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2025年3月8日
労働一般
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更新日:2026/06/20
不当解雇

取締役の解任は、通常の従業員の「解雇」とは異なり、会社法上の手続として行われます。そのため、労働基準法や労働契約法の解雇規制がそのまま適用されるわけではありません。
もっとも、取締役兼従業員であった場合には、取締役としての地位を失っても、従業員としての地位が残ることがあります。
また、正当な理由なく任期途中で解任された場合には、残りの任期中に得られたはずの役員報酬相当額などについて、会社に損害賠償を請求できる可能性があります。
今回は、取締役を解任されたらどうなるかを説明したうえで、報酬や損害賠償と簡単な4つの対応を解説していきます。

この記事の要点
・取締役を解任されたら、解任登記をされてしまい、報酬金も払ってもらえなくなってしまいます。
・解任手続に不備があれば取締役の地位は維持されますので報酬を遡って請求できる可能性がありますし、解任に正当な理由がなければ損害賠償を請求できる可能性もあります。
この記事を読めば、取締役を解任されたらどうすればいいのかがよくわかるはずです。
目次

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取締役を解任されたら、解任日以降は、取締役ではないものとして取り扱われます。
これは任期が残っている場合でも同様です。
取締役の解任とは、会社側が一方的に任期の満了を待たずに取締役を辞めさせることを言うためです。
具体的には、取締役を解任された場合の影響としては、以下の2つがあります。

それでは、これらの影響について順番に説明していきます。
取締役を解任されると、法務局に「解任された」という内容の登記がされます。
解任登記が行われることで、会社の外部に対しても、取締役でなくなったことが公に示されることになります。
解任登記については、株主総会で解任が決議されたあと、会社側が速やかに行うのが一般的です。
解任登記がされてしまうと、金融機関や取引先からの信頼にも影響を与える可能性があります。
例えば、取締役を「退任」したとされず、「解任」されたと記録されることで、再就職や取引先との関係に支障が生じてしまう可能性もあります。
このように、取締役の解任は内部的な処分というだけではなく、社会的な立場にも大きな影響を及ぼすものです。
取締役が解任されると、その日以降の役員報酬は原則として支払われなくなります。
なぜなら、取締役としての地位がなくなるため、役員報酬を受け取る根拠が失われるためです。
例えば、「あと1年の任期があるのに突然解任された」というケースでも、その後の報酬は原則として支払われません。
取締役の解任には、会社法で定められた手続きが必要です。
たとえ社長の意向であっても、法律に沿った手続きを経なければ、解任は無効になることがあります。
そのため、どのような流れで解任されるのかを理解しておくことが大切です。
具体的には、取締役が解任される場合の手続きは、以下のとおりです。
それでは、これらの手続きについて順番に説明していきます。
会社に取締役会が設置されている場合、まず取締役会で「株主総会を開くこと」が決定されます。
この決定がなければ、原則として株主総会は開けません。
取締役会で株主総会の開催が決まったら、株主に対して「何月何日に株主総会を開きます」という通知を出します。
これを「招集通知」といいます。招集通知は原則として株主総会の2週間前までに出す必要があります。
また、通知には議題(この場合は取締役の解任)も明記しなければなりません。
例えば、「決算報告」しか書かれていない通知で、突然その場で解任議案を出すことはできません。
正しい手続きが行われなければ、その決議は無効になる可能性があります。
株主総会が開催されると、取締役の解任を議題として審議し、出席した株主の多数決で解任が決まります。
会社法上、普通決議(出席株主の過半数の賛成)で解任することができます。
このとき、特別な理由がなくても、株主の判断で自由に解任できる仕組みになっています。
そのかわり、正当な理由がない解任には損害賠償の責任が生じる可能性があります。
例えば、「社長と仲が悪いから」という理由だけで解任された場合には、正当性が争われることがあります。
株主総会で解任が決まったら、その取締役本人に対して「あなたを解任しました」と正式に伝えられるのが通常です。
法律上、解任通知を行うことは必ずしも義務付けられているわけではありません。
しかし、解任通知がされていないと、本人がまだ取締役であると信じて行動してしまう可能性もあるため、このような通知がされることになります。
最後に、法務局で「取締役が解任された」という内容の登記手続きを行います。
この登記が完了することで、外部にも正式に解任が知られるようになります。
登記は、取締役が解任された日から2週間以内に行う必要があります。怠ると、会社に過料が科される可能性もあります。
例えば、登記を怠ったことで、元取締役が取締役を名乗って取引先と契約してしまうなど、実務上の混乱が生じることもあります。
取締役を解任されたとしても、状況によっては、お金を請求できる可能性もあります。
状況に応じて請求できるお金が異なるため、あなたの事案に応じてどのような請求をするか決めることになります。
例えば、取締役を解任されたら請求できる可能性のあるお金としては以下の4つがあります。
| お金 | 概要 | 条件 | |
| 1 | 報酬金 | 解任後に払ってもらえなかった役員の報酬としての金銭 | 解任手続に不備があり、取締役の地位が残っている場合 |
| 2 | 損害賠償金 | 解任によって生じた損害を補填する金銭 | 解任に正当な理由がない場合 |
| 3 | 退職金 | 役員を辞めた場合に支払われることのある金銭 | 退職金制度があり、株主総会で承認された場合 |
| 4 | 給与 | 雇用契約に基づいて支払われる労働の対価としての金銭 | 取締役兼従業員であり、雇用契約が継続している場合 |
それでは、これらのお金について順番に説明していきます。
解任の手続きに不備がある場合、取締役としての地位がまだ残っているとされることがあります。
その場合、取締役としての報酬を請求できる可能性があります。
報酬は、取締役としての業務に対して支払われるものであり、正式に解任されるまでは当然に受け取る権利があります。
例えば、株主総会の招集通知が出されていなかったり、議決が適法に行われていなかったりした場合には、解任手続きに不備があることになります。
こうしたケースでは、解任された後の期間についても、報酬の支払いを求めることができる可能性があります。
会社法上、株主総会の普通決議であれば、正当な理由がなくても取締役を解任できます。
しかし、正当な理由のない解任によって取締役に損害が発生した場合、損害賠償を請求できることがあります。
これは、取締役が期待していた報酬や地位を突然失ったことに対する補償として認められるものです。
例えば、以下のようなケースで考えてみましょう。
この場合、解任されなければ残り10か月分の役員報酬を受け取れていたと考えられます。
そのため、損害賠償金は、以下のように計算します。
80万円 × 10か月 = 800万円
このケースでは、正当な理由なく任期途中で解任されたことにより、残りの任期中に得られたはずの役員報酬800万円を失ったとして、会社に対して800万円の損害賠償を請求できる可能性があります。
ただし、実際にいくら請求できるかは、任期、報酬額、解任理由、会社との合意内容などによって異なります。
会社に退職金制度があり、退職金の支給について株主総会で承認がされた場合、退職金の請求が可能です。
役員の退職金は、支給すること自体が「報酬」としての性質を持つため、株主総会の決議が必要です。
退職金の有無や金額は、会社の就業規則や取締役規程などで定められていることがあります。
これに基づいて、過去の在任期間などをもとに計算されるのが一般的です。
例えば、「在任3年で基本報酬の〇か月分」といった形式が取られることもあります。
ただし、制度がなかったり承認されていなかったりする場合には、請求は難しくなります。
取締役の退職金については、以下の記事で詳しく解説しています。
取締役が、会社の従業員としての地位も兼ねていた場合には、従業員としての給与を請求できる可能性があります。
取締役の解任は「役員」としての地位を失うことを意味しますが、「従業員」としての雇用契約まで終了するわけではありません。
そのため、雇用契約が残っていれば、その期間の給与を請求することができます。
例えば、経理部長として雇用され、その後に取締役に就任したようなケースでは、取締役を解任されても、部長としての地位が残っている場合があります。
このような場合は、会社が給与の支払いを継続しなければならない可能性があります。
取締役の解任について正当な理由があるかどうかは、解任理由、解任に至る経緯、取締役の職務内容、会社に生じた影響などをもとに総合的に判断されます。
また、株主総会決議によって解任自体が有効に行われた場合でも、正当な理由がないときには、会社に対する損害賠償請求が問題になることがあります。
以下では、正当な理由がないと判断されやすいケースと、正当な理由があると判断されやすいケースを整理していきます。

代表者や他の取締役、大株主との間で経営方針に違いが生じることは珍しくありません。
しかし、単に「経営方針が合わない」「会社の方向性について意見が対立した」というだけで、直ちに正当な理由があるとは限りません。
取締役は、会社の利益のために意見を述べたり、経営判断に関与したりする立場にあります。
そのため、会社に損害を与えるような行為や重大な義務違反がないにもかかわらず、意見が合わないという理由だけで任期途中に解任された場合には、正当な理由がない解任と判断される余地があります。
とくに、解任の理由が抽象的で、具体的にどのような行為が問題とされたのか明らかでない場合には、正当な理由がないと判断されやすいでしょう。
代表者や大株主との関係が悪化したことを理由に、取締役が解任されることもあります。
しかし、人間関係の悪化や感情的な対立だけでは、正当な理由があるとはいえない可能性があります。
例えば、代表者と意見が合わなくなった、大株主から嫌われた、親族間の対立が生じたといった事情があっても、それだけで取締役としての職務を続けることが困難とは限りません。
もちろん、人間関係の悪化によって会社の運営に重大な支障が出ていた場合には、正当な理由が認められることもあります。
しかし、実際には会社運営に大きな支障がなかったにもかかわらず、個人的な対立や感情的な理由で解任された場合には、正当な理由がない解任として争う余地があります。
会社から、具体的な理由を示されないまま解任されるケースもあります。
例えば、「信頼関係がなくなった」「取締役としてふさわしくない」「会社のためにならない」といった抽象的な説明だけで解任されるような場合です。
しかし、正当な理由があるといえるためには、通常、取締役としての職務を続けさせることが難しいといえる具体的な事情が必要になります。
そのため、横領、背任、法令違反、重大な職務怠慢などの具体的な問題行為が示されていない場合には、正当な理由がないと判断される余地があります。
会社側の説明が抽象的な場合には、実際にどのような事実を理由として解任されたのかを確認しましょう。
会社の業績が悪化した場合に、その責任を取締役に負わせる形で解任されることがあります。
しかし、会社の業績は、市場環境、取引先との関係、資金繰り、他の役員の判断、従業員体制など、さまざまな要素によって左右されます。
そのため、単に業績が悪化したというだけで、直ちに特定の取締役について正当な理由がある解任といえるわけではありません。
特に、業績悪化の原因が取締役本人の明確な判断ミスや義務違反にあるとはいえない場合には、正当な理由がないと判断される可能性があります。
また、経営判断には一定のリスクが伴います。
結果的に事業がうまくいかなかったとしても、その判断が当時の状況から見て不合理であったといえない場合には、解任の正当な理由が認められるとは限りません。
会社の組織再編や経営陣の交代に伴い、「新体制にするため」という理由で取締役が解任されることがあります。
もちろん、株主総会の決議によって取締役を解任すること自体は可能です。
しかし、任期途中の解任について正当な理由がない場合には、解任された取締役が会社に対して損害賠償を請求できる可能性があります。
そのため、「新しい経営体制にしたい」「別の人物を取締役にしたい」「親会社や大株主の意向で交代させたい」といった会社側の都合だけで解任された場合には、正当な理由がないと判断される余地があります。
とくに、解任された取締役に具体的な問題行為がなく、職務遂行にも支障がなかった場合には、正当な理由がないと判断されやすいでしょう。
取締役が会社の財産を私的に流用したり、会社に損害を与えるような行為をしたりした場合には、正当な理由がある解任と判断されやすくなります。
例えば、会社のお金を私的に使った、架空の経費を計上した、会社の取引を利用して個人的な利益を得たといったケースです。
取締役は、会社に対して善管注意義務や忠実義務を負う立場にあります。
そのため、会社の利益に反して自己の利益を図るような行為があった場合には、取締役としての職務を続けさせることが困難と判断されやすくなります。
このような場合には、解任に正当な理由があるとして、損害賠償請求が認められにくくなる可能性があります。
取締役に重大な法令違反やコンプライアンス違反があった場合にも、正当な理由があると判断されやすくなります。
例えば、粉飾決算、違法な取引、反社会的勢力との関係、重大なハラスメント、情報漏えいなどによって、会社の信用を大きく損なったようなケースです。
取締役の行為によって会社の信用や取引関係に重大な影響が生じた場合、会社としてはその取締役を職務にとどめておくことが難しくなります。
そのため、単なるミスや軽微な問題にとどまらず、会社の信用や経営に重大な影響を与えるような違反がある場合には、解任の正当な理由が認められやすくなります。
取締役が会社と競合する事業を行ったり、会社の利益に反して自分や第三者の利益を図ったりした場合には、正当な理由があると判断されやすくなります。
例えば、会社の取引先を自分の別会社に移した、会社の営業情報を使って競合事業を行った、会社に不利な条件で自分の関係会社と取引させたといったケースです。
取締役は、会社の利益を守る立場にあります。
それにもかかわらず、会社の利益と衝突する行為を行った場合には、取締役としての信頼を大きく損なうことになります。
このような競業行為や利益相反行為が認められる場合には、正当な理由がある解任と判断される可能性が高くなります。
取締役が病気や長期不在などにより、職務を遂行できない状態が続いていた場合にも、正当な理由があると判断されることがあります。
取締役は、会社の経営に関与し、必要な判断や監督を行う立場です。
そのため、長期間にわたって取締役会に出席できない、会社との連絡が取れない、重要な業務判断に関与できないといった状態が続いている場合には、会社運営に支障が生じる可能性があります。
もっとも、病気や不在が一時的なものにすぎない場合や、実際には職務遂行に大きな支障がなかった場合には、正当な理由があるとは限りません。
そのため、職務を遂行できない状態がどの程度続いていたのか、会社の業務にどのような影響が出ていたのかが重要になります。
取締役に著しい職務怠慢や経営能力の欠如が認められる場合には、正当な理由があると判断されることがあります。
例えば、重要な業務を長期間放置していた、必要な報告や確認を怠って会社に損害を生じさせた、取締役会や社内会議に継続的に出席しなかった、担当業務を全く遂行していなかったといったケースです。
ただし、単に「期待した成果が出なかった」「経営判断が結果的に失敗した」というだけでは、直ちに正当な理由があるとはいえません。
取締役の判断には、経営上の裁量が認められる場面もあります。
そのため、正当な理由があるといえるためには、単なる結果論ではなく、当時の状況から見ても著しく不合理な対応であったことや、職務を果たしていなかったことが具体的に認められる必要があります。
取締役を解任された場合には、早い段階で証拠を整理しておくことが重要です。
正当な理由がない解任として損害賠償を請求できるかどうかは、解任に至る経緯、会社側が主張する解任理由、取締役としての職務内容、任期、報酬額などをもとに判断されます。
また、未払報酬や退職慰労金を請求する場合にも、契約内容や社内規程、これまでの支払状況を確認する必要があります。
そのため、取締役を解任されたら、以下のような資料をできる限り整理しておきましょう。

まず確認すべきなのは、会社の定款です。
定款には、取締役の任期、取締役の員数、株主総会や取締役会に関するルールなどが定められていることがあります。
取締役の解任では、任期がどの程度残っていたのかが重要になります。
任期途中で正当な理由なく解任された場合には、残りの任期中に得られたはずの役員報酬相当額が損害として問題になることがあるためです。
そのため、定款を確認し、取締役の任期や解任時点で残っていた期間を整理しておきましょう。
取締役の解任は、通常、株主総会の決議によって行われます。
そのため、株主総会の招集通知も重要な証拠になります。
招集通知を見ることで、株主総会がいつ開催されたのか、どのような議案が予定されていたのか、解任議案が事前に通知されていたのかを確認できます。
招集手続に問題がある場合には、解任手続そのものの有効性が問題になることもあります。
そのため、会社から受け取った株主総会招集通知や、株主総会に関する案内メールなどは保管しておきましょう。
株主総会議事録や取締役会議事録も重要です。
これらの議事録には、解任に関する決議の内容、解任理由、出席者、議決結果などが記載されていることがあります。
特に、会社側がどのような理由で解任したと説明しているのかを確認するうえで、議事録は重要な資料になります。
また、解任前の取締役会議事録を確認することで、会社側が主張する問題行為が実際に議題になっていたのか、解任前に注意や改善要求がされていたのかを確認できることもあります。
会社から議事録の写しを受け取っている場合には、必ず保管しておきましょう。
取締役を解任された場合には、会社の登記事項証明書も確認しておきましょう。
登記事項証明書を見ることで、取締役の就任日、退任日、代表取締役であったかどうかなどを確認できます。
特に、いつ解任された扱いになっているのか、登記上どのように処理されているのかは、解任日や任期残存期間を整理するうえで重要です。
また、代表取締役を解職された場合や、取締役自体を解任された場合など、立場によって問題になる内容が異なることがあります。
そのため、登記事項証明書を取得し、自分の役職や退任日を確認しておきましょう。
損害賠償や未払報酬を請求する場合には、役員報酬に関する資料が重要になります。
例えば、以下のような資料です。
取締役の報酬は、会社との合意や社内手続によって決まっていることが多いため、報酬額が分かる資料を整理しておく必要があります。
また、任期途中で解任された場合には、残りの任期中に受け取る予定だった報酬額が損害額を計算する際の重要な手がかりになります。
そのため、月額報酬、賞与、役員手当などの内容が分かる資料を保管しておきましょう。
実際に支払われていた報酬額を確認するためには、支払状況が分かる資料も必要です。
例えば、以下のような資料です。
これらの資料を確認することで、解任前に毎月いくら支払われていたのか、未払になっている報酬があるのかを整理できます。
特に、会社から「報酬は支払済みである」「そもそも報酬の合意はなかった」などと主張された場合には、過去の支払実績が重要な証拠になります。
取締役を解任された場合には、退職慰労金を請求できるかどうかも問題になることがあります。
そのため、退職慰労金規程や、過去に他の役員へ退職慰労金が支給された実績が分かる資料も確認しておきましょう。
例えば、以下のような資料です。
退職慰労金は、当然に発生するものではなく、会社の規程や株主総会決議などが問題になることがあります。
そのため、退職慰労金について請求できる可能性がある場合には、社内規程や過去の取扱いを確認することが大切です。
会社側がどのような理由で解任したのかが分かる資料も重要です。
例えば、以下のような資料です。
正当な理由があるかどうかを判断するためには、会社側が主張している解任理由を確認する必要があります。
特に、「信頼関係がなくなった」「経営方針が合わない」「新体制にする」といった抽象的な理由しか示されていない場合には、正当な理由がない解任として争う余地があります。
また、解任理由について口頭で説明を受けた場合には、いつ、誰から、どのような説明を受けたのかをメモに残しておくとよいでしょう。
取締役として実際にどのような職務を担当していたのかが分かる資料も重要です。
例えば、以下のような資料です。
会社側から「職務を果たしていなかった」「経営能力が不足していた」などと主張された場合には、実際にどのような業務を行っていたのかを示す資料が重要になります。
また、解任された取締役が会社に貢献していたことや、担当業務を適切に行っていたことを示す資料があれば、会社側の主張に反論しやすくなることがあります。
取締役であっても、実態として従業員としての地位を兼ねていることがあります。
いわゆる取締役兼従業員のケースです。
この場合、取締役として解任されたとしても、当然に従業員としての地位まで失うとは限りません。
そのため、取締役兼従業員だった可能性がある場合には、以下のような資料を確認しておきましょう。
取締役兼従業員だった場合には、役員としての報酬だけでなく、従業員としての賃金、解雇の有効性、未払賃金などが問題になることがあります。
そのため、自分が取締役としてのみ働いていたのか、それとも従業員としての性質もあったのかを確認できる資料を整理しておくことが大切です。
取締役を解任された場合の判例については、多く蓄積されています。
これらの裁判例を見ていくことで、取締役の解任について裁判所がどのような判断をするかイメージをもちやすくなるでしょう。
| 判例年月日 | 結論 | 裁判所の判断 | |
| 1 | 最高一小判昭和57年1月21日集民135号77頁 | 解任は正当 | 病気療養と株式譲渡により経営から退いた取締役の解任を巡る裁判です。裁判所は職務継続の困難さと経営刷新の必要性を考慮しました。解任には客観的な正当事由があるとし、解任の有効性を認めました。 |
| 2 | 東京地判昭和57年12月23日金商683号43頁 | 解任は不当 | 取締役解任の正当性が争われました。裁判所は、代表者との対立や主観的な評価では正当事由にならないと示しました。正当な理由なき解任に対し、損害賠償として退職金相当額の支払いを認めました。 |
| 3 | 広島地判平成6年11月29日判タ884号230頁 | 解任は正当 | 取締役の解任における「正当な事由」に、経営判断の誤りによる損害発生も含まれ得るとしました。独断での過度な財テクによる損失や、病気による職務遂行能力の低下を重視し、解任の適法性を認めました。 |
| 4 | 東京地判平成18年8月30日労判925号80頁 | 解任は正当 | 人事への不満から会社の内情を外部へ漏らす行為は、敵対的であり信頼関係を壊します。取締役の言動が業務執行を阻害する場合、解任は正当と判断が示されました。 |
| 5 | 横浜地判平成24年7月20日判例時報2165号141頁 | 解任は正当 | 取締役の解任について、事業不振や能力不足を正当な理由と認めました。さらに、辞任提案に沈黙して利益を得た後の賠償請求を、信義則に反するとしました。解任の正当性と信義則の両面から請求を退けました。 |
| 6 | 東京地判平成27年6月22日 | 解任は不当 | 解任の正当な理由は、業務執行の障害となる客観的状況で判断されます。大株主との信頼関係悪化だけでは、原則として正当な理由になりません。経営判断も、不合理でなければ解任理由にはならないとされました。 |
それでは、これらの裁判例について順番に説明していきます。
【事案】
運送業の代表取締役が、病気悪化のため療養に専念することを決めました。全株式を譲渡し、代表の座も退きました。
その後、経営陣刷新のための株主総会で、取締役を解任されたため、その正当性を争いました。
【結論】
解任には正当な事由があると認められました。
【理由】
取締役は病状が悪化し、療養に専念するため自ら業務を退きました。全株式を譲渡し、代表取締役の地位も交代しています。
このような状況で経営陣の刷新を図るための解任は、客観的に正当な事由があると判断されました。会社運営上、解任は妥当であり、損害賠償も認められませんでした。
【事案】
建設会社の取締役が任期中に解任されました。被告会社は、原告の性格や業績不振、内職を理由に正当性を主張しました。
これに対し、元取締役が解任による損害賠償や未払の賞与を求めて訴えを起こした事案です。
【結論】
解任に正当事由はなく、請求を一部認めました。
【理由】
解任の正当事由は認められませんでした。性格や孤立の原因は代表者との不仲にあり、業績不振も原告のみの責任とは言えません。
正当事由のない解任による損害には、退職金相当額も含まれます。支給規程を準用し、勤続年数に応じた退職金相当額と未払の賞与の支払いを被告に命じました。
【事案】
パチンコ景品の買取販売を行う会社の代表取締役が、独断で多額の投機的な株式取引等を行い、会社に多額の損失を与えました。また、脳血栓による入院で職務遂行も困難となりました。
これらを理由とする取締役の解任の効力が争われました。
【結論】
解任は有効であり、原告の請求を棄却した。
【理由】
解任の正当な事由には、経営判断の誤りで損害を与えたことも含まれます。原告は、独断でリスクの高い投機取引を繰り返し、多額の損失を招きました。
また、病気により通常の職務遂行が困難であり、公私の区別を欠く不適切な行為もありました。これらについて取締役として不適格として、解任は正当とされました。
【事案】
建設資材会社の取締役兼部長だった人物が、株主総会で解任されました。人事異動への不満から、会社の内情をマスコミ等へ漏らしたためです。
本人は解任の正当性や、従業員としての地位を巡り提訴しました。
【結論】
解任には正当な理由があり、原告の請求は認められませんでした。
【理由】
取締役と会社は委任関係にあります。原告の言動は、人事への不満による会社への敵対行為と判断されました。
マスコミへの情報提供は、企業の信用を著しく損なうものです。信頼関係は既に破壊されており、業務執行を阻害すると認められました。
これら一連の行為は、解任の「正当な事由」に当たります。
【事案】
プロボウラーの原告が、ボウリング事業を行う会社の取締役に就任しました。しかし、事業不振により解任されました。
原告は解任に正当な理由がないとして、残存任期の報酬につき損害賠償を求めた事案です。
【結論】
解任には正当な理由があり、原告の請求は認められませんでした。
【理由】
原告は会社側の辞任提案に対し、イベント開催を優先して拒絶を差し控えました。会社が辞任を信じる状況を承知しながら賠償を求めるのは、信義に反します。
また、事業の売上がほぼなく原告に能力が欠けていたため、解任には正当な理由があると判断されました。
【事案】
計測機器等の製造販売会社の代表取締役が、株主である創業家から解任されました。原告は解任に正当な理由がないとして、損害賠償を請求しました。
被告側は、原告の経営能力の欠如や信頼関係の破綻を主張しました。
【結論】
解任に正当な理由はなく、請求は一部認容。
【理由】
裁判所は、被告が主張した法令違反や経営能力の欠如を否定しました。節税対策等の経営判断も、不合理とは認めませんでした。
また、大株主との信頼関係喪失のみでは、解任の正当な理由には当たらないと判示しました。結果、残存任期の報酬相当額の賠償が認められました。
取締役を解任されてしまった場合でも、冷静に法的な見通しを分析したうえで、速やかに適切に手続きを講じていく必要があります。
あなたが何もしなければ会社は解任に問題がない前提で手続き進めてしまいますし、株主総会の不備を争うことができる期間は短いためです。
具体的には、取締役を解任されたら以下の対応を行うことがおすすめです。

それでは、これらの対応について順番に説明していきます。
最初に行うべきなのは、弁護士に相談することです。
会社法に関する問題は複雑で、素人が一人で判断するのは難しいためです。
弁護士に相談することで、手続が正しく行われていたか、損害賠償や報酬請求が可能かどうかの見通しを立てることができます。
例えば、会社の定款や株主構成、議事録などの資料を弁護士に見てもらうことで、法的にどのような手が打てるのかが明らかになります。
不安や疑問がある場合は、なるべく早く専門家に相談しましょう。

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次に確認すべきなのは、解任手続に不備がなかったかどうか、解任の理由が正当であったかどうかです。
もし手続に違法性があれば、取締役の地位が維持されていると判断され、報酬を請求できる可能性があります。
例えば、「株主総会の議題に含まれていなかった」「招集通知が適切にされていなかった」などの形式的なミスも重要な違法点になります。
また、解任の理由が不明確だったり、個人的な感情に基づく解任であったりすれば、損害賠償請求も検討できます。
細かい部分まで丁寧に見直していきましょう。
手続の不備や損害が確認できたら、会社との交渉を試みるのも一つの方法です。
訴訟に発展させる前に、まずは話し合いで解決を図ることで、時間や費用を抑えることができます。
弁護士が間に入ることで、冷静かつ法的な視点から交渉が行われ、話がスムーズに進むこともあります。
例えば、「未払いの報酬〇か月分を支払ってもらうことで合意する」といった形で和解に至ることもあります。
無理に争うより、納得できるラインで妥協することも選択肢です。
ただし、方針次第では交渉に充てられる期間が限られていることもありますので注意しましょう。
交渉がまとまらない場合は、最終的に訴訟を提起することになります。
報酬請求や損害賠償請求を裁判所に申し立て、法的に争っていく手続です。
訴訟には時間と費用がかかりますが、会社の対応が不誠実な場合などには、有効な手段となります。
例えば、相手方は解任の手続きに不備はなく、その理由も正当なものであるとして、一切請求に応じることができないと言った態度に固執するような場合です。
このような場合には話し合いによる解決は困難であり、裁判を通じた解決を目指す方が合理的な場合があります。
弁護士と十分に相談し、証拠を整理したうえで進めていきましょう。
取締役を解任された場合によくある疑問としては、以下の9つがあります。

これらの疑問を順番に解消していきましょう。
取締役は、任期途中であっても、株主総会の決議によって解任されることがあります。
そのため、「まだ任期が残っているから解任できない」というわけではありません。
もっとも、任期途中の解任について正当な理由がない場合には、解任された取締役は、会社に対して損害賠償を請求できる可能性があります。
つまり、取締役の解任では、「解任自体が有効か」という問題と、「正当な理由がないため損害賠償請求ができるか」という問題を分けて考える必要があります。
正当な理由がないからといって、当然に解任が無効になるわけではありません。
取締役は、株主総会の決議によって解任されることがあります。
そのため、株主総会の手続や決議に問題がなければ、解任自体は有効とされることがあります。
ただし、解任に正当な理由がない場合には、解任された取締役が会社に対して損害賠償を請求できる可能性があります。
そのため、「元の取締役の地位に戻れるか」だけでなく、「会社に対して金銭的な請求ができるか」も検討することになります。
代表取締役を外された場合と、取締役自体を解任された場合は、区別して考える必要があります。
代表取締役を外されたとしても、取締役としての地位が残っている場合があります。
この場合、代表権は失っていても、取締役として会社に残っていることになります。
一方で、取締役自体を解任された場合には、取締役としての地位も失うことになります。
会社法上の損害賠償請求が問題になりやすいのは、取締役として任期途中で解任された場合です。
そのため、自分が「代表取締役だけを外された」のか、「取締役自体を解任された」のかを、登記事項証明書や株主総会議事録などで確認しましょう。
取締役を解任されたからといって、当然に従業員としての地位まで失うとは限りません。
取締役でありながら、実態として従業員としても働いていた場合には、取締役兼従業員として扱われることがあります。
この場合、取締役としての地位を失っても、従業員としての雇用関係が残る可能性があります。
例えば、会社から具体的な業務指示を受けていた、勤務時間が管理されていた、従業員としての給与が支払われていた、就業規則の適用を受けていたといった事情がある場合には、従業員性が問題になることがあります。
取締役兼従業員だった可能性がある場合には、雇用契約書、労働条件通知書、給与明細、勤怠記録、業務指示のメールなどを整理しておきましょう。
取締役を解任した場合、会社は役員変更登記を行う必要があります。
もっとも、登記がまだ変更されていないからといって、必ずしも解任がなかったことになるわけではありません。
解任の効力が生じているかどうかは、株主総会決議などの解任手続が適切に行われたかによって判断されます。
ただし、登記が変更されていないと、外部からはまだ取締役として表示されてしまうことがあります。
そのため、解任されたにもかかわらず登記が変更されていない場合には、会社に対して登記手続の状況を確認することが考えられます。
自分が知らないうちに取締役を解任されていた場合には、まず、どのような手続で解任されたのかを確認する必要があります。
取締役の解任は、通常、株主総会の決議によって行われます。
そのため、株主総会の招集通知、株主総会議事録、議決権の状況、解任議案の内容などを確認することが重要です。
もし、株主総会の招集手続や決議方法に問題がある場合には、解任手続の有効性自体が問題になることがあります。
また、解任手続自体が有効であっても、正当な理由がない場合には、損害賠償請求を検討できる可能性があります。
実際には辞任していないにもかかわらず、会社から「辞任した」と扱われている場合には注意が必要です。
取締役の辞任は、本人の辞任の意思表示が必要です。
そのため、辞任届を出していない、辞任の意思を明確に伝えていないにもかかわらず、会社が一方的に辞任扱いにしている場合には、その扱いを争う余地があります。
このような場合には、辞任届の有無、会社とのやり取り、登記の内容、株主総会議事録、取締役会議事録などを確認しましょう。
また、辞任扱いにされている場合には、解任ではなく辞任として処理されることで、損害賠償請求や退職慰労金の判断にも影響が出る可能性があります。
そのため、早めに資料を整理し、弁護士に相談することをおすすめします。
解任された後に証拠を集めることは重要ですが、会社の資料を無断で持ち出すことには注意が必要です。
会社の機密情報、個人情報、アクセス権限のないデータなどを不適切に取得すると、会社から責任を追及されるおそれがあります。
そのため、すでに自分が受け取っている資料、自分のメールアカウントに残っているやり取り、正当な方法で取得できる資料を中心に整理しましょう。
また、資料を持ち出してよいか迷う場合には、自己判断で対応せず、弁護士に相談したうえで進めることが安全です。
取締役を解任された場合には、できるだけ早い段階で弁護士に相談することをおすすめします。
解任直後であれば、株主総会の手続、解任理由、任期、役員報酬、未払報酬、退職慰労金、取締役兼従業員としての地位などを整理しやすいためです。
また、会社とのやり取りが進んでしまうと、不利な内容の書面に署名してしまったり、辞任として処理されたりすることがあります。
とくに、以下のような場合には、早めに相談した方がよいでしょう。
取締役の解任では、会社法上の問題だけでなく、労働問題や報酬請求の問題が関係することもあります。
そのため、解任に納得がいかない場合には、資料を整理したうえで、早めに弁護士へ相談しましょう。
取締役の解任に強い弁護士を探したい場合には、是非、労働弁護士コンパスを活用ください。
労働問題は非常に専門的な分野であり、弁護士であれば誰でもいいというわけではありません。
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以上のとおり、今回は、取締役を解任されたらどうなるかを説明したうえで、報酬や損害賠償と簡単な4つの対応を解説しました。
この記事が解任されてしまい悩んでいる取締役の方の助けになれば幸いです。
以下の記事も参考になるはずですので読んでみてください。
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