
2025年2月22日
不当解雇
休職は何ヶ月でクビになる?休職期間満了や繰り返しでの解雇と対処法
休職期間や手続をよく確認しないまま、長期にわたり休職を継続して、解雇を言い渡されてしまう事例が多くなっています。今回は、休職が解雇猶予の制度であることを説明したうえで、休職でクビになるケースや対処法を解説します。
2025/05/11
残業代
課長職として働いているものの残業代が支払われないことに疑問をもっていませんか。
基本給や役職手当も大して増えていないにもかかわらず、責任や労働時間だけ増えてしまっては不満ですよね。
課長に残業代が出ないのは、会社から管理監督者として扱われているためです。
もっとも、課長と言っても、中間管理職にすぎず、大きな権限や裁量がないことが通常ですので、法律上の管理監督者には該当しないことが多く、残業代が出ないのは違法なことも多いです。
例えば、本来、課長であっても残業代が出るケースとしては、経営会議に参加しておらず労務管理もしていないケース、欠勤すると給与が控除されるケース、時給換算するとアルバイトと同程度の賃金額のケースなどがあります。
課長なのに残業代がつかない場合には、弁護士に相談したうえで、適切に対処していくようにしましょう。
実は、課長職で残業代が出ていない方は多いですが、本当に管理監督者に該当する方はほんの一握りにすぎません。
つまり、法律上は残業代が出るにもかかわらず、残業代をもらうことができていない課長職の方が非常に多いのが現状なのです。
この記事をとおして、課長職なのに残業代をもらうことができていない方々に是非知っておいていただきたい知識やノウハウをわかりやすく伝えることができれば幸いです。
今回は、課長に残業代が出ないのはなぜかを説明したうえで、本当は出る違法なケース3つと裁判例を解説してきます。
この記事でわかることは、以下のとおりとなります。
この記事を読み終わった後には、課長職なのに残業代が出ていない場合にはどうすればいいのかがよくわかるはずです。
目次
課長に残業代が出ないのは、会社から管理監督者として扱われているためです。
労働基準法では、管理監督者には労働時間や休日、休憩に関する規定は適用しないとされています。
労働時間や休日に関する規定が適用されないと時間外残業代や休日残業代が支給されないことになります。
会社は、課長職以上の方については、労働基準法の管理監督者に該当するとして、残業代の支給をしないことが多いのです。
例えば、係長のときには残業代が支給されていた方も、課長に昇進した後は残業代が支給されなくなると言ったことがよくあります。
このように会社が課長職になると残業代を支給しなくなることがあるのは、労働基準法上の管理監督者として扱うことがあるためです。
課長に残業代が出ないことは、違法となることが多いです
課長と言っても、中間管理職にすぎず、大きな権限や裁量がないことが通常であるためです。
労働基準法上の管理監督者に該当するかは、役職により決まるわけではありませんので、課長や部長であっても、実態として法律の条件を満たしていなければ違法となります。
具体的には、法律上の管理監督者に該当するには、以下の3つの条件をいずれも満たしている必要があるとされています。
管理監督者に該当すると働く上での最低基準とされる労働基準法の一部が適用されないことになりますので、とくに厳格に判断される傾向にあります。
つまり、裁判所は、管理監督者に該当するとは容易に認めない傾向にあるのです。
なお、契約書に管理監督者と記載されている場合であっても、労働基準法に反する契約は無効となりますので、上記の3つの条件を満たしていなければ違法となります。
就業規則や給与規程に課長以上は管理監督者であると記載されていても、労働基準法に反する規定は無効となりますので、上記の3つの条件を満たしていなければ違法となります。
このように、会社側が課長職の方に対して残業代を支払わないことは、管理監督者としての条件を満たしておらず違法であるとされることが多いのです。
課長でも法律上は残業代が出るケースがたくさんあります。
法律上の管理監督者に該当するための条件を満たしていない限り、課長に対しても残業代を支給しなければいけないためです。
例えば、課長でも残業代が出るケースとしては、以下の3つがあります。
それでは、これらのケースについて順番に説明していきます。
課長でも残業代が出るケースの1つ目は、経営会議に参加しておらず労務管理もしていない場合です。
管理監督者に該当するためには、経営者との一体性と言う条件を満たしていなければならず、これは経営への関与や労務管理の程度から判断されるためです。
経営会議に参加していない場合や参加していても決定権や発言権が乏しい場合には、経営者と一体ということはできないでしょう。
また、部下がいないような場合には、労務管理をしているとはいえず、経営者と一体とは言いにくいでしょう。
部下がいても人事考課に関与していない場合や新人の採用に関わっていない場合にも、労務管理をしているとはいえない傾向にあります。
課長でも残業代が出るケースの2つ目は、欠勤すると給与が控除される場合です。
管理監督者に該当するためには、労働時間の裁量と言う条件を満たしていなければならず、出勤日や出勤時間について裁量があることが必要であるためです。
例えば、欠勤した場合に欠勤控除として、基本給や役職手当の金額を減らされてしまう場合には、労働時間の裁量があるとは言えないでしょう。
また、早退や遅刻、休日について申請をして、上長の許可を得なければいけないような場合にも、労働時間の裁量が否定される方向の事情となります。
課長でも残業代が出るケースの3つ目は、時給換算するとアルバイトと同程度の賃金額の場合です。
管理監督者に該当するためには、対価の正当性と言う条件を満たしていなければならず、一般職と比べて相応の待遇を受けていることが必要とされています。
例えば、課長職になり年収が増えても、労働時間も激増し、時給換算すると1100円~1300円程度になるような場合には、正当な対価とはいいにくいでしょう。
管理監督者にふさわしい待遇については、以下の記事で詳しく解説しています。
課長職の残業代請求が認められた裁判例は数多く存在しています。
裁判例を見ることで実際の裁判ではどのような点に着目して判断がされるのかイメージしやすくなるでしょう。
以下では、課長職の残業代請求が認められた裁判例を3つ厳選して紹介していきます。
【事案】
本件は、ある自動車メーカーで「課長職」として勤務していた従業員が死亡した後、その相続人である原告が、当該従業員の未払い残業代を請求した事案です。
原告は、会社が当該従業員に対して正当な残業代を支払わなかったと主張しました。
一方、会社側は、当該従業員が労働基準法上の「管理監督者」に該当するとして、残業代の支払い義務がないと反論しました。
【結論】
裁判所は、当該従業員が管理監督者に該当しないと認め、原告の残業代請求を一部認容しました。
これにより、会社は357万9565円の未払い残業代および遅延損害金を支払う義務があると判断されました。
一方、会社の対応が悪質であるとはいえないとして、付加金の請求は棄却されました。
【理由】
当該従業員は自動車メーカーで「課長職」として勤務しており、一定の権限と職務を担っていました。
具体的には、重要な会議に出席して企画立案を行う業務や、収益計画の実行に向けた調整を行う役割がありました。
しかし、当該従業員の職務と権限は、最終的な経営判断を行う経営層とは明確に区別されていました。
例えば、企画内容の承認は上司の「プログラムダイレクター」から受ける必要があり、会議での最終決定権は経営層にあったため、当該従業員は経営者と一体的な立場にあるとは認められませんでした。
また、給与や待遇面では他の従業員より優遇されており、一定の裁量で勤務時間を管理することが許されていました。
しかし、これだけでは管理監督者としての要件を満たすとはいえないと判断されました。
さらに、原告は、当該従業員が十分な休憩時間を確保できなかったと主張しましたが、裁判所は、当該従業員が実際には十分な休憩を取っていたと認定し、この主張を退けました。
最終的に、当該従業員は管理監督者に該当せず、会社は残業代を支払う義務を負うと判断されました。
ただし、会社が当該従業員を管理監督者と誤認したことには一定の理由があり、その対応が悪質であるとはいえないため、付加金の支払い請求は認められませんでした。
【事案】
当該従業員は課長職に就いていましたが、会社は労働基準法41条2号に基づき管理監督者であると主張し、残業代を支払っていませんでした。
当該従業員は、管理監督者に該当しないとして未払残業代を請求しました。
【結論】
裁判所は、当該従業員は管理監督者に該当しないと判断し、会社に778万5179円の未払残業代を支払う義務があるとしました。
【理由】
当該従業員の役付手当は月額7万円とされていましたが、実質的には4~5万円程度であり、管理監督者としてふさわしい待遇とは認められませんでした。
また、課長職であった期間においても、勤務内容や労働時間の状況に実質的な変化はなく、タイムカードを打刻していなかったとしても労働時間が自己管理されていたとは認められませんでした。
さらに、他の従業員の休暇や出張届を承認する役割が一部確認されましたが、これらの諾否を決定する権限を持っていた証拠はなく、経営に準じた裁量権を有していたとは評価できませんでした。
会社が主張する労務管理や業務管理の実施も認められず、当該従業員は他の従業員と同様に制作業務を行っていたにすぎませんでした。
また、未払残業代については、当該従業員の手帳記載やタイムカードの記録が労働時間を立証しており、会社が主張する私的作業や自由時間が含まれていたという主張には客観的な証拠が不足していました。
これにより、当該従業員の労働時間が認定され、会社には未払残業代の支払いが命じられました。
【事案】
中古自動車の買い取り及び販売等の事業を行う会社の管理本部情報システム部課長が、会社に対して未払残業代約1099万円と付加金903万円等の支払いを求めました。
会社は、当該従業員が管理監督者に該当すると主張し、残業代の支払い義務を否定しました。
【結論】
裁判所は、当該従業員が管理監督者に該当しないと認定し、未払残業代の一部を認めました。一方、付加金の請求は棄却されました。
【理由】
当該従業員の業務内容は、コンピュータシステムの保守管理や問い合わせ対応といった現場業務に限定されており、経営上の意思決定に関与する立場ではありませんでした。
採用面接への立ち会いがあったものの、採用の決定権を有していませんでした。また、勤怠管理資料が提出されていることからも、労働時間の拘束を受けない立場にはなかったと判断されました。
これらの事情を総合的に考慮し、当該従業員は管理監督者に該当しないと認定されました。
未払残業代については、当該従業員が管理監督者に該当しないことを前提に一部が認容されました。
ただし、付加金の請求については、会社が管理監督者該当性を主張していたことから悪意性がないと判断され、請求が棄却されました。
課長なのに残業代がつかない場合には、労働者としても積極的に対処していくようにしましょう。
会社側はあなたが管理監督者であるという前提で扱っていますので、あなたが何も行動を起こさなければ状況は変わらないためです。
具体的には、課長職なのに残業代がつかない場合には以下の手順で対処していきましょう。
それでは、これらの手順について順番に説明していきます。
課長なのに残業代がつかない場合の対処法の1つ目は、弁護士に相談することです。
労働基準法の管理監督者に該当するかどうかは法的な事項であるため、まずは法律の専門家である弁護士に相談し見通しを確認し、助言をもらうべきだからです。
残業代を請求した方が良いのかどうか、費用倒れにならないか、あなたの意向を踏まえてどう行動するのがベストなのか事案に応じて適切な助言をもらうことができるでしょう。
ただし、管理職の残業代問題については専門性が高いため、弁護士であれば誰でもいいというわけではありません。
労働問題に注力していて、管理職の残業代問題に実績のある弁護士を探すといいでしょう。
課長なのに残業代がつかない場合の対処法の2つ目は、証拠を集めることです。
あなたが管理監督者に該当しない意と主張しても、会社側はあなたが管理監督者であると言い張ってくることがあります。
このような場合、裁判所は証拠によりどちらの言い分が正しいかを審理することになります。
例えば、以下のような証拠を集めるといいでしょう。
その他、雇用契約書や労働条件通知書、就業規則、給与規程、勤怠記録等の基本的な証拠もあるといいでしょう。
課長なのに残業代がつかない場合の対処法の3つ目は、通知書を送付することです。
会社に対して残業代を請求することで、「催告」となり、6か月間時効の完成を猶予することができます。
この間に正確な未払い残業代金額を計算したり、交渉したりすることになります。
また、不足している証拠等があれば、会社に開示を求めましょう。
弁護士に依頼する場合には一貫した主張とするため、弁護士に送ってもらいましょう。一度した主張は後から撤回することが難しいこともあるためです。
課長なのに残業代がつかない場合の対処法の4つ目は、裁判(労働審判・訴訟)を提起することです。
話し合いにより解決することが難しい場合には、裁判所を用いた解決を検討することになります。
労働審判は、全三回の期日で調停による解決を目指す手続きです。調停が成立しない場合には、労働審判委員会が審判を下します。
審判には雇用主側も労働者側も異議を出すことができ、異議が出た場合には通常の訴訟に移行することになります。
早期に実態に即した解決をすることが期待できる手続きです。
訴訟は、期日の回数の制限などはとくにありません。1か月に一回程度の頻度で、裁判所の指揮に応じながら、交互に主張を繰り返していきます。解決まで1年以上を要することもあります。
管理職の残業代請求に強い弁護士を探したい場合には、是非、労働弁護士コンパスを活用ください。
労働問題は非常に専門的な分野であり、弁護士であれば誰でもいいというわけではありません。
労働弁護士コンパスでは、労働問題に注力している弁護士を探すことは勿論、地域や個別の相談内容から、あなたにマッチする最高の弁護士を探すことができます。
初回無料相談や電話・オンライン相談可能な弁護士であれば、少ない負担で気軽に相談をすることができます。
どのようにして弁護士を探せばいいか分からないという場合には、まずは試しにこの労働問題弁護士コンパスを使ってみてください。
以上のとおり、今回は、課長に残業代が出ないのはなぜかを説明したうえで、本当は出る違法なケース3つと裁判例を解説しました。
この記事の要点を簡単に整理すると以下のとおりです。
この記事が課長職として働いているものの残業代が支払われないことに疑問をもっている方の助けになれば幸いです。
以下の記事も参考になるはずですので読んでみてください。
弁護士に相談する
鈴木晶
横浜クレヨン法律事務所
神奈川県横浜市神奈川区鶴屋町2-21-1ダイヤビル303
籾山善臣
リバティ・ベル法律事務所
神奈川県横浜市中区尾上町1丁目4番地1関内STビル11F
人気記事
2025年2月22日
不当解雇
休職期間や手続をよく確認しないまま、長期にわたり休職を継続して、解雇を言い渡されてしまう事例が多くなっています。今回は、休職が解雇猶予の制度であることを説明したうえで、休職でクビになるケースや対処法を解説します。
2025年4月13日
ハラスメント
逆パワハラとは、部下から上司に対して行われるパワーハラスメントのことを言います。今回は、逆パワハラとは何かを説明したうえで、6つの事例や判例と簡単な対処法5つを解説します。
2025年3月8日
労働一般
ブラック企業リスト掲載の事案は、労働安全衛生法違反が多く、実際のイメージとは異なる部分があります。今回は、ブラック企業リストとその内容について説明したうえで、ブラック企業を見極めるための簡単なチェックリストについて解説していきます。