2025年1月20日
ハラスメント
パワハラで訴える方法4つ!パワハラを訴える基準と有力な証拠6つ
パワハラに該当する場合には慰謝料請求が可能ですが、すべての事案で訴えられているわけではないため、訴える基準を知っておくことが有益です。今回は、パワハラで訴える方法4つを説明したうえで、パワハラを訴える基準や有力な証拠について解説していきます。
2025/01/20
ハラスメント
パワハラで訴えたいけど、どのように行動すればいいのか悩んでいませんか?
パワハラをされると精神的にも参ってしまいますし、解決に向けてどうすればいいのか困ってしまいますよね。
パワハラで訴える場合、目的によって訴えるべき機関は異なるため、各機関で得られる解決内容を確認しておく必要があります。
具体的には、パワハラを訴える方法4つを機関毎に整理すると以下のとおりになります。
そのため、上司個人に損害賠償請求したい場合などには、裁判を提起することになるでしょう。
ただし、パワハラを理由に損害賠償請求する場合、パワハの事実を客観的に証明できる証拠が重要となります。
なぜなら、パワハラは職場内の限られた人間関係の中で行われるため、証拠がなければパワハラを立証できないためです。
実は、証拠が不十分なまま軽率に提訴すると、加害者から名誉棄損で訴えられるなど、かえって立場が危うくなるおそれがあるのです。
この記事をとおして、パワハラで訴える際に知っておいていただきたい知識をお伝えすることができれば幸いです。
今回は、パワハラで訴える方法4つを説明したうえで、パワハラを訴える基準や有力な証拠について解説していきます。
具体的には、以下の流れで解説していきます。
この記事を読めば、パワハラで訴えるためにどう行動すべきかよくわかるはずです。
目次
パワハラで訴えたい場合、被害者の方がどのような解決を望むのかによって、訴えるべき機関は異なってきます。
具体的には、パワハラで訴える方法4つを整理すると以下のとおりです。
それでは、これらの方法について順番に説明していきます。
パワハラで訴える方法1つ目は、労働局に訴えることです。
労働局では、全国各地に所在し、パワハラについても無料での相談が可能であり、助言・指導を受けることができます。
助言・指導に法的効力はないため解決に至らないこともあります。この場合には、あっせんを申し立てるよう勧められることがあり、申し立てにより労働問題の専門家が紛争解決の調整をしてくれます。
ただし、労働局のあっせんは迅速な紛争解決を主眼とした手続であるため、慰謝料が低額になりやすい傾向があります。
労働局の所在地一覧は、以下のリンクから確認することができます。
都道府県労働局(労働基準監督署、公共職業安定所)所在地一覧|厚生労働省
パワハラで訴える方法2つ目は、労働審判で訴えることです。
労働審判は、会社との間における、労働関係のトラブルを迅速かつ柔軟に解決するための手続きです。
つまり、労働審判では、会社に対してパワハラを理由とする損害賠償請求をすることができます。
しかし、労働審判は会社と従業員との紛争を対象とするため、従業員とその上司といったように、労働者同士の紛争は対象外とされています。
そのため、労働審判において、パワハラの被害者が加害者個人に対して損害賠償請求することはできないのです。
パワハラで訴える方法3つ目は、裁判で訴えることです。
裁判は、法的紛争を解決するための手続きであり、パワハラを理由とする損害賠償を請求することも可能です。
労働審判とは異なり、相手方は会社に限らず加害者個人に対しても請求することができます。
適正な慰謝料を獲得しやすいとうメリットがある反面、経済的・時間的負担が大きいことがデメリットとして挙げられます。
パワハラで訴える方法4つ目は、警察に訴えることです。
パワハラ行為が犯罪に該当する場合、警察に被害を訴えることが考えられます。
例えば、上司から暴行や脅迫を受けている場合には、安全を確保するため警察に訴え出ることが考えられます。
ただし、警察は刑事上の責任を追及する手段であり、損害賠償請求などの民事上の責任は別途追及する必要があります。
パワハラを受けた場合であっても、すべての事案で訴訟となるわけではありません。実際、人事異動の申出など会社への働きかけによって解決しているケースも少なくないのです。
そのため、どのような場合であれば訴えるべきなのか、一応の判断基準をもっておくことが望ましいです。
例えば、パワハラを訴える基準4つを整理すると以下のとおりとなります。
それでは、これらの基準について順番に説明していきます。
パワハラを訴える基準1つ目は、パワハラに該当するかです。
パワハラを理由として慰謝料請求する場合、対象となる行為がパワハラに該当する必要があります。
次の3つの条件に該当する場合、当該行為はパワハラに該当する可能性があります。
厚生労働省は、パワハラに該当する典型例として、次のような6類型を挙げています。
※出典:厚生労働省‐パワハラ 6類型
慰謝料請求したいと感じた場合、パワハラ行為に該当するのか確認しておくといいでしょう。
パワハラを訴える基準2つ目は、社内での解決が可能かです。
会社はハラスメント相談窓口の設置義務を負っているため、ハラスメントを受けた場合には、社内の相談窓口に訴えることが考えられます。
社内での解決であれば、労働審判や裁判などと比べ、少ないコストで事態を解決できる可能性があります。
ただし、社内でパワハラを訴えたことにより、事実上の不利益取り扱いを受けたり、職場に居づらくなるなど様々な弊害を生じるおそれもあります。
そのため、社内で解決すべきか外部の機関を頼るべきかは、慎重に判断する必要があります。
パワハラを訴える基準3つ目は、パワハラの相場はいくらかです。
パワハラの慰謝料相場は、事案によって異なりますが、5万円~200万円程度となることが多いとされています。
しかし、労働審判や訴訟の手続きでは専門的知識や多大な労力が必要となるため、これらの手続は弁護士に依頼される方が多いです。
弁護士に依頼する場合には弁護士費用が必要となるため、軽微な事案ではご依頼者様の手元に最終的な利益がほとんど残らないことも少なくありません。
弁護士と相談することで事件の見通しが明らかになることもありますので、相談を通じてパワハラ行為を訴えるべきかどうか判断するといいでしょう。
パワハラの慰謝料相場については、以下の記事でも詳しく解説しています。
パワハラを訴える基準4つ目は、どのような解決をしたいかです。
パワハラに限らず、被害者本人の意向は対応方針を立てるうえで最も重要となります。
例えば、パワハラ行為に該当することが明らかな場合であっても、社内での穏便な解決を望む場合には、加害者とは違う部署への人事異動を申し出ることも考えられます。
訴える目的を明らかにしておくことが、結果への満足度にも繋がるため、事前にどのようにしたいのか確認しておくといいでしょう。
パワハラを理由として損害賠償請求する場合、パワハラが閉鎖的環境で行われることから、客観的な証拠が重要となります。
具体的には、パワハラの訴えで有力な証拠6つを整理すると以下のとおりです。
それでは、これらの証拠について順番に説明していきます。
パワハラの訴えで有力な証拠1つ目は、会話の録音です。
パワハラの半数以上は精神的な攻撃とされており、加害者との会話を録音しておくことは非常に有効です。
録音の方法には、スマートフォンの録音機能やボイスレコーダーによる録音があります。
ただし、パワハラを訴える場合には、被害者による加害者の名誉棄損が問題とされることも少なくありません。
また、常に録音することは他の従業員の業務を阻害しかねないため、パワハラ行為に関連する発言の録音にとどめる必要があります。
そのため、インターネットに繋がらないボイスレコーダー等を携帯し、適宜録音することが望ましいです。
パワハラの訴えで有力な証拠2つ目は、メール記載の文章です。
メール記載の文章は、記録として明確に残るため証拠にしやすいです。
実際に証拠とする場合には、メールの発信者と日時のほか、文章の内容がわかるように印刷することになります。
なお、メールが社内PC等に入っている場合には、PC画面をデジタルカメラなどで撮影したうえで印刷するようにしましょう。
なぜなら、社内の情報を社内PCから外部に送信したり、スマートフォンなどインターネットに繋がるもので撮影すると、トラブルになるおそれがあるためです。
パワハラの訴えで有力な証拠3つ目は、被害状況のメモです。
パワハラにおいては、被害者がメモした日記などが証拠として採用されることがあります。
日記等に書く場合、「誰が」「いつ」「何をしたか」具体的に書いておくと、証拠としての価値が高まります。
ただし、鉛筆やパソコンでのメモは修正が容易なため、紙媒体にボールペンでメモしておくといいでしょう。
パワハラの訴えで有力な証拠4つ目は、診断書です。
パワハラを理由とする損害賠償請求においては、その金額の算定にあたり、被害の程度も考慮要素とされています。
とくに精神的な攻撃によるパワハラでは、外部から被害の程度を知ることは難しいです。
医師の診断書があれば、パワハラの被害がどの程度なのか明らかにしやすくなるのです。
パワハラの訴えで有力な証拠5つ目は、家族や同僚の証言です。
パワハラなどのハラスメント事案では、外部機関へ訴える前に家族や同僚に相談される方が多いです。
相談を受けた家族や同僚は、パワハラ当時の被害者の様子を見ていたことになるため、被害状況を証言することができ、証拠とすることができます。
証言単体では証明力は弱いものの、録音やメモなどと一緒に証拠とすることにより、パワハラの事実をより立証しやすくなります。
パワハラの訴えで有力な証拠6つ目は、他の被害者の証言です。
加害者が他の被害者にもパワハラを行っているケースもあるため、他の被害者の証言が証拠になることがあります。
例えば、他の被害者がパワハラ被害の相談をしていた事実や、パワハラ現場を目撃した旨の証言は重要な証拠となるでしょう。
どのような場合にパワハラによる訴えが認められやすいのか、実際の判決事例を確認していきましょう。
具体的には、パワハラでの訴えを認めた判決事例3つを整理すると以下のとおりです。
では、これらの判決事例について順番に説明していきます。
部下が、上司から「やる気がないなら会社を辞めるべきだと思います」とのメールを受け取ったため、上司に対して慰謝料100万円を請求した事案について、
裁判所は、上司の発言が名誉棄損に該当することは明らかであり、不法行為を構成するものの、送信の目的が叱咤激励にあること等に照らすと、慰謝料は5万円が妥当と判断しています。
判例は以下のように説明しています。
パワハラ被害者が交通事故で死亡したため、被害者の相続人2名が、パワハラをしていた会社に対して慰謝料75万円ずつの計150万円を請求した事案について、
裁判所は、被害者は過酷なパワハラを受けていたにもかかわらず、責任者は必要な措置をとっていなかったことから、安全配慮義務違反に該当するとして150万円全額の請求を認めています。
判例は以下のように説明しています。
従業員が、会社から執拗な退職強要と解雇を受けたことから、多大な精神的苦痛を被ったとして会社に対し慰謝料1100万円を請求した事案について、
裁判所は、会社の再三にわたる退職強要は不法行為に該当するものの、解雇については不法行為とは認められないとして、慰謝料は50万円が妥当と判断しています。
判例は以下のように説明しています。
適正な慰謝料を獲得するには、知っておいていただきたいポイントがあります。
具体的には、パワハラの訴えで適正な慰謝料を獲得するポイント3つを整理すると以下のとおりです。
それでは、これらのポイントについて順番に説明していきます。
パワハラの訴えで適正な慰謝料を獲得するポイント1つ目は、証拠を確保することです。
パワハラは会社内の問題であり、会社の外からは状況がわからないため、客観的な証拠の確保が重要となるためです。
実際、パワハラの加害者は「パワハラはしていない」など、そもそもパワハラだと思っていないことも少なくありません。
証拠を確保しておくことでパワハラの立証が容易となり、パワハラ行為が適切に評価され、慰謝料も適正な金額に近づけやすくなるのです。
パワハラの訴えで適正な慰謝料を獲得するポイント2つ目は、労働審判や訴訟を用いることです。
なぜなら、パワハラは労働局に訴えることができますが、法的強制力がないために、実効的な解決を期待できない場面があるためです。
また、交渉による解決も考えられますが、交渉では証拠が適正に評価されないおそれがあります。
とくに会社側が不合理な主張に固執する場合には、慰謝料金額が低くなりやすいのです。
労働審判や訴訟では証拠が適切に評価されやすく、適正な慰謝料を獲得しやすくなるのです。
ただし、労働審判では会社にしか請求できないため、加害者個人に請求したい場合には訴訟を提起することになります。
パワハラの訴えで適正な慰謝料を獲得するポイント3つ目は、弁護士に相談することです。
パワハラでは慰謝料請求が問題となることが多いですが、パワハラがエスカレートすると、退職勧奨や解雇に至ることもあります。
これらの手続は専門性が高く、請求にあたっては、証拠の確保や会社とのトラブルにも気を付けなければいけません。
弁護士に相談した場合、証拠調査におけるリスクやパワハラを訴えるリスクなど、状況に応じた適切なアドバイスを期待することができます。
パワハラによる慰謝料請求に不安を感じたら、弁護士に相談することが望ましいです。
A.いいえ、訴えられます。
パワハラに該当する場合には、うつ病などの精神疾患を発症していなくても請求が認められる可能性があるためです。
A.はい、できます。
不当解雇を争う際に、会社に対してパワハラの慰謝料を併せて請求することも実務上よくあります。
A.社内の相談窓口等への報告としての訴えについては、あなたが報告することも可能ですが、会社に介入されたくないと考える被害者もいるため、事前に被害者本人の意思を確認しておくといいでしょう。
訴訟での訴えについては、被害者も一緒に請求するのであればできますが、勝手にあなたが請求することはできません。
パワハラに強い弁護士を探したい場合には、是非、労働弁護士コンパスを活用ください。
労働問題は非常に専門的な分野であり、弁護士であれば誰でもいいというわけではありません。
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今回は、パワハラで訴える方法4つを説明したうえで、パワハラを訴える基準や有力な証拠について解説しました。
この記事の要点を簡単に整理すると以下のとおりです。
この記事がパワハラの訴え方に悩んでいる方の助けになれば幸いです。
弁護士に相談する
籾山善臣
リバティ・ベル法律事務所
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