パワハラの慰謝料相場はいくら?適正な慰謝料を獲得するポイント4つ

パワハラの慰謝料相場はいくら?適正な慰謝料を獲得するポイント4つ

著者情報

籾山 善臣

籾山 善臣

リバティ・ベル法律事務所

神奈川県弁護士会所属。不当解雇や残業代請求、退職勧奨対応等の労働問題を数多く担当している。【著書】長時間残業・不当解雇・パワハラに立ち向かう!ブラック企業に負けない3つの方法 【連載】幻冬舎ゴールドオンライン:不当解雇、残業未払い、労働災害…弁護士が教える「身近な法律」、ちょこ弁|ちょこっと弁護士Q&A他 【取材実績】東京新聞2022年6月5日朝刊、毎日新聞 2023年8月1日朝刊、週刊女性2024年9月10日号、区民ニュース2023年8月21日

パワハラの慰謝料相場はいくら?

パワハラの慰謝料相場がいくらか知りたいと悩んでいませんか

パワハラによって出勤するのも辛くなるため、精神的苦痛に見合う慰謝料がもらえるのか気になりますよね。

パワハラの慰謝料相場は、事案によって大きく異なりますが、5万円~200万円程度となることが多いです。

他方で、被害者が自殺するなど、重大性のある事案では慰謝料が1000万円以上と高額になる傾向があります。

このように、事案によって金額が変動しやすいのは、行為の悪質性や継続性など様々な事情を考慮して判断されるためです

しかし、パワハラによる慰謝料請求も法的手続であるため、適正な慰謝料を獲得するには証拠を残しておくなど、具体的な行動へと移していくことが重要となります。

実は、パワハラの慰謝料金額が少なくなってしまう方の多くは、証拠が少なく、パワハラ行為が正当に評価されていないというのが実情です

この記事をとおして、パワハラに悩む方々に、慰謝料請求についての正しい知識を知っていただければ幸いです。

今回は、パワハラの慰謝料相場について説明したうえで、慰謝料請求が認められる条件と増額するためのポイントを解説していきます。

具体的には、以下の流れで解説していきます。
パワハラの慰謝料相場はいくら?

この記事を読めば、慰謝料請求するためにどうすればいいのかよくわかるはずです。

目次

1章 パワハラの慰謝料相場はいくら?

パワハラによる慰謝料の相場は、事案によって異なりますが、簡単に整理すると以下の4つになることが多いです。

事案毎に金額の開きがあるのは、以下の7つの要素が考慮されるためです。

①行為態様の悪質性
②ハラスメント行為の継続性
③被害者の自殺
④被害者の精神疾患の発症
⑤被害者の素因等
⑥被害者側の対応
⑦被害が軽微・回復

そのため、暴行を伴う場合や被害者を自殺に追い込むなど、行為の悪質性が高い事案では慰謝料も高額になりやすい傾向があるのです

ただし、被害者がパワハラによって精神疾患を発症しても、慰謝料の増額事由となるにすぎず、これだけを理由に相場を大きく上回る慰謝料金額が認められるわけではないので注意が必要です。

2章 パワハラによる慰謝料請求が認められる条件2つ

パワハラによる慰謝料請求は、法的根拠に基づく請求でるため、法律上の条件を満たす必要があります

具体的には、パワハラによる慰謝料請求の条件2つを簡単に整理すると以下のとおりです。

条件1:暴力や罵倒等の行為が存在する
条件2:行為が違法である

それでは、これらの条件について順番に説明していきます。

2-1 条件1:暴力や罵倒等の行為が存在する

パワハラによる慰謝料請求が認められる条件1つ目は、暴力や罵倒等の行為が存在することです

なぜなら、パワハラは「職場において行われる優越的な関係を背景とした言動」をいうので、問題となる行為の存在が必要となるためです(労働施策総合推進法30条の2)。

パワハラは、職場内の限られた人間関係の中で行われることが多いため、慰謝料請求するには、暴力が罵倒等の行為を証拠として残しておくことが重要です

2-2 条件2:行為が違法である

パワハラによる慰謝料請求が認められる条件2つ目は、行為が違法であることです

なぜなら、パワハラによる慰謝料請求の法的根拠は不法行為または債務不履行なので、行為が違法性を帯びていることが必要となるためです。

例えば、人格を否定する発言など、他人に心理的負荷を過度に蓄積させるような行為は原則として違法とされています。

ただし、違法性阻却の余地があり、その行為が合理的理由に基づいて、一般的に妥当な方法と程度で行われた場合には、正当な職務行為として違法性が阻却される可能性があります(福岡高判平20.8.25判時2032号52頁[海上自衛隊事件])。

3章 パワハラで慰謝料が認められる例6つ

パワハラに該当する例は、厚生労働省の告知(令和2年厚生労働省告示第5号)で6つに整理されています

具体的には、パワハラで慰謝料が認められる例は以下のとおりです。

例1:身体的な攻撃
例2:精神的な攻撃
例3:人間関係からの切り離し
例4:過大な要求
例5:過小な要求
例6:個の侵害

パワハラで慰謝料が認められる例6つ

パワハラで慰謝料が認められる例パワハラで慰謝料が認められる例 (2)

それでは、これらの例について順番に説明していきます。

3-1 例1:身体的な攻撃

パワハラで慰謝料が認められる例1つ目は、身体的な攻撃です

身体的な攻撃とは、暴行や傷害などの身体的ダメージを与える行為をいいます。

身体的攻撃の該当例と非該当例を簡単に整理すると以下のとおりです。

身体的な攻撃

厚生労働省委託事業の職場におけるパワハラの実態調査報告書では、身体的な攻撃を受けたと感じる例として、以下の3つが挙げられています。

・カッターナイフで頭を切りつけられた
・唾を吐かれたり、物を投げつけられたり蹴られたりした
・痛いといったところを冗談ぽくわざとたたく

※出典:職場のパワーハラスメントに関する実態調査報告書

3-2 例2:精神的な攻撃

パワハラで慰謝料が認められる例2つ目は、精神的な攻撃です

精神的な攻撃とは、脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言などの精神的なダメージを与える行為をいいます。

精神的攻撃の該当例と非該当例を簡単に整理すると以下のとおりです。

精神的な攻撃

厚生労働省委託事業の職場におけるパワハラの実態調査報告書では、精神的な攻撃を受けたと感じる例として、以下の3つが挙げられています。

・いること自体が会社に対して損害だと大声で言われた
・ミスをしたら現金に換算し支払わされる
・全員が観覧するノートに何度も個人名を出され、能力が低いと罵られた

※出典:職場のパワーハラスメントに関する実態調査報告書

3-3 例3:人間関係からの切り離し

パワハラで慰謝料が認められる例3つ目は、人間関係からの切り離しです

人間関係からの切り離しとは、隔離・仲間外し・無視などの排斥行為をいいます

人間関係からの切り離しの該当例と非該当例を簡単に整理すると以下のとおりです。

人間関係からの切り離し

厚生労働省委託事業の職場におけるパワハラの実態調査報告書では、人間関係からの切り離しを受けたと感じる例として、以下の3つが挙げられています。

・今まで参加していた会議から外された
・職場での会話での無視や飲み会などに一人だけ誘われないなど
・他の部下には雑談や軽口をしているが、自分とは業務の話以外一切ない

※出典:職場のパワーハラスメントに関する実態調査報告書

3-4 例4:過大な要求

パワハラで慰謝料が認められる例4つ目は、過大な要求です

過大な要求とは、業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害などをいいます。

過大な要求の該当例と非該当例を簡単に整理すると以下のとおりです。

過大な要求

厚生労働省委託事業の職場におけるパワハラの実態調査報告書では、過大な要求を受けたと感じる例として、以下の3つが挙げられています。

・多大な業務量を強いられ、月 80 時間を超える残業が継続していた
・明らかに管理者の業務であるにもかかわらず、業務命令で仕事を振ってくる
・絶対にできない仕事を、管理職ならやるべきと強制された

※出典:職場のパワーハラスメントに関する実態調査報告書

3-5 例5:過小な要求

パワハラで慰謝料が認められる例5つ目は、過小な要求です

過小な要求とは、業務上の合理性なく能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じたり、仕事を与えないことをいいます。

過小な要求の該当例と非該当例を簡単に整理すると以下のとおりです。

過小な要求

厚生労働省委託事業の職場におけるパワハラの実態調査報告書では、過小な要求を受けたと感じる例として、以下の3つが挙げられています。

・故意に簡単な仕事をずっとするように言われた
・一日中掃除しかさせられない日々があった
・入社当時に期待・希望されていた事とかけ離れた事務処理ばかりさせられる

※出典:職場のパワーハラスメントに関する実態調査報告書

3-6 例6:個の侵害

パワハラで慰謝料が認められる例6つ目は、個の侵害です

個の侵害とは、私的なことに過度に立ち入るなどのプライバシーを侵害する行為をいいます。

個の侵害の該当例と非該当例を簡単に整理すると以下のとおりです。

個の侵害

厚生労働省委託事業の職場におけるパワハラの実態調査報告書では、身体的な攻撃を受けたと感じる例として、以下の3つが挙げられています。

・出身校や家庭の事情等をしつこく聞かれ、答えないと総務に聞くと言われた
・接客態度がかたいのは彼氏がいないからだと言われた
・引越したことを皆の前で言われ、おおまかな住所まで言われた

※出典:職場のパワーハラスメントに関する実態調査報告書

4章 6つの裁判例から見るパワハラの慰謝料相場

パワハラの慰謝料相場を把握するには、裁判例における認容額が参考になります

例えば、パワハラの類型ごとの裁判例6つを整理すると以下のとおりです。

6つの裁判例から見るパワハラの慰謝料相場

それでは、これらの裁判例について順番に紹介していきます。

4-1 裁判例1:名古屋地判平成18年9月29日判タ1247頁285号ファーストリテイリング(ユニクロ店舗)事件|身体的な攻撃

従業員は、店長から板壁やロッカーに背部や頭部を数回打ち付ける暴行を受けたことから、店長と会社に対し、不法行為に基づく損害賠償請求として約5932万円を請求した事案について、

裁判所は、店長の暴行が違法なことは明らかであり、これにより従業員がPTSDを罹患しているものの、休業補償給付金を受け取っていることから、約224万円について請求を認めました。

判例は以下のように説明しています。

名古屋地判平成18年9月29日判タ1247頁285号
「被告Bは、原告に対し、本件事件において暴行を加えたというのであるから、その違法性は明らかであり、これにより原告が被った損害を賠償すべき責任を負う。
…以上によれば、原告の請求は、被告ら及び承継参加人に対し、連帯して224万7200円…の支払を求める限度において理由があるからこれを認容」する。

4-2 裁判例2:東京地判平成21年1月16日労判988号91頁|精神的な攻撃

部下は、上司から「この会社にいる意味があるのか」「うつ病みたいな辛気臭いやつはうちの会社にいらん」という罵声を受けたことから、不法行為に基づく損害賠償請求として120万円を請求した事案について、

裁判所は、パワハラ後におけるうつ病の再発について、パワハラとの因果関係は不明であるものの、上司の発言は侮辱にあたるとして80万円について請求を認めました。

判例は以下のように説明しています。

東京地判平成21年1月16日労判988号91頁
「B部長の発言は、単なる業務指導の域を超えて、原告の人格を否定し、侮辱する域にまで達しているといえ、不法行為と評価されてもやむを得ないものということができる。」
なお、「B部長によりパワーハラスメントを受けていたことも認められるところであるが、これとうつ病との因果関係も不明というほかない。」

4-3 裁判例3:富山地判平成17年2月23日判タ1187号121頁[トナミ運輸事件]|人間関係からの切り離し

社員が、法令違反を告発したことに対して会社から差別的処遇を受けたことから、不法行為又は債務不履行に基づく損害賠償請求として1000万円請求した事案について、

裁判所は、社員が差別的処遇によって精神的苦痛を受けたことは明らかであるが、差別的処遇の原因には社員の態度も影響していることから、慰謝料は200万円が妥当と判断しています。

判例は以下のように説明しています。

富山地判平成17年2月23日判タ1187号121頁
「原告が、被告の前記5(1)〈1〉、〈2〉の行為によって、深刻な精神的打撃を受け、無力感、屈辱感等の多大な精神的苦痛を被ったことは明らかである。
…新教育研修所に移った際の原告の態度には、…被告から不利益に取り扱われる原因となってもやむを得ないものがあったというべきである。このことは、精神的損害の算定にあたっても減額要素として考慮せざるを得ない。
…以上の事情を総合考慮すると、精神的損害に対する慰謝料の額は200万円と認めるのが相当である。」
〈1〉=旧教育研修所に異動させて長期間にわたり個室においたうえほとんど雑務にのみ従事させ、新教育研修所に移った後も同様の仕事しか与えなかったこと
〈2〉=原告の昇格を停止して賃金格差を生じさせたこと

4-4 裁判例4:大阪地判平成20年9月11日労判973号41頁[天むす・すえひろ事件]|過大な要求

従業員は、会社代表者の無理な指示のほか指示内容の変更や一方的な非難に耐えかねて退職したことから、会社に対して不法行為又は債務不履行に基づく損害賠償として1200万円を請求した事案について、

裁判所は、会社代表者の行為は従業員の法的利益を侵害し、不法行為にあたるとして150万円の請求を認めました。

判例は以下のように説明しています。

大阪地判平成20年9月11日労判973号41頁
「乙山社長は、原告に対し、職務に関して、肉体的疲労及び精神的ストレスを蓄積させ、健康状態を著しく悪化させるような言動を繰り返し行い、原告は、精神疾患により就労不能な状態になり、退職を決意せざるを得ない状態になったものと認められる。乙山社長の上記行為は、違法に原告の権利又は法的利益を侵害したものとして、不法行為に当たると認めるのが相当である。
…以上によれば、被告は、原告に対し、不法行為に基づく慰謝料150万円及びこれに対する民法所定の遅延損害金の支払義務を負う。」

4-5 裁判例5:大阪地判平成12年8月28日労判793号13頁[フジシール事件]|過小な要求

管理職は、退職勧奨を拒否した後に業務上の必要性のない業務に従事させられたことから、会社に対して慰謝料500万円を請求した事案について、

裁判所は、配転命令は業務上の必要性がなく、降格処分は規定に基づかないことから無効であるため、配転命令及び降格処分を無効とすることで足り、慰謝料は認められないと判断しています。

判例は以下のように説明しています。

大阪地判平成12年8月28日労判793号13頁
「当時筑波工場でのインク担当業務に原告を従事させなければならない業務上の必要性があったものとはいえず,退職勧奨を拒否した直後に従前の開発業務とは全く異なった業務に従事させていること,原告が担当した業務がその経験や経歴とは関連のない単純労働であったこと等に照らせば,本件配転命令1は,退職勧奨拒否に対する嫌がらせとして発令されたものというべきで権利の濫用として無効であるといわざるをえない。
…被告の就業規則上,「降格」処分については,懲戒の種類としての記載があることは認められるものの,いかなる場合に降格処分となるかという要件が定められていない。…本件降格処分は規定に基づかないものであるから無効である。
…慰謝料の請求については、本件配転命令1、2、及び本件降格処分による精神的損害については、これを無効とすることで足り、これを超える損害は認められない。」

4-6 裁判例6:横浜地判平成2年5月29日判時1367号131頁[ダイエー事件]|個の侵害

社員は、上司から賃借中の建物につき、その明け渡しを拒否したことを理由に不利益取扱いを受けたことから、不法行為に基づく損害賠償として計1200万円を請求した事案について、

裁判例は、ある住宅の賃借権が紛争状態にある場合、解決方針は賃借人たる社員自らの判断において決定すべき問題であり、上司が執拗に説得することは社員の自己決定の自由を侵害するとして、慰謝料は30万円が妥当と判断しています。

判例は以下のように説明しています。

横浜地判平成2年5月29日判時1367号131頁
「被告丙沢は、原告に対し、原告が本件建物の明渡を頑強に拒んでいることを知ったうえで、人事上の不利益をほのめかしながら、少なくとも二か月間前後八回にわたり執拗に本件建物を被告乙川に明け渡すことを説得し続けたというのであるから、上司として許された説得の範囲を越えた違法な行為というべきであり、被告丙沢は、このことにより原告が受けた精神的苦痛を慰謝すべきものというべく、これを慰謝するには金30万円の支払をもってするのが相当である。

5章 パワハラの慰謝料を増額するポイント4つ

適正な慰謝料を獲得するには、ポイントを押さえた行動をしていくことが重要となります。

具体的には、パワハラの慰謝料を増額するポイント4つを整理すると以下のとおりです。

ポイント1:パワハラ行為を記録する
ポイント2:うつ病が疑われる場合には診察を受ける
ポイント3:労働審判・訴訟を用いる
ポイント4:弁護士に相談する

パワハラの慰謝料を増額するポイント4つ

それでは、これらのポイントについて順番に説明していきます。

5-1 ポイント1:パワハラ行為を記録する

パワハラの慰謝料を増額するポイント1つ目は、パワハラ行為を記録することです

パワハラを理由とする損害賠償請求が認められるには、パワハラの事実を立証しなければいけません。

つまり、証拠が不十分だと、慰謝料が低額になってしまうおそれがあるのです

例えば、何度もパワハラを受けていた場合でも、そのうちの1つしか立証できない場合には、パワハラの内容が正当に評価されず、慰謝料も本来の相場から離れた金額となる可能性があります。

そのため、パワハラが行われた場合には、録音や被害状況をメモするなどして、記録しておくことが重要となります。

5-2 ポイント2:うつ病が疑われる場合には診察を受ける

パワハラの慰謝料を増額するポイント2つ目は、うつ病が疑われる場合には診察を受けることです

なぜなら、パワハラを理由とする慰謝料請求では、精神疾患の有無も考慮要素とされているためです。

例えば、精神疾患を患っていても、パワハラとの間に因果関係がなければ、精神疾患の発症が慰謝料金額に影響することはありません。しかし、診断書がある場合、パワハラの時期と診察を受けた時期の前後関係などから、因果関係を立証しやすくなる可能性があります。

そのため、パワハラを受けたことにより、うつ病などの精神疾患を発症した場合には、早めに診察を受けて診断書を取得しておきましょう

5-3 ポイント3:労働審判・訴訟を用いる

パワハラの慰謝料を増額するポイント3つ目は、労働審判・訴訟を用いることです

パワハラを訴える方法としては、労働局のあっせんを経て交渉することも考えられます。しかし、この方法は迅速な解決を主眼とした手続であり、証拠の心証形成の心理が行われることはないため、慰謝料が低くなりやすい傾向があります。

証拠からパワハラ行為を正当に評価してもらい、適正な慰謝料を獲得するために労働審判・訴訟を用いることが考えられます

5-4 ポイント4:弁護士に相談する

パワハラの慰謝料を増額するポイント4つ目は、弁護士に相談することです

パワハラを理由とする慰謝料請求は、パワハラ行為の悪質性などで金額が変動するため、法的手続きを見据えた請求をすることが重要となります。

また、パワハラがエスカレートすると、差別的な処遇や不当解雇にまで至るケースも少なくないため、迅速に対処していく必要があります。

そのため、慰謝料請求のように専門性の高い法的手続きについては、依頼するかどうかを問わず、一度弁護士に相談しておくといいでしょう

6章 パワハラ慰謝料を請求する手順4つ

慰謝料を請求する場合、法的手続きを見据えて請求していくことが重要になります。

具体的には、パワハラ慰謝料を請求する手順4つを簡単に整理すると以下のとおりです。

手順1:請求先を決める
手順2:慰謝料を請求する
手順3:交渉を行う
手順4:労働審判・訴訟を申し立てる

パワハラ慰謝料の請求手順

それでは、これらの手順について順番に説明していきます。

6-1 手順1:請求先を決める

パワハラ慰謝料を請求する手順1つ目は、請求先を決めることです

パワハラ慰謝料を請求する場合、様々な法的構成が考えられ、例えば以下の4つが挙げられます。

パワハラの慰謝料の請求先

上司からパワハラを受けた場合、まずは上司個人に対して請求することが考えられます

しかし、個人ですと支払能力に不安が残るため、会社に対して上司のパワハラ行為の責任を追及していくことも考えられます。

また、会社がパワハラ行為を漫然と放置していた場合のように、パワハラが会社全体の行為として見られる場合には、共同不法行為として会社と上司個人の連帯責任を追及できる可能性もあります

そのため、パワハラ慰謝料を請求したいと感じたときは、まず誰に請求するのか決めておく必要があります

6-2 手順2:慰謝料を請求する

パワハラ慰謝料を請求する手順2つ目は、慰謝料を請求することです

パワハラを理由とする慰謝料を請求する方法3つを整理すると以下のとおりです。

・口頭での請求
・メールや手紙による請求
・内容証明郵便による請求

しかし、口頭での請求や手紙による請求では、交渉の過程が不明瞭となり、後にトラブルとなるおそれがあります。

そのため、交渉経緯を明確にするためにも、内容証明郵便で請求することが望ましいです。

6-3 手順3:交渉を行う

パワハラ慰謝料を請求する手順3つ目は、交渉を行うことです

相手方に通知が届いた後は、交渉を行うことになります。

交渉内容は相手方の主張にもよりますが、提示された慰謝料金額などを踏まえてお互いが納得できる結果を模索することになります。

交渉による解決は、訴訟に至った場合と比較して時間的・経済的に大きな利益をもたらすことがある反面、迅速な解決のために慰謝料金額を譲歩するなど不利益となる側面もあります

6-4 手順4:労働審判・訴訟を申し立てる

パワハラ慰謝料を請求する手順4つ目は、労働審判・訴訟を申し立てることです

交渉による解決が難しい場合には、労働審判を申立てたり訴訟を提起することになります。

労働審判は会社との間における民事事件を解決する手続きです。つまり、会社に対して損害賠償請求できるものの、加害者に対して損害賠償請求することはできません

そのため、加害者に対して損害賠償請求したい場合、訴訟を提起することになります

また、請求金額が60万円以下の場合、少額訴訟により簡便かつ迅速な解決が期待できます。しかし、複雑な審理には向かないこと、相手方が反対した場合には利用できないことに注意が必要です。

7章 パワハラに強い弁護士を探すなら弁護士コンパス

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8章 まとめ

以上の通り、今回は、パワハラの慰謝料相場について説明したうえで、慰謝料請求が認められる条件と増額するためのポイントを解説しました。

この記事の要点を簡単に整理すると以下のとおりです。

まとめ

・パワハラの慰謝料相場は、事案によって大きく異なりますが、5万円~200万円程度となることが多いです。

・パワハラによる慰謝料請求が認められる条件2つを整理すると以下のとおりです。
条件1:暴力や罵倒等の行為が存在する
条件2:行為が違法である

・パワハラで慰謝料が認められる例6つを整理すると以下のとおりです。
例1:身体的な攻撃
例2:精神的な攻撃
例3:人間関係からの切り離し
例4:過大な要求
例5:過小な要求
例6:個の侵害

・パワハラの慰謝料を増額するポイント4つを整理すると以下のとおりです。
ポイント1:パワハラ行為を記録する
ポイント2:うつ病が疑われる場合には診察を受ける
ポイント3:労働審判・訴訟を用いる
ポイント4:弁護士に相談する

・パワハラ慰謝料を請求する手順4つを整理すると以下のとおりです。
手順1:請求先を決める
手順2:慰謝料を請求する
手順3:交渉を行う
手順4:労働審判・訴訟を申し立てる

この記事がパワハラの慰謝料相場を知りたいと悩んでいる方の助けになれば幸いです。

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