残業70時間は甘え?きつい!一日何時間?残業代や手取りと対処法

残業70時間は甘え?きつい!一日何時間?残業代や手取りと対処法

著者情報

籾山 善臣

籾山 善臣 弁護士

リバティ・ベル法律事務所

神奈川県弁護士会所属
不当解雇や残業代、退職勧奨対応等の労働問題を数多く担当している。
【著書】長時間残業・不当解雇・パワハラに立ち向かう!ブラック企業に負けない3つの方法

残業70時間は過労死ラインに迫る非常に危険な働き方です。

決して甘えではなくきついと感じるのは当然なので、自分の身を守ることを考えましょう。

今回は、残業70時間は甘えではなくきついことを説明したうえで、違法性や残業代・手取りと対処法を解説していきます。

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この記事の要点

・残業70時間は、1日11時間~12時間労働であり、プライベートの時間は減りきつい日々となります。

・残業70時間は、うつ病や脳・心臓疾患の危険が高まります。

・残業70時間が毎月常態化している場合には、36協定があったとしても、違法の可能性が高いです。

この記事を読めば、残業70時間がきついと感じている場合にどうすればいいのかがよくわかるはずです。

1章 残業70時間はきつい!一日何時間?

残業が月70時間に達する生活は、人間らしい暮らしを維持することが非常に難しいレベルといえます

なぜなら、1日あたりの拘束時間が極めて長くなり、食事や睡眠といった生きていくために不可欠な時間すら削られてしまうからです。

例えば、月20日出勤で残業70時間の場合、1日あたりの残業時間は3.5時間となります。この場合の一般的な一日のスケジュールを見てみましょう。

時間帯 内容 補足
7:00 起床 疲れが全く取れず、重い体を引きずって起きる。
7:00〜8:00 朝の準備・朝食・家事 余裕がなく、急いで準備を済ませる。
8:00〜9:00 通勤 満員電車や渋滞で、仕事前に体力が削られる。
9:00〜12:00 午前の勤務 すでに疲労を感じながら業務をこなす。
12:00〜13:00 昼休憩 1時間の休憩では回復が追いつかない。
13:00〜18:00 午後の勤務 定時が近づく頃には、疲労がピークに達する。
18:00〜21:30 残業(3.5時間) 本来は家でくつろいでいる時間。気力だけで働く。
21:30〜22:30 通勤(帰宅) 帰りの車内や電車で寝てしまうこともある。
22:30〜24:30 夕食・入浴・家事 寝る直前の食事になり、胃腸にも負担がかかる。
24:30〜25:30 自由時間 唯一の時間だが、すぐに眠気に襲われる。
25:30 就寝 睡眠時間が短く、翌朝もまた疲れが残る。

朝7時00分に起きて、夜22時30分過ぎに帰宅するような生活では、家族とゆっくり会話をしたり趣味を楽しんだりする余裕はほとんどありません。

食事の時間が遅くなることで健康を害したり、寝るためだけに家に帰るような感覚になったりして、精神的にも追い詰められてしまいます。

残業70時間は「当たり前」ではなく、生活の質を著しく下げてしまう異常な状態であることを知っておきましょう

2章 残業70時間と健康リスク

残業が月70時間に達する生活を続けることは、あなたの命や健康を大きな危険にさらすことと同じです

人間の体には休養が必要不可欠であり、過度な長時間労働は心や体に回復できないほどのダメージを与えてしまうからです。

例えば、残業70時間については、うつ病や脳・心臓疾患と言ったリスクがあります。

2-1 うつ病

長時間労働は、脳の機能を低下させ、うつ病などのメンタルヘルス疾患を引き起こす大きな原因となります

毎日仕事に追われて十分な睡眠がとれない生活が続くと、心が折れてしまい、自分の感情をコントロールできなくなるからです。

例えば、朝起きると自然に涙が出てきたり、これまで大好きだった趣味に対しても全く興味が持てなくなったりしたら、それはうつ病のサインかもしれません。

一度心を病んでしまうと、元の生活に戻るまでに数年単位の長い年月を要することもあるため、無理を続けることは禁物です。

2-2 脳・心臓疾患

肉体的な側面では、脳や心臓の重い病気を発症させてしまう危険が急激に高まります

厚生労働省の基準では、月の残業が80時間を超えると健康障害との関連性が極めて強まるとされていますが、70時間はその一歩手前の「いつ倒れてもおかしくない」非常に危険な水準だからです。

例えば、慢性的な睡眠不足による高血圧や、強いストレスが引き金となって、ある日突然、脳出血や心筋梗塞を起こしてしまうケースも考えられます。

命に関わる事態になる前に、体が発している「きつい」というメッセージを無視せず、休息を取るようにしてください。

3章 残業70時間が違法となるケース

残業が月70時間に達している場合、その働き方は違法である可能性が極めて高いといえます

日本の法律では労働時間に厳しい制限があり、それを超えて働かせるためには非常に厳格なルールをクリアしなければならないからです。

例えば、残業が違法となる代表的なケースとしては、以下の3つがあります。

ケース1:36協定が締結されていない
ケース2:常態化し上限規制に違反している
ケース3:残業代が支払われていない

それでは、それぞれのケースについて順番に見ていきましょう。

3-1 ケース1:36協定が締結されていない

会社が従業員に1分でも残業をさせるには、まず「36(さぶろく)協定」を締結し、労働基準監督署に届け出なければなりません

この手続きがないまま、1日8時間や週40時間という法定の労働時間を超えて働かせることは、法律で固く禁じられているからです。

例えば、会社側が労働者の代表と書面で正式な約束を交わしていないにもかかわらず、毎日当たり前のように残業を命じている場合は、その時点で法律違反となります。

まずは、自分の職場に有効な36協定が備え付けられているか、一度確認してみることをおすすめします。

3-2 ケース2:常態化し上限規制に違反している

たとえ36協定があったとしても、残業時間には「原則として月45時間」という上限が設けられています

特別な事情がある場合にのみ、この上限を超える「特別条項」という仕組みを使えますが、それも1年のうち半分(6ヶ月)までと決められているからです。

例えば、1月分から7月分まで毎月70時間の残業がずっと続いていたとしたら、それは「一時的な特別な事情」とは認められず、法律違反となる可能性が高いです。

「うちは万年人手不足だから仕方ない」といった言い訳は、法律の世界では通用しません。

3-3 ケース3:残業代が支払われていない

働いた時間に対して、正しく計算された残業代が支払われていないケースも、当然ながら重大な法律違反です

労働基準法では、法定の労働時間を超えて働いた分については、必ず通常の時給に割増(25%以上)をした賃金を支払わなければならないと定められているからです。

例えば、月70時間も残業をしているのに給料が固定給のままだったり、「役職手当を払っているから残業代は出ない」などと言われたりして、実際の残業時間分が支給されていない場合は注意が必要です。

サービス残業は労働者の権利を奪う行為であり、会社が勝手に決めたルールで支払いを免れることはできません。

4章 残業70時間の残業代と手取り金額

残業70時間という過酷な労働をこなしている場合、本来は基本給に加えて、驚くほど大きな金額の残業代を受け取っているはずです

なぜなら、残業代は通常の時給に対して1.25倍という高い割増率で計算されるうえに、月60時間を超えた分については1.5倍というさらに高い率で支払われることが法律で決まっているからです。

例えば、月20日出勤で毎日3.5時間(月70時間)残業した場合の、基本給別の計算目安は以下のとおりです。

※1ヶ月の所定労働時間を160時間として計算しています。
残業70時間の残業代と手取り金額

それでは、基本給ごとの内訳について順番に見ていきましょう。

4-1 基本給20万円の方|残業代11万2500円

基本給が20万円の方の場合、月70時間の残業をすると、残業代だけで基本給の半分を超える金額が加算されます

1時間あたりの基本の時給は1,250円となり、残業代の単価は1,563円(60時間まで)から1,875円(60時間超)に跳ね上がるからです。

例えば、月70時間の残業をすると、合計で約112,500円の残業代が発生します。
(20万円 ÷ 160時間 × 1.25 × 60時間 + 20万円 ÷ 160時間 × 1.5 × 10時間)

基本給と合わせると総支給額は約31万円となり、税金などを引いた手取りでも25万円程度になる計算です。

4-2 基本給30万円の方|残業代16万8750円

基本給が30万円の方の場合、残業70時間による上乗せ額はさらに高額なものになります

1時間あたりの基本時給が1,875円と高いため、1.25倍や1.5倍の割増が加わると、1時間あたりの残業代が非常に重くなるからです。

例えば、月70時間の残業代を合計すると、約168,750円にも達します。
(30万円 ÷ 160時間 × 1.25 × 60時間 + 30万円 ÷ 160時間 × 1.5 × 10時間)

基本給と合わせると、月給は46万円を超えてきます。これより大幅に少ない場合は、計算が間違っていたり未払いがあったりする可能性があります。

4-3 基本給40万円の方|残業代22万5000円

基本給が40万円という高い水準の方であっても、月70時間の残業は非常に大きな負担であり、それに見合う多額の報酬が支払われなければなりません

残業代の単価は、60時間までが3,125円、60時間を超えると3,750円という極めて高い金額になるからです。

例えば、月70時間の残業代を合計すると、約225,000円となります。
(40万円 ÷ 160時間 × 1.25 × 60時間 + 40万円 ÷ 160時間 × 1.5 × 10時間)

総額で62万円を超える給料になりますが、この金額で自分の健康や大切な時間を失っているのだということを、冷静に考える必要があるでしょう。

5章 残業70時間への具体的な対処法

残業70時間で働いている方が、今の苦しい状況から抜け出し、自分らしい生活を取り戻すためには、勇気を持って行動を起こすことが必要です

我慢を続けても会社が自然に変わることは少なく、放置すればあなたの心身が取り返しのつかないほど壊れてしまう恐れがあるからです。

例えば、残業70時間がつらいと感じた場合には、以下の5つの対処法を試してみてください。

対処法1:業務を効率化する
対処法2:上司に相談する
対処法3:残業代を請求する
対処法4:労基署に通報する
対処法5:転職する

残業70時間への具体的な対処法

それでは、これらの具体的な方法を順番に説明していきます。

5-1 対処法1:業務を効率化する

まずは、自分の範囲でできることとして、仕事の進め方を見直したり優先順位を整理したりしてみましょう

無駄な作業を省くことで、物理的な拘束時間を少しでも短縮できる可能性があるからです。

例えば、資料作成のやり方を工夫したり、不要な会議への参加を減らしたりする提案をすることが考えられます。

ただし、個人の努力だけで月70時間の残業をゼロにするのは難しいため、これはあくまで負担を少し軽くするための手段と考えてください。

5-2 対処法2:上司に相談する

一人で抱え込まず、上司に対して「今の残業時間は体力的に限界である」と正直に伝えてみましょう

現場の負担が正しく伝わっていないだけで、相談することで業務の振り分けや人員の補充が検討される場合もあるからです

例えば、体調に不安があることや、今のままでは仕事を続けられないという悩みを具体的に話してみてください。

もし相談しても状況が変わらないのであれば、その会社は働く人の健康を二の次にしているといえるでしょう。

5-3 対処法3:残業代を請求する

正しく残業代が支払われていない場合は、過去にさかのぼって未払い分を請求することを検討しましょう

残業代をしっかりと請求する姿勢を見せることは、会社側に「これ以上の長時間労働はコストが見合わない」と認識させ、結果的に残業時間を減らすことにつながるからです。

例えば、会社が「70時間も残業させていたら、毎月10万円以上の追加支払いが必要になる」と痛感すれば、業務量の見直しや人員の追加に真剣に取り組むようになります。

残業代請求は、お金を取り戻すだけでなく、会社に法律を守らせて残業時間を適正化させる手段にもなるのです。

5-4 対処法4:労基署に通報する

会社が法律違反を認めない場合や改善の訴えに応じない場合は、労働基準監督署(労基署)に相談しましょう

労基署は、法律違反をしている企業に対して調査を行い、是正(なおすこと)を求める権限を持っている公的な機関だからです。

例えば、「36協定の上限を超えて残業させられている」といった事実を告発することで、国から会社に対して厳しい指導が入ることがあります。

相談は無料で、相談した人の秘密も守られるため、在職中であっても安心して利用することができます。

労働基準監督署への通報については、以下の記事で詳しく解説しています。

5-5 対処法5:転職する

どうしても今の会社で状況が良くならないのであれば、環境そのものを変える「転職」を考えましょう

世の中には残業を最小限に抑え、従業員の健康やプライベートを大切にしているホワイト企業もたくさん存在するからです。

例えば、転職サイトに登録して他の求人を眺めるだけでも、今の会社がすべてではないということが分かり、心が軽くなるはずです。

あなたの健康や人生よりも大切な仕事はありません。より良い環境へ移ることは、決して逃げで甘えでもありません。

6章 残業70時間についてよくある疑問

残業70時間についてよくある疑問としては、以下の4つがあります。

Q1:残業70時間は甘え?
Q2:みなし残業70時間は違法?
Q3:残業70時間で手取り30万は少ない?
Q4:残業70時間を超えたらやばい?

これらの疑問を順番に解消していきましょう。

6-1 Q1:残業70時間は甘え?

A.決して甘えではありません

月70時間の残業は、1日平均で3.5時間も居残りをして働いている状態です。

これは通常の勤務時間の1.4倍以上も働いていることになり、誰にとっても心身ともに「きつい」と感じるのが当然の負担です。

周囲が働いているからといって、自分を責める必要は全くありません。

6-2 Q2:みなし残業70時間は違法?

A.36協定が残業の上限を原則として45時間としている関係で、公序良俗違反にならないかが争点となります

ただし、みなし残業が70時間となっているという事情だけでは、違法とまでの認定はしてもらえない傾向にあります。

実際に長時間の残業が常態化しているなど公序良俗に反する事情を補強する必要があります。

6-3 Q3:残業70時間で手取り30万は少ない?

A.基本給が20万円前後の場合には、月70時間の残業をしても手取りは30万円未満になります

月70時間の残業をして手取り30万円未満となると、労働に見合った十分な対価とは言えないと感じる方も多いでしょう。

6-4 Q4:残業70時間を超えたらやばい?

A.危険なので、早く休息や対策が必要です

残業が月80時間を超えると、医学的に「過労死ライン」と呼ばれる水準になってくるためです。

脳出血や心筋梗塞、あるいはうつ病を発症するリスクが高まり、命の危険があるレベルです。

70時間という数字は、その「死のライン」のすぐ手前にあることを忘れないでください。

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8章 まとめ

以上のとおり、今回は、残業70時間は甘えではなくきついことを説明したうえで、違法性や残業代・手取りと対処法を解説しました。

この記事が月の残業が70時間を超えて、悩んでいる方の助けになれば幸いです。

以下の記事も参考になるはずですので読んでみてください。

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【連載】幻冬舎ゴールドオンライン:不当解雇、残業未払い、労働災害…弁護士が教える「身近な法律」、ちょこ弁|ちょこっと弁護士Q&A他
【取材実績】東京新聞2022年6月5日朝刊、毎日新聞 2023年8月1日朝刊、週刊女性2024年9月10日号、区民ニュース2023年8月21日

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