従業員は、外資系金融機関においてインターネットバンキング担当のヴァイス・プレジデント(VP)という役職名で勤務していました。会社は同人を管理監督者として扱い、時間外労働に対する割増賃金を支払っていませんでした。これに対し、元従業員は管理監督者には該当しないとして、未払いの残業代の支払いを求めて訴訟を提起しました。
【裁判所の判断】
裁判所は、元従業員が労働基準法第41条第2号に定める管理監督者に該当しないと判断し、未払い時間外割増賃金として約324万円の支払いを命じました。
【管理監督者と認めなかった理由】
裁判所が管理監督者性を否定した主な理由は以下のとおりです。
| 判断要素 | 裁判所の評価 |
| 職務内容・権限 | 業務範囲は限定的で、部下を持たず、部門全体の統括や労務管理の裁量権を有していなかった |
| 経営者との一体性 | 組織上の地位は最下層に位置しており、経営者と一体の立場にはなかった |
| 労働時間の裁量 | 勤怠管理の対象外だったのは会社側の管理体制の不備によるものであり、労働時間の裁量があった証拠にはならないと判断された |
| 待遇 | 年俸は1,250万円(賞与含め1,450万円)と高水準だったが、それだけで管理監督者性を肯定する根拠にはならないと判断された |
この事案は、高い年俸を受け取っていたとしても、実質的な権限や経営への関与が伴っていなければ、管理監督者とは認められないことを示す重要な裁判例です。また、会社が勤怠管理をしていなかったことを「労働時間の裁量がある証拠」として主張したとしても、その実態が裁量権の行使でなければ認められない点も注目すべきです。
「自分は名ばかり管理職ではないか」と感じている場合は、この裁判例のような観点から自分の状況を整理してみることが大切です。
【参考】東京地判平成23年12月27日労判1044号5頁〔HSBCサービシーズ・ジャパン・リミテッド事件
名ばかり管理職と認められた場合、残業代の請求範囲は思っているより広い可能性があります。役職手当の支給や36協定の有無を理由に請求をあきらめているケースも見られますが、そうした判断が正しいとは限りません。
ここでは、請求できる残業代の種類と、陥りやすい誤解のポイントを整理していきましょう。

管理監督者に該当しないと判断された場合、請求できる残業代は大きく3種類に分けられます。
労働基準法第32条・第35条・第37条に基づき、それぞれ以下のように定義・割増率が定められています。
| 種類 | 内容 | 割増率(原則) |
| 時間外労働 | 1日8時間・週40時間を超える労働 | 25%以上(月60時間超は50%以上) |
| 休日労働 | 法定休日(週1日)の労働 | 35%以上 |
| 深夜労働 | 午後10時から午前5時までの労働 | 25%以上 |
なお、管理監督者であっても、深夜労働(午後10時〜午前5時)に対する割増賃金は請求できます。時間外労働・休日労働とは異なり、深夜割増賃金の規定は管理監督者にも適用されるためです。
また、時間外労働と深夜労働が重なった場合は割増率が合算(計50%以上)されるなど、状況によって計算方法が異なります。請求額を正確に算出するには、弁護士に確認するのがおすすめです。
【参考】法定労働時間と割増賃金について教えてください。|厚生労働省
長時間労働や週6勤務など、過重な働き方が続いている方は、以下の記事もあわせてご確認ください。
役職手当が支給されていても、別途残業代を請求できる可能性はあります。
役職手当は通常、役職や責任に対して支給されるものですが、会社によっては、その全部または一部を「固定残業代」として扱っている場合があります。
ただし、役職手当を固定残業代として有効に扱うには条件があります。その手当のうちどの部分が残業代にあたるのか、何時間分なのか、どのように計算されているのかが明確であることが必要です。
また、その時間を超えて働いた分の残業代は、別に支払われなければなりません。さらに、これらの内容が就業規則や雇用契約書、給与明細などから確認できる必要があります。
こうした点が不明確な場合、その役職手当を残業代の支払いとして認めるのは難しく、別途、未払い残業代を請求できる可能性があります。手当の名称ではなく、支給の目的や計算方法を確認することが重要です。
36協定(時間外・休日労働に関する労使協定)を会社が締結していない場合、「残業代の請求もできないのではないか」と誤解されることがあります。しかし、これは正しくありません。
36協定がない状態で法定労働時間を超えて働いた場合でも、残業代の請求は可能です。36協定がなければ法定時間外の労働をさせること自体が会社側の労働基準法違反になり得ますが、そのことを理由に割増賃金の支払い義務までなくなるわけではありません。
「うちの会社は36協定を結んでいないから残業代は払えない」といった説明を受けた場合は、その論理は法的に成り立たないことを覚えておきましょう。
管理職の残業代を請求すると、会社側から「管理職だから残業代は出ない」「管理職手当を払っている」などと反論されることがあります。
しかし、会社側から反論されたからといって、直ちに残業代請求ができなくなるわけではありません。
大切なのは、会社側の説明が、労働基準法上の管理監督者の判断基準に沿っているかを確認することです。
例えば、会社側がよくする反論と再反論としては、以下のようなものがあります。
| 会社側の反論 | 再反論のポイント |
| 管理職だから残業代は出ない | 「管理職」と「管理監督者」は別です。肩書きだけではなく、実際の権限や働き方で判断されます。 |
| 管理職手当を払っている | 管理職手当があるだけでは不十分です。固定残業代として明確に区別されていなければ、残業代の代わりとはいえない可能性があります。 |
| 部下を管理していた | 部下がいるだけでは足りません。採用、評価、配置、賃金、人事異動などに実質的な権限があったかが重要です。 |
| シフトを作っていた | シフト作成だけでは管理監督者とは限りません。自分自身もシフトに入らざるを得ない場合、労働時間の裁量が否定されやすくなります。 |
| 店舗の責任者だった | 店舗責任者でも、本社の方針に従うだけであれば、経営者と一体的な立場とはいえない可能性があります。 |
| 出退勤は自由だった | 実際には開店・閉店・会議・現場対応で拘束されていた場合、自由裁量があったとはいえないことがあります。 |
| 高い給料を払っていた | 給料が高いだけでは足りません。残業代が出ないことに見合う十分な待遇か、一般従業員との差があるかが問題になります。 |
| タイムカードがない | タイムカードがなくても、PCログ、メール、チャット、入退館記録、業務日報などから労働時間を立証できることがあります。 |
| 勝手に残っていただけ | 業務量が多く、会社が残業を認識しながら放置していた場合には、黙示の指示があったと評価されることがあります。 |
会社から強く「管理職だから残業代はない」と言われると、請求できないと思ってしまう方もいます。
しかし、実際には、管理職という肩書きだけではなく、実際の業務内容や権限を一つずつ確認する必要があります。
とくに、会社側が「管理職」「管理職手当」「シフト作成」「店舗責任者」といった言葉を使って反論してきた場合でも、その言葉だけで判断するのではなく、実際にどのような権限があったのか、労働時間を自由に決められたのか、待遇が十分だったのかを確認しましょう。
未払い残業代の請求は、順序立てて進めることが重要です。証拠が不十分なまま会社と交渉したり、不適切な行動をとったりすると、本来受け取れるはずの残業代が受け取れなくなる可能性があります。
請求は、これから紹介する手順を参考に進めましょう。請求で失敗しやすいケースと対策については、以下の記事で詳しく解説しています。

残業代請求の前提として、自分が労働基準法上の管理監督者に当たるかどうかを確認することが最初のステップです。
前述のチェックリストや管理監督者の4つの要件(職務内容、権限、勤務態様、待遇)を踏まえ、自分の実態を客観的に整理してみましょう。
判断に迷う場合は、この段階で早めに労働問題に詳しい弁護士へ相談することをおすすめします。
管理監督者への該当性は法的な判断を要する問題であり、弁護士の見立てを聞いたうえで方針を決めることが、その後の対応をスムーズにするうえで重要です。
残業代請求において、証拠の確保は非常に重要なステップです。
残業時間を示す証拠だけでなく、管理監督者ではないことを示す証拠も合わせて確保しておく必要があります。
具体的に確保しておきたい証拠としては、以下のものが挙げられます。
| 証明したい内容 | 持参すると良い証拠 | 見られるポイント |
| 役職・雇用条件 | 雇用契約書、労働条件通知書、辞令、役職通知、就業規則、賃金規程 | 管理職手当の内容、固定残業代の有無、役職の位置づけ |
| 給与内容 | 給与明細、賞与明細、源泉徴収票、賃金台帳 | 管理職手当の金額、一般従業員との待遇差 |
| 労働時間 | タイムカード、勤怠システム、シフト表、出勤簿、業務日報 | 実際の出退勤時刻、休日労働、深夜労働 |
| 勤怠管理の実態 | 遅刻控除の記録、早退申請、休暇申請、勤怠承認画面 | 出退勤が自由だったか、会社に管理されていたか |
| 業務内容 | 業務分掌表、職務記述書、社内マニュアル、日報、上司からの指示メール | 実際に担当していた仕事、現場作業の割合 |
| 権限の有無 | 組織図、決裁権限表、稟議書、採用・評価・配置に関する資料 | 採用権限、人事評価権限、予算権限の有無 |
| 会社からの指示 | メール、チャット、LINE、会議資料、議事録 | 上司や本社からどの程度指示を受けていたか |
| 労働時間の補助資料 | PCログ、入退館記録、メール送信履歴、チャット投稿履歴、交通系IC履歴 | タイムカードがない場合の労働時間の裏付け |
| 店舗・部署の実態 | 営業時間表、店舗マニュアル、価格表、仕入れルール、本社指示資料 | 店舗や部署を自由に運営できたか |
| 退職後の請求準備 | 退職証明書、離職票、退職時のやり取り、会社との交渉記録 | 請求期間、会社側の反論、時効の確認 |
すべての資料がそろっていなくても、残業代請求の相談は可能です。
在職中であれば、手元にある資料をできる限り早めに確保・保存しておきましょう。退職後は社内資料へのアクセスが難しくなるため、在職中に動くのがおすすめです。
証拠を確保したら、未払い残業代の概算を試算してみましょう。
おおよその金額を把握しておくことで、その後の交渉や弁護士への相談をより具体的に進めることができます。
残業代の基本的な計算式は以下のとおりです。
1時間あたりの基礎賃金は、月給を月の所定労働時間数で割ることで算出します。役職手当や通勤手当など、残業代の計算に含めない手当については別途確認が必要です。
また、時間外・休日・深夜で割増率が異なるため、それぞれの労働時間数を区別して計算する必要があります。
試算をもとに、まずは会社に対して任意の支払いを求めましょう。
請求は口頭やメールでも可能ですが、後から「いつ、どのような内容で請求したのか」を示せるよう、内容証明郵便で請求書を送付しておくと安心です。
請求した事実を証拠として残しておくことには、時効対策の意味もあります。会社に支払いを求める請求は、法律上の「催告」にあたり、催告をすると、その時から6ヶ月経過するまで時効の完成が猶予されます。そのため、請求した日や内容を明確に残しておくことが重要です。
この段階で会社が誠実に対応し、交渉で解決できれば、時間的・精神的な負担を大きく抑えることが可能です。法的手続きへの発展を避けるために、交渉段階で一定の支払いに応じるケースもあります。
ただし、交渉の場で不当な条件を提示されたり、署名を求められたりした場合には、その場で即断しないことが大切です。
内容を十分に確認したうえで、必要に応じて専門家の助言を得ながら対応しましょう。
会社が任意の支払いに応じない場合や、交渉がまとまらない場合には、法的手続きを検討することになります。主な方法としては、労働審判と訴訟があります。
労働審判は、裁判所で行われる労働トラブルの解決手続きで、比較的短期間での解決を目指す制度です。話し合いによる解決を試みつつ、まとまらない場合は裁判所が判断を示します。異議が出なければその内容で確定し、異議が出た場合は訴訟に移行します。
訴訟は、裁判官が証拠や主張をもとに判断を下す正式な裁判手続きです。解決までに時間がかかる傾向がありますが、争点が複雑な場合や請求額が大きい場合に適しています。
管理職の残業代請求では、「管理監督者に当たるか」といった専門的な判断が問題になることもあります。不安がある場合は、労働問題に詳しい弁護士に相談し、交渉から法的手続きまでサポートを受けることを検討しましょう。

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残業代請求を進めるうえでは、手順だけでなく、実務上の注意点もあわせて確認しておくことが大切です。事前に押さえておくことで、その後のやり取りや手続きを進めやすくなります。
以下の4つのポイントを確認しておきましょう。

未払い残業代には消滅時効があります。労働基準法第115条に基づき、残業代の請求権は本来の支給日から3年で時効が完成します。時効が完成した部分については、会社側に時効を主張されると請求できなくなってしまいます。
もっとも、すべてが一度に消えるわけではなく、時効は毎月分ごとに進んでいきます。
そのため、古い分から順に請求できなくなっていきます。請求できる範囲をできるだけ残すためにも、早めに状況を確認し、対応を進めることが重要です。
「自分が管理監督者に当たるか分からない」といった段階でも、まずは弁護士に相談し、時効が完成する前に必要な対応を検討しましょう。
残業代をめぐる交渉や手続きでは、「いつ・誰が・何を言ったか」という事実関係が重要な争点になることがあります。
口頭でのやり取りだけでは、後から内容を否定される可能性があるため、会社とのやり取りはできる限りメールや書面の形で記録に残すことが大切です。
口頭で説明を受けた場合は、その内容を後日メールで確認するなどして、記録しておくと有効です。
また、交渉の場で何らかの提案を受けた際も、その内容を書面で残しておくことで、後のトラブルを防ぎやすくなります。
交渉の経緯を記録しておくことは、万が一労働審判や訴訟に発展した場合にも、重要な証拠になります。
在職中に残業代を請求した労働者に対して、会社側が不利益な扱いをすることは許されません。
残業代の請求は労働者に認められた正当な権利であり、請求したことへの報復として解雇・減給・不利な配置転換などが行われた場合は、その対応の適法性が問題になる可能性があります。
また、未払い残業代などの法令違反を労働基準監督署に申告したことを理由とする解雇その他の不利益取扱いは、労働基準法第104条第2項で明確に禁止されています。
「解雇されるのではないか」「評価を下げられるのではないか」と不安に感じる方もいるかもしれませんが、その不安だけを理由に請求をあきらめる必要はありません。
ただ、現実には請求後に職場の対応や人事評価をめぐって不安を感じる場面もあり得ます。
万が一、不自然な配置転換や不当な評価などがあった場合は、経緯がわかるメールや面談記録などを残しておくことが大切です。

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退職の際に合意書や退職合意書への署名を求められることがあります。
こうした書面には、「本件に関し、双方は互いに何らの債権債務がないことを確認する」といった清算条項が含まれていることがあります。
清算条項が含まれた書類に署名してしまうと、それ以降の残業代請求ができなくなってしまう可能性があります。
退職を急かされる状況や、感情的になりやすいタイミングで署名を求められることも多いですが、内容を十分に確認しないまま署名することは避けましょう。
署名前に「持ち帰って確認したい」と伝えることは正当な対応であり、それを理由に不利な扱いを受けることも法的には許されません。
未払い残業代について請求の可能性がある場合は、退職手続きの書類にサインする前に必ず弁護士へ相談しましょう。
退職合意書の拒否方法や署名前に確認すべき事項については、以下の記事で詳しく解説しています。
2024年から2025年にかけて、厚生労働省の「労働基準関係法制研究会」において、労働基準法制の包括的な見直し論議が進められました。その報告書(令和7年1月8日とりまとめ)では、管理監督者のあり方についても重要な指摘がなされています。
報告書では、本来は管理監督者等に当たらない労働者が管理監督者として扱われている場合があると指摘されています。そのうえで、現行の管理監督者等についての制度趣旨を踏まえ、その要件を明確化することが必要と述べています。
つまり、国の審議においても「名ばかり管理職」問題が課題として認識されており、今後は管理監督者の要件を法律上より明確にし、健康・福祉確保措置も検討すべきとの議論が進んでいます。この流れを受け、今後は「管理職だから残業代なし」という運用がこれまで以上に通りにくくなる可能性があるといえるでしょう。
2026年4月現在では法改正には至っておらず、具体的な施行時期も確定していません。ただし、こうした制度見直しの動きは、名ばかり管理職の状態に置かれている労働者にとって追い風となる社会的な機運の高まりを示しています。
管理職の残業代については、誤解が生じやすいポイントが多くあります。よくある疑問をまとめたので、自分の状況と照らし合わせて確認してみてください。

A.課長・部長・店長といった肩書があるだけでは、残業代が出ないとは限りません。残業代の支払い義務が免除されるのは、労働基準法上の「管理監督者」に該当する場合のみです。
管理監督者かどうかは、肩書ではなく職務内容・権限・勤務態様・待遇などの実態をもとに総合的に判断されます。たとえば、課長や店長という役職であっても、部下の採用や人事評価に実質的な権限がなく、出退勤の管理を受けており、賃金水準も一般社員と大差ない場合には、管理監督者とは認められない可能性が高いです。
「自分の肩書では残業代は出ない」と思い込まずに、実態を冷静に確認することが大切です。
A.管理監督者に該当する場合でも、深夜労働(午後10時から午前5時まで)に対する割増賃金は請求できます。
労働基準法上、管理監督者は時間外労働・休日労働に関する規定の適用除外となりますが、深夜割増賃金の規定はこの適用除外に含まれていません。そのため、深夜の時間帯に働いた分については、管理監督者であっても25%以上の割増賃金が支払われなければなりません。
深夜の時間帯に働いた実績があるにもかかわらず、深夜手当が支払われていない場合は、請求できる可能性があります。給与明細を確認し、深夜割増分が反映されているかどうかをチェックしてみましょう。
A.退職後であっても、未払い残業代を請求することは可能です。在職中に請求しにくかった人や、退職してから改めて未払いの実態に気づいた人も、諦める必要はありません。
ただし、請求できるのは消滅時効にかかっていない期間の分に限られます。残業代の消滅時効は3年であるため、給料日から3年が経過した分については請求権が消滅してしまいます。
退職後に請求を検討している場合は、できるだけ早く行動に移すことが重要です。早期に弁護士へ相談することで、時効が成立する前に適切な対応をとれます。
管理職の退職については、以下の記事で詳しく解説しています。
管理職の残業代問題は、自分が管理監督者に当たるかどうかなど、専門的な判断が必要になるケースがあります。請求できるか迷っている段階でも、労働問題に詳しい弁護士に相談することで、見通しを整理しやすくなります。
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管理職であっても、労働基準法上の管理監督者にあたらなければ、残業代を請求できる可能性があります。判断は肩書ではなく、職務内容や権限、働き方、待遇などの実態によって行われます。
また、役職手当があっても、その内容によっては別途残業代を請求できる場合があります。管理監督者に該当する場合でも、深夜労働の割増賃金は対象となります。未払い残業代には時効があるため、早めの対応が重要です。
「自分は管理職だから残業代を請求できないのではないか」と少しでも感じたら、一人で判断せず、早めに労働問題に詳しい弁護士へ相談し、自分の権利を守りましょう。
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