
2025年4月13日
ハラスメント
逆パワハラとは|仕返しはNG?6つの事例や判例と簡単な対処法5つ
逆パワハラとは、部下から上司に対して行われるパワーハラスメントのことを言います。今回は、逆パワハラとは何かを説明したうえで、6つの事例や判例と簡単な対処法5つを解説します。
2025/05/09
残業代
部下がいないのに管理職として扱われていることに疑問を感じていませんか?
役職に見合った権限もないのに責任だけ増えて不満を抱いていたり、今後のキャリアがどうなっていくのか不安に感じたりしている方もいますよね。
部下なし管理職とは、文字通り部下がいないのに管理職とされている方のことです。
年功序列型のシステムにより昇格させなければいけないものの、人員が不足していて割り当てる部下がいないような場合には、このような状況となりがちです。
部下なし管理職の問題点として、十分な権限もないのに管理職として扱われることになり、居心地が悪いことや出世が期待しにくくなること、リストラの対象とされやすいことなどが挙げられます。
部下なし管理職については、法律上は管理監督者に該当しないことも多く、これまで払ってもらえていなかった残業代を遡って請求できる可能性が高いです。
裁判例にも、部下なし管理職の方に対する残業代を支払うように命じたものが存在しています。
もし部下がいないのに残業代が支払われていない場合には、これまでの残業代を取り戻すには自ら行動をしていく必要があります。
実は、私が多くの管理職の残業問題の相談を受ける中でも、部下がいないのに残業代が支払われていない方が少なからずおり、労働基準法が守られていないと感じることが少なからずあります。
この記事をとおして、部下なし管理職の方々に是非知っておいていただきたい知識やノウハウをわかりやすく伝えていくことができれば幸いです。
今回は、部下なし管理職とは何かを説明したうえで、部下がいない管理監督者の4つの問題点と残業代について解説していきます。
この記事でわかることは以下のとおりです。
この記事を読めば、部下がいないのに管理職とされている場合にどうすればいいのかがよくわかるはずです。
目次
部下なし管理職とは、文字通り部下がいないのに管理職とされている方のことです。
管理職というと、本来、「管理」という言葉のとおり、部下がいてマネジメント業務についても行うことになります。
しかし、昨今では、部下がいないにもかかわらず、課長などの役職を与えられるケースが出てきています。
担当課長やスタッフ管理職などの名前で呼ばれることもあります。
役職名はつけられますが、部下がいないため業務内容はこれまでと大きく変わらず、現場作業となることが通常です。
ただし、役職が付くことによって待遇はその役職に相当するものとされる傾向にありますので、基本給や役職手当が支給される一方で、残業代が出なくなる方が多いです。
このように部下なし管理職とは、課長等の役職を与えられているのに部下がいない方のことをいいます。
部下なし管理職が発生するのには、原因があります。
例えば、部下なし管理職が発生する原因としては、以下の4つです。
それでは、これらの原因について順番に説明していきます。
部下なし管理職が発生する原因の1つ目は、年功序列型のシステムです。
勤続年数が一定程度になると順番に昇格していくことになっていることがあります。
そうすると部下をつけることができていない場合でも、役職を付けざるを得ないことがあり、部下なし管理職が生まれることになります。
部下なし管理職が発生する原因の2つ目は、人員不足です。
従業員が不足していると部下をつけようとしても、つけることができないことがあります。
また、元々部下がいたのにその部下が退職してしまったことにより、部下がいなくなってしまったということもあります。
部下なし管理職が発生する原因の3つ目は、モチベーションの維持です。
技術職や現場作業中心の職種でも、いつまでも一般職のままではモチベーションを維持することが難しくなってきます。
同期はどんどん昇格していき役職がついて年収も上がっていってしまうためです。
そのため、マネジメントを業務内容としていない方にもモチベーション維持のために役職名をつけることがあるのです。
部下なし管理職が発生する原因の4つ目は、対外的な見せ方です。
外資系企業などでは、どのポジションにも「●●マネージャー」などの名称が入っていることがよくあります。
しかし、実際には日本法人の従業員は数名程度しかおらず、マネジメントが必要になるような部下など存在しないことも珍しくありません。
対外的に名刺に記載することになるポジション名などを気にして、役職が付されていることもあります。
部下なし管理職については、いくつかの問題点があります。
本来はマネジメント職に与えられるべき役職を部下がいないのに与えられてしまうことで、歪みが生じてしまうのです。
例えば、部下なし管理職の問題点としては、以下の4つです。
それでは、これらの問題点について順番に説明していきます。
部下なし管理職の問題点の1つ目は、役職に権限が見合っていないことです。
管理職とされているのに部下はいませんので、レポートラインにも入らず、業務指示や人事考課などの労務管理を行う権限もない傾向にあります。
経営会議などにも参加することができず、会社の経営にもかかわることができていない方も少なくありません。
このように役職が実際の権限と見合わないという問題点があります。
部下なし管理職の問題点の2つ目は、出社が望みにくいことです。
部下なし管理職は、通常のラインにはのってこないため、社内での出世のコースからは外れてしまい、これ以上の出世を望めない傾向にあります。
部下なし管理職の問題点の3つ目は、居心地が悪いことです。
部下がおらず十分な権限がないのに、役職者として扱われることで、居心地の悪さを感じることもあるでしょう。
出世コースから外れているのにいつまでも会社にしがみついていると思われていないか不安に感じてしまう方もいます。
部下なし管理職の問題点の4つ目は、リストラの対象とされやすいことです。
業務内容自体は一般職と同様であるものの、給与は高くなっているため、人員を削減する際に対象とされやすくなってしまいます。
部下なし管理職については、これまで払ってもらえていなかった残業代を遡って請求できる可能性が高いです。
労働基準法上、管理監督者に該当すると、労働時間や休日、休憩に関する規定が適用されないことになります。
その結果、法律上、管理監督者に対しては、時間外残業代と休日残業代が支払われなくなります。
もっとも、管理監督者に該当すると働く上での最低基準である労働基準法の一部が適用されなくなる以上、とても厳格に判断されています。
具体的には、管理監督者に該当するためには、以下の3つ条件をいずれも満たすことが必要とされています。
部下なし管理職の方の場合には、労務管理を行っていないため経営者との一体性を満たしていないと判断されやすいのです。
もし、これらの条件が満たされていない場合、これまで支払われていなかった残業代について3年の時効にかかっていない範囲で遡って請求できる可能性があります。
部下なし管理職の残業代請求を認めた裁判例として、以下のものがあります。
【事案】
本件は、元従業員が会社に対し、管理監督者に該当しないとして、未払の残業代などの支払を求めた事案です。
元従業員は、インターネットバンキング担当のヴァイス・プレジデント(VP)として勤務していましたが、自身の労働時間に基づく残業代の支払を請求しました。
【結論】
裁判所は、元従業員が労働基準法41条2号に定める管理監督者に該当しないと判断しました。
その結果、未払時間外割増賃金として324万6922円の支払請求を認め、付加金の請求やその他の主張については棄却しました。
【理由】
元従業員は、インターネットバンキングに関するプロジェクトを担当していましたが、業務範囲は限定的であり、部下を持たず、部門全体の統括や労務管理の裁量権を有していませんでした。
元従業員の地位は最下層に位置するものであり、経営者と一体の立場にはありませんでした。
元従業員は、労働時間の管理対象外とされていましたが、これは裁量権の行使ではなく、会社側が適切に勤怠管理を行っていなかった結果にすぎませんでした。
元従業員の年俸は1250万円(賞与を含め1450万円)で、一般的な上場企業の部長クラスを上回る水準でしたが、これだけで管理監督者性を肯定する十分な理由とは認められませんでした。
これらの点から、元従業員が管理監督者に該当しないと判断されました。
(参考:東京地判平成23年12月27日労判1044号5頁[HSBCサービシーズ・ジャパン・リミテッド事件])
もし部下がいないのに残業代が支払われていない場合には、これまでの残業代を取り戻すには自ら行動をしていく必要があります。
会社は、あなたが管理監督者を管理監督者として扱っているため、あなたが何もしなければ状況は変わらないためです。
具体的には、部下なし管理職が残業代を請求する手順は以下のとおりです。
それでは、これらの手順について順番に説明していきます。
部下なし管理職が残業代を請求する手順の1つ目は、弁護士に相談することです。
管理監督者に該当するかどうかは法的な事項であり、法律の専門家である弁護士に見通しを相談したうえで、事案に応じた方針につき助言をもらうべきだからです。
弁護士に相談すれば残業代を請求できる可能性があるか、費用倒れにならないか、どのようなタイミングで請求を行うべきか等、丁寧に教えてもらうことができます。
ただし、管理職の残業代問題にいては専門性が高いため、弁護士であれば誰でもいいというわけではありません。
労働問題に注力していて、管理職の残業問題に実績のある弁護士を探すといいでしょう。
部下なし管理職が残業代を請求する手順の2つ目は、証拠を集めることです。
あなたが管理監督者に該当しないと主張しても、会社側はすぐにはこれを認めず、あなたは管理監督者であると言い張ってくる可能性があります。
労働者と会社の言い分が異なる場合、裁判所は証拠に基づいて、どちらの主張が正しいかを審理することになります。
例えば、部下がいないことが分かる組織図、労働時間が分かる勤怠記録、残業代が支払われていないことがわかる給与明細などを集めておくようにしましょう。
部下なし管理職が残業代を請求する手順の3つ目は、通知書を送付することです。
残業代については3年の時効があり、給料日から3年が経過した部分から時効が完成していってしまっています。
残業代を請求する旨の通知書を送付することで、時効の完成が6か月猶予されることになりますので、この間に正確な残業代を計算したり、交渉したりすることになります。
また、不足している証拠がある場合には、会社に対して開示を求めるといいでしょう。
部下なし管理職が残業代を請求する手順の4つ目は、労働審判・訴訟を提起することです。
話し合いにより解決することが難しい場合には、裁判所を用いた解決を検討することになります。
労働審判は、全三回の期日で調停による解決を目指す手続きです。調停が成立しない場合には、労働審判委員会が審判を下します。
審判には雇用主側も労働者側も異議を出すことができ、異議が出た場合には通常の訴訟に移行することになります。
早期に実態に即した解決をすることが期待できる手続きです。
訴訟は、期日の回数の制限などはとくにありません。1か月に一回程度の頻度で、裁判所の指揮に応じながら、交互に主張を繰り返していきます。解決まで1年以上を要することもあります。
管理職の残業代請求に強い弁護士を探したい場合には、是非、労働弁護士コンパスを活用ください。
労働問題は非常に専門的な分野であり、弁護士であれば誰でもいいというわけではありません。
労働弁護士コンパスでは、労働問題に注力している弁護士を探すことは勿論、地域や個別の相談内容から、あなたにマッチする最高の弁護士を探すことができます。
初回無料相談や電話・オンライン相談可能な弁護士であれば、少ない負担で気軽に相談をすることができます。
どのようにして弁護士を探せばいいか分からないという場合には、まずは試しにこの労働問題弁護士コンパスを使ってみてください。
以上のとおり、今回は、部下なし管理職とは何かを説明したうえで、部下がいない管理監督者の4つの問題点と残業代について解説しました。
この記事の要点を簡単に整理すると以下のとおりです。
この記事が、部下がいないのに管理職として扱われていることに疑問を感じている方の助けになれば幸いです。
以下の記事も参考になるはずですので読んでみてください。
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