
2025年2月22日
不当解雇
休職は何ヶ月でクビになる?休職期間満了や繰り返しでの解雇と対処法
休職期間や手続をよく確認しないまま、長期にわたり休職を継続して、解雇を言い渡されてしまう事例が多くなっています。今回は、休職が解雇猶予の制度であることを説明したうえで、休職でクビになるケースや対処法を解説します。
2025/06/06
不当解雇
不当解雇の裁判がどのようなものかよくわからずに悩んでいませんか?
裁判と言うと何か大事であるような印象を受け不安に感じてしまっている方もいるかもしれません。
不当解雇の裁判とは、裁判所に対して解雇が不当であるとして労働者の権利を認める判決を求めていく手続のことです。
不当解雇裁判の労働者の勝率は、一概には言えませんが決して低いものではないでしょう。
不当解雇の裁判で負けると、裁判にかけた労力や費用が無駄になってしまいますが、通常、負けたこと自体を理由に損害賠償を請求されるようなことはありません。
不当解雇の裁判にかかる期間は8か月~2年程度であり、訴訟提起後、口頭弁論・弁論準備手続が繰り返され、証人尋問の後、判決がされることになります。
不当解雇裁判にかかる費用は、実費として5万円~8万円前後、弁護士費用が50万~150万円程度となることが多いです。
会社から不当解雇をされてしまった場合には、焦らずに冷静に対処していくようにしましょう。
実は、不当解雇については、裁判手続きを上手に活用していくことで、良い解決をできることが少なくありません。
逆に、裁判手続を必要以上に避けようとしてしまうと、適正な解決をできないこともあります。
この記事では、不当解雇の裁判について誰でも理解できるように分かりやすく説明していこうと思います。
今回は、不当解雇の裁判について、勝率や訴訟期間・費用・流れ・事例と訴える手順4つを解説していきます。
この記事でわかることは以下のとおりです。
この記事を読み終わったら、不当解雇の裁判がどのようなものかよくわかるようになっているはずです。
目次
不当解雇の裁判とは、裁判所に対して解雇が不当であるとして労働者の権利を認める判決を求めていく手続のことです。
労働者は、不当解雇をされた場合には、以下の2つのことを認める判決をするように裁判所に求めていきます、
雇用契約上の権利を有する地位とは、現在も労働者としての地位にあることを確認するものです。
解雇日以降の賃金請求は、解雇された日から解決する時(正確には判決確定日)までの賃金の請求を求めていくもので、バックペイと呼ばれるものです。
いずれも解雇が不当だったかどうかが主な争点となってくることが通常です。
これらの事項について判決を獲得することで、現在の法的地位が明確になり、解雇日以降の賃金を回収するため会社の財産を差し押さえることも可能となります。
不当解雇裁判の労働者の勝率は、一概には言えず事案にもよりますが、決して低いものではなく、比較的労働者が勝訴しやすい事件類型と言えるでしょう。
解雇については、客観的に合理的な理由がなく、社会通念上相当と言えなければ無効になるとされています。
そして解雇は、同意なく一方的に労働者の地位を奪うもので、労働者の生活への影響も大きいため、厳格に判断される傾向にあります。
例えば、労働者の業務態度や能力に問題があっても、将来にわたって改善の可能性が低いと言える必要がありますので、十分改善指導を尽くしていない場合は不当となりがちです。
また、解雇は最終手段とされており、解雇する前に異動や降格などの手段により雇用を継続することができないかを検討する必要があります。
このように不当解雇の裁判については、比較的労働者に有利に進められることが多いです。
ただし、当然理由次第では解雇が有効となることもあるので、見通しについて弁護士によく相談するようにしましょう。
不当解雇の裁判で負けると、裁判にかけた労力や費用が無駄になってしまいます。
裁判所から労働者の請求を認めないとの判決をされることになってしまうためです。
具体的には、「原告の請求を棄却する」との判決をされることになります。
裁判所に納めた収入印紙代は戻ってきませんし、これまで支出した郵送費や印刷代も無駄になります。
また、弁護士に着手金を支払っていた場合には、着手金については敗訴しても戻ってきませんので、無駄になってしまうことになります。
これに対して、通常、労働者が負けたこと自体を理由に会社から損害賠償を請求されるようなことはありません。
憲法上、裁判を受ける権利が認められており、訴えの提起自体が違法となるのは、請求が根拠を欠くものであることを知りながら訴えを提起した場合などに限定されているためです。
そのため、不当解雇の裁判で負けてしまうことを心配して過度に委縮する必要はないでしょう。
不当解雇の裁判にかかる期間は8か月~2年程度です。
訴訟提起後、口頭弁論・弁論準備手続が繰り返され、証人尋問の後、判決がされることになります。
具体的には、訴えの提起をする際には、裁判所に訴状の正本と副本と証拠説明書2部、甲号証の写し2部、収入印紙、予納郵券等を持っていきます。
とくに補正などがなければ1~2ヶ月後に、第1回期日が指定されます。補正があると第1回期日まで少し時間がかかることもあります。
その後、しばらく、裁判所の指揮に従い、原告と被告で準備書面や証拠の提出を繰り返していきます。
おおよそ双方の主張が出尽くした段階で証人尋問を行うことになります。尋問については、半日程度で終わることが多いですが、争点が多いと1日かかることもあります。
その後、1か月~3か月程度で裁判所が判決を行うことになります。
不当解雇ですと、1年以内に解決できるのは、途中で和解が成立する事案か、又は、争点が少ない事案となります。通常は、1年以上かかることが多いです。
不当解雇裁判にかかる費用は、55万円~160万円程度となることが多いです。
内訳は以下のとおりです。
以下では、それぞれについて説明していきます。
収入印紙代とは、訴訟提起時に裁判所に納める収入印紙の費用で、2万円~5万円程度かかります。
予納郵便切手代とは、訴訟提起時に裁判所に預けることになる郵便切手代にかかる費用で、6000円程度かかります。
印刷代とは、訴状や準備書面、証拠を印刷するためにかかる費用で、5000円~1万円程度かかります。量が多くなればそれだけ必要な費用も増えます。
交通費とは、裁判所まで行くのにかかる費用です。1000円~9000円程度です。WEB期日が増えてきたので、あまり交通費はかからないことも増えてきました。
郵送費とは、訴状や準備書面、証拠を郵送するのにかかる費用で、3000円~5000円程度です。FAX送信であれば郵送費も安く抑えることができます。
着手金とは、弁護士に依頼した際に最初に支払う費用のことです。15万円~40万円程度のことが多いです。ただし、完全成功報酬制の事務所だと0円のこともあります。
報酬金とは、成功の程度に応じて弁護士に支払うことになる費用です。 獲得金額の15%~30%のことが多いです。
日当とは、期日に出頭した回数に応じて支払うことになる費用です。1期日0円~数万円のことが多いです。
合計すると弁護士費用が50万円~150万円程度となる傾向にあります。
不当解雇の裁判例は、多く存在しており日に日に蓄積されています。
例えば、不当解雇の裁判例を3つ厳選すると以下のとおりです。
【事案の概要】
記者が通信社から、職務能力の低下と改善の見込みがないことを理由に解雇されたことに対し、その無効を主張し、地位確認と未払い賃金の支払いを求めた裁判です。
【結論】
解雇は無効と判断され、解雇日から毎月67万5000円の支払いするよう命じられています。
【理由】
勤務能力の低下を理由とする解雇については、労働者に求められている職務能力の内容を検討した上で、当該職務能力の低下が、当該労働契約の継続を期待することができない程に重大なものであるか否か、使用者側が当該労働者に改善矯正を促し、努力反省の機会を与えたのに改善がされなかったか否か、今後の指導による改善可能性の見込みの有無等の事情を総合考慮して決すべきであるとしました。
【事案の概要】
Ⅹ氏は大学卒業後、Y社に採用され、本社営業部で試用期間3カ月を経て勤務していた。
しかし、Y社はX氏が学生時代に学生自治会の役員を務め、学生運動に関わっていたことが判明したため、本採用を拒否した。
理由は、X氏が身上書にこれを記載せず、採用面接でも「学生運動には興味がなかった」と回答していたためである。
【裁判所の判断】
本採用の拒否は、留保解約権の行使、すなわち雇入れ後における解雇にあたるとしました。
ただし、通常の解雇と全く同一に論ずることができず、前者については、後者の場合よりも広い範囲における解雇の自由が認められてしかるべきとされています。
【事案】
教員がうつ病の治療のため休職していたが、復職後も欠勤が続いたとして、学校により解雇された事案です。
解雇が客観的に合理的であり、社会通念上相当であるかが争点となりました。
【結論】
解雇は無効とされ、解雇の翌月から月額53万8490円の賃金を認めるのが相当とされています(ただし、退職金の支給がされていたため一部にこれが充当されています)。
【理由】
教員は、資質、能力、実績等に問題がなかったのであるから、うつ病を発症しなければ、この時期に解雇されることはなかったということができるとされました。
そうだとすると、学校は、本件解雇に当たって、教員の回復可能性について相当の熟慮のうえで、これを行うべきであったと考えられるとされています。
しかし、学校は、教員に対し、休職期間について誤った通知をしたうえ、教員の回復可能性が認められるにもかかわらず、メンタルヘルス対策の不備もあってこれをないものと断定して、再検討の交渉にも応じることなく、本件解雇に踏み切りました。
そのため、教員を退職させるとの意思決定に基づく解雇は、やや性急なものであったと言わざるを得ないとされています。
不当解雇をされてしまった場合には、焦らずに冷静に対処していくようにしましょう。
会社は不当解雇であっても、解雇が有効であることを前提に手続きを進めてきますので、あなたが何も行動を起こさなければ、自分の権利を守ることはできません。
具体的には、不当解雇を訴える裁判の手順は以下のとおりです。
それでは、これらの手順について順番に説明していきます。
不当解雇を訴える手順の1つ目は、弁護士に相談することです。
不当解雇に該当するかは法的な事項であり、見通しや方針、手続きについて、弁護士に助言、サポートをしてもらうべきだからです。
まず弁護士に相談しておくことで一貫した対応が可能となりますし、不当解雇とされる可能性が高いか、費用倒れにならないか等の見通しも教えてもらうことができます。
ただし、不当解雇については、専門性が高いため、労働問題に注力していて、不当解雇に実績のある弁護士を探すといいでしょう。
不当解雇を訴える手順の2つ目は、通知書を送付することです。
不当解雇をされたら、訴訟を提起する前に、早い段階で、会社に対して、解雇が濫用として無効である旨の通知を送るようにしましょう。
解雇された後、何もせずに放置していると、解雇が有効であると認めていたと指摘されたり、就労する意思がなかったと指摘されたりすることがあるためです。
また、併せて、解雇理由証明書を交付するように求めるといいでしょう。解雇理由を知ることで、見通してより鮮明になりますし、どのような主張や証拠を準備すればいいのかもわかるためです。
不当解雇を訴える手順の3つ目は、交渉することです。
会社に対して、通知書を送付すると通常2週間程度で回答があります。回答があると、争点が明らかになりますので、話し合いで折り合いをつけることが可能か協議しましょう。
示談により解決することができれば、早期に少ない負担で良い解決をできる可能性があります。
不当解雇を訴える手順の4つ目は、訴訟を提起することです。
話し合いで解決することが難しい場合には、訴訟を提起することになります。
訴状を作成したうえで、正本と副本を1部ずつ印刷します。また、証拠説明書を2部、甲号証の写しを2部印刷します。その他、収入印紙と郵券を準備できます。
これらを準備出来たら、裁判所に一式持参して訴訟を提起することもできますし、郵送により訴訟を提起することもできます。
ただし、最近では、訴訟を提起する前に、一度、労働審判の申し立てをすることも増えてきました。
労働審判は、全三回の期日で調停による解決を目指す手続きです。調停が成立しない場合には、労働審判委員会が審判を下します。
審判には雇用主側も労働者側も異議を出すことができ、異議が出た場合には通常の訴訟に移行することになります。
早期に実態に即した解決をすることが期待できる手続きです。
労働審判とは何かについては、以下の記事で詳しく解説しています。
不当解雇の裁判でよくある疑問としては、以下の3つがあります。
それでは、これらの疑問について順番に解消していきましょう。
A.不当解雇の裁判中に別の会社に就職することは、禁止されていません。
生活を維持するために一時的に他の会社で働きながら解雇を争っているという方も多いです。
ただし、他の会社に就職した後については、仮に解雇が不当とされても認められる賃金の金額が6割程度になってしまう可能性があります。
また、態様によっては、就労の意思を喪失していた、黙示の退職合意が成立していたとして争われることがあるので注意が必要です。
A.不当解雇の裁判では、慰謝料の請求が認められることがあります。
解雇が著しく社会的相当性に欠ける場合には、違法に労働者の権利を侵害するものとして、不法行為を構成することがあるためです。
不当解雇の慰謝料が認められる場合の相場は、50万円~100万円程度です。
ただし、解雇の無効が認められ、解雇後の賃金が支払われても癒えないような大きな精神的苦痛が必要とされており、慰謝料を請求するハードルは高くなっています。
A.不当解雇の裁判後について、復職しないこともできます。
期間の定めのない雇用契約については、2週間前に通知すれば、労働者の一方的な意思表示により退職することができるためです。
例えば、不当解雇の裁判で勝った後に余っている年次有給休暇を消化したうえで、退職することも自由です。
不当解雇の裁判に強い弁護士を探したい場合には、是非、労働弁護士コンパスを活用ください。
労働問題は非常に専門的な分野であり、弁護士であれば誰でもいいというわけではありません。
労働弁護士コンパスでは、労働問題に注力している弁護士を探すことは勿論、地域や個別の相談内容から、あなたにマッチする最高の弁護士を探すことができます。
初回無料相談や電話・オンライン相談可能な弁護士であれば、少ない負担で気軽に相談をすることができます。
どのようにして弁護士を探せばいいか分からないという場合には、まずは試しにこの労働問題弁護士コンパスを使ってみてください。
以上のとおり、今回は、不当解雇の裁判について、勝率や訴訟期間・費用・流れ・事例と訴える手順4つを解説しました。
この記事で説明したことを簡単にまとめると以下のとおりです。
この記事を読んでいただきありがとうございました。不当解雇の裁判がどのようなものかよくわからないとの悩んでいる方の役に立てばうれしいです。
以下の記事も参考になるはずですので読んでみてください。
弁護士に相談する
鈴木晶
横浜クレヨン法律事務所
神奈川県横浜市神奈川区鶴屋町2-21-1ダイヤビル303
籾山善臣
リバティ・ベル法律事務所
神奈川県横浜市中区尾上町1丁目4番地1関内STビル11F
人気記事
2025年2月22日
不当解雇
休職期間や手続をよく確認しないまま、長期にわたり休職を継続して、解雇を言い渡されてしまう事例が多くなっています。今回は、休職が解雇猶予の制度であることを説明したうえで、休職でクビになるケースや対処法を解説します。
2025年3月8日
労働一般
ブラック企業リスト掲載の事案は、労働安全衛生法違反が多く、実際のイメージとは異なる部分があります。今回は、ブラック企業リストとその内容について説明したうえで、ブラック企業を見極めるための簡単なチェックリストについて解説していきます。
2025年4月13日
ハラスメント
逆パワハラとは、部下から上司に対して行われるパワーハラスメントのことを言います。今回は、逆パワハラとは何かを説明したうえで、6つの事例や判例と簡単な対処法5つを解説します。