
2025年2月22日
不当解雇
休職は何ヶ月でクビになる?休職期間満了や繰り返しでの解雇と対処法
休職期間や手続をよく確認しないまま、長期にわたり休職を継続して、解雇を言い渡されてしまう事例が多くなっています。今回は、休職が解雇猶予の制度であることを説明したうえで、休職でクビになるケースや対処法を解説します。
2025/05/31
不当解雇
正社員として働いていたのに解雇されてしまい困っていませんか?
正社員として安定して働くことができると思っていたのに、突然、解雇すると言われても納得できませんよね。
会社は、法律上、正社員として働いている方を簡単に解雇することはできません。
解雇については、労働者の同意なく退職させるものであるため、解雇権濫用法理により厳格な規制が設けられています。
正社員が解雇になる理由は様々ありますが、よくあるのは能力不足や勤務態度の問題です。昨今は、病気やケガ、ハラスメント言ったものもよく聞くようになってきました。
正社員がクビになる前には、通常は、その前兆があり、繰り返し業務改善を指導されたり、まずは自主的に退職するように促されたりします。
万が一、解雇になってしまった場合でも、会社に対していくつかの請求をできる可能性があるお金があります。
もしも、正社員の方が解雇をされてしまった場合でも、焦らずに冷静に対処していくことが必要です。
実際のところ、会社が解雇をしてきた場合でも、法律上の条件を満たしていないは不当な解雇にすぎないことがよくあり、適切に対処していくことであなたの権利を守ることができる場合が多いのです。
この記事では、正社員として働く労働者の方々に解雇についての考え方をわかりやすく伝えていきたいと思います。
今回は、正社員の解雇について、解雇条件や解雇になる理由などを説明したうえで、解雇された際の権利や対処法を解説していきます。
具体的には、この記事でわかることは以下のとおりです。
この記事を読み終わったら、正社員の方が解雇されたらどうすればいいのかがよく分かるようになっているはずです。
目次
会社は、法律上、正社員として働いている方を簡単に解雇することはできません。
なぜなら、法律上、解雇については、解雇権濫用法理により厳格な規制が設けられています。
解雇とは、労働者の同意なく、一方的に退職させることをいいます。労働者の同意がない代わりに厳格な規制がされています。
契約社員について、契約期間の満了をもって更新しないことは、解雇ではありませんので、更新の期待がない限り、厳格な規制はありません。
このことから契約社員は、正社員に比べて地位が不安定になりがちです。
これに対して、正社員は、無期雇用契約、つまり契約期間がありません。労働者が同意しないのに退職させようとするのであれば、解雇権濫用法理をクリアしなければなりません。
そのため、正社員については、法律上、クビにすることがとても難しいのです。
契約社員の解雇については、以下の記事で詳しく解説しています。
正社員の解雇については、解雇権濫用法理により厳格な規制が設けられています。
同意なく退職させるものであり、生活の糧を一方的に奪うことになるためです。
具体的には、正社員を解雇するには、客観的に合理的な理由がなく、社会通念上相当であることが必要とされています。
例えば、最終手段の原則として、解雇前に期待可能な回避手段が尽くす必要があるため、業務内容の変更などを検討せずに解雇すると合理性ないとして濫用とされる傾向にあります。
また、将来予測の原則として、解雇前に改善指導を繰り返したのに、将来にわたって改善が期待できないと言えないような場合には、合理性がなく濫用とされる傾向にあります。
もし、解雇の条件が満たされていない場合には、解雇は濫用として無効となります。
つまり、解雇日以降もその会社の労働者であったということになります。
正社員が解雇になる理由は様々あります。
労働者側の原因の場合もあれば、会社側に解雇の原因があることもあります。
例えば、正社員が解雇になる理由でよくあるものを5つ挙げると以下のとおりです。
それでは、これらの理由について順番に説明していきます。
正社員が解雇になる理由の1つ目は、能力不足です。
よくある最も典型的な解雇理由の一つです。会社から期待された能力を下回っているような場合には、解雇されることがあります。
例えば、業務上のミスが多く、これによって、会社に大きな支障が生じてしまっているような場合です。
また、会社との間で設定された目標を大きく下回るなどにより、人事考課により最低評価が続いたような場合です。
このような場合には能力が不足しているとして、正社員であっても解雇されることがあります。
正社員が解雇になる理由の2つ目は、勤務態度です。
会社での働き方や業務をしている際の態度などによっても、雇用を継続することが難しいと判断されてしまうことがあるためです。
例えば、欠勤や遅刻、早退を繰り返し、業務に支障を生じさせるような場合です。
また、挨拶をしない、無視をするなど他の従業員との接し方に問題があるような場合です。
このような場合には勤務態度が不良であるとして、正社員であっても解雇されることがあります。
正社員が解雇になる理由の3つ目は、病気・怪我です。
とくに昨今では適応障害やうつ病などのメンタルヘルスを理由に解雇されるケースが増えてきました。
例えば、うつ病の診断書を会社に提出して数か月の休職をしていたとします。
もっとも、休職期間が満了しても、症状は治癒せず復職できる状態にはなりませんでした。
このような場合には、心身の状況が業務に耐えられないとして、正社員であっても解雇されることがあります。
うつ病による解雇については、以下の記事で詳しく解説しています。
正社員が解雇になる理由の4つ目は、ハラスメントです。
パワハラやセクハラなどを理由に解雇をされてしまう例が増えています。
例えば、部下に対して乱暴な発言をしたり、部下に対して嫌がらせをしたりすることを理由にパワハラとして解雇を言い渡されることがあります。
また、女性の部下に触ったり、女性の部下に対して性的な発言をしたりと言ったことを理由にセクハラとして解雇を言い渡されることがあります。
ただし、パワハラやセクハラがあっても解雇まで許されるケースは限定的であり、パワハラやセクハラが解雇の方便とされることもよくあります。
正社員が解雇になる理由の5つ目は、経営不振です。
労働者に落ち度がなくても、会社側の原因で解雇されてしまうこともあります。いわゆる、リストラと言われる解雇となります。
例えば、会社の収支状況がよくなく、人員を削減する他に経営を続けることが困難であると言ったような場合です。
このような場合には経営不振として、正社員であっても、整理解雇の対象とされてしまうことがあります。
正社員がクビになる前には、通常は、その前兆があります。
解雇には法的な規制があり、いきなり解雇するのではなく、いくつかの段階を踏んで解雇される傾向にあるためです。
例えば、解雇の前兆としてよくあるものを厳選して3つだけ挙げると以下のとおりです。
それでは、これらの前兆について順番に説明していきます。
クビの前兆については、以下の記事でも詳しく解説しています。
正社員がクビになる前兆の1つ目は、業務改善指導です。
先ほど説明したとおり、会社は労働者を解雇する前に改善指導を繰り返さなければいけないためです。
例えば、業務改善指導書を交付されて、いつまでにどの部分を改善するように等の指導されることがあります。
また、具体的な達成目標などを課されて、毎週フィードバック面談などを設けられて、改善状況の確認などがされることがあります。
正社員がクビになる前兆の2つ目は、退職勧奨です。
退職勧奨とは、自主的に退職するように促すことです。
解雇規制が適用されるのは、会社が一方的に労働者を退職させる場合であり、労働者が同意して退職する場合には厳格な解雇条件を満たす必要がないためです。
会社は、不当解雇として紛争化することを避けるため、解雇する前に労働者自身に退職に同意してもらうとするのです。
正社員がクビになる前兆の3つ目は、解雇予告です。
会社は、労働者を解雇する場合には、原則として、30日前までに解雇の予告をしなければいけないためです。
そのため、解雇日の30日程度前になると解雇予告をされる傾向にあります。
ただし、5-3で説明する解雇予告手当を支払う場合には、予告期間を短縮することができます。
解雇になってしまった場合でも、会社に対していくつかの請求をできる可能性があるお金があります。
労働者は、解雇されてしまった後の生活を維持していくためにも、自分にどのような権利があるのかを知っておく必要があります。
例えば、正社員をクビになった際に請求できる可能性のあるお金としては、以下の4つがあります。
それでは、これらのお金について順番に説明していきます。
正社員をクビになった際のお金の1つ目は、解雇後の給料です。いわゆるバックペイと言われるものです。
解雇が不当な場合、つまり濫用として無効となる場合には、解雇日以降、労働者が出勤できない原因は会社側にあることになります。
例えば、2025年3月末に解雇された場合において、2026年3月末に解雇が不当とされれば、解雇日以降の1年分の給料を遡って支払ってもらえる可能性があります。
解雇後の給料については、以下の記事で詳しく解説しています。
正社員をクビになった際のお金の2つ目は、慰謝料です。
解雇が濫用となるだけではなく、とくに悪質であるような場合には違法な行為として慰謝料を請求できる可能性があります。
違法な解雇がされた際に慰謝料が認められる場合の相場は、50万円~100万円程度です。
ただし、解雇後の給料(バックペイ)が支払われる場合には、これによっても癒えないほどの精神的痛が認められる必要がありますので、簡単には認められない傾向にあります。
正社員をクビになった際のお金の3つ目は、解雇予告手当です。
先ほど説明したように、会社は、労働者を解雇する際には、原則として30日前までに予告しなければなりません。
解雇の予告をしないのであれば、不足する日数に相当する手当を解雇予告手当として支給しなければなりません。
そのため、30日前の予告なく解雇された場合には、解雇予告手当を請求できる可能性があります。
ただし、解雇が有効であることを前提とした請求になりますので、解雇予告手当を請求するかどうかについては慎重に検討する必要があります。
正社員をクビになった際のお金の4つ目は、退職金です。
解雇により退職することになった場合でも、退職金については請求できる可能性があります。
退職金制度については、会社ごとに退職金規定等で定められていますので、これを確認するようにしましょう。
ただし、退職金についても、解雇が有効であることを前提とした請求となりますので、これを請求するかどうかは慎重に検討する必要があります。
もしも、正社員の方が解雇をされてしまった場合でも、焦らずに冷静に対処していくことが必要です。
会社は、解雇が有効であることを前提に手続きを進めてしまいますので、あなたが何もしなければ、自分の権利を守ることはできないためです。
具体的には、正社員をクビになった際の対処手順は、以下のとおりです。
それでは、これらの対処手順について順番に説明していきます。
正社員をクビになった際の対処手順の1つ目は、弁護士に相談することです。
正社員を解雇するだけの条件が満たされているかは法的な判断が必要な事項となります。
弁護士に相談し、法的な見通しを分析したうえで、適切な方針を策定したうえで、一貫した対応をしていくことが成功の秘訣です。
ただし、専門性の高い分野となりますので、労働問題に注力していて、不当解雇問題に実績のある弁護士に相談するようにしましょう。
正社員をクビになった際の対処手順の2つ目は、通知書を送付することです。
不当な解雇をされた場合には、会社に対して、解雇は濫用として無効であることを指摘したうえで、あなたの立場を明確にする必要があります。
解雇された後に何もせずに放置してしまうと、解雇を認めていたと指摘されたり、働く意思を喪失していたと指摘されたりすることが多いためです。
また、併せて、解雇理由証明書の交付を求めるといいでしょう。解雇理由を知ることで、主張や証拠を準備すればいいのかが明らかになるためです。
正社員をクビになった際の対処手順の3つ目は、交渉することです。
会社から回答が戻ってきたら争点が明らかになりますので、話し合いにより折り合いをつけることが可能かどうか協議するといいでしょう。
交渉により示談が成立すれば、早期に少ない負担によりいい解決をすることができる可能性があります。
正社員をクビになった際の対処手順の3つ目は、労働審判・訴訟を提起することです。
話し合いにより解決することが難しい場合には、裁判所を用いた解決を検討することになります。
労働審判は、全三回の期日で調停による解決を目指す手続きです。調停が成立しない場合には、労働審判委員会が審判を下します。
審判には雇用主側も労働者側も異議を出すことができ、異議が出た場合には通常の訴訟に移行することになります。
早期に実態に即した解決をすることが期待できる手続きです。
訴訟は、期日の回数の制限などはとくにありません。1か月に一回程度の頻度で、裁判所の指揮に応じながら、交互に主張を繰り返していきます。解決まで1年以上を要することもあります。
正社員の解雇でよくある疑問としては、次の3つがあります。
これらの疑問について順番に解消していきましょう。
A.正社員の解雇については、失業保険の給付との関係において、会社都合退職として処理されるのが原則です。
ただし、例外的に刑法の規定違反や重大な就業規則違反等による解雇の場合には、「重責解雇(労働者の責めに帰すべき重大な理由による解雇)」として、自己都合になります。
会社都合とされると、失業保険の受給条件や給付までの期間、給付日数について、自己都合よりも有利に取り扱ってもらうことができます。
解雇と失業保険については、以下の記事で詳しく解説しています。
A.正社員の解雇については、30日前に予告されるのが原則です。
ただし、解雇予告手当が支払われる場合には、予告期間が短縮されることになります。
A.アルバイトの無期雇用であっても、解雇することは容易ではありません。
法律上、アルバイトであっても、正社員と同様に解雇に関する規制は適用されるためです。
アルバイトの解雇については、以下の記事で詳しく解説しています。
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労働問題は非常に専門的な分野であり、弁護士であれば誰でもいいというわけではありません。
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以上のとおり、今回は、正社員の解雇について、解雇条件や解雇になる理由などを説明したうえで、解雇された際の権利や対処法を解説しました。
この記事の内容を簡単にまとめると以下のとおりです。
本記事でお伝えしたことが、正社員なのに解雇されてしまい困っている方の役に立てば嬉しいです。
以下の記事も参考になるはずですので読んでみてください。
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