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残業代

残業代が未払いの場合、会社は懲役や罰金となる可能性がある他、労働者から未払分の請求を受けるなど様々なリスクが生じます。
残業代は労働者が有する権利であると同時に、会社の義務でもあるため、支払わないままでいることは許されないのです。

<この記事の要点>
・残業代が未払いの場合、会社には「6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金」という重い刑事罰が科される可能性があります。
・会社は、罰則の他に労働基準監督署から指導を受けたり、労働者から遅延損害金を請求されるリスクを負うことになります。
・残業代未払いの改善が見込めない場合、労基署や弁護士などの適切な窓口へ相談することが重要です。
この記事を読めば、残業代が未払いとなった場合にどのような罰則があるのかよくわかるはずです。
目次

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会社が労働者に対して残業代を支払わないことは法律違反であり、会社に罰則が科されることとなります。

それでは、残業代未払いによる罰則について説明していきます。
会社が残業代を支払わなかった場合、労働基準法に違反し、「6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金」が科される可能性があります。
残業代を含む賃金の未払いは、労働者の生活の安定を脅かしかねないため、重い罰則が科されているのです。
例えば、会社が労働者に1日8時間を超えて働かせているにもかかわらず、その超えた時間分の割増賃金を一切支払っていないケースがあります。
このような場合、会社は単に「残業代を払い忘れた」というだけでは済まされず、労働基準法違反として罰則の対象となる可能性があります。
残業代未払いによる罰則を受けるのは、会社だけでなく、違反行為を命じた個人にも科される可能性があります。
例えば、上司の指示により残業したものの未払いの場合には、会社の他に「残業代のない違法な残業を命じた者」である上司も罰則を科される可能性があるのです。
残業代の未払による罰則は、会社と労働者間だけのトラブルではなく、経営者や上司個人にも及び得る可能性のあるものだと知っておくことが大切です。
会社が残業代を支払わない場合、罰則の他に、経営にも影響しかねないリスクを負う可能性があります。
例えば、会社が負う具体的なリスクとしては以下の3つがあります。

それでは、残業代未払いの罰則以外で会社が負う可能性のあるリスクは、以下の3つが挙げられます。
残業代が未払いの場合、労働基準監督署が会社に立ち入り調査を行う可能性があります。
労働者が未払いの事実を相談すると、労働基準監督署は会社が法律を守っているか調べるために、立ち入り調査や関係書類を提出させることがあります。
例えば、タイムカードの記録や給与明細を細かくチェックされ、未払いが発覚した場合には残業代を支払うよう指導を受ける可能性があります。
残業代が未払いの場合、会社は労働基準監督署による調査や指導が入るという大きなリスクを抱えることになります。
労働者は未払いとなっている残業代だけでなく、支払いが遅れた分の金額を上乗せして請求できます。
賃金の支払が遅れると生活に影響するおそれが高く、支払いの引き延ばしを防ぐ必要があるためです。
例えば、在職中であれば年3.0%の遅延損害金が発生し、退職した後は法律によって年14.6%の割合で利息が発生します。
時間が経てば経つほど大きくなっていく遅延損害金を支払うというリスクを負うのです。
残業代の未払いが続く場合、会社は労働者から労働審判や訴訟を申し立てられるリスクを負います。
労働審判は三回の期日で解決を目指す手続きで、調停が成立しなければ労働審判員会が審判を下す手続です。
三回の期日で調停が成立せず、審判がくだされたものの、審判に異議申し立てがなされると訴訟へ移行することとなります。
訴訟に発展し、残業代の支払が命じられた場合、裁判所から「付加金」の支払いを命じられるケースがあります。
付加金は「不払い残業代と同じ金額まで」が上限であり、本来の2倍の金額を支払うことになる可能性があります。
残業代が支払われていないと感じる場合でも、すべてのケースで違法となるわけではありません。
残業代が発生しているのか確認するためのチェックポイントは以下の5つです。

それでは、これらのチェックポイントについて順番に説明していきます。
残業代未払いにおける罰則発生のチェックポイント1つ目は、時間外労働をしていることです。
時間外労働とは、労働基準法で定められた法定労働時間を超えて働くことをいいます。
具体的には、1日8時間、1週に40時間を超えた場合には、時間外労働ということになります。
時間外労働を命じるには、会社と労働者が36協定を締結しなければならず、これがなければ会社は罰則の対象となります。
しかし、36協定がない場合であっても、残業代は支払わなければいけません。
なお、変形労働時間制やフレックスタイム制のように特殊な形態の場合には、時間外労働の算出方法が異なるため注意が必要です。
残業代未払いにおける罰則発生のチェックポイント2つ目は、管理監督者ではないことです。
管理監督者とは、労働条件その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者をいいます。
管理監督者に労働時間の規制はなく、時間外労働と休日労働について残業代は支払われません。
しかし、深夜手当(22時~5時の間)は時間帯に着目した規制のため、通常の従業員と同様に支払われます。
また、労働基準法上の管理監督者に該当しないにもかかわらず、会社から管理監督者と扱われている「名ばかり管理職」については時間外残業代や休日残業代が支払われます。
管理監督者と名ばかり管理職の見分け方は以下の3つです。
例えば、経営者と一体的な立場にあり、労働時間に裁量があり、それにつき正当な対価を得ている場合には、管理監督者と判断され、残業代が支払われない可能性があります。
残業代未払いにおける罰則発生のチェックポイント3つ目は、残業が禁止されていないことです。
残業が禁止されている場合、残業代が発生しない可能性があります。
労働とは使用者の指揮命令下で働くことをいうため、残業が禁止されている場合には労働にあたらず残業代が発生しないのです。
しかし、労働者が残業することについて、使用者が許可または黙示の許可をした場合には、残業代が発生することがあります。
例えば、期日に間に合わない量の仕事を任されている場合等には、残業にあたると判断される可能性があります。
残業代未払いにおける罰則発生のチェックポイント4つ目は、固定残業時間よりも働いていることです。
固定残業とは、あらかじめ定められた残業時間を基に、毎月一定の残業代を支払う制度をいいます。
つまり、初めから給料に残業代が含まれてしまっているのです。
しかし、定められた残業時間を超えた場合には、残業代が支払われていないため、この部分については残業代を請求することができます。
残業代未払いにおける罰則発生のチェックポイント5つ目は、残業代が全額支払われていないことです。
賃金は全額労働者に支払わなければならず、これは残業代についても同様です。
そのため、時間外残業代や休日残業代が足りているか確認しておくといいでしょう。
また、残業代は遅刻や早退を理由に、賃金のマイナス分と相殺されることがあります。
しかし、労働者は残業代を全額請求する権利があり、残業代と相殺することは違法となります。
残業代の支払いにあたっては、基本給との違いが分かるように支払わなければいけないという点にも注意が必要です。
残業代未払いによって逮捕・送検されるのは悪質性の高い事案に限られ、罰則にまで至るケースはほとんどありません。
実際に、残業代未払いによって送検された事例5つを紹介します(労働基準関係法令違反に係る公表事案 [令和7年4月1日~令和8年3月31日公表分])。

それでは、これらの送検事例について順番に説明していきます。
残業代未払いと罰則に関連する判例を2つ厳選すると以下の通りです。

それでは、これらの判例について順番に説明していきます。
【事案】
労働者が商人である会社に対し、未払賃金と労働基準法114条に基づく付加金の支払を求めました。
会社が賃金を遅延した際の利息や、制裁金である付加金の法的性質と、適用される利率が主な争点となった事件です。
【結論】
賃金は商事利率で31,930円、付加金は民事利率で22,021円の計53,951円の支払が命じられました。
【理由】
賃金債務は、商行為から生じるため、商事法定利率が適用されます。
一方、付加金は法への違反に対する制裁として、裁判所の命令により初めて発生する義務のため民事法定利率によるべきとされました。

【事案】
語学教室の講師だった原告が、未払い残業代やハラスメントの慰謝料を被告会社に求めた事案です。
被告側は原告が「管理監督者」に当たるとして、残業代の支払いを拒みました。
【結論】
残業代216,748円と付加金216,748円の支払いが認められました
【理由】
原告には採用やシフト決定の権限がなく、出退勤の自由もありませんでした。
待遇も管理監督者にふさわしいものではないため、残業代の支払い対象と判断され、退職後のであることを踏まえ年14.6%の遅延損害金も発生しております。
不払いには酌むべき事情がなく、制裁として未払金と同額の「付加金」の支払いも命じられました。
残業代が未払いに悩んでいる場合には、予め相談先を知っておくことが有益です。
例えば、残業代未払いにおける相談窓口としては以下の3つがあります。

それでは、それぞれの相談窓口について順番に見ていきましょう。
残業代の未払いは労働基準法違反であり、労働基準監督署に無料で相談することができます。
労働基準監督署は、会社が法律に違反していないか監督し是正する役割を有しているためです。
例えば、タイムカードのコピーなど残業の証拠が揃っており、労働者が未払いを指摘しても改善が見込めない場合には、労働基準監督署が動いてくれることがあります。
労基署への相談後、罰則にまで至るケースは多くはないですが、特に悪質なケースでは逮捕・送検されることもあります。
残業代が未払いの場合には、まず労働基準監督署に相談してみるのも選択肢の一つといえるでしょう。
ただし、労働基準監督署の指導に強制力はなく、残業代の請求を目的としている方は弁護士や労働組合への相談が必要になるケースもあります。
未払いの残業代を回収したい場合、弁護士に相談するのがおすすめです。
弁護士は、現状を踏まえ適切に行動方針を検討できるだけでなく、代理人として会社との交渉や裁判手続きを代わりに進められるためです。
未払いの残業代は解雇問題とも絡むことがあり、この場合には見通しを立て一貫した対応をとることが重要となります。
残業代が未払いの場合、労働組合に相談し会社と話し合う方法もあります。
労働組合は、労働環境の改善など労働者の権利を守るために活動している団体であり、残業代の未払いについても対応してくれることがあります。
例えば、一人では相手にしてもらえないケースでも、組合を通じてまとめて請求する等、組織的な支援を受けることができます。
ただし、労働組合の交渉は自身で行う必要があるため、交渉に不安のある方は注意が必要です。
労働基準監督署に相談したからといって、すべてのケースで会社に対してすぐに調査や処分などのペナルティが下されるわけではありません。
しかし、労働者側が事前の準備や相談の仕方を工夫することによって、労働基準監督署に比較的早く、そして積極的に動いてもらえる可能性をぐっと高めることができます。
例えば、残業代未払いについて、労働基準監督署に告発する際の注意点は以下の4つです。

それでは、労働基準監督署をすぐ動かすための注意点について順番に見ていきましょう。
労働基準監督署に会社の違法行為を伝えて早く動いてもらいたいときは、電話やメールを使うのではなく、直接窓口へ出向いて対面で相談するといいでしょう。
目の前で直接お話をさせていただくほうが、会社のひどい現状を詳しく説明しやすく、相談の深刻さが担当者にしっかりと伝わりやすくなるからです。
「毎日遅くまで残業をしているのに、会社が残業代をまったく支払ってくれない」というケースでも、対面であれば勤務時間や給与明細の内容をその場で直接見せながら説明できるため、状況の深刻さがすぐに伝わります。
労働基準監督署の担当者に事件の重みや緊急性をしっかりと理解してもらい、素早い対応につなげるためにも、できる限り窓口へ足を運んで対面で相談をすることがおすすめです。
労働基準監督署へ相談をする際は、自分の名前を隠して匿名で行うよりも、しっかりと実名を出して相談をするほうが、会社への調査や罰則に向けて早く動いてもらえる傾向があります。
労働基準監督署の側としても、実名のほうが「どこの誰がどのような違法行為の被害に遭っているのか」を正確に特定でき、会社に対する立ち入り調査や是正の指導をスムーズに進めやすくなるからです。
匿名での相談になってしまうと、嘘の嫌がらせと区別がつかなかったり、会社に対して具体的にどの部署を調べればよいのか分からなかったりするため、どうしても調査に移るのが難しくなってしまいます。
例えば、「A社の製造部門で残業代が出ていない」という匿名の訴えよりも、「A社の製造部門に勤めている自分が、毎月これだけのサービス残業を強いられている」と実名で伝えたほうが、労働基準監督署はすぐに動くことができます。
労働基準監督署へ行く際は、残業代が未払いになっている事実を客観的に証明できる証拠を、可能な限りそろえて持参することが非常に重要です。
言い逃れのできない確実な証拠があることで、労働基準監督署が事実を確認する手間が省け、会社が法律違反をしているかどうかについて判断しやすくなるためです。
もしも証拠が何もない状態で相談に行ってしまうと、会社側から「そんな残業は命じていない」「残業代はすべて支払っている」と言い返されたときに、どちらの主張が正しいのか分からず、十分な指導をしてもらえない可能性があります。
例えば、残業代未払いの件で相談をする場合には、毎日の出退勤時間が記録されたタイムカードのコピー、実際に支給された金額がわかる給与明細書、会社のルールが書かれた就業規則などを一緒に持ち込むといいでしょう。
相談の窓口では、単に「残業代が支払われなくて困っている」という愚痴や不満を伝えるのではなく、「是正指導をしてほしい」とはっきりと伝えましょう。
こちら側の希望を曖昧にしていると、ただの生活相談としてお話を聞くだけで終わってしまったり、事実の確認だけで手続きが止まってしまったりするおそれがあります。
例えば、「タイムカードの打刻を消すように命令されたり、深夜まで働かされたりしているため、会社に立ち入り調査をして是正指導をお願いします」といったように伝えるといいでしょう。
以下では、残業代未払いと罰則についてよくある疑問をまとめました。
残業代の未払いで悩んでいる方はぜひ参考にしてください。

A.残業代未払いがある場合、退職後でも労基署へ相談でき、会社に罰則が科される可能性があります。
退職したからといって、在職中に発生していた残業代が消えるわけではないためです。
例えば、退職後に給与明細を見直したら、在職中の残業代が支払われていなかったと気づくケースもあります。
退職後は会社情報にアクセスできなくなる他、残業代は3年で時効消滅するため、早めに行動することが重要です。
A.労働者が会社と合意していたとしても、残業代を支払わなければ会社には罰則が科されます。
労働基準法は強行法規であるため、「残業代はいらない」という約束があっても、その合意自体が法律上無効となるからです。
例えば、会社から「残業代を請求しないと約束したはず」と言われたとしても、実際に会社の指揮監督下で働いていれば、残業代が発生している可能性があります。
サービス残業を当然のように受け入れてしまわずに、勤務時間や業務指示の証拠を集め、残業代が発生していないか確認しましょう。
A.会社に残業代を払えるお金がない場合でも、罰則の対象外となるわけではありません。
残業代は労働への対価であり、会社の資金繰りを理由に支払わなくてもよいとするものではないためです。
例えば、会社から「今は経営が苦しいので残業代は払えない」「資金に余裕ができたら支払う」と説明されるケースもあります。
会社にお金がない場合であっても、残業代未払いが労働基準法違反として問題になる可能性があります。
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労働問題は非常に専門的な分野であり、弁護士であれば誰でもいいというわけではありません。
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以上のとおり、今回は、残業代が未払いによる罰則を説明したうえで、罰則以外のリスクと目的別の相談窓口や注意点について解説しました。
この記事が残業代未払いによってどのような罰則があるのか知りたいと悩んでいる方の助けになれば幸いです。
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