
2025年1月31日
不当解雇
「明日から来なくていいよ」は違法?給料や行かないリスク3つと裁判例
「明日から来なくていいよ」との発言には、複数の法的意味があります。労働者の対応次第で結果が大きく変わってきますので、冷静かつ適切に対応するよう心がけましょう。今回は、「明日から来なくていいよ」は違法かを説明したうえで、給料や行かないリスク3つと裁判例を解説します。
2025/03/06
不当解雇
うつ病であることを会社に伝えたら解雇すると言われてしまい困っていませんか?
うつ病だけでも苦しいのに、更に会社を解雇されることになってしまったら、今後の生活についてどうすればいいのか益々不安になってしまいますよね。
結論としては、うつ病自体を理由として、直ちに解雇することはできません。
うつ病の人の解雇理由としては、うつ病それ自体ではなく、うつ病に伴う勤務状況や心身の状態が挙げられる傾向にあります。
また、試用期間中にうつ病になってしまい、会社の期待を満たすことができず、解雇されてしまう事例も増えてきています。
うつ病でクビになった際には、これからの生活を守るためにも、焦らずに冷静に対処していく必要があります。
うつ病による解雇は、失業保険上、会社都合として処理されることになります。
実は、昨今、うつ病の人から解雇されてしまったとの相談をいただくことが非常に増えています。会社側のうつ病への配慮はまだまだ不十分なことも多いのです。
この記事をとおして、うつ病に悩みながら働いている労働者の方々に不当な解雇をされないために必要な知識をお伝えることができれば幸いです。
今回は、うつ病による解雇について、うつ病自体を理由に解雇できないことを説明したうえで、クビになった際の対処法4つを解説していきます。
具体的には、以下の流れで説明していきます。
この記事を読めば、うつ病により解雇されてしまった場合にどうすればいいのかがよくわかるはずです。
目次
結論としては、うつ病自体を理由として、直ちに解雇することはできません。
解雇するには、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であることが必要とされているためです。
労働者がうつ病であるとしても、雇用を継続することができないとは限らず、当然に解雇するだけの合理的な理由とされるわけではありません。
例えば、うつ病にありながらも、業務に支障が生じさせることなく勤務できていることもありますし、会社が業務内容について配慮すれば雇用を継続できることもあります。
そのため、会社は、労働者がうつ病であったとしても、それ自体を理由に直ちに解雇することはできないのです。
うつ病の人の解雇理由としては、うつ病それ自体ではなく、うつ病に伴う勤務状況や心身の状態が挙げられる傾向にあります。
勤務状況や心身の状態によっては、雇用を継続することが困難とするだけの合理的な理由が認められてしまうことがあるためです。
例えば、うつ病の人が言われる解雇理由としては、以下の4つです。
それでは、これらの解雇理由について順番に説明していきます。
うつ病の人が言われる解雇理由の1つ目は、欠勤や遅刻・早退です。
うつ病になった結果、出勤が難しくなったり、勤務が難しくて途中で早退したりすることが増えてしまうことがあります。
有給休暇で対応できる間は問題ありませんが、有給休暇の残日数がなくなってしまうと欠勤になってしまい、労務の提供義務を怠っていることになってしまいます。
そのため、うつ病になった結果、欠勤や遅刻・早退が増えてしまうと解雇されてしまうことがあるのです。
うつ病の人が言われる解雇理由の2つ目は、休職期間満了です。
多くの会社では、就業規則で休職制度が設けられてしまいます。うつ病になって出勤が難しい労働者のために、一定期間解雇を猶予するためです。
もっとも、解雇が猶予されるのは、あくまでも休職期間の範囲となります。休職期間中に働くことができる状態に治らない場合には、解雇も有効とされてしまう傾向にあります。
そのため、休職期間満了時に働くことができる状態に戻っていない場合には、解雇されてしまうことがあるのです。
休職期間満了を理由とする解雇については、以下の記事で詳しく解説しています。
うつ病の人が言われる解雇理由の3つ目は、能力不足です。
うつ病になってしまったことによって、パフォーマンスが低下してしまうことがあります。
業務に集中できなかったり、やる気が出なくなってしまったりすることがあるためです。
そのため、うつ病になってしまい、日々の業務のパフォーマンスが低下してしまう結果、解雇されてしまうことがあります。
うつ病の人が言われる解雇理由の4つ目は、精神の障害により業務に耐えられないことです。
うつ病の結果、労働者が日々働く際の言動などに問題が生じてしまうこともあります。
また、先ほど見たように、出勤がままならなくなったり、パフォーマンスが下がったりしてしまうこともあります。
そのため、うつ病になり業務に支障が生じてしまう結果、精神の障害により業務に耐えられないとして解雇されてしまうことがあります。
試用期間中にうつ病になってしまい、会社の期待を満たすことができず、解雇されてしまう事例も増えてきています。
試用期間中については、本採用することができるかどうかその適性をとくに慎重に判断される傾向にあります。
試用期間の段階でうつ病になってしまい、休む日が多かったり、言動に不安がったりすると、業務に耐えられないと判断されてしまうことがあります。
例えば、3か月の試用期間中にうつ病になってしまい1か月半以上、休んでいたとしましょう。
業務に起因してうつ病になった場合は別として、私傷病で試用期間中ほとんど働くことができなかった場合、会社側は採用後、通常どおり働けるのか不安に感じてしまいます。
そのため、試用期間中にうつ病になってしまうと、勤務状況等に支障が生じてしまい、適性を欠くとして解雇されてしまうことが多いのです。
うつ病による解雇の判例については、一定程度蓄積してきています。
以下では、うつ病による解雇に関して、とくに重要な判例を厳選して以下の2つを紹介します。
【事案】
原告(教員)はうつ病の治療のため休職していたが、復職後も欠勤が続いたとして、被告(学校)により解雇されました。
本件では、被告による解雇が客観的に合理的であり、社会通念上相当であるかが争点となりました。
【結論】
被告の対応は慎重さを欠くとして解雇は無効とされました。
【理由】
原告は、教員としての資質、能力、実績等に問題がなかったのであるから、うつ病を発症しなければ、この時期に解雇されることはなかったということができるとされました。
そうだとすると、被告は、本件解雇に当たって、原告の回復可能性について相当の熟慮のうえで、これを行うべきであったと考えられるとされています。
しかし、被告は、原告に対し、休職期間について誤った通知をしたうえ、原告の回復可能性が認められるにもかかわらず、メンタルヘルス対策の不備もあってこれをないものと断定して、再検討の交渉にも応じることなく、本件解雇に踏み切りました。
そのため、原告を退職させるとの意思決定に基づく解雇は、やや性急なものであったと言わざるを得ないとされています。
(参考:東京地判平成22年3月24日判例タイムズ1333号153頁[J学園(うつ病・解雇)事件])
【事案】
労働者が被害妄想などの精神的な不調により、会社に出勤しない理由を事前に伝えた上で、有給休暇を使い切った後も約40日間欠勤を続けました。
この間、労働者は職場環境に対する強い不安を訴え、加害者集団による嫌がらせや監視を主張していました。
会社は労働者の欠勤を「正当な理由のない無断欠勤」と判断し、諭旨退職の懲戒処分を下しましたが、同処分は無効として争いました。
※本事案では、うつ病とはされておらず、被害妄想など何らかの精神的な不調とされています。また、解雇ではなく、諭旨退職の懲戒処分に関する事案となります。
【結論】
労働者の欠勤は「正当な理由のない無断欠勤」に該当しないと認定され、会社の諭旨退職の懲戒処分は無効とされました。
【理由】
精神的な不調のために欠勤を続けていると認められる労働者に対しては、精神的な不調が解消されない限り引き続き出勤しないことが予想されるため、精神科医による健康診断を実施するなどした上で、その診断結果等に応じて、必要な場合は治療を勧めた上で休職等の処分を検討し、その後の経過を見るなどの対応を採るべきであるとされました。
このような対応を採ることなく、直ちにその欠勤を正当な理由なく無断でされたものとして諭旨退職の懲戒処分の措置を執ることは、精神的な不調を抱える労働者に対する使用者の対応としては適切なものとはいい難いとされました。
そのため、このような事情のもとにおいては、労働者の欠勤は、正当な理由のない無断欠勤にはあたらず、諭旨退職処分は無効とされています。
(参考:最高二小判平成24年4月27日最高裁判所裁判集民事240号237頁[日本ヒューレット・パッカード事件])
うつ病でクビになった際には、これからの生活を守るためにも、焦らずに冷静に対処していく必要があります。
労働者が何も行動を起こさなければ、解雇が有効であることを前提に手続きが進められてしまうためです。
具体的には、うつ病でクビになった際には以下の手順で対処していきましょう。
それでは、これらの手順について順番に説明していきます。
うつ病でクビになった際の対処法の1つ目は、弁護士に相談することです。
うつ病でクビになった際には、解雇の有効性に関して見通しを分析したうえで、一貫した対応を行うべきだからです。
また、早い段階であなたに有利な証拠を十分に集めることができたかどうかによって、結果は大きく変わってきます。
ただし、労働問題については、専門性が高い分野となっており、弁護士であれば誰でもいいというわけではありません。
解雇問題に力を入れていて、実績のある弁護士を探すといいでしょう。
うつ病でクビになった際の対処法の2つ目は、通知書を送付することです。
クビになったら、早い段階で、会社に対して、解雇が無効であるとの通知書を送付するようにしましょう。
クビになった後、何もせずに放置していると解雇を認めていたと反論されたり、働く意思を失っていたと反論されたりすることがあるためです。
また、併せて、解雇理由証明書の開示を求めるといいでしょう。
解雇理由証明書とは、文字通り、解雇の理由を記載した書面です。
雇用主は、労働基準法上、労働者からの求めがあった場合には、これに応じて、解雇理由証明書を交付しなければなりません。
労働者は、解雇理由証明書の交付を受けることで、見通しがより明確になりますし、また、どのような主張や証拠を準備すればいいのかも明らかになります。
うつ病でクビになった際の対処法の3つ目は、交渉することです。
会社側からの回答があれば、双方の主張の食い違っている点なども明らかになりますので、話し合いにより折り合いをつけることが可能か協議することになります。
話し合いにより早期に解決することができれば、少ない負担やリスクにより良い解決をできる場合があります。
そのため、裁判所へ申し立てをする前にまずは交渉をしてみるといいでしょう。
うつ病でクビになった際の対処法の4つ目は、労働審判・訴訟を提起することです。
話し合いにより解決することが難しい場合には、裁判所を用いた解決を検討することになります。
労働審判とは、全3回の期日の中で調停による解決を目指す手続きであり、調停が成立しない場合には裁判所が審判を下します。早期に実態に即した解決をすることが期待できます。
ただし、審判には労働者も会社も異議を出すことができ、いずれかが異議を出したら通常の訴訟に移行します。
訴訟については、期日の回数の制限などはとくになく、月1回程度の頻度で期日が入り、交互に主張を繰り返していくことが多いです。解決まで1年以上要する傾向にあります。
うつ病による解雇については、会社都合退職となります。
離職票上の「解雇(重責解雇を除く。)」にチェックされることになるためです。
会社都合退職の場合には、自己都合退職に比べて、受給までの期間が短く、受給できる日数も長くなる傾向にあります。
ハローワークインターネットサービス – 基本手当の所定給付日数
うつ病の解雇でよくある質問としては以下の3つがあります。
それでは、これらの疑問について順番に解消していきます。
A.パワハラが原因のうつ病については、解雇することができないことがあります。
労災については療養のための休業期間、及び、その後30日間は解雇してはならないとされているためです。
パワハラが原因でうつ病になった場合には、業務に起因するものとして、労災と認定してもらえることがあります。
A.アルバイトも、うつ病に伴う勤務状況や心身の状態によって解雇される可能性があることは、正社員と同様です。
もっとも、アルバイトの場合には、シフトが入っていない日については勤務しなくても欠勤とされるわけではありません。
また、正社員に比べて、期待される能力の程度なども異なる場合もあるでしょう。
このような意味において、アルバイトの場合と正社員の場合とで異なる検討が必要となることもあります。
アルバイトのクビについては、以下の記事で詳しく解説しています。
A.解雇によりうつ病となったら、労災となることがあります。
行政通達では、突然解雇の通告を受け、何ら理由が説明されることなく、説明を求めても応じられず、撤回されることもなかった場合が、心理的負荷が強となる例として挙げられているためです。
厚生労働省労働基準局長「心理的負荷による精神障害の認定基準について」1226号通達.pdf
パワハラとうつ病については、以下の記事でも詳しく解説しています。
うつ病による解雇に強い弁護士を探したい場合には、是非、労働弁護士コンパスを活用ください。
労働問題は非常に専門的な分野であり、弁護士であれば誰でもいいというわけではありません。
労働弁護士コンパスでは、労働問題に注力している弁護士を探すことは勿論、地域や個別の相談内容から、あなたにマッチする最高の弁護士を探すことができます。
初回無料相談や電話・オンライン相談可能な弁護士であれば、少ない負担で気軽に相談をすることができます。
どのようにして弁護士を探せばいいか分からないという場合には、まずは試しにこの労働問題弁護士コンパスを使ってみてください。
以上のとおり、今回は、うつ病による解雇について、うつ病自体を理由に解雇できないことを説明したうえで、クビになった際の対処法4つを解説しました。
この記事の要点を簡単に整理すると以下のとおりです。
この記事がうつ病であることを会社に伝えたら解雇すると言われてしまい困っている労働者の方の助けになれば幸いです。
以下の記事も参考になるはずですので読んでみてください。
弁護士に相談する
籾山善臣
リバティ・ベル法律事務所
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