
2025年2月22日
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2025/06/08
残業代
残業代の裁判がどのようなものか知りたいと悩んでいませんか?
裁判を経験したことがない人も多いでしょうから中々イメージを持ちにくいですよね。
残業代の裁判とは、裁判所に未払いの残業代の支払いを命じる判決を求めていく手続のことです。
残業代請求の裁判期間は、8か月~1年6か月程度です。
残業代裁判の勝率は事案にもよりますが、他の類型に比べて労働者が敗訴してしまうことが少ない類型といえるでしょう。
残業代請求の裁判費用は、45万円~110万円程度です。
残業代裁判を行うには、いきなり訴訟を提起するのではなく、いくつかの手順を踏んだうえで行うといいでしょう。
実は、残業代を請求しても素直に支払いに応じてこない会社が少なからずあり、このような会社に対しては裁判手続を利用していくことが有用です。
裁判手続を利用することで、不合理な主張に固執して支払いに応じようとしない会社からも、強制的に残業代を回収できる可能性があります。
この記事をとおして、残業代の裁判について具体的なイメージを持っていただければ幸いです。
今回は、残業代の裁判(訴訟)とは何かを説明したうえで、未払い請求の期間や勝率・費用と4つの手順を解説していきます。
具体的には、以下の流れで説明していきます。
この記事を読めば、残業代の裁判がどのようなものかよくわかるはずです。
目次
残業代の裁判とは、裁判所に未払いの残業代の支払いを命じる判決を求めていく手続のことです。
労働者は、残業代の裁判では、「未払い残業代の支払い」と「付加金の支払い」を請求するのが通常です。
未払い残業代というのは、残業時間に対応する賃金の未払いのことであり、3年の時効にかかっていない範囲で遡って請求していきます。
付加金というのは、悪質な事案において、未払いの残業代に加えて、これと同額のペナルティを上乗せして支払うように命じるものです。つまり2倍の金額を求めるものです。
残業代の裁判では、残業時間や賃金の性質、変形労働時間制や管理監督者性等が争点になることが多いです。
裁判所に残業代の支払いを命じる判決をしてもらうことで、労働者は会社の財産を差し押さえて、強制的に残業代を回収することが可能となります。
残業代請求の裁判期間は、8か月~1年6か月程度です。
まず、残業代の裁判を開始するには、裁判所に訴えの提起をする必要があります。
訴訟を提起してから1~2か月程度で第1回目の期日が設定されることが多いですが、補正や移送などがあると3か月程度かかってしまうこともあります。
第1回期日以降は口頭弁論期日又は弁論準備手続期日が繰り返されていくことになります。双方の主張が出尽くすまで続きますので、通常6か月~1年程度かかります。
双方の主張が出尽くすと、証人尋問を行うことになります。証人を法廷に呼んで、半日程度かけて行います。争点や証人が多いと1日かかることもあります。
証人尋問を終えると、通常、1か月~3か月程度で判決がされることになります。
残業代裁判の勝率は事案にもよりますが、他の類型に比べて労働者が敗訴してしまうことが少ない類型といえるでしょう。
法律や規則によりその金額が客観的に算定することができるためです。
例えば、残業時間の一部が認められなかったり、賃金の性質の一部が基礎に含まれないとされたりしても、通常、残業代の未払い金額が減るだけで、0円にはならないことも多いです。
万が一、残業代の裁判で敗訴してしまうと、かけた費用や労力が無駄になってしまいます。
ただし、残業代の裁判で敗訴したこと自体を理由として逆に損害賠償を請求されることは通常ありませんので、過度に委縮する必要はないでしょう。
残業代請求の裁判費用は、45円~110万円程度です。
内訳は以下のとおりです。
以下では、それぞれについて説明していきます。
収入印紙代とは、訴訟提起時に裁判所に納める収入印紙の費用で、2万円~5万円程度かかります。
予納郵便切手代とは、訴訟提起時に裁判所に預けることになる郵便切手代にかかる費用で、6000円程度かかります。
印刷代とは、訴状や準備書面、証拠を印刷するためにかかる費用で、5000円~1万円程度かかります。量が多くなればそれだけ必要な費用も増えます。
交通費とは、裁判所まで行くのにかかる費用です。1000円~9000円程度です。WEB期日が増えてきたので、あまり交通費はかからないことも増えてきました。
郵送費とは、訴状や準備書面、証拠を郵送するのにかかる費用で、3000円~5000円程度です。FAX送信であれば郵送費も安く抑えることができます。
着手金とは、弁護士に依頼した際に最初に支払う費用のことです。0円~30万円程度のことが多いです。残業代については、完全成功報酬制の事務所も多く、このような事務所だと着手金が0円とされています。
報酬金とは、成功の程度に応じて弁護士に支払うことになる費用です。 獲得金額の15%~30%のことが多いです。
日当とは、期日に出頭した回数に応じて支払うことになる費用です。1期日0円~数万円のことが多いです。
合計すると弁護士費用が40万円~100万円程度となる傾向にあります。
残業代請求の裁判例は、日々たくさん蓄積されています。
知っておいていただきたい裁判例を2つだけ紹介すると以下のとおりです。
それでは、これらの裁判例について順番に説明していきます。
【事案】
本件は、労働者である原告が、勤務先である各種燃料の卸売・販売を行う中規模企業(被告会社)に対して、平成26年10月から平成28年6月までの未払残業代(割増賃金)および遅延損害金の支払いを求めた事案です。さらに、労働者は労働基準法114条に基づく付加金の支払いも請求しました。
労働者は、会社で総務人事課の課長として勤務し、人事労務管理、総務業務、採用面接、トラブル対応、就業規則の改定など幅広い業務を担当していました。会社は、労働者が「管理監督者」に該当するとして、残業代の支払い義務はないと主張しました。
【結論】
裁判所は、労働者が労働基準法41条2号の管理監督者には該当しないと判断し、被告会社に対して以下の支払いを命じました。
未払割増賃金:約373万7991円
遅延損害金:支払日まで年6%の利率
一方で、付加金の請求については棄却されました。
【理由】
裁判所は、労働者が一定の業務遂行権限を持っていたものの、以下の理由から「管理監督者」には該当しないと判断しました。
・実質的な決定権限の欠如: 採用面接で一定の意見が反映されることはあったものの、最終的な人事、給与、懲戒処分の決定権限は会社の代表者にあった。
・経営者との一体性の欠如: 重要な経営判断や企業方針に関わる権限は持たず、経営者と一体となる立場ではなかった。
・労働時間の裁量の欠如: 勤務時間はタイムカードで管理され、自由な裁量はなかった。
労働者のタイムカードの打刻記録が実労働時間を示すものと認められました。会社は、労働者の業務量が少なく残業は不要であったと主張しましたが、会社の規模と労働者の業務内容からして不合理とされました。
会社は、労働者を管理監督者と認識していたことに一定の合理性があったため、悪質性は認められず、付加金の支払いは命じられませんでした。
東京地判令元年9月27日労判ジャーナル95号32頁[エルピオ事件]
【事案の概要】
複数の教職員が原告となって、地方公共団体を被告として、違法な時間外勤務に対する未払い賃金等の支払いを求めた訴訟です。
教職員らは、会社が設置する公立小学校・中学校で勤務し、違法な黙示の職務命令に基づき時間外勤務を強いられたとしました。
【結論】
労働基準法37条に基づいて時間外勤務手当の請求ができるとの主張は採用できないとして教職員らの残業代請求を棄却しました。
【理由】
給特法等の立法趣旨、立法経緯を踏まえると、自主的、自発的、創造的に正規の勤務時間を超えて勤務した場合には、時間外勤務手当は支給されないとしました。
ただし、校長等から時間外に強制的に特定の業務をすることを命じられたと評価できるような場合には、違法になる余地があるとしています。
本件では、教職員らが勤務していた学校の校長が教職員らに対して特定の業務について時間外の職務を命じたと認められないとしました。
京都地判平20年4月23日労判961号13頁[京都市(教員・勤務管理義務違反)事件]
残業代裁判を行うには、いきなり訴訟を提起するのではなく、いくつかの手順を踏んだうえで行うといいでしょう。
良い解決をするには見通しや方針を立てたうえで、準備をしたうえで、解決に向けて適切な手段を講じていくべきだからです。
具体的には、残業代裁判を行う手順は以下のとおりです。
それでは、これらの手順について順番に説明していきます。
残業代裁判を行う手順の1つ目は、弁護士に相談することです。
残業代の裁判は、専門性の高い手続きとなりますので、まずは見通しや方針について弁護士に助言をしてもらうべきだからです。
一度行った主張は後から容易に撤回できないことがあり、法的な主張や構成によっても獲得できる金額が大きく変わってくる場合があります。
また、事案によっては十分な残業代を請求できない可能性もあり、費用倒れになってしまうリスクもあります。
そのため、事前に弁護士に十分見通しや方針についての助言をしてもらい、サポートを受けながら手続きを進めていくべきなのです。
ただし、残業代請求については、弁護士であれば誰でもいいというわけではなく、労働問題に注力していて、残業代請求の実績のある弁護士を探すようにしましょう。
残業代裁判を行う手順の2つ目は、通知書を送付することです。
残業代には3年の時効がありますので、給料日から3年が経過した部分から消滅時効が完成していってしまいます。
残業代を請求する旨の通知書を送付することで6か月間時間の完成が猶予されますので、この間に正確な残業代を計算したり、交渉をしたりすることになります。
また、併せて、残業代を計算するのに必要で手元にない資料などは、会社に開示を求めていくといいでしょう。
残業代裁判を行う手順の3つ目は、交渉することです。
会社から回答があり、争点が明確になったら、話し合いで折り合いをつけることが可能かどうか協議してみるといいでしょう。
交渉により示談が成立すれば、早期に少ない負担と労力で良い解決をできる可能性があります。
残業代裁判を行う手順の4つ目は、訴訟を提起することです。
話し合いにより解決することが難しい場合には、裁判所を用いた解決をすることを検討しましょう。
訴状を作成したうえで、正本と副本を1部ずつ印刷し、証拠(甲号証)の写しを2部印刷しまう。
裁判所に持参して訴訟を提起することもできますし、郵送により訴訟を提起することもできます。
ただし、訴訟を提起する前に、労働審判を申し立てることも増えてきています。
労働審判とは、全3回までの期日で調停による解決を目指す手続きであり、早期に紛争の実情に即した解決をすることが期待できます。
労働審判については、以下の記事で詳しく解説しています。
残業代裁判について、よくある疑問としては以下の3つがあります。
それでは、これらの疑問について順番に解消していきましょう。
A.残業代の裁判を弁護士に依頼する場合には、弁護士のみで裁判に出頭するのが通常です。
ただし、証人尋問については、本人の出頭も必要となります。
A.残業代の計算については、弁護士会が出している「きょうとソフト」というエクセルデータで計算して、裁判所に提出するのが通常です。
ただし、「きょうとソフト」によらなければいけないわけではないため、自分で電卓やエクセルを使って計算することも可能です。
A.残業代の裁判期日について、WEBにより行われることが主流になりつつあります。
Teamsを利用して、弁護士事務所からPCで期日に参加することになります。
尋問の期日は法廷に出頭することが通常ですが、第1回から尋問の前の期日まではWEBにより行うということが多いです。
そのため、遠方の弁護士事務所にも依頼しやすい環境になってきています。
残業代の裁判に強い弁護士を探したい場合には、是非、労働弁護士コンパスを活用ください。
労働問題は非常に専門的な分野であり、弁護士であれば誰でもいいというわけではありません。
労働弁護士コンパスでは、労働問題に注力している弁護士を探すことは勿論、地域や個別の相談内容から、あなたにマッチする最高の弁護士を探すことができます。
初回無料相談や電話・オンライン相談可能な弁護士であれば、少ない負担で気軽に相談をすることができます。
どのようにして弁護士を探せばいいか分からないという場合には、まずは試しにこの労働問題弁護士コンパスを使ってみてください。
以上のとおり、今回は、残業代の裁判(訴訟)とは何かを説明したうえで、未払い請求の期間や勝率・費用と4つの手順を解説しました。
この記事の要点を簡単に整理すると以下のとおりです。
この記事が残業代の裁判がどのようなものか知りたいと悩んでいる方の助けになれば幸いです。
以下の記事も参考になるはずですので読んでみてください。
弁護士に相談する
鈴木晶
横浜クレヨン法律事務所
神奈川県横浜市神奈川区鶴屋町2-21-1ダイヤビル303
籾山善臣
リバティ・ベル法律事務所
神奈川県横浜市中区尾上町1丁目4番地1関内STビル11F
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