固定残業代は基本給に含む?45時間分は違法?賞与や簡単な計算方法

固定残業代は基本給に含む?45時間分は違法?賞与や簡単な計算方法

著者情報

籾山 善臣

籾山 善臣

リバティ・ベル法律事務所

神奈川県弁護士会所属。不当解雇や残業代請求、退職勧奨対応等の労働問題を数多く担当している。【著書】長時間残業・不当解雇・パワハラに立ち向かう!ブラック企業に負けない3つの方法 【連載】幻冬舎ゴールドオンライン:不当解雇、残業未払い、労働災害…弁護士が教える「身近な法律」、ちょこ弁|ちょこっと弁護士Q&A他 【取材実績】東京新聞2022年6月5日朝刊、毎日新聞 2023年8月1日朝刊、週刊女性2024年9月10日号、区民ニュース2023年8月21日


固定残業代を基本給に含むとされていて、自分がどのような労働条件で働かされているのかよく分からないと悩んでいませんか

基本給の中に残業代が含まれていると言われてもイメージしにくい方もいますよね。

会社の給与制度によっては、基本給の一部に固定残業代が含まれていることがあります

基本給の一部に固定残業代を含めるには、法律の条件を満たしていることが必要となります

基本給の一部が固定残業代である場合には、残業代計算の際に固定残業代部分は基礎賃金に含まれず、既払いの残業代として扱われることになります。

もし、基本給に固定残業代が含まれている場合であっても、その固定残業代が想定している残業時間を超えて働けば、差額の残業代を支払ってもらうことができます。

実は、基本給の一部に固定残業代を含めているという会社の中には、法律の条件を満たしていない会社や差額の精算を怠っている会社も少なからず存在します

この記事をとおして、固定残業代を基本給に含むとされている方々是非知っておいていただきたい残業代についての知識をわかりやすくお伝えしていくことができれば幸いです。

今回は、固定残業代が基本給に含まれることがあることを説明したうえで、その条件や簡単な計算方法を解説していきます。

具体的には、以下の流れで説明していきます。

この記事を読めば、固定残業代を基本給に含むとされている場合に確認すべきことがよくわかるはずです。

1章 固定残業代は基本給に含む?

固定残業代は基本給に含む

会社の給与制度によっては、基本給の一部に固定残業代が含まれていることがあります

固定残業代とは、労働者が実際に残業をしたかどうかにかかわらず、毎月固定の金額を残業代として支給する制度のことです。

固定残業代には、「基本給組み込み型」と「手当型」の2種類があります。

基本給組み込み型とは、固定残業代を基本給に含めて支給する方法のことです。

手当型とは、固定残業代とは基本給とは別の手当として支給する方法のことです。

会社が基本給組み込み型により固定残業代を支給している場合には、基本給の一部に固定残業代が含まれていることになります

例えば、基本給37万1000円(基本給うち7万1000円は30時間分の時間外手当として支給する)と記載されているような場合です。

このような場合には基本給は37万1000円とされていますが、純粋な基本給部分は30万円、残りの7万1000円は残業代として支給されているということになります。

2章 固定残業代を基本給に含む2つの条件

固定残業代を基本給に含めるには、法律上の条件を満たしておく必要があります

賃金の性質は契約内容の一部であり、労働者の生活にも大きな影響があるため、会社が好き勝手に決めることができるわけではないのです

具体的には、固定残業代を基本給に含める際の条件は、以下の2つです。

条件1:雇用契約等による根拠
条件2:明確区分性

それでは、これらの条件を順番に説明していきます。

2-1 条件1:雇用契約等による根拠

最初の条件は、雇用契約書や就業規則に固定残業代として支給することが明記されていることです

固定残業代に該当するかは契約内容の一つであり、会社が基本給に固定残業代を含めていると思っているだけでは意味がないためです。

例えば、雇用契約書の基本給の箇所などに固定残業代が含まれていることが明記されている必要があります

これが書かれていない場合、会社が「基本給に残業代を含む」と言っていても法的には認められないことがあります。

2-2 条件2:明確区分性

次の条件は、基本給部分と固定残業代部分が明確に区別されていることです

なぜなら、基本給のなかにいくらの残業代が含まれているかが分からないと、実際の残業時間に相当する残業代に不足しているかを判断できないためです。

つまり、雇用契約書において、「基本給37万1000円(固定残業代を含む)」と書いてあるだけでは、明確区分性の要件を満たしません

明確区分性を満たすためには、「基本給37万1000円(基本給うち7万1000円は30時間分の時間外手当として支給する)」といった記載をしておく必要があります。

3章 固定残業代を基本給に含む場合の残業代計算方法|不足すれば差額を請求可能

固定残業代を基本給に含む場合でも、残業時間が固定分を超えたときには、差額の残業代を請求できます

なぜなら、固定残業代とは、あらかじめ定められた時間分の残業代を前払いする制度にすぎず、それを超えた時間分まで含まれるわけではないからです

例えば、固定残業代が30時間分とされていても、実際の残業時間が40時間であれば、超過した10時間分の残業代については追加で支払われなければなりません。

【計算例】
基本給37万1000円とされているものの、このうち7万1000円は固定残業代として支給されている方を想定します(つまり純粋な基本給は30万円、固定残業代は7万1000円)。

この方が月に40時間残業をした場合を想定します。月平均所定労働時間は160時間とします。

この場合、会社は、基本給37万1000円とは別に2万2750円の残業代を支給する必要があります。

純粋な基本給30万円÷月平均所定労働時間160時間×残業時間40時間×割増率1.25-固定残業代7万1000円=2万2750円

このように、固定残業代制度があっても、働いた分の正当な対価は請求できるので、不足がないか冷静に確認しておくことが大切です

4章 固定残業を基本給に含む場合によくある疑問3つ

固定残業代を基本給に含む場合によくある疑問としては、以下の3つがあります。

Q1:固定残業代45時間分を基本給に含むことは違法?
Q2:固定残業代を基本給に含む場合の賞与はどうなる?
Q3:固定残業代を基本給に含まない方法はある?

それでは、これらの疑問について順番に解消していきましょう。

4-1 Q1:固定残業代45時間分を基本給に含むことは違法?

A:固定残業代として45時間分を基本給に含むこと自体は、法律上ただちに違法とはされていません

固定残業代は何時間分までにしなければいけないという制限がつけられているわけではないためです。

ただし、著しい長時間残業を想定した固定残業代金額として、実際に残業が常態化しているような場合には、公序良俗に反し無効とされることもあります。

(参考:東京地判平成29年10月11日労経速2332号30頁[マンボー事件])

4-2 Q2:固定残業代を基本給に含む場合の賞与はどうなる?

A:会社の制度や賞与規程次第です

賞与については法律で雇用主に支給が義務付けられているわけではなく、計算方法も定められていないためです。

そのため、固定残業代を含めた基本給をベースに賞与を計算する会社もあれば、純粋な基本給部分をベースに賞与を計算する会社もあります。

4-3 Q3:固定残業代を基本給に含まない方法はある?

A:基本給とは別に手当として支給する方法があります

基本給には組み込まず、固定残業代や固定残業手当などの名称で支給されていると分かりやすいでしょう。

ただし、実際には役職手当や職務手当などの名称がつけられていることもあり、その性質が争いとなることも珍しくありません

5章 残業代請求に強い弁護士を探すなら労働弁護士コンパス

残業代請求に強い弁護士を探したい場合には、是非、労働弁護士コンパスを活用ください

労働問題は非常に専門的な分野であり、弁護士であれば誰でもいいというわけではありません。

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6章 まとめ

以上のとおり、今回は、固定残業代が基本給に含まれることがあることを説明したうえで、その条件や簡単な計算方法を解説しました。

この記事の内容を簡単にまとめると以下のとおりです。

“まとめ”

・会社の給与制度によっては、基本給の一部に固定残業代が含まれていることがあります。

・固定残業代を基本給に含める際の条件は、以下の2つです。
条件1:雇用契約等による根拠
条件2:明確区分性

・固定残業代を基本給に含む場合でも、残業時間が固定分を超えたときには、差額の残業代を請求できます。

この記事が固定残業代を基本給に含むとされて困っている方の助けになれば幸いです。

以下の記事も参考になるはずですので読んでみてください。

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