業務命令に納得できない!拒否できる?正当な理由7つと簡単対応手順

業務命令に納得できない!拒否できる?正当な理由7つと簡単対応手順

著者情報

籾山 善臣

籾山 善臣 弁護士

リバティ・ベル法律事務所

神奈川県弁護士会所属
不当解雇や残業代、退職勧奨対応等の労働問題を数多く担当している。
【著書】長時間残業・不当解雇・パワハラに立ち向かう!ブラック企業に負けない3つの方法

業務命令に納得できないからと言って安易に拒否するとリスクがあります。

正義感が強い人や真面目な人ほど、不合理な命令に見過ごせず、会社に目をつけられてしまうことがあります。

今回は、業務命令に納得できない場合について、拒否できるかを説明したうえで、正当な理由7つと簡単対応手順を解説します。

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この記事の要点

・業務命令については、原則として拒否することはできません。

・業務命令を拒否する正当な理由があるケースとしては、業務命令が濫用となる場合や違法な場合、雇用契約の内容に反する場合などがあります。

・業務命令に納得できないときは、根拠を確認したうえで、就業規則や雇用契約書をチェックし、協議して、やり取りを証拠に残しましょう。

この記事を読めば、業務命令に納得できないときにどうすればいいのかがよくわかるはずです。

目次

1章 業務命令は拒否できる?

業務命令は拒否できる?

会社から受ける業務命令は、原則として拒否することができません

なぜなら、労働者は会社と雇用契約を結ぶことで、お給料をもらう代わりに会社の指示に従って働く義務を負っているからです。

例えば、日々の仕事の進め方や急な残業の指示などは、公序良俗に反したり、法律を無視したりする内容でない限り、従わなければならないのが基本のルールです。

もし自分の判断で勝手に命令を無視したり、返事だけして実行しなかったりすると、職場全体の規律が乱れてしまうため、法律的にも命令に従うことが義務付けられています。

ただし、会社が労働者に対して何でも自由に命じられるわけではなく、嫌がらせを目的としたり、あまりにも大きな不利益を与えたりする命令は無効になることもあります

まずは「原則として従う義務があるけれど、例外もある」という全体像を正しく理解しておきましょう。

2章 業務命令を拒否できる正当な理由の例

業務命令の権利と言っても、絶対ではありません

働く人は会社の所有物ではなく、一人の人間として私生活や人権を尊重されるべき存在だからです。

例えば、業務命令を拒否できる正当な理由の例としては、以下のとおりです。

例1:必要性のない業務命令
例2:著しい負担を課す業務命令
例3:嫌がらせとしての業務命令
例4:雇用契約の内容に反する業務命令
例5:違法な業務命令
例6:安全配慮義務違反になる業務命令
例7:ハラスメントになる業務命令

業務命令を拒否できる正当な理由の例

それでは、これらの例について順番に説明していきます。

2-1 例1:必要性のない業務命令

業務上の必要性が全くない命令は、拒否できる可能性があります

そもそも会社が命令を出せるのは「仕事を円滑に進めるため」という目的があるからであり、その目的から外れた命令は認められないからです。

例えば、本来の業務とは全く関係のない社長個人の家の掃除を命じられたり、やらなければいけない仕事があるわけではないのに連日残業を命じたりする場合です。

このように仕事としてやる意味がない命令は、濫用と判断されやすいです。

2-2 例2:著しい負担を課す業務命令

労働者に対して、通常では考えられないほどの重い負担を強いる命令も、拒否できる正当な理由になり得ます

会社は命令を出す際に、その指示によって労働者が受ける不利益が大きすぎないか配慮しなければならないからです。

例えば、重い病気を抱えている人に体力を激しく消耗する作業を命じたり、家族の介護や育児のためにどうしても家を離れられないことが分かっている人に、あえて遠方への長期出張を命じたりするような場合です。

こうした生活を壊すほどの負担を強いる命令は、濫用とされることがあります。

2-3 例3:嫌がらせとしての業務命令

特定の労働者をターゲットにした「嫌がらせ」や「見せしめ」を目的とした命令も、拒否する正当な理由となります

業務命令はあくまで仕事のために出されるべきものであり、誰かを精神的に追い詰めるための道具にしてはならないからです。

例えば、ミスをしたことへの罰として、他の社員が見ている前で草むしりをさせられたり、一人だけ倉庫のような別室に隔離されて作業を命じられたりするケースです。

このように、業務上の合理的な理由がなく、単に苦痛を与えることが目的の命令は濫用となりやすいです。

2-4 例4:雇用契約の内容に反する業務命令

入社時に交わした雇用契約の内容と明らかに異なる命令も、拒否できることがあります

会社と労働者の合意によって「この職種に限定して仕事をする」と決めている場合、会社が勝手にその約束を破ることはできないからです。

例えば、契約書で職種が「営業職」と決まっているのに、事前の合意もなく突然「事務職」への異動を命じられるような場合です。

このように雇用契約で仕事の範囲を限定しているような場合には、これに反する命令をすることは契約違反となります。

2-5 例5:違法な業務命令

違法な業務命令についても、拒否することができます

労働基準法に反するような業務命令については、無効とされます。また、犯罪行為や不正に加担させることも許されません。

例えば、会社のお金を隠すための書類改ざんを手伝わせたり、法律で決められた上限を大幅に超えるような違法な長時間労働を強いたりするケースです。

こうした違法な命令に従ってしまうと、労働者自身も責任を問われるリスクがあるため、拒否することが正解となります。

2-6 例6:安全配慮義務違反になる業務命令

労働者の健康や命を危険にさらすような命令も、拒否することができます

会社には、従業員が安全に健康を保ちながら働けるように配慮する安全配慮義務があるからです。

例えば、台風や大雪で交通機関が止まり、無理に出勤すれば怪我をする恐れがあるのに「何が何でも出社しろ」と命じたり、故障したままの危険な機械を修理せずに使わせたりする場合です。

自分の安全が脅かされそうなときにまで業務命令が優先されることにはなりません。

2-7 例7:ハラスメントになる業務命令

パワーハラスメント(パワハラ)やセクシャルハラスメントにあたる命令は、拒否できる正当な理由になります

ハラスメントは働く人の尊厳を傷つける行為であり、現在は法律でも厳しく禁止されているからです。

例えば、上司が自分の機嫌を直すために土日にゴルフの付き合いを強要したり、仕事上の上下関係を利用して、お酒の席での酌を無理に命じたりするケースなどが考えられます。

これらは業務の適正な範囲を明らかに超えているため、命令として従う義務はありません。

3章 業務命令に納得できないときの対応手順

業務命令に納得できないときは、感情的に拒否するのではなく、冷静に手順を踏んで対応することが大切です

上手に対応することがで、リスクを抑えつつ、建設的な解決をできる可能性があります。

例えば、具体的な対応手順としては以下の4つがあります。

手順1:業務命令の根拠を確認する
手順2:就業規則や雇用契約書を確認する
手順3:必要性の有無や認識の相違を協議する
手順4:やり取りを証拠化する

業務命令に納得できないときの対応手順

それでは、それぞれの対応手順について順番に見ていきましょう。

3-1 手順1:業務命令の根拠を確認する

まずは、その業務命令がどのような目的で出されたのか、具体的な根拠を上司に確認しましょう

理由を明確にすることで、その命令が本当に業務上必要なのか、それとも不当なものなのかを判断する材料が集まるからです。

例えば、「なぜ今この作業が必要なのですか」「この指示はいつまでの予定ですか」と丁寧に質問を投げかけてみてください。

理由を詳しく聞くことで、会社側があなたの状況を勘違いしていたことに気づいたり、逆に納得できる理由が見つかったりすることもあります。

3-2 手順2:就業規則や雇用契約書を確認する

次に、会社の「就業規則」や、入社時に交わした「雇用契約書」の内容を読み返してみましょう

配置転換や出向などについては、雇用契約書や就業規則に根拠がなければ、命じることができない可能性があります。

また、雇用契約書や就業規則において、会社の業務命令できる事由や範囲が限定されていたり、手続きが定められていたりする可能性があります。

書面の内容と照らし合わせることで、自分の主張に法律的な裏付けを持たせることができます。

3-3 手順3:必要性の有無や認識の相違を協議する

調べた内容をもとに、会社側としっかりと話し合い(協議)を行いましょう

一方的に「嫌です」と拒むのではなく、現在の自分の状況や、なぜその命令が難しいと感じているのかを誠実に伝えることが重要だからです。

例えば、「家族の介護があり、現状では深夜までの残業が難しいので配慮いただけないでしょうか」といった具体的な事情を相談したり、代わりの案を提案したりする姿勢を見せてください。

拒否はせずに、配慮を求めたり、意見を述べたり、お願いをしたりと言った形で対応していくことが穏当です。

3-4 手順4:やり取りを証拠化する

会社との話し合いの内容は、記録に残して証拠化しておくようにしましょう

万が一トラブルが大きくなって裁判や労働局への相談が必要になった際、どのようなやり取りがあったのかを証明できないと不利になってしまうからです。

例えば、上司との面談内容をメモに残したり、メールで「先ほどの話し合いの内容を確認させてください」と送って履歴を残したりしてください。

録音をしたり、日記に詳細な経過を書き留めたりすることにより、いざとなった場合に自分の身を守れる可能性が上がります。

4章 業務命令に従わないとどうなる?業務命令拒否のリスク

正当な理由なく業務命令を拒み続けると、労働者にとって重いペナルティが課されるリスクがあります

例えば、業務命令に従わない場合のリスクとしては以下の4つがあります。

リスク1:解雇される
リスク2:懲戒処分される
リスク3:人事評価が下がる
リスク4:働きづらくなる

それでは、業務命令拒否のリスクについて順番に見ていきましょう。

4-1 リスク1:解雇される

最も重いリスクは、会社を辞めさせられる「解雇」になることです

正当な理由がないのに業務命令を拒否し続けることは、業務命令違反として、解雇の理由として認められる場合があるからです。

例えば、正当な転勤命令に従わなかったり、配属先での仕事を頑なに拒否し続けたりした結果、普通解雇や懲戒解雇を選択するケースがあります。

一度解雇されてしまうと、その後の再就職にも影響が出る可能性があるため、非常に大きなリスクといえます。

勤務態度を理由とする解雇については、以下の記事で詳しく解説しています。

4-2 リスク2:懲戒処分される

解雇に至らなくても、会社から「懲戒処分(ちょうかいしょぶん)」を受けることがあります

懲戒処分とは、職場のルールに違反した人に対して行われる制裁のことで、会社の秩序を守るために行われるものです。

例えば、始末書を書かされる「けん責」や、お給料が減らされる「減給」、数日間の出勤を禁じられる「出勤停止」などがあります。

こうした処分を受けると、社内での信用を失ったり、将来の昇進に響いたりするため、決して軽い問題ではありません。

4-3 リスク3:人事評価が下がる

法律的な処分だけでなく、日々の人事評価が大幅に下がってしまうことも避けられません

上司からの指示を守らない従業員は、会社にとって「扱いづらい人材」や「協力体制がない人」と評価されてしまうからです。

例えば、ボーナスの額がカットされたり、昇給のタイミングが見送られたりする可能性があります。

納得できないからといって感情的な態度で拒否をしてしまうと、数字に表れる待遇面で直接的に損をしてしまう結果になりかねません。

4-4 リスク4:働きづらくなる

業務命令を拒否することで、職場での人間関係が悪化し、精神的に働きづらい環境になってしまう恐れがあります

あなたが仕事を拒むことで、その分の負担が同僚や後輩に回ってしまったり、職場の空気を悪くしたりして、周囲の不満が溜まってしまうからです。

例えば、職場の人から冷たい目で見られたり、重要なプロジェクトから外されたりして、孤立してしまうかもしれません。

法律で守られる権利があるとはいえ、周囲との調和を欠いた行動により、結果として自分自身の首を絞めることもあるのです。

5章 業務命令に納得できないときの注意点

業務命令に対して意見を伝えるときは、伝え方や態度に注意を払う必要があります

言い方次第で会社からの受け取られ方が大きく異なってきますし、不利な材料を与えずに済むためです。

例えば、業務命令に納得できないときの注意点としては以下の3つがあります。

注意点1:安易に拒否という単語を使わない
注意点2:反発的な発言や態度をしない
注意点3:意見をいうときは感情的にならない

それでは、それぞれの注意点について順番に見ていきましょう。

5-1 注意点1:安易に拒否という単語を使わない

会社に対して意見を言うときは、最初から「拒否します」という強い言葉を使わないように気をつけましょう

いきなり拒絶の意思を示してしまうと、話し合いの余地がないと判断され、即座に懲戒処分の検討に入られてしまう恐れがあるからです。

例えば、「その指示には従えません」と言い切るのではなく、「少し相談させてください」という柔らかい表現を選んでください。

あくまで「やりたい気持ちはあるけれど、事情があって難しい」というニュアンスを保つことで、会社側も歩み寄りやすくなります。

5-2 注意点2:反発的な発言や態度をしない

業務命令の内容に納得がいかなくても、反発的な発言をしたり、投げやりな態度をとったりすることは控えましょう

業務命令を拒否したと言われたり、働く意欲がないと言われたりして、会社から責められる隙を与えてしまうためです。

例えば、上司の指示に対して舌打ちをしたり、わざと大きな音を立てて書類を置いたりする行為は避けましょう。

5-3 注意点3:意見をいうときは感情的にならない

自分の考えを伝える際は、感情を抑えて論理的に話すことを心がけてください

怒りに任せて話してしまうと、業務命令を拒否したと指摘されたり、反抗的態度で業務に従わなかったと指摘されたりしやすくなるためです。

あくまでも建設的な意見を述べるというスタンスで冷静に話しましょう。

6章 業務命令に納得できないときによくある疑問

業務命令に納得できないときによくある疑問としては以下の3つがあります。

Q1:業務命令に納得できないときの相談先は?
Q2:不合理な業務命令でも従わないといけないの?
Q3:業務命令の断り方は?

これらの疑問を順番に解消していきましょう。

6-1 Q1:業務命令に納得できないときの相談先は?

A.まずは社内のコンプライアンス窓口や人事部に相談してみましょう

もし社内で解決が難しい場合は、各都道府県の労働局にある「総合労働相談コーナー」や、弁護士などの外部機関を頼ってください。

無料で電話相談を受け付けている窓口もあるので、一人で抱え込まないことが大切です。

総合労働相談コーナーについては、以下の記事で詳しく解説しています。

6-2 Q2:不合理な業務命令でも従わないといけないの?

A.明らかに嫌がらせが目的であったり、法律に違反していたりする命令には従う必要はありません

ただし、自分の判断だけで無視をすると「勝手に仕事をサボった」と指摘されるリスクがあります。

まずは「なぜ不合理だと思うのか」を会社に伝え、話し合いの形をとるようにしましょう。

6-3 Q3:業務命令の断り方は?

A.「嫌です」と拒絶するのではなく、「少し相談させてほしい」と言うように話し合いや相談、お願いの形をとりましょう

7章 労働問題に強い弁護士を探すなら労働弁護士コンパス

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労働問題は非常に専門的な分野であり、弁護士であれば誰でもいいというわけではありません。

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8章 まとめ

以上のとおり、今回は、業務命令に納得できない場合について、拒否できるかを説明したうえで、正当な理由7つと簡単対応手順を解説しました。

この記事が業務命令に納得できずに悩んでいる方の助けになれば幸いです。

以下の記事も参考になるはずですので読んでみてください。

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【連載】幻冬舎ゴールドオンライン:不当解雇、残業未払い、労働災害…弁護士が教える「身近な法律」、ちょこ弁|ちょこっと弁護士Q&A他
【取材実績】東京新聞2022年6月5日朝刊、毎日新聞 2023年8月1日朝刊、週刊女性2024年9月10日号、区民ニュース2023年8月21日

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