2025年1月20日
ハラスメント
パワハラで訴える方法4つ!パワハラを訴える基準と有力な証拠6つ
パワハラに該当する場合には慰謝料請求が可能ですが、すべての事案で訴えられているわけではないため、訴える基準を知っておくことが有益です。今回は、パワハラで訴える方法4つを説明したうえで、パワハラを訴える基準や有力な証拠について解説していきます。
2025/01/31
不当解雇
会社で「明日から来なくていいよ」と言われてしまい、どうすればいいか悩んでいませんか?
来なくていいと言われても、本当に行かなくてもいいのか不安になってしまいますよね。
「明日から来なくていいよ」との発言は、直ちに違法となるわけではありません。
「明日から来なくていいよ」には、自宅待機命令、クビ、退職勧奨、休職命令、叱責など複数の意味があります。
「明日から来なくていいよ」と言われた際には、その意味や労働者の対応次第では有給となる可能性があります。
もっとも、「明日から来なくていいよ」との発言を鵜吞みにして、十分な対応をせずに会社に行かないことにはリスクがあります。
会社から「明日から来なくていいよ」と言われた際には、自分自身の生活を守るためにも、冷静かつ適切に対応するよう心がけましょう。
実は、「明日から来なくていいよ」と言われた事案については、労働者がどのように対応するかによって結果が大きく変わってきます。
会社から来なくていいと言われたので、そのやり取りを最後に数か月以上出勤していませんという話を聞くと、もう少し早く相談していただきたかったと感じることも少なくありません。
この記事をとおして、「明日から来なくていいよ」と言われた際に最低限知っておいていただきたい法的な考え方について、わかりやすく説明していければと思います。
今回は、「明日から来なくていいよ」は違法かを説明したうえで、給料や行かないリスク3つと裁判例を解説していきます。
具体的には、以下の流れで説明していきます。
この記事を読めば、「明日から来なくていいよ」と言われたらどうすればいいのかがよくわかるはずです。
目次
「明日から来なくていいよ」との発言は、直ちに違法となるわけではありません。
働くことは義務であり、通常、働かせてもらうように求める権利まではないと考えられているためです。
会社側が労働者の働く義務を免除すること自体は、直ちに法律に違反するということにはならないとされています。
例えば、労働者が明日からも働きたいと思っていたのに、「明日から来なくていい」と言われたため、出社できなくなったとします。
このような場合に、明日からも働きたかったのに働けなくなってしまったという点だけを捉えて、違法だと言っていくことは難しいことが多いのです。
ただし、出社できない期間について会社側が給料を支払う義務があるかどうかは別の問題です。
また、クビなど就労義務の免除以外の意味が含まれる場合やその言い方などからハラスメントにあたるような場合には、違法となることもあります。
「明日から来なくていいよ」と言われた際には、法律上、複数の意味があり得ます。
「明日から来なくていいよ」という発言だけでは、来なくていい理由が不明確であるためです。
例えば、「明日から来なくていいよ」と言われた際に想定される法律上の意味を5つ挙げると以下のとおりです。
それでは、これらの意味について順番に説明していきます。
「明日から来なくていいよ」の法的意味の1つ目は、自宅待機命令です。
明日から来なくていいという言葉を素直に受け取ると、明日から出社しなくてもいいという意味になり、明日以降の働く義務を免除していると受け取ることができます。
つまり、「明日以降は仕事をしないで家で待っていてください」という意味となります。
自宅待機命令の場合には、お給料を請求することができるかは、自宅待機になったのが会社側の原因によるものかどうかで変わってきます。
「明日から来なくていいよ」の法的意味の2つ目は、クビ(解雇)です。
解雇されると労働者は解雇日をもって退職することになりますので、解雇日以降は出勤する義務がなくなります。
つまり、「今日をもってあなたを解雇するので明日以降は従業員ではありません」という意味となります。
解雇は労働者の同意がいらない代わりに法律上厳格な条件を満たす必要があります。誰が見ても雇用を継続することが難しいと言えるような状況でないと解雇は難しいでしょう。
「明日から来なくていいよ」の法的意味の3つ目は、退職勧奨です。
退職勧奨というのは、労働者が自ら退職に応じるように促すものです。
つまり、「本日付けで退職してくれませんか」という意味になります。
あくまでも退職について労働者の同意を求めるもので、通常、明日以降の働く義務を免除するものではないということになります。
ただし、退職勧奨と同時に自宅待機を命じるような場合もあり、このケースでは、明日以降の働く義務が免除されていると評価できる場合もあります。
例えば、「退職に応じてくれませんか。明日以降、出社しないでいいので、自宅でゆっくりと考えてください。」という意味の場合です。
「明日から来なくていいよ」の法的意味の4つ目は、休職命令です。
労働者が私傷病などで業務の遂行が身体的・精神的に困難な場合には、会社の就業規則で休職を命じることができるとされていることがあります。
つまり、「明日からは出社しないで療養に専念してください」という意味になります。
休職期間中の給与は就業規則の規定に従うことになりますが、無給とされている会社が多くなっています。
その代わり、傷病手当等を受給して生活を維持することになります。
「明日から来なくていいよ」の法的意味の5つ目は、叱責です。
労働者の業務態度などを注意するために厳しい言葉を使ったという場合です。
つまり、「そのような業務態度では困るので、明日以降も働くなら改善してください」という意味になります。
叱責にすぎないので、通常、明日以降の就労義務が免除されるわけではありません。
ただし、叱責と同時に自宅待機を命じるような場合もあり、このケースでは、明日以降の働く義務が免除されていると評価できる場合もあります。
例えば、「そのような業務態度では困ります。明日以降、自宅で反省して下さい。反省するまで出社を禁じます。」という意味の場合です。
「明日から来なくていいよ」と言われた際には、その意味や労働者の対応次第では有給となる可能性があります。
法律では、会社側の原因で勤務できなかった場合には、給料の支払いを拒むことはできないとされているためです。
例えば、とくに理由もないのに自宅での待機を命じられたのであれば、労働者は出社できなかった期間の給料についても請求することができるでしょう。
解雇の場合には、解雇が条件を満たさないものである場合には、通常、解雇日以降の給料を請求することができます。
退職勧奨や叱責の場合には、明日以降も出社しなければ、通常、給料は支払われないということになります。
ただし、退職勧奨や叱責に自宅で待機しているようにという意味も含まれている場合には、出社しなくても給料を請求できる可能性があるでしょう。
休職の場合には、給与を請求できるかについては就業規則を確認することになります。
「明日から来なくていいよ」との発言を鵜吞みにして、十分な対応をせずに会社に行かないことにはリスクがあります。
具体的には、リスクとしては以下の3つがあります。
それでは、これらのリスクについて順番に説明していきます。
まず、リスクの1つ目は、退職処理をされることです。
あなたが、「明日から来なくていいよ」と言われて、そのまま出社することを辞めてしまうと、退職勧奨に応じたものとして退職処理をされてしまう可能性があります。
この場合、あなた自身が退職に同意したということになってしまうため、解雇予告手当などの金銭的な補償ももらえなくなってしまいます。
次に、リスクの2つ目は、給料が支払われないことです。
出社できなかった期間の給料を請求するには、出社できなかった原因が会社側にあると言えなければいけないためです。
労働者に働く意思がなかったために出社しなかったのであり、出社できなかった原因は会社にないなどの反論をされてしまうのです。
最後に、リスクの3つ目は、損害賠償請求をされることです。
労働者が無断で欠勤したことによって、会社に損害が発生したなどとして、損害賠償を請求されるリスクもあります。
「明日から来なくていいよ」の有名な裁判例として、伊勢市内のテーマパークの事件があります。
人事部長が労働者に対して、労働者Aに対して「翌日から来なくてよい」、労働者Bに対して「翌日から出社しなくて結構である」等の発言をしました。
第1審は、出社しなくなったのは、人事部長からの指示によるものなので、労働していないとしても賃金請求権を失うことはないとしました。
会社側は、労働者Aについては退職合意が成立していた、労働者Bについては解雇をしたとの反論をしました。
しかし、労働者Aとの間で退職合意は成立していないし、労働者Bに対して解雇の通告をしたともいえないとして、反論を認められませんでした。
【津地判平31.3.28労判1222号80頁[みんなで伊勢を良くし本気で日本と世界を変える人達が集まる事件](第1審)】
控訴審も、会社側に対して、賃金の支払いを命じました。
ただし、控訴審では、Aに対する発言も解雇通告であるとの反論が加わっており、裁判所も上記ABに対する発言が解雇の通告に該当すること自体は認めました。
そのうえで、解雇が不当であるとして、賃金の支払い請求を認容しています。
【名古屋高判令元.10.25労判1222号71頁[みんなで伊勢を良くし本気で日本と世界を変える人達が集まる事件](控訴審)】
最高裁は、会社側の上告を認めませんでした。
【最高一小決令和2年3月12日D1-Law.com判例体系[みんなで伊勢を良くし本気で日本と世界を変える人達が集まる事件]】
会社から「明日から来なくていいよ」と言われた際には、自分自身の生活を守るためにも、冷静かつ適切に対応するよう心がけましょう。
「明日から来なくていいよ」と言って、労働者がそのまま来なくなった場合には、会社側に都合のいいように処理されてしまうためです。
具体的には、「明日から来なくていいよ」と言われた場合には、以下の手順で対処していきましょう。
それでは、これらの対処手順について順番に説明していきます。
「明日から来なくていいよ」の対処手順の1つ目は、弁護士に相談することです。
「明日から来なくていいよ」という発言については、複数の法的な可能性があり、その法的な意味に応じた見通しや方針を立てる必要があります。
裁判になった場合に備えて、不利にならないような対応や証拠を集めておくことで、良い解決になる可能性が大幅に上昇することになります。
そのため、「明日から来なくていいよ」と言われたらすぐに弁護士に相談することがおすすめです。
ただし、この分野については専門性が高いため、労働問題を専門的に扱っている弁護士に相談するようにしましょう。
「明日から来なくていいよ」の対処手順の2つ目は、どのような意味かを確認することです。
意味によってとるべき対応が異なってくるためです。
会社側に対して、どのような意味かを明確にするように求めることで、労働者としても対応を決めることができます。
また、会社側に早い段階で法的な意味を明確にさせておくことで、後から、会社に有利な意味を主張されることを防ぐことができます。
「明日から来なくていいよ」の対処手順の3つ目は、働く意思を示すことです。
労働者が出勤しなくても給料を請求することができるのは、会社側の原因で出勤できなかった場合だからです。
会社側の発言が不明確な段階だと、労働者が自分から来なくなった、労働者自身に働く意思がなかったなどの反論をされがちです。
働く意思を明確にしておくことで、このような反論を防ぐことができます。
「明日から来なくていいよ」の対処手順の4つ目は、給料を請求することです。
「明日から来なくていいよ」と言われて出社できなかった期間の給料が振り込まれない場合には、これを請求することになります。
それでも相手方が振り込んでこない場合には裁判所へ労働審判や訴訟を申し立てることも検討することになります。
「明日から来なくていいよ」と言われた際によくある質問としては以下の6つがあります。
それでは、これらの疑問について順番に解消していきましょう。
アルバイトが「明日から来なくていい」と言われたら、明日以降シフトを入れないという意味である可能性もあります。
シフトに入れてもらえなくなり、働いていないため、お給料を支払ってもらえなくなってしまいます。
会社側との間で、月●日、週●日シフトを入れるなどの合意があるような場合には、働けなかった期間の賃金を請求できる可能性があります。
派遣が「明日から来なくていいよ」と言われたら、派遣先と派遣元との契約を終了するとの意味である可能性もあります。
つまり、いわゆる派遣切りという意味である可能性があるということになります。
派遣元と労働者との雇用契約は残ることになりますので、派遣元に別の会社を紹介してもらう等の対応をすることになります。
「明日から来なくていい」と言われて退職した際には、会社都合になる可能性があります。
退職勧奨の意味の場合には、これに応じて離職すれば、会社都合として処理されることになります。
一方で解雇の意味の場合には、原則として会社都合として処理されることになりますが、例外的に重責解雇と言われる場合には自己都合として処理されることがあります。
「明日から来なくていい」と言われても、労基には対応してもらえない傾向にあります。
労働者に働かせてもらうように求める権利があるわけではなく、直ちに労働基準法違反になるわけではないためです。
給料が支払われない場合には労働基準法違反となりますが、法的な争点が生じることが多く、労基では強制的に給料の支払いをさせることはできません。
辞めたいと言ったら「明日から来なくていい」と言われることがありますが、契約期間が決められてなければ、退職日については労働者において決めることができます。
労働者は2週間前に告げることで退職することができるとされているためです。
これに対して、会社が、労働者の同意なく、一方的に退職時期を早める場合には解雇となります。
なので、会社側が、労働者の意に反して今日で退職させることは難しいのです。
「明日から来なくていい」との発言は、パワハラになることもあります。
自身の意に沿わない労働者に対して、仕事を外し、長期間にわたり、自宅研修させることは、人間関係からの切り離しに該当します。
また、気に入らない労働者に対して嫌がらせのために仕事を与えないことは過小な要求に該当します。
そのため、会社側の態様次第では、職場におけるパワーハラスメントとして違法になることもあります。
パワハラの慰謝料相場については、以下の記事で詳しく解説しています。
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以上のとおり、今回は、「明日から来なくていいよ」は違法かを説明したうえで、給料や行かないリスク3つと裁判例を解説しました。
この記事の要点を簡単に整理すると以下のとおりです。
この記事が「明日から来なくていいよ」と言われて悩んでいる労働者の方の助けになれば幸いです。
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籾山善臣
リバティ・ベル法律事務所
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