2025年1月20日
ハラスメント
パワハラで訴える方法4つ!パワハラを訴える基準と有力な証拠6つ
パワハラに該当する場合には慰謝料請求が可能ですが、すべての事案で訴えられているわけではないため、訴える基準を知っておくことが有益です。今回は、パワハラで訴える方法4つを説明したうえで、パワハラを訴える基準や有力な証拠について解説していきます。
2025/01/17
ハラスメント
パワハラの慰謝料相場がいくらか知りたいと悩んでいませんか?
パワハラによって出勤するのも辛くなるため、精神的苦痛に見合う慰謝料がもらえるのか気になりますよね。
パワハラの慰謝料相場は、事案によって大きく異なりますが、5万円~200万円程度となることが多いです。
他方で、被害者が自殺するなど、重大性のある事案では慰謝料が1000万円以上と高額になる傾向があります。
このように、事案によって金額が変動しやすいのは、行為の悪質性や継続性など様々な事情を考慮して判断されるためです。
しかし、パワハラによる慰謝料請求も法的手続であるため、適正な慰謝料を獲得するには証拠を残しておくなど、具体的な行動へと移していくことが重要となります。
実は、パワハラの慰謝料金額が少なくなってしまう方の多くは、証拠が少なく、パワハラ行為が正当に評価されていないというのが実情です。
この記事をとおして、パワハラに悩む方々に、慰謝料請求についての正しい知識を知っていただければ幸いです。
今回は、パワハラの慰謝料相場について説明したうえで、慰謝料請求が認められる条件と増額するためのポイントを解説していきます。
具体的には、以下の流れで解説していきます。
この記事を読めば、慰謝料請求するためにどうすればいいのかよくわかるはずです。
目次
パワハラによる慰謝料の相場は、事案によって異なりますが、簡単に整理すると以下の4つになることが多いです。
事案毎に金額の開きがあるのは、以下の7つの要素が考慮されるためです。
そのため、暴行を伴う場合や被害者を自殺に追い込むなど、行為の悪質性が高い事案では慰謝料も高額になりやすい傾向があるのです。
ただし、被害者がパワハラによって精神疾患を発症しても、慰謝料の増額事由となるにすぎず、これだけを理由に相場を大きく上回る慰謝料金額が認められるわけではないので注意が必要です。
パワハラによる慰謝料請求は、法的根拠に基づく請求でるため、法律上の条件を満たす必要があります。
具体的には、パワハラによる慰謝料請求の条件2つを簡単に整理すると以下のとおりです。
それでは、これらの条件について順番に説明していきます。
パワハラによる慰謝料請求が認められる条件1つ目は、暴力や罵倒等の行為が存在することです。
なぜなら、パワハラは「職場において行われる優越的な関係を背景とした言動」をいうので、問題となる行為の存在が必要となるためです(労働施策総合推進法30条の2)。
パワハラは、職場内の限られた人間関係の中で行われることが多いため、慰謝料請求するには、暴力が罵倒等の行為を証拠として残しておくことが重要です。
パワハラによる慰謝料請求が認められる条件2つ目は、行為が違法であることです。
なぜなら、パワハラによる慰謝料請求の法的根拠は不法行為または債務不履行なので、行為が違法性を帯びていることが必要となるためです。
例えば、人格を否定する発言など、他人に心理的負荷を過度に蓄積させるような行為は原則として違法とされています。
ただし、違法性阻却の余地があり、その行為が合理的理由に基づいて、一般的に妥当な方法と程度で行われた場合には、正当な職務行為として違法性が阻却される可能性があります(福岡高判平20.8.25判時2032号52頁[海上自衛隊事件])。
パワハラに該当する例は、厚生労働省の告知(令和2年厚生労働省告示第5号)で6つに整理されています。
具体的には、パワハラで慰謝料が認められる例は以下のとおりです。
それでは、これらの例について順番に説明していきます。
パワハラで慰謝料が認められる例1つ目は、身体的な攻撃です。
身体的な攻撃とは、暴行や傷害などの身体的ダメージを与える行為をいいます。
身体的攻撃の該当例と非該当例を簡単に整理すると以下のとおりです。
厚生労働省委託事業の職場におけるパワハラの実態調査報告書では、身体的な攻撃を受けたと感じる例として、以下の3つが挙げられています。
パワハラで慰謝料が認められる例2つ目は、精神的な攻撃です。
精神的な攻撃とは、脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言などの精神的なダメージを与える行為をいいます。
精神的攻撃の該当例と非該当例を簡単に整理すると以下のとおりです。
厚生労働省委託事業の職場におけるパワハラの実態調査報告書では、精神的な攻撃を受けたと感じる例として、以下の3つが挙げられています。
パワハラで慰謝料が認められる例3つ目は、人間関係からの切り離しです。
人間関係からの切り離しとは、隔離・仲間外し・無視などの排斥行為をいいます。
人間関係からの切り離しの該当例と非該当例を簡単に整理すると以下のとおりです。
厚生労働省委託事業の職場におけるパワハラの実態調査報告書では、人間関係からの切り離しを受けたと感じる例として、以下の3つが挙げられています。
パワハラで慰謝料が認められる例4つ目は、過大な要求です。
過大な要求とは、業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害などをいいます。
過大な要求の該当例と非該当例を簡単に整理すると以下のとおりです。
厚生労働省委託事業の職場におけるパワハラの実態調査報告書では、過大な要求を受けたと感じる例として、以下の3つが挙げられています。
パワハラで慰謝料が認められる例5つ目は、過小な要求です。
過小な要求とは、業務上の合理性なく能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じたり、仕事を与えないことをいいます。
過小な要求の該当例と非該当例を簡単に整理すると以下のとおりです。
厚生労働省委託事業の職場におけるパワハラの実態調査報告書では、過小な要求を受けたと感じる例として、以下の3つが挙げられています。
パワハラで慰謝料が認められる例6つ目は、個の侵害です。
個の侵害とは、私的なことに過度に立ち入るなどのプライバシーを侵害する行為をいいます。
個の侵害の該当例と非該当例を簡単に整理すると以下のとおりです。
厚生労働省委託事業の職場におけるパワハラの実態調査報告書では、身体的な攻撃を受けたと感じる例として、以下の3つが挙げられています。
パワハラの慰謝料相場を把握するには、裁判例における認容額が参考になります。
例えば、パワハラの類型ごとの裁判例6つを整理すると以下のとおりです。
それでは、これらの裁判例について順番に紹介していきます。
従業員は、店長から板壁やロッカーに背部や頭部を数回打ち付ける暴行を受けたことから、店長と会社に対し、不法行為に基づく損害賠償請求として約5932万円を請求した事案について、
裁判所は、店長の暴行が違法なことは明らかであり、これにより従業員がPTSDを罹患しているものの、休業補償給付金を受け取っていることから、約224万円について請求を認めました。
判例は以下のように説明しています。
部下は、上司から「この会社にいる意味があるのか」「うつ病みたいな辛気臭いやつはうちの会社にいらん」という罵声を受けたことから、不法行為に基づく損害賠償請求として120万円を請求した事案について、
裁判所は、パワハラ後におけるうつ病の再発について、パワハラとの因果関係は不明であるものの、上司の発言は侮辱にあたるとして80万円について請求を認めました。
判例は以下のように説明しています。
社員が、法令違反を告発したことに対して会社から差別的処遇を受けたことから、不法行為又は債務不履行に基づく損害賠償請求として1000万円請求した事案について、
裁判所は、社員が差別的処遇によって精神的苦痛を受けたことは明らかであるが、差別的処遇の原因には社員の態度も影響していることから、慰謝料は200万円が妥当と判断しています。
判例は以下のように説明しています。
従業員は、会社代表者の無理な指示のほか指示内容の変更や一方的な非難に耐えかねて退職したことから、会社に対して不法行為又は債務不履行に基づく損害賠償として1200万円を請求した事案について、
裁判所は、会社代表者の行為は従業員の法的利益を侵害し、不法行為にあたるとして150万円の請求を認めました。
判例は以下のように説明しています。
管理職は、退職勧奨を拒否した後に業務上の必要性のない業務に従事させられたことから、会社に対して慰謝料500万円を請求した事案について、
裁判所は、配転命令は業務上の必要性がなく、降格処分は規定に基づかないことから無効であるため、配転命令及び降格処分を無効とすることで足り、慰謝料は認められないと判断しています。
判例は以下のように説明しています。
社員は、上司から賃借中の建物につき、その明け渡しを拒否したことを理由に不利益取扱いを受けたことから、不法行為に基づく損害賠償として計1200万円を請求した事案について、
裁判例は、ある住宅の賃借権が紛争状態にある場合、解決方針は賃借人たる社員自らの判断において決定すべき問題であり、上司が執拗に説得することは社員の自己決定の自由を侵害するとして、慰謝料は30万円が妥当と判断しています。
判例は以下のように説明しています。
適正な慰謝料を獲得するには、ポイントを押さえた行動をしていくことが重要となります。
具体的には、パワハラの慰謝料を増額するポイント4つを整理すると以下のとおりです。
それでは、これらのポイントについて順番に説明していきます。
パワハラの慰謝料を増額するポイント1つ目は、パワハラ行為を記録することです。
パワハラを理由とする損害賠償請求が認められるには、パワハラの事実を立証しなければいけません。
つまり、証拠が不十分だと、慰謝料が低額になってしまうおそれがあるのです。
例えば、何度もパワハラを受けていた場合でも、そのうちの1つしか立証できない場合には、パワハラの内容が正当に評価されず、慰謝料も本来の相場から離れた金額となる可能性があります。
そのため、パワハラが行われた場合には、録音や被害状況をメモするなどして、記録しておくことが重要となります。
パワハラの慰謝料を増額するポイント2つ目は、うつ病が疑われる場合には診察を受けることです。
なぜなら、パワハラを理由とする慰謝料請求では、精神疾患の有無も考慮要素とされているためです。
例えば、精神疾患を患っていても、パワハラとの間に因果関係がなければ、精神疾患の発症が慰謝料金額に影響することはありません。しかし、診断書がある場合、パワハラの時期と診察を受けた時期の前後関係などから、因果関係を立証しやすくなる可能性があります。
そのため、パワハラを受けたことにより、うつ病などの精神疾患を発症した場合には、早めに診察を受けて診断書を取得しておきましょう。
パワハラの慰謝料を増額するポイント3つ目は、労働審判・訴訟を用いることです。
パワハラを訴える方法としては、労働局のあっせんを経て交渉することも考えられます。しかし、この方法は迅速な解決を主眼とした手続であり、証拠の心証形成の心理が行われることはないため、慰謝料が低くなりやすい傾向があります。
証拠からパワハラ行為を正当に評価してもらい、適正な慰謝料を獲得するために労働審判・訴訟を用いることが考えられます。
パワハラの慰謝料を増額するポイント4つ目は、弁護士に相談することです。
パワハラを理由とする慰謝料請求は、パワハラ行為の悪質性などで金額が変動するため、法的手続きを見据えた請求をすることが重要となります。
また、パワハラがエスカレートすると、差別的な処遇や不当解雇にまで至るケースも少なくないため、迅速に対処していく必要があります。
そのため、慰謝料請求のように専門性の高い法的手続きについては、依頼するかどうかを問わず、一度弁護士に相談しておくといいでしょう。
慰謝料を請求する場合、法的手続きを見据えて請求していくことが重要になります。
具体的には、パワハラ慰謝料を請求する手順4つを簡単に整理すると以下のとおりです。
それでは、これらの手順について順番に説明していきます。
パワハラ慰謝料を請求する手順1つ目は、請求先を決めることです。
パワハラ慰謝料を請求する場合、様々な法的構成が考えられ、例えば以下の4つが挙げられます。
上司からパワハラを受けた場合、まずは上司個人に対して請求することが考えられます。
しかし、個人ですと支払能力に不安が残るため、会社に対して上司のパワハラ行為の責任を追及していくことも考えられます。
また、会社がパワハラ行為を漫然と放置していた場合のように、パワハラが会社全体の行為として見られる場合には、共同不法行為として会社と上司個人の連帯責任を追及できる可能性もあります。
そのため、パワハラ慰謝料を請求したいと感じたときは、まず誰に請求するのか決めておく必要があります。
パワハラ慰謝料を請求する手順2つ目は、慰謝料を請求することです。
パワハラを理由とする慰謝料を請求する方法3つを整理すると以下のとおりです。
しかし、口頭での請求や手紙による請求では、交渉の過程が不明瞭となり、後にトラブルとなるおそれがあります。
そのため、交渉経緯を明確にするためにも、内容証明郵便で請求することが望ましいです。
パワハラ慰謝料を請求する手順3つ目は、交渉を行うことです。
相手方に通知が届いた後は、交渉を行うことになります。
交渉内容は相手方の主張にもよりますが、提示された慰謝料金額などを踏まえてお互いが納得できる結果を模索することになります。
交渉による解決は、訴訟に至った場合と比較して時間的・経済的に大きな利益をもたらすことがある反面、迅速な解決のために慰謝料金額を譲歩するなど不利益となる側面もあります。
パワハラ慰謝料を請求する手順4つ目は、労働審判・訴訟を申し立てることです。
交渉による解決が難しい場合には、労働審判を申立てたり訴訟を提起することになります。
労働審判は会社との間における民事事件を解決する手続きです。つまり、会社に対して損害賠償請求できるものの、加害者に対して損害賠償請求することはできません。
そのため、加害者に対して損害賠償請求したい場合、訴訟を提起することになります。
また、請求金額が60万円以下の場合、少額訴訟により簡便かつ迅速な解決が期待できます。しかし、複雑な審理には向かないこと、相手方が反対した場合には利用できないことに注意が必要です。
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以上の通り、今回は、パワハラの慰謝料相場について説明したうえで、慰謝料請求が認められる条件と増額するためのポイントを解説しました。
この記事の要点を簡単に整理すると以下のとおりです。
この記事がパワハラの慰謝料相場を知りたいと悩んでいる方の助けになれば幸いです。
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籾山善臣
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