既婚者だと知らなかったのに慰謝料請求された!支払義務・証拠・対処法を弁護士が解説

既婚者だと知らなかったのに慰謝料請求された!支払義務・証拠・対処法を弁護士が解説

著者情報

籾山 善臣

籾山 善臣 弁護士

リバティ・ベル法律事務所

神奈川県弁護士会所属
取扱分野は、浮気・不倫問題、離婚問題、労働問題等。
【連載・取材】幻冬舎ゴールドオンライン、ちょこっと弁護士Q&A、東京新聞、毎日新聞、週刊女性他

既婚者だと知らなかったのに、相手の配偶者から慰謝料請求を受けると、「本当に支払わなければならないのか」「どう回答すればいいのか」と不安になります。

既婚者だと知らなかった場合、故意や過失がなければ慰謝料の支払義務を否定できる可能性があります。

ホウペン

この記事の要点

・既婚者だと知らなかった場合には、故意がないので原則慰謝料は発生しません。ただし、過失(落ち度)がある場合には、例外的に慰謝料が発生します。

・既婚者だと知らなかった証拠としては、「独身と嘘をつかれていたLINE」や「マッチングアプリのプロフィール」、「婚活アプリ・パーティー、結婚相談所で知り合った証拠と利用規約」などがあります。

・既婚者だと知らず肉体関係を持った場合には、交際相手に慰謝料を請求できる可能性があります。

この記事を読めば、既婚者だと知らなかった場合に慰謝料を請求されたらどうすればいいのかがよくわかるはずです。

目次

1章 既婚者だと知らなかったのに慰謝料請求された場合、支払義務はある?

相手が結婚していることを全く知らずに交際していた場合、相手の配偶者から慰謝料請求を受けても、支払わずに済む可能性があります

法律上、慰謝料が発生するには「わざと(故意)」または「うっかりした不注意(過失)」のどちらかが必要とされるためです。

1-1 原則:故意がないので慰謝料は発生しない

相手が既婚者であることを知らずにお付き合いをしていたのであれば、慰謝料を支払う法的義務は原則としてありません

既婚者だと知らなかった場合には、わざと不貞したとは言えず、故意が否定されるためです。

例えば、相手が独身者が集まる場に参加していたり、独身であると嘘の自己紹介をしていたりする場合、こちらが既婚者だと見抜くことは困難です。

相手に騙されて交際をスタートさせたり、真剣に結婚を前提としてお付き合いを続けたりしていたのであれば、法律上の責任を負うことはありません。

したがって、既婚者だと知らなかったのであれば、相手の配偶者から請求を受けたとしても、法的には支払いを拒否できるのが通例です。

1-2 例外:過失(落ち度)があると慰謝料が発生する

たとえ既婚者だと知らなかったとしても、注意すれば気づけたはずだという「過失(落ち度)」がある場合には、例外的に慰謝料が発生することがあります

法律では、わざとではなくても、不注意によって他人の権利を傷つけた場合には責任を負わなければならないというルールがあるためです。

普通に考えて「おかしい」と気づける状況があったかどうかが、過失が認められるかどうかのポイントとなります。

具体的にどのような事情があると「既婚者だと気づけたはず」と言われやすいのかは、4章で詳しく説明します。

2章 既婚者だと知らなかったのに慰謝料を請求された場合の対処法

既婚者だと知らなかったのに慰謝料請求を受けた場合でも、焦って対応してはいけません

対応を間違えると、本来は支払義務を争えるケースでも、相手方に不利な証拠を与えてしまうことがあります。

例えば、既婚者だと知らなかったのに慰謝料請求された場合の対処法としては、以下の4つがあります。

対処法1:すぐに相手との関係を断つ
対処法2:安易に謝罪や支払いの約束をしない
対処法3:知らなかった事情と証拠を整理して回答する
対処法4:対応に困ったら弁護士に相談する

既婚者だと知らなかったのに慰謝料を請求された場合の対処法

それでは、慰謝料請求を受けたときの対応について順番に説明していきます。

2-1 対処法1:すぐに相手との関係を断つ

相手が既婚者だと分かったら、すぐに関係を断つことが大切です。

既婚者だと知った後も連絡を取り合ったり会ったりしてしまうと、「既婚者だと知ったうえで関係を続けた」と判断される可能性があるためです。

例えば、相手から「もうすぐ離婚する」「本気で好きなのはあなただけ」などと言われても、関係を続けるべきではありません。

それまで既婚者だと知らなかったとしても、知った後の行動は別に評価されます。

そのため、相手に別れを伝えたうえで、不要な連絡を控え、今後は会わないようにすることが重要です。

2-2 対処法2:安易に謝罪や支払いの約束をしない

相手の配偶者から強く責められても、安易に謝罪したり、慰謝料を支払う約束をしたりしないようにしましょう。

不用意な発言をすると、後から「責任を認めた」と主張されるおそれがあるためです。

例えば、電話で「私が悪かったです」「必ず支払います」と言ってしまった場合、その会話を録音されていることもあります。

また、内容をよく確認しないまま示談書にサインしてしまうと、後から支払義務を争うことが難しくなることがあります。

謝罪の気持ちがある場合でも、法的責任を認める表現になっていないかは慎重に確認する必要があります。

その場で結論を出さず、まずは請求内容、請求金額、相手方の主張、手元の証拠を整理しましょう。

2-3 対処法3:知らなかった事情と証拠を整理して回答する

慰謝料請求に対しては、既婚者だと知らなかった事情を整理して回答することが重要です。

単に「知らなかった」と伝えるだけでは、相手方に納得してもらえないことがあるためです。

回答する際は、相手が独身だと説明していたこと、既婚者だと疑うきっかけがなかったこと、既婚者だと分かった後すぐに関係を断ったことを整理しましょう

例えば、相手が「独身だ」と説明していたLINE、マッチングアプリのプロフィール、婚活サービスで知り合った記録、結婚の話をしていたやり取りなどがある場合には、これらの証拠を踏まえて回答することが考えられます。

ただし、感情的に反論したり、相手の配偶者を責めるような言い方をしたりすると、話し合いがこじれることがあります

回答するときは、電話ではなく、メールや書面など記録に残る方法で、落ち着いて事実関係を伝えることが大切です。

2-4 対処法4:対応に困ったら弁護士に相談する

自分だけで対応するのが難しい場合には、早めに弁護士に相談しましょう

不倫慰謝料の請求では、支払義務の有無だけでなく、請求金額、回答内容、証拠の出し方、相手方との交渉方法も問題になるためです。

例えば、相手方弁護士から通知書が届いている場合、相手の配偶者から何度も電話が来ている場合、職場や家族に連絡すると言われている場合には、早めに対応を整理する必要があります。

弁護士に相談すれば、既婚者だと知らなかったという主張がどの程度通りそうか、どの証拠を使うべきか、どのように回答すべきかを確認できます。

また、弁護士が窓口になれば、相手方と直接やり取りする精神的な負担を減らせることもあります。

慰謝料を請求されたからといって、すぐに支払わなければならないとは限りません。まずは、請求内容と証拠を整理し、冷静に対応していきましょう。

3章 既婚者だと知らなかったことを示す証拠

相手が既婚者だと知らなかったことを主張するには、客観的な証拠を揃えておきましょう

慰謝料請求を受けた場面では、単に「知らなかった」と説明するだけでは、相手の配偶者や相手方弁護士に納得してもらえないことがあります。

そのため、相手が独身だと説明していた事情や、既婚者だと疑わなかったことに無理がなかった事情を、証拠として整理しておきましょう。

例えば、既婚者だと知らなかったことを示す証拠としては、以下の6つがあります。

証拠1:相手が独身と嘘をついていたLINE
証拠2:マッチングアプリのプロフィール
証拠3:婚活アプリで知り合った証拠と利用規約
証拠4:婚活パーティーで知り合った証拠と応募条件
証拠5:結婚相談所で紹介された証拠
証拠6:結婚の話をしていた証拠

それでは、どのようなものが証拠になるのか順番に見ていきましょう。

3-1 証拠1:相手が独身と嘘をついていたLINE

2-1 LINE(既婚者だと知らなかった)

相手が自分から「独身です」と説明していたLINEは、既婚者だと知らなかったことを示す重要な証拠になります

相手が独身だと明確に説明していたのであれば、こちらが相手を既婚者だと疑わなかったとしても、不自然とはいえないためです。

例えば、以下のようなやり取りが残っていれば、証拠として使える可能性があります。

・「独身だよ」と説明している発言
・「離婚した」と説明している発言
・「既婚者じゃないよね?」という質問に対し、相手が否定している発言
・「将来結婚したら」「子どもができたら」など、独身であることを前提にした発言

ただし、LINEの一部だけでは、相手方から「本当は既婚者だと気づけたはずだ」と反論されることもあります

そのため、相手が独身だと説明していたLINEだけでなく、出会い方や交際中の状況など、既婚者だと疑うきっかけがなかったことを示す証拠もあわせて整理しておきましょう。

3-2 証拠2:マッチングアプリのプロフィール

2-2 マッチングアプリプロフィール(既婚者だと知らなかった)

相手が利用していたマッチングアプリのプロフィール画面も、既婚者だと知らなかったことを示す証拠になります

プロフィール上で「独身」「未婚」「結婚歴なし」などと表示されていれば、こちらが相手を独身だと信じた理由を説明しやすくなるためです。

例えば、相手のプロフィールに「真剣に恋人を探しています」と書かれていた場合や、結婚歴の欄が「なし」になっていた場合には、その画面をスクリーンショットで保存しておきましょう。

相手がすでに退会していてプロフィールを確認できない場合でも、過去のやり取りの画面に相手のニックネーム、写真、プロフィールの一部などが残っていれば、証拠として役立つことがあります。

マッチングアプリで出会った場合には、相手のプロフィールだけでなく、アプリ名、登録時期、やり取りの内容もあわせて残しておくことが大切です。

3-3 証拠3:婚活アプリで知り合った証拠と利用規約

2-3 婚活アプリで知り合った証拠と利用規約(既婚者と知らなかった)

婚活アプリで知り合った場合には、そのアプリで出会ったこと自体が重要な事情になります

婚活アプリは、結婚を前提とした出会いを目的とするサービスであり、既婚者の利用を禁止していることが多いためです。

例えば、利用規約に既婚者の登録禁止が書かれている場合や、登録時に独身であることの確認が求められている場合には、利用者としては「登録している人は独身である」と信じやすいといえます。

そのため、婚活アプリのマイページ、相手とのやり取り、利用規約の該当部分、登録時の説明画面などは、できるだけ保存しておきましょう。

これらの証拠があれば、相手が既婚者だと知らなかったことだけでなく、既婚者だと疑わなかったことに無理がなかった事情を説明しやすくなります。

3-4 証拠4:婚活パーティーで知り合った証拠と応募条件

2-4 婚活パーティーで知り合った証拠と応募条件(既婚者と知らなかった)

婚活パーティーで知り合った場合には、そのパーティーの応募条件や申込み記録が証拠になります

婚活パーティーでは、「独身者限定」や「結婚を希望する男女限定」などの参加条件が設けられていることが多く、参加者を既婚者だと疑う必要がない場面もあるためです。

例えば、募集ページに「独身男女限定」と書かれていた場合や、受付時に独身であることを確認する手続きがあった場合には、その内容を保存しておきましょう。

また、申込み完了メール、参加案内メール、当日の資料、パンフレットなども、婚活目的の場で知り合ったことを示す資料になります。

このような資料があれば、通常の出会いではなく、独身者が集まる前提の場で相手と知り合ったことを説明しやすくなります。

3-5 証拠5:結婚相談所で紹介された証拠

2-5 結婚相談所で紹介された証拠(既婚者と知らなかった)

結婚相談所を通じて紹介された相手であれば、紹介時の資料や契約書類が証拠になります

結婚相談所では、入会時に独身証明書などの提出を求めることが多く、利用者としては紹介された相手を独身だと信じやすい仕組みになっているためです。

例えば、カウンセラーから提示されたプロフィール、紹介記録、お見合いの日程調整メール、相談所との契約書類などが証拠として考えられます。

結婚相談所を通じて紹介された場合、個人間で知り合った場合と比べて、相手が独身であると信じた理由を説明しやすいことがあります。

そのため、相談所から受け取った資料やメールは削除せず、できるだけそのまま保存しておきましょう。

3-6 証拠6:結婚の話をしていた証拠

2-6 結婚の話をしていた証拠(既婚者だと知らなかった)

将来の結婚について具体的に話していた記録も、既婚者だと知らなかったことを示す証拠になります

相手が結婚を前提にした話をしていたのであれば、こちらが相手を独身だと信じたとしても自然だからです。

例えば、婚約指輪を見に行く話、親への挨拶の予定、同居する家の相談、結婚式の希望、将来の子どもについての会話などが残っていれば、証拠として使える可能性があります。

ただし、単に「いつか結婚できたらいいね」といった抽象的な発言だけでは、証拠として弱いこともあります。

そのため、結婚の話をしていた証拠を集めるときは、いつ、どのような内容を、どの程度具体的に話していたのかが分かる資料を残しておくことが大切です。

4章 既婚者だと気づけたはず(過失あり)と言われやすい事情

既婚者だと知らなかった場合でも、相手方から「注意すれば既婚者だと気づけたはず」と主張されることがあります

不倫慰謝料では、既婚者だと知らなかったことだけでなく、知らなかったことに落ち度がなかったかどうかも問題になるためです。

例えば、既婚者だと気づけたはずと言われやすい事情としては、以下の5つがあります。

事情1:休日や夜に会えないなど不自然な点があった
事情2:自宅に入れてくれない・家族や友人に紹介されない
事情3:指輪や家族の存在を疑わせる事情があった
事情4:社内不倫など相手の家庭状況を確認しやすい関係だった
事情5:既婚者だと知った後も関係を続けた

既婚者だと気づけたはず(過失あり)と言われやすい事情

それでは、既婚者だと気づけたはずと言われやすい事情について順番に説明していきます。

4-1 事情1:休日や夜に会えないなど不自然な点があった

休日や夜にほとんど会えないなど、不自然な点があった場合には、既婚者だと気づけたはずと主張されることがあります。

家庭がある人は、休日や夜に家族と過ごしていることが多いため、会える時間帯が極端に限られていると、既婚者であることを疑う事情になり得るためです。

例えば、平日の昼間や仕事帰りに短時間しか会えない、休日は一切会えない、夜になると連絡が取れなくなるなどのケースがあります。

もちろん、仕事が忙しい、実家暮らしである、生活リズムが合わないなど、別の理由があることもあります。

しかし、このような不自然な事情が複数重なっている場合には、相手方から「既婚者ではないかと確認すべきだった」と言われやすくなります。

4-2 事情2:自宅に入れてくれない・家族や友人に紹介されない

相手が自宅に入れてくれない場合や、家族・友人にまったく紹介してくれない場合も、既婚者だと気づけたはずと主張されることがあります。

交際が続いているにもかかわらず、相手の生活実態が見えない状態が続いていると、不自然な交際関係と見られやすいためです。

例えば、相手の自宅に行こうとすると毎回断られる、住所を教えてくれない、家族や友人の話を避ける、知人に会わせようとしないなどのケースがあります。

もっとも、交際期間が短い場合や、プライベートをあまり見せたがらない性格の場合には、それだけで直ちに過失があるとは限りません。

重要なのは、その事情がどの程度続いていたか、ほかにも既婚者を疑わせる事情があったかどうかです。

4-3 事情3:指輪や家族の存在を疑わせる事情があった

指輪や家族の存在を疑わせる事情があった場合には、既婚者だと知らなかったという主張が弱くなることがあります。

既婚者である可能性をうかがわせる具体的な事情を見ていたのであれば、相手に確認すべきだったと判断されることがあるためです。

例えば、相手が左手薬指に指輪をしていた、スマートフォンに配偶者や子どもを思わせる写真があった、家族らしき人物から頻繁に連絡が来ていたなどのケースがあります。

また、SNSに家族との写真があった場合や、周囲から「既婚者ではないか」と言われていた場合も注意が必要です。

このような事情があったにもかかわらず、何も確認しないまま交際を続けていた場合には、相手方から「注意すれば気づけたはず」と主張されやすくなります。

4-4 事情4:社内不倫など相手の家庭状況を確認しやすい関係だった

社内不倫など、相手の生活状況や家庭状況を確認しやすい関係だった場合には、既婚者だと知らなかったという主張が難しくなることがあります。

同じ職場で働いている場合、周囲の会話や人間関係から、相手が既婚者であると分かる機会があったと見られやすいためです。

例えば、職場で相手の配偶者や子どもの話が出ていた、社内の人が相手を既婚者として扱っていた、扶養や家族行事に関する話を聞いていたなどのケースがあります。

もちろん、同じ職場だからといって、必ず相手の婚姻状況を知っていたことになるわけではありません。

部署が違う、私生活の話をほとんどしない、相手が独身だと明確に説明していたなどの事情があれば、知らなかったことを説明できる可能性もあります。

ただし、社内不倫では、相手方から「職場で確認できたはず」と主張されやすいため、実際にどのような情報に触れていたのかを整理しておくことが大切です。

4-5 事情5:既婚者だと知った後も関係を続けた

既婚者だと知った後も関係を続けた場合には、慰謝料請求を受けるリスクが高くなります。

それまで既婚者だと知らなかったとしても、知った後の交際は、既婚者だと分かったうえでの行動として別に評価されるためです。

例えば、相手の配偶者から連絡を受けた後も会い続けた場合や、既婚者だと聞いた後も肉体関係を続けた場合には、不利に見られやすくなります。

また、「もうすぐ離婚する」「夫婦関係は終わっている」と言われていたとしても、実際に婚姻関係が続いている以上、安易に関係を続けるべきではありません。

既婚者だと分かった時点で関係を断ち、その後の連絡や面会を控えることが重要です。

慰謝料請求に対応する際には、既婚者だと知らなかった時期の事情だけでなく、既婚者だと知った後にどのように行動したかも整理しておきましょう。

5章 相手方や相手方弁護士への回答方法

既婚者だと知らなかったのに慰謝料請求された場合には、回答の仕方に注意が必要です

不用意に返答すると、支払義務を認めたように受け取られることがあるためです。

回答する際は、感情的に反論するのではなく、請求内容、既婚者だと知らなかった事情、手元の証拠を整理して伝えることが大切です。

例えば、相手方や相手方弁護士へ回答する際のポイントとしては、以下の4つがあります。

ポイント1:請求内容と根拠を確認する
ポイント2:支払義務を認める表現を避ける
ポイント3:知らなかった事情と証拠を整理して伝える
ポイント4:すぐに回答できない場合は猶予を求める

慰謝料請求への回答については、「慰謝料請求の回答書の文例!テンプレート5つやNG記載と簡単な書き方」でも詳しく解説しています。

それでは、相手方や相手方弁護士への回答方法について順番に説明していきます。

5-1 請求内容と根拠を確認する

まずは、相手方が何を理由に慰謝料請求をしているのかを確認しましょう。

請求内容を確認しないまま回答すると、本来争うべき点を見落としてしまうことがあります。

例えば、通知書には、交際期間、肉体関係の有無、既婚者だと知っていたとされる理由、請求金額、回答期限などが書かれていることがあります。

特に重要なのは、相手方が「あなたは既婚者だと知っていた」又は「注意すれば既婚者だと気づけた」と考えている根拠です。

具体的な根拠が分からない場合には、すぐに支払うと回答するのではなく、請求の理由や証拠を確認することが大切です。

5-2 支払義務を認める表現を避ける

回答するときは、支払義務を認めたと受け取られる表現を避けましょう。

例えば、「私が悪かったです」、「慰謝料は支払います」、「不倫して申し訳ありません」、「請求額を下げてもらえませんか」などの表現には注意しましょう

既婚者だと知らなかった場合には、慰謝料の支払義務を争える可能性があります。

そのため、回答では、「既婚者であることは知らなかった」「支払義務については争う」「事実関係を確認したい」など、法的責任を認めない表現を検討しましょう。

5-3 知らなかった事情と証拠を整理して伝える

回答では、既婚者だと知らなかった事情を具体的に伝えることが重要です。

単に「知りませんでした」と伝えるだけでは、相手方に納得してもらえないことがあるためです。

例えば、以下の事情を時系列で具体的に整理することで説得的となります。

出会った場所やサービス
相手から独身だと説明されたこと
交際中に結婚を前提とした話があったこと
既婚者だと疑うきっかけがなかったこと
既婚者だと知った後に関係を断ったこと

また、相手が独身だと説明していたLINE、マッチングアプリのプロフィール、婚活サービスの利用記録、結婚の話をしていたやり取りなどがある場合には、証拠として整理しておきましょう。

ただし、証拠を最初からすべて送るべきとは限りません。

どの証拠を、どのタイミングで出すかは、相手方の主張や請求内容を見て慎重に判断する必要があります。

5-4 すぐに回答できない場合は猶予を求める

通知書に回答期限が書かれていても、焦って不十分な回答をする必要はありません。

証拠を確認する時間や、弁護士に相談する時間が必要な場合には、回答期限の猶予を求めることもできます。

例えば、「事実関係を確認のうえおって回答いたします。今暫くお待ち下さい。」とだけ回答することが考えられます。

ただし、請求を長期間放置すると、相手方との交渉がこじれることがあります。

すぐに結論を出せない場合でも、通知書を受け取ったこと、内容を確認していること、後日回答することは伝えておきましょう。

6章 よくある相談例|既婚者だと知らなかったのに慰謝料請求されたケース

既婚者だと知らなかったのに慰謝料請求された場合、請求のされ方によって対応方法が変わることがあります。

単に慰謝料を請求されるだけでなく、職場や家族に連絡すると言われるケースや、相手方から何度も連絡が来るケースもあるためです。

例えば、既婚者だと知らなかったのに慰謝料請求された場合のよくある相談例としては、以下の3つがあります。

相談例1:職場に連絡すると言われたケース
相談例2:相手の配偶者から何度も電話が来るケース
相談例3:既婚者だと知った後も相手本人から連絡が来るケース

よくある相談例|既婚者だと知らなかったのに慰謝料請求されたケース

それでは、よくある相談例について順番に説明していきます。

6-1 相談例1:職場に連絡すると言われたケース

相手の配偶者から、「職場に連絡する」「会社に慰謝料請求書を送る」と言われることがあります

しかし、慰謝料請求は本来、当事者間で行うべき問題であり、職場に知らせる必要があるとは限りません。

特に、職場へ不倫の事実を広めるような行為は、名誉毀損やプライバシー侵害の問題になることがあります。

このような場合には、感情的に言い返すのではなく、職場への連絡は控えるよう求めたうえで、今後のやり取りは書面やメールで行うように伝えることが大切です。

相手方の言動がエスカレートしている場合には、早めに弁護士へ相談しましょう。

6-2 相談例2:相手の配偶者から何度も電話が来るケース

相手の配偶者から、何度も電話やメッセージが来ることもあります

責められると焦って謝罪したくなるかもしれませんが、その場で支払いを約束するのは避けるべきです。

電話では、発言内容が記録に残りにくく、後から「言った」「言わない」の争いになることがあります。

また、会話を録音されている可能性もあります。

そのため、何度も連絡が来る場合には、電話でのやり取りを避け、書面やメールで回答するようにしましょう。

既婚者だと知らなかった事情や証拠を整理するまでは、安易に責任を認める発言をしないことが大切です。

6-3 相談例3:既婚者だと知った後も相手本人から連絡が来るケース

相手が既婚者だと分かった後も、相手本人から連絡が来ることがあります

例えば、「妻とは離婚する」「もう少し待ってほしい」「本当に好きなのはあなただけ」などと言われるケースです。

しかし、既婚者だと知った後も関係を続けると、慰謝料請求を受けるリスクが高くなります。

それまで既婚者だと知らなかったとしても、知った後の交際は別に評価されるためです。

そのため、既婚者だと分かった時点で、相手本人との連絡や面会は控えるべきです。

必要であれば、相手に対して「既婚者であることが分かった以上、今後は連絡を控えてください」と伝え、やり取りの記録を残しておきましょう。

7章 裁判例から見る「既婚者だと知らなかった」の判断ポイント

既婚者だと知らなかった場合に慰謝料の支払義務があるかは、具体的な事情によって判断されます。

ここでは、既婚者だと知らなかった場合の裁判例をもとに、どのような点が重視されるのかを整理していきます。

7-1 東京地判平成30年7月25日|既婚者だと知らなかったことに過失がないとされた裁判例

東京地判平成30年7月25日は、妻が、夫の交際相手である女性に対して、不貞行為を理由に慰謝料を請求した事案です。

この事案では、夫が女性に対して独身であると説明していました。

裁判所は、夫の生活状況などから、女性が夫を独身だと信じたことに過失はないとして、女性の責任を否定しました。

この裁判例から分かるのは、「知らなかった」と言うだけではなく、独身だと信じても無理がなかった事情を具体的に説明することが重要だという点です。

7-2 東京地判令和3年12月1日|独身だと騙した交際相手への慰謝料請求が認められた裁判例

東京地判令和3年12月1日は、既婚者であることを隠して交際していた相手に対し、慰謝料請求が認められた事案です。

この事案では、相手が独身であると偽り、結婚を前提に交際していました。

裁判所は、既婚者であると知っていれば性行為を承諾しなかったとして、性的自己決定権の侵害を認め、慰謝料100万円の支払いを命じました。

この裁判例は、相手の配偶者から請求された場面ではなく、騙した交際相手に対する請求の事案です。

もっとも、相手が独身だと偽っていたことや、結婚を前提にした話があったことは、既婚者だと知らなかった事情を説明するうえでも参考になります。

7-3 裁判例から分かるポイント

裁判例を見ると、既婚者だと知らなかった場合には、次の事情が重要になります。

相手が独身だと説明していたか
既婚者だと疑うような不自然な事情があったか
婚活サービスなど独身者前提の場で出会ったか
結婚を前提にした具体的な話があったか
既婚者だと分かった後、すぐに関係を断ったか
これらを裏付ける証拠が残っているか

大切なのは、本人が「知らなかった」と説明するだけではなく、客観的に見ても既婚者だと気づきにくかったといえる事情です。

そのため、慰謝料請求を受けた場合には、相手の説明、出会い方、交際中の状況、既婚者だと知った後の対応についても具体的に整理しておきましょう。

8章 補足|独身だと騙した交際相手に慰謝料請求できることもある

ここまでは、相手の配偶者から慰謝料請求された場合の対応を説明してきました。

もっとも、相手が既婚者であることを隠し、独身だと嘘をついて交際していた場合には、あなた自身が交際相手に慰謝料請求できることもあります。

これは、相手の配偶者からの慰謝料請求とは別の問題です。

例えば、交際相手に慰謝料請求できる可能性があるケースとしては、以下の3つがあります。

ケース1:独身だと明確に嘘をつかれていた場合
ケース2:結婚を前提に交際していた場合
ケース3:既婚者だと知っていれば肉体関係を持たなかった場合

補足|独身だと騙した交際相手に慰謝料請求できることもある

それでは、交際相手に慰謝料請求できるケースについて順番に説明していきます。

8-1 独身だと明確に嘘をつかれていた場合

相手が既婚者であるにもかかわらず、独身だと明確に嘘をついていた場合には、慰謝料請求できる可能性があります

相手の嘘によって、こちらが結婚していない人だと信じて交際していたといえるためです。

例えば、相手が「独身です」「結婚していません」「離婚しています」などと説明していたケースがあります。

このような発言がLINEやメールに残っていれば、相手が既婚者であることを隠していた証拠になります。

8-2 結婚を前提に交際していた場合

結婚を前提に交際していた場合も、慰謝料請求が認められやすくなることがあります

相手が既婚者であるにもかかわらず、将来の結婚を期待させて交際を続けていたといえるためです。

例えば、親への挨拶、同居、結婚式、婚約指輪、将来の子どもについて具体的に話していたケースがあります。

単に「いつか結婚できたらいいね」という程度では弱いこともありますが、具体的な結婚の話があった場合には、精神的苦痛が大きい事情として考慮されることがあります。

8-3 既婚者だと知っていれば肉体関係を持たなかった場合

既婚者だと知っていれば肉体関係を持たなかったといえる場合には、慰謝料請求できる可能性があります

相手が既婚者であることを隠したことで、交際や肉体関係について正しく判断する機会を奪われたといえるためです。

ただし、慰謝料請求が認められるには、相手が既婚者であることを隠していた事情や、こちらが独身だと信じた事情を証拠で示す必要があります

相手が独身だと説明していたLINE、婚活サービスで知り合った記録、結婚を前提にしたやり取りなどは、重要な証拠になります。

なお、この章で説明した交際相手への慰謝料請求は、相手の配偶者から慰謝料請求された場合の反論とは別に整理する必要があります。

そのため、配偶者から請求を受けている場合には、まず自分に慰謝料の支払義務があるかを確認したうえで、必要に応じて交際相手への請求も検討しましょう。

9章 既婚者だと知らなかった場合によくある疑問

既婚者だと知らなかった場合によくある疑問としては、以下の4つがあります。

Q1:既婚者だと知らなかった場合、慰謝料はいくらになりますか?
Q2:既婚者だと知らなかったという主張は認められますか?
Q3:相手が指輪をしていた場合、知らなかったとは言えませんか?
Q4:社内不倫で既婚者だと知らなかったという主張は難しいですか?

これらの疑問を順番に解消していきましょう。

9-1 Q1:既婚者だと知らなかった場合、慰謝料はいくらになりますか?

A.相手が既婚者だと全く知らず、自分に落ち度もないのであれば、慰謝料を支払う必要はないため、相場は「0円」となります。

支払い義務がない以上、相手からどれほど高額な請求を受けたとしても、それに応じる法的な根拠はないからです。

一方で、過失が認められる場合でも、悪質性が低いとして、一般的な慰謝料相場は50万円~300万円のうち、低めの金額となる可能性があります。

不倫慰謝料の相場については、以下の記事で詳しく解説しています。

9-2 Q2:既婚者だと知らなかったという主張は認められますか?

A.「知らなかった」という主張を認めてもらうためには、客観的な証拠を示せるかどうかが鍵となります

裁判所などの第三者は、本人の気持ちだけでなく、周りの状況から見て「知らなくても無理はない」と言えるかどうかで判断するからです。

例えば、マッチングアプリのプロフィールに「未婚」とあったり、相手の自宅に何度も泊まっていたりした実績があれば、事実として認められやすくなります。

逆に、怪しい点がいくつもあったのに無視して交際を続けていたのであれば、知らなかったという主張は通りにくくなります。

9-3 Q3:相手が指輪をしていた場合、知らなかったとは言えませんか?

A.相手が左手の薬指に指輪をしていた場合、既婚者だと知らなかったという主張を通すのは、難しくなります

左手薬指の指輪は結婚の印として一般的であり、それを見て何も疑わなかったのは不注意(過失)があると判断される可能性が高いためです。

例えば、デートのたびに指輪を付けていたり、指輪を外した跡がはっきりと残っていたりした場合は、気づくべきだったと言われかねません。

ただし、相手が「ファッションで付けているだけだ」と嘘をつき、それを信じさせるだけの特別な事情があれば、例外的に認められることもあるでしょう。

9-4 Q4:社内不倫で既婚者だと知らなかったという主張は難しいですか?

A.同じ職場の相手と交際していた場合、既婚者だと知らなかったという主張は、一般的な交際よりも厳しく判断される傾向にあります

職場はプライベートな情報が伝わりやすい環境であり、周囲の噂などを通じて結婚の事実を知る機会が多いと考えられるからです。

例えば、相手が結婚した際に社内で報告がされていたり、結婚指輪を付けて出勤していたりしたのであれば、知らなかったと通すのは困難です。

しかし、中途採用で入ってきたばかりで接点が少なかったり、相手が職場全体に対して徹底的に独身だと嘘をつき通していたりする場合は、認められる余地もあります。

社内不倫については、以下の記事で詳しく解説しています。

10章 不倫慰謝料に強い弁護士を探すなら弁護士コンパス

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不倫慰謝料は交渉力の格差が金額に影響を与えやすく、弁護士の経験や知識次第で結果も変わってきますので、弁護士であれば誰でもいいというわけではありません。

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11章 まとめ

以上のとおり、今回は、既婚者と知らなかった場合について、慰謝料や証拠、交際相手への請求について解説しました。

この記事が既婚だと知らなかったことで悩んでいる方の助けになれば幸いです。

以下の記事も参考になるはずですので読んでみてください。

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著者情報

籾山 善臣

籾山 善臣 弁護士

リバティ・ベル法律事務所

神奈川県弁護士会所属。
取扱分野は、浮気・不倫問題、離婚問題、労働問題等。
【連載・執筆等】幻冬舎ゴールドオンライン、ちょこ弁|ちょこっと弁護士Q&A他
【取材実績】東京新聞2022年6月5日朝刊、毎日新聞 2023年8月1日朝刊、週刊女性2024年9月10日号、区民ニュース2023年8月21日

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