2025年3月8日
労働一般
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2025/12/16
労働一般


労働審判から訴訟に移行してしまいそうで悩んでいませんか?
早期に労働審判で解決したいと考えていたのに会社側が強情で訴訟になってしまうと憤りと不安を感じますよね。
労働審判の訴訟移行とは、労働審判で解決できなかった場合に以後は訴訟において審理をしていくことをいいます。
労働審判で訴訟に移行するケースとしては、審判に異議が出された場合が最も典型的ですが、24条終了の場合や審判が取消された場合もあります。
労働審判で訴訟に移行する場合には、裁判所に追加の収入印紙と予納郵券を収める必要があります。
訴訟移行に移行すると裁判所から事務連絡があり、訴訟に代わる準備書面などを提出することになります。訴訟移行後の審理期間は1年~1年半程度となることが多いです。
実は、労働審判から訴訟に移行する場合の手続きや考え方については十分に整理された本が少なく、インターネットでの情報も断片的です。
実務上の慣行による部分もあり、一般には分かりにくいと感じる人も多いでしょう。
この記事をとおして、私が実際に多くの労働審判事件を扱う中で得た経験やノウハウをもとに、労働審判から訴訟に移行する際に知っておいていただきたいことを分かりやすくお伝えできれば幸いです。
今回は、労働審判の訴訟移行について、3つのケースと費用や流れ・期間を説明したうえで、よくある疑問9つを解説していきます。
具体的には、以下の流れで説明していきます。

この記事を読めば、労働審判から訴訟に移行する場合にどうすればいいのかがよくわかるはずです。
目次
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労働審判の訴訟移行とは、労働審判で解決できなかった場合に以後は訴訟において審理をしていくことをいいます。
労働審判は、早期に紛争の実態に即した解決を目指していく手続きですが、必ずしも労働審判で解決できるわけではありません。
噛み砕いてイメージをお伝えすると、労働審判は訴訟の前段階での手続きであり、裁判所を入れた話し合いの手続きになっています。
労働審判で解決していくことが難しい場合には、訴訟により時間をかけて双方が主張立証を尽くしたうえで、判決を目指していくという手続き移行することになるのです。
例えば、訴訟外の交渉での解決が難しい場合には、裁判所を入れた話し合いとして労働審判での解決を試み、これも難しい場合には訴訟で徹底的に争うということが多いです。
訴訟移行した場合には、労働審判の申し立て時から訴訟提起があったものとみなされることになります。つまり、最初から訴訟の提起がされていたという扱いになります。
労働審判で訴訟に移行するケースは、いくつかあります。
どのような場合に訴訟に進むのかを理解しておくことで、自分のケースが今後どのように進むのかを予測しやすくなります。
事前に心の準備ができていれば、慌てずに対応できるはずです。
具体的には、労働審判が訴訟に移行するケースとしては、以下の3つです。
それでは、これらのケースについて順番に説明していきます。
労働審判に異議が出された場合には、訴訟に移行することになります。
労働者も、会社側も、労働審判が出された場合には2週間以内に異議を出すことができます。
異議が出された場合には、労働審判は効力を失い、訴訟に移行することになります。
とくに、異議を出すのに理由はいりません。不満があれば異議申立書を裁判所に提出するのが通常です。
労働審判が24条終了した場合にも、訴訟に移行することになります。
24条終了とは、事案の性質から、労働審判が紛争の迅速かつ適正な解決のために適当でない場合には、それ以上の審理や判断をせずに手続を終了させるものです。
労働審判法24条に記載されているためこのように呼ばれます。
例えば、事案が複雑すぎる場合や争点が多岐にわたる場合には、24条終了をされることがあります。
審判が取り消された場合にも、訴訟に移行することになります。
裁判所により労働審判が出された場合において、審判書を送達できないような事案では、労働審判が取消されることがあります。
珍しい例なので、あまりこの事情により訴訟移行するという例は多くないです。
労働審判から訴訟に移行する際には、裁判所に追加の費用を納めなければなりません。
具体的には、労働審判の訴訟移行費用としては、主に以下の2つがあります。
それでは、これらの費用について順番に説明していきます。
労働審判から訴訟に移行する場合には、追加の収入印紙を納める必要があります。
労働審判の印紙代は、通常訴訟の印紙代の半分程度に設定されていますので、不足する分を追加で払う必要があるのです。
収入印紙代は、訴額に応じて以下のとおりとされています。

労働審判から訴訟に移行する場合には、追加の予納郵券を納める必要があります。
労働審判に予納していた郵券では不足するためです。
東京地方裁判所では、訴訟移行時に6000円の追加の予納を求められるのが通常です。
労働審判から訴訟に移行した場合には、判決まで1年~1年半程度を要するのが通常です。
労働審判の訴訟移行の流れと期間を整理すると以下のとおりです。

それでは、これらの流れについて順番に説明していきます。
労働審判が訴訟に移行すると、まず裁判所から「訴訟に移行した旨」の事務連絡が届きます。
この連絡は、訴訟移行後、通常1週間程度で届くことが多く、事件番号が変更されることや、今後の手続きについて簡単な説明が書かれています。
例えば、「労働審判○年(労)第×号」が「労働訴訟○年(ワ)第×号」に変更されるといった案内がされます。
この段階で、訴訟用の準備を始める必要があります。
なお、裁判所によっては、事務連絡を書面で送らず、電話で伝えるだけのこともあります。
労働審判の申立ては訴えの提起とみなされているため、新たに訴状を出す必要はありませんが、「訴状に代わる準備書面」を提出することが求められます。
これは、労働審判での主張や事情を、訴訟形式に書き直す作業です。訴訟では、形式的な要件や構成が重視されるため、十分な整理が必要です。
準備期間としては、2~3週間程度が目安となります。
例えば、労働審判で提出した書面の内容を整理し直し、証拠との整合性を確認したうえで提出することになります。
一方の当事者が「訴状に代わる準備書面」を提出したあとは、相手方からの「答弁書」が提出されます。
答弁書には、訴えに対して認めるか争うかの姿勢が書かれており、主張や反論の要点が整理されています。
提出までの期間としては、裁判所から指定された日までに、通常は1か月程度が与えられます。
例えば、労働者側が不当解雇を主張している場合、会社側は「解雇に合理的な理由があった」といった反論を記載します。
答弁書の提出後は、裁判所で「弁論期日」や「弁論準備期日」が順次開かれます。
弁論期日では双方の主張を確認し、必要に応じて主張の補充や証拠の提出が行われます。
これらの期日は1~2ヶ月ごとに設定され、半年から1年程度かけて進行することが多いです。
例えば、「次回までにこの証拠を提出してください」と裁判官から指示が出され、それに従って書面のやりとりが続きます。
訴訟の中心となる期間であり、争点の整理が重要になります。
主張と証拠のやりとりが終わると、必要に応じて「証人尋問」が行われます。
この証人尋問は、事実関係の争いがある場合に実施され、実際に関係者が出廷して証言する場です。
尋問は通常1日で終了しますが、証人の人数や尋問内容によっては複数日になることもあります。
例えば、労働者が「解雇理由として指摘された出来事はなかった」と主張している場合、会社側の上司や同僚などが証人として出廷することがあります。
すべての審理が終わると、裁判所が判決を言い渡します。
判決までの期間は、最終弁論(結審)から約2~3ヶ月程度が目安です。判決では、原告の請求を認めるかどうかが明確に示されます。
例えば、不当解雇が認められた場合には「解雇は無効」とする判決が出され、未払賃金や復職などの救済が認められることがあります。
判決を受けて、さらに控訴される場合もありますが、訴訟としてはこの判決で一区切りとなります。
労働審判の訴訟移行についてよくある疑問としては、以下の9つがあります。
それでは、これらの疑問を順番に解消していきましょう。
A.労働審判から訴訟移行すると裁判官は変わることが多いです。
ただし、同じ裁判官が担当することができないというルールにはなっていませんので、同じ裁判官が担当する可能性もあります。
民事訴訟法23条1項6号にいう「前審の裁判」とは、当該事件の直接又は間接の下級審の裁判を指すと解すべきであり、労働審判はこれに該当しないためです。
(参考:最高三小判平成22年5月25日最高裁判所裁判集民事234号99頁[小野リース事件])
A.適法な異議があった場合には、労働審判はその効力を失います。
ただし、事実上、訴訟移行後の裁判官も労働審判の結果を見ることになります。
労働審判の結果に基づいて和解を勧めてくることもよくあります。
A.労働審判で出した証拠も、訴訟移行後に改めて提出する必要があります。
労働審判から訴訟に引き継がれるのは、労働審判申立書のみであり、それ以外の書類は再度提出する必要があるためです。
A.労働審判手続代理委任状に記載された委任事項により異なります。
労働審判手続代理委任状に「異議申立後の訴訟について、原告代理人とする一切の件(民事訴訟法55条2項各号に掲げる行為を含む)」と記載されていれば、訴訟委任状を兼ねることができますので、再度の提出は不要です。
一方で、このような記載がなければ、労働審判手続代理委任状とは別に、訴訟委任状を提出する必要があります。
A.労働審判で訴訟移行する割合は、20%程度と推計されます。
労働審判での解決率が80%程度とされているためです。
A.労働審判が訴訟移行したことによって、審判内容と判決内容が逆転することもあります。
裁判官が分かったり、時間をかけて主張立証を尽くしていったりすることによって、判断が変わることもあるためです。
A.訴訟移行後の事件番号は、令和●年(ワ)第●●号といった表示になります。
双方異議の場合には、労働者側からの異議に係る事件番号と会社側からの異議に係る事件番号の2つが付くことになります。
A.訴訟移行する際には、以下の書類を提出する必要があります。
A.訴状に代わる準備書面の請求の趣旨において、変更後の請求の趣旨を記載すれば足ります。
訴状に代わる準備書面が訴えの変更申立書も兼ねることになるためです。
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以上のとおり、今回は、労働審判の訴訟移行について、3つのケースと費用や流れ・期間を説明したうえで、よくある疑問9つを解説しました。
この記事の内容を簡単にまとめると以下のとおりです。

まとめ
・労働審判の訴訟移行とは、労働審判で解決できなかった場合に以後は訴訟において審理をしていくことをいいます。
・労働審判が訴訟に移行するケースとしては、以下の3つです。
ケース1:審判に異議が出された場合
ケース2:24条終了の場合
ケース3:審判が取り消された場合
・労働審判の訴訟移行費用としては、主に以下の2つがあります。
費用1:印紙代
費用2:予納郵券代
・労働審判の訴訟移行の流れと期間を整理すると以下のとおりです。

この記事が労働審判から訴訟に移行してしまいそうで悩んでいる方の助けになれば幸いです。
以下の記事も参考になるはずですので読んでみてください。
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