厚生労働省のブラック企業リスト(2024)!地域と掲載企業の傾向

厚生労働省のブラック企業リスト(2024)!地域と掲載企業の傾向

著者情報

籾山 善臣

籾山 善臣

リバティ・ベル法律事務所

神奈川県弁護士会所属。不当解雇や残業代請求、退職勧奨対応等の労働問題を数多く担当している。【著書】長時間残業・不当解雇・パワハラに立ち向かう!ブラック企業に負けない3つの方法 【連載】幻冬舎ゴールドオンライン:不当解雇、残業未払い、労働災害…弁護士が教える「身近な法律」、ちょこ弁|ちょこっと弁護士Q&A他 【取材実績】東京新聞2022年6月5日朝刊、毎日新聞 2023年8月1日朝刊、週刊女性2024年9月10日号、区民ニュース2023年8月21日

悩み

ブラック企業リストについて知りたいと悩んでいませんか

就職活動でブラック企業を避けるためにも、入社する会社がブラック企業なのか事前に知っておきたいですよね。

ブラック企業リストとは、厚生労働省が公表している「労働基準関係法令違反に係る公表事案」をいいます。

ブラック企業リストは各都道府県の労働局の公表内容を集めたものであり、労働基準法等に違反した企業の名称や違反の事実を地域ごとに知ることができます。

そのため、ブラック企業リストは就職活動で企業を選ぶ際の参考となるのです

しかし、ブラック企業リストは、すべてのブラック企業を掲載しているわけではないため、あなた自身の目で見極める必要があります。

実は、昨今、ブラック企業から賃金や残業代が支払われていないとご相談いただくことが非常に増えています。ブラック企業リストだけでは、ブラック企業の見極めが難しいことも多いのです

この記事をとおして、就職先企業に悩まれている労働者の方々に、ブラック企業を避けるために必要な知識をお伝えすることができれば幸いです。

今回は、ブラック企業リストとその内容について説明したうえで、リストの注意点とブラック企業を見極めるための簡単なチェックリストについて解説していきます。

具体的には、以下の流れで解説していきます。

この記事でわかること

この記事を読めば、どのような企業がブラック企業リストに掲載されているのかよくわかるはずです。

1章 厚生労働省のブラック企業リストとは

ブラック企業リストとは、厚生労働省が公表している資料であり、正式名称は「労働基準関係法令違反に係る公表事案」といいます

正式名称だと長いため、「ブラック企業リスト」「ブラックリスト」と簡単に表現されることが多いです。

ブラック企業リストは、厚生労働省が過労死等ゼロを目指す取組みとして公開され、2024年現在においても定期的に更新されています。

公表される企業の基準2つを整理すると以下のとおりです。

①送検事案:労働関係法令違反の疑いで送検し、公表した事案
②局長指導事案:局長が企業の経営トップに対し指導・公表した事案

※参考:平成29年3月30日基発0330第11号「掲載する事案」

2章 ブラック企業リストの地域ごとの傾向

ブラック企業リストとして公表されている事案につき、都道府県ごとに整理していきます

具体的には、労働基準関係法令違反に係る公表事案(令和5年11月1日~令和6年10月31日において、公表されている)において、公表されている441企業の傾向を分析していきます。

労働安全衛生法違反が76%と最も多く、労働基準法と最低賃金法違反は合計しても23%となっています

違反件数が最も多い地域は愛知であり、他にも東京・神奈川・大阪・兵庫・福岡と、人口が多いほど違反件数も増えやすい傾向があります。

より詳細には、以下のとおりとなります。

ブラック企業リストの地域ごとの傾向1ブラック企業リストの地域ごとの傾向2

3章 ブラック企業リストで公表されている事案の傾向3つ

ブラック企業リストで公表されている事案においては、違反する法令に一定の傾向があります

具体的には、ブラック企業リストで公表されている事案の傾向3つを整理すると以下のとおりです。

傾向1:労働基準法違反
傾向2:最低賃金法違反
傾向3:労働安全衛生法違反

それでは、これらの傾向について順番に説明していきます。

3-1 傾向1:労働基準法違反

ブラック企業リストで公表されている事案の傾向1つ目は、労働基準法違反です

ブラック企業リストの労働基準法違反について、件数順に整理すると以下のとおりです。

労働基準法違反件数順

このように、労働基準法に違反する場合、労働時間と賃金等の重大な労働条件に関する違反が多くなっています。

3-2 傾向2:最低賃金法違反

ブラック企業リストで公表されている事案の傾向2つ目は、最低賃金法違反です

最低賃金法に違反する場合、給与が最低賃金額に満たないことの違反のみとなっています。

最低賃金法違反

具体的には、公表されている事案では以下のような違反例が紹介されています。

・労働者●名に、●ヶ月分の定期賃金合計約●●万円を支払わなかったもの
・労働者●名に対して、●ヶ月間、●●県最低賃金額以上の賃金を支払わなかったもの

3-3 傾向3:労働安全衛生法違反

ブラック企業リストで公表されている事案の傾向3つ目は、労働安全衛生法違反です

ブラック企業リストの労働安全衛生法違反について、件数順に整理すると以下のとおりです。
労働安全衛生法違反

公表されている事案では、事業者が労働者を使用する場合に、必要な措置を行っていなかったことが多くなっています。

例えば、公表されている事案では以下のような違反例が紹介されています。

・●●を使用する作業を行わせるにあたり作業計画を定めなかったもの
・有効な保護具を使用させることなく、溶接作業を行わせたもの
・●日以上の休業を要する災害が発生したのに、遅滞なく労働者私傷病報告を提出しなかったもの

4章 ブラック企業リストのメリット3つ

ブラック企業がリストとしてまとめられていることで、様々なメリットが生じます

具体的には、ブラック企業リストのメリット3つを挙げると以下のとおりです。

メリット1:情報の信頼性が高い
メリット2:企業選びのリスクを回避できる
メリット3:コンプライアンス意識が向上する

それでは、これらのメリットについて順番に説明していきます。

4-1 メリット1:情報の信頼性が高い

ブラック企業リストのメリット1つ目は、情報の信頼性が高いことです

ブラック企業リストは、公的機関である厚生労働省が作成したものであり、社会的な信頼が確立されているためです。

そのため、情報の正確性が担保されており、企業を適切に評価しやすくなるのです。

4-2 メリット2:企業選びのリスクを回避できる

ブラック企業リストのメリット2つ目は、企業選びのリスクを回避できることです

ブラック企業がリストとして一元化されていることで、事前に就職先がブラック企業なのか確認することができるためです。

実際、求人を探す際にブラック企業リストがあれば、自分に適した求人を見つけやすくなるでしょう。

4-3 メリット3:コンプライアンス意識が向上する

ブラック企業リストのメリット3つ目は、コンプライアンス意識が向上することです

ブラック企業リストに掲載されると、企業の評判が下がり、離職率が増えるだけでなく求職者も減少するリスクがあるためです。

このようなリスクを避けるため、企業は法令順守に努める必要がありコンプライアンス意識が向上するのです。

5章 ブラック企業リストの注意点3つ

ブラック企業リストを利用するにあたり、注意していただきたい点がいくつかあります

具体的には、ブラック企業リストの注意点3つを整理すると以下のとおりです。

注意点1:掲載されていないブラック企業も存在する
注意点2:労働安全衛生法違反が多い
注意点3:下請け企業の掲載が中心となっている

それでは、これらの注意点について順番に説明していきます。

5-1 注意点1:掲載されていないブラック企業も存在する

ブラック企業リストの注意点1つ目は、掲載されていないブラック企業も存在することです

ブラック企業リストは、特に悪質性の高い事案について、1年間掲載するものであるためです。

そのため、軽微な事案や掲載から1年経過した企業については、ブラック企業リストに載っていないことがあるのです。

ブラック企業を回避したい場合、企業の労働条件等から実質的に判断することが大切となります。

5-2 注意点2:労働安全衛生法違反が多い

ブラック企業リストの注意点2つ目は、労働安全衛生違反が多いことです

ブラック企業と聞くと、「長時間残業」や「残業代未払い」等のイメージがついています。

しかし、実際にはこれらの違反は労働安全衛生法違反の10分の1程度であり、実態とイメージとの間に齟齬があります。

そのため、労働基準法違反や最低賃金法違反の企業を回避したい場合には、労働条件や労働環境を慎重に確認しておくことが重要です

5-3 注意点3:下請け企業の掲載が中心となっている

ブラック企業リストの注意点3つ目は、下請け企業の掲載が中心となっていることです

下請け企業が法律に違反する原因は様々ですが、原因の1つに発注元からの無理な要請が挙げられます。

下請け企業が無理な要請に応えた結果、労働環境が悪化したとしても、発注元がブラック企業リストに掲載されることはないのです。

そのため、下請け企業がブラック企業リストに掲載されても、根本的な解決に繋がらないことがあるのです。

6章 ブラック企業とホワイト企業を見極める10個のチェックリスト

就職活動でブラック企業を避けるためには、ホワイト企業との違いを見分ける方法を押さえておくことが大切です

具体的には、ブラック企業とホワイト企業を見極めるポイント10個を、チェックリスト形式で簡単に整理すると以下のとおりです。

①雇用契約書や労働条件通知書の有無を確認する
②固定残業代の想定している残業時間を確認する
③賃金体系が明確かを確認する
④ネットの評判や口コミを確認する
⑤社員の雰囲気を確認する
⑥年齢層に偏りがないかを確認する
⑦採用人数が多すぎないかを確認する
⑧タイムカードの有無を確認する
⑨就業規則の有無を確認する
⑩深夜に電気がついていないかを確認する

そのため、ブラック企業を回避したい場合、これらのポイントを事前に確認しておくといいでしょう。

7章 未払い賃金・残業代請求等に強い弁護士を探すなら弁護士コンパス

未払い賃金・残業代請求等に強い弁護士を探したい場合には、是非、労働弁護士コンパスを活用ください

労働問題は非常に専門的な分野であり、弁護士であれば誰でもいいというわけではありません。

労働弁護士コンパスでは、労働問題に注力している弁護士を探すことは勿論、地域や個別の相談内容から、あなたにマッチする最高の弁護士を探すことができます

初回無料相談や電話・オンライン相談可能な弁護士であれば、少ない負担で気軽に相談をすることができます。

どのようにして弁護士を探せばいいか分からないという場合には、まずは試しにこの労働問題弁護士コンパスを使ってみてください。

8章 まとめ

以上のとおり、今回は、ブラック企業リストとその内容について説明したうえで、リストの注意点とブラック企業を見極めるための簡単なチェックリストについて解説していきます。

この記事の要点を簡単に整理すると以下のとおりです。

まとめ

・ブラック企業リストとは、厚生労働省が公表している資料であり、正式名称は「労働基準関係法令違反に係る公表事案」といいます。

・違反件数が最も多い地域は愛知であり、他にも東京・神奈川・大阪・兵庫・福岡と、人口が多いほど違反件数も増えやすい傾向があります。

・ブラック企業リストで公表されている事案の傾向3つ
傾向1:労働基準法違反では、重要な労働条件に関する違反が多くなっています。
傾向2:最低賃金法違反では、最低賃金額に関する違反が多くなっています。
傾向3:労働安全衛生法違反、事業者が講ずべき措置に関する違反が多くなっています。

・ブラック企業リストのメリット3つを整理すると以下のとおりです。
メリット1:情報の信頼性が高い
メリット2:企業選びのリスクを回避できる
メリット3:コンプライアンス意識が向上する

・ブラック企業リストの注意点3つを整理すると以下のとおりです。
注意点1:掲載されていないブラック企業も存在する
注意点2:労働安全衛生法違反が多い
注意点3:下請け企業の掲載が中心となっている

・ブラック企業とホワイト企業を見極める10個のチェックリストは以下のとおりです。
①雇用契約書や労働条件通知書の有無を確認する
②固定残業代の想定している残業時間を確認する
③賃金体系が明確かを確認する
④ネットの評判や口コミを確認する
⑤社員の雰囲気を確認する
⑥年齢層に偏りがないかを確認する
⑦採用人数が多すぎないかを確認する
⑧タイムカードの有無を確認する
⑨就業規則の有無を確認する
⑩深夜に電気がついていないかを確認する

この記事が、ブラック企業リストについて知りたいと悩んでいる方の助けになれば幸いです。

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神奈川県弁護士会所属。不当解雇や残業代請求、退職勧奨対応等の労働問題を数多く担当している。【著書】長時間残業・不当解雇・パワハラに立ち向かう!ブラック企業に負けない3つの方法 【連載】幻冬舎ゴールドオンライン:不当解雇、残業未払い、労働災害…弁護士が教える「身近な法律」、ちょこ弁|ちょこっと弁護士Q&A他 【取材実績】東京新聞2022年6月5日朝刊、毎日新聞 2023年8月1日朝刊、週刊女性2024年9月10日号、区民ニュース2023年8月21日

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