
2025年2月22日
不当解雇
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2025/03/24
退職勧奨
退職勧奨をされているものの人事との面談を録音していいのか悩んでいませんか?
あまり経験がない方も多いでしょうから、なるべく不利にならないように自分の身を守りたいと感じるのも自然なことですよね。
退職勧奨を録音すること自体は、違法ではありません。
ただし、退職勧奨自体の録音にとどまらない場合には、違法となり得るケースもあるため注意が必要です。
退職勧奨を録音すべき理由としては、トラブルや紛争になった際に備えて証拠とするためです。
退職勧奨を録音する際には、秘密性と集音性を踏まえて最適な方法を選択することになります。
もし、退職勧奨の録音に失敗してしまった場合でも、焦らず他の方法で証拠化するようにしましょう。
実は、弁護士が退職勧奨の相談を受ける際にも、本当に録音して問題ないのか質問を受けることがありますが、むしろ録音した方が良い旨を助言することがよくあります。
この記事をとおして、安心して退職勧奨を録音いただけるように必要な知識やノウハウをわかりやすく伝えることができれば幸いです。
今回は、退職勧奨の録音は違法でないことを説明したうえで、退職交渉や退職面談を録音すべき理由と注意点を解説していきます。
具体的には、以下の流れで説明していきます。
この記事を読めば、退職勧奨を録音するにはどうすればいいのかがよくわかるはずです。
目次
退職勧奨を録音すること自体は、違法ではありません。
退職勧奨を行う者も、対象者に対して自ら情報を開示している以上は、その情報についての秘密性は一定程度減退しています。
少なくとも、対象者がその情報を退職勧奨に端を発した一連の紛争において必要な範囲で使用する可能性があることについては、覚悟しているのが通常でしょう。
また、退職勧奨については、雇用契約上の地位に関する事項を話し合うもので録音の必要性が高い一方で、録音しても日常業務に支障が生じるわけでもありません。
そのため、退職勧奨を録音したとしても、そのこと自体により、直ちに会社の秩序を害したということはできず、違法とは言えないでしょう。
退職勧奨自体の録音にとどまらない場合には、違法となり得るケースもあるため注意が必要です。
態様次第では会社の秩序や信頼を害してしまうこともあるためです。
具体的には、退職勧奨の録音が例外的に違法となり得るケースを3つが挙げると以下のとおりです。
それでは、これらのケースについて順番に説明していきます。
退職勧奨の録音が例外的に違法となり得るケースの1つ目は、他人同士の会話の盗聴です。
あなたが会話の当事者となっていない場合には、会社側はその情報についてあなたに知られることを想定しておらず、秘密性が高いものといえます。
例えば、一定以上の役職以上の者のみが参加できる会議について、あなたが参会者になっていないにもかかわらず、こっそりと録音機を置いておき盗聴したとします。
このような行為が行われてしまうと、会議において率直な意見交換を行うことが難しくなってしまい、営業秘密や個人情報に関わる話をすることも難しくなってしまいます。
そのため、企業秩序を侵害する程度が大きく違法となる可能性があります。
退職勧奨の録音が例外的に違法となり得るケースの2つ目は、日常業務すべての録音です。
退職勧奨を受けた労働者は疑心暗鬼になってしまい、会社側の行動一つ一つに意味があると感じてしまう方もいるでしょう。
このように感じてしまうと、常に録音機を肌身離さず持っていて、日常業務における会話なども録音し続けてしまう方も出てきます。
しかし、常に録音しながら業務を行っている方がいると、同僚の方々は委縮してしまい会話を行いにくくなってしまいます。その結果、業務にも支障が生じてしまうことがあるのです。
裁判例にも、録音禁止の指示を無視して、無断で職場での録音を継続した事案について、他の従業員が自由な発言をできず、職場環境が悪化したり、営業秘密漏洩の危険が大きくなったりするとして、この点を考慮して解雇の有効性を肯定した事例があります。
参考:東京地立川支判平30.3.28労経速2363号9頁[甲社事件]
そのため、日常業務すべての録音は、企業秩序を害する程度が大きく違法となることがあるのです。
退職勧奨の録音が例外的に違法となり得るケースの3つ目は、録音内容の流布です。
退職勧奨の内容については、会社の信頼に関わるものであることがありますし、退職勧奨者の名誉に関わることもあります。
例えば、会社の経営が芳しくないので人員を削減するという情報であれば、取引先や他の従業員が知れば不安に感じて離れて行ってしまう可能性があります。
また、退職勧奨者が暴言や罵倒する発言を行っている場合において、報復を目的として、これをSNSなどで公開すれば、退職勧奨者の名誉を侵害してしまうことになります。
そのため、労働者が自分の権利を守るという目的を超えて、録音内容を公にするような場合には、信頼や名誉を害することになり、違法となることがあるのです。
退職勧奨を録音すべき理由としては、トラブルや紛争になった際に備えて証拠とするためです。
口頭での話については証拠として残っていないと、そのような発言していないと言われてしまい、なかったことにされてしまうことが多いためです。
具体的には、退職勧奨を録音すべき理由としては以下の4つがあります。
それでは、これらの理由について順番に説明していきます。
退職勧奨を録音すべき理由の1つ目は、解雇された際の証拠となるためです。
退職勧奨の際には、会社側がその労働者に退職してほしいと考えている理由が説明されることになります。
この時点で行われる会社側の説明は、法的に整理される前の生の主張であることが多く、解雇された際に反論の手掛かりとなることがあります。
解雇された後は、会社側にも弁護士が入りますので、法的に整理され、会社側に不利な理由には触れず、会社に有利な理由のみが強調して主張されることになります。
例えば、退職勧奨の面談は、最近はあなたの業務も改善してきていて会社もそのこと自体は認めているなどの発言がされることもよくあります。
しかし、解雇の紛争になると、当然、改善しているのであれば解雇する必要はないのではないかと争いになるため、会社側は業務の改善が見られたとは簡単には認めません。
録音があれば、退職勧奨の際には業務が改善していたと認めていたではないか等の指摘をしやすくなるのです。
退職勧奨を録音すべき理由の2つ目は、退職強要やパワハラの証拠となることです。
会社は、退職勧奨を行う際には、労働者の自発的な退職意思を形成する目的実現のために社会通常相当と認められる限度で行わなければならないとされています。
不当な心理的圧力を加えたり、その名誉感情を不当に害するような言葉を用いたりすることは、退職強要として違法となり得ることになります。
参考:東京地判平成23年12月28日労経速2133号3頁[日本アイ・ビー・エム事件]
また、労働者を罵倒するような発言を行うことは、精神的な攻撃としてパワハラに該当する可能性があります。
そのため、退職勧奨を録音しておくことで、退職を強要されている証拠やパワハラをされている証拠となることがあるのです。
パワハラの慰謝料相場については、以下の記事で詳しく解説しています。
退職勧奨を録音すべき理由の3つ目は、約束した退職条件の証拠となることです。
労働者が退職に合意する場合であっても、退職合意書に記載していない事項についてトラブルになることがあります。
例えば、退職勧奨では会社都合退職にすると言っていたのに、自己都合として処理されてしまい、退職合意書に会社都合との明記がないような場合などです。
その他、退職勧奨の面談の中では、競業避止義務の対象となる範囲を確認したり、就労免除期間中の給与の金額を確認したりすることもあるでしょう。
有給買い取りの金額を確認する場合や退職後の前職照会・リファレンスチェックに関する協力を約束してもらう場合などもあります。
このように退職合意書に明記されていないけど口頭で協議した条件などを巡りトラブルとなった場合には、録音が役に立つことがあります。
退職勧奨を録音すべき理由の4つ目は、退職を取り消す際の証拠になることです。
会社側の気迫に押されてしまい、拒否できないと感じて、退職届にサインをしてしまったという方が後を絶ちません。
このような場合には、退職勧奨の録音があるかどうかによって見通しが大きく変わってくることがあります。
会社から脅された場合や騙された場合、勘違いによりサインした場合、本心ではなかった場合などには、退職届を取り消せることがあるためです。
退職勧奨の録音があれば、どのような経緯や理由でサインすることになったのかが客観的に明らかになりますので、取り消しの理由があることを証明できる場合があります。
そのため、退職勧奨を録音しておくことで、万が一、サインしてしまった場合にも、自分の身を守ることができる場合もあるのです。
ただし、録音があっても退職届を取り消すのは簡単ではないため、安易にサインしないように注意しましょう。
退職勧奨を録音する際には、秘密性と集音性を踏まえて最適な方法を選択することになります。
秘密性が大切なのは、退職勧奨を録音することで、会社から警戒されてしまい、関係がより悪化してしまう可能性があるためです。
また、集音性が大事なのは、証拠とする以上、聞き取れる音声が入っていなければ意味がないためです。
具体的には、退職勧奨を録音する方法としては以下の3つがあります。
それでは、これらの方法について順番に説明していきます。
退職勧奨を録音する方法の1つ目は、机の上において置くことです。
最も、集音性に優れているのがこの方法です。
オンラインでのミーティングの場合には、スピーカーモードにして、机に録音金を置いていても、秘密性に問題はないでしょう。
ただし、対面でのミーティングの場合には、相手にも録音を行っていることが分かるため、秘密性の観点から難があることになります。
退職勧奨を録音する方法の2つ目は、ポケットに入れておくことです。
胸ポケットなどに入れておくことで、集音性・秘密性ともに問題ないことが多いです。
対面のミーティングなどではこの方法によることが多いでしょう。
ただし、夏でジャケットを着ていなかったり、女性で胸ポケットがなかったりする場合には、この方法はとりにくいことがあります。
ズボンのポケットに入れることも考えられますが、やや集音性に問題がある場合があります。
退職勧奨を録音する方法の3つ目は、カバンに入れておくことです。
ポケットに入れておくことが難しい場合には、カバンに入れておくということも考えられます。
集音性に問題があることも多いため、事前に音声が十分に入るかどうか、どこに入れておくか等検討した方がいいでしょう。
また、仕事中に突然、面談室に呼ばれたような場合には、鞄を持っていきにくい場合もあります。
退職勧奨の録音に失敗してしまった場合でも、焦らず他の方法で証拠化するようにしましょう。
退職勧奨を証拠化する方法は、録音だけではないのです。とくに1回目の退職勧奨は突然行われますので録音できないことがほとんどです。
例えば、退職勧奨の録音以外に証拠化する方法としては、以下の3つがあります。
それでは、これらの方法について順番に説明していきます。
退職勧奨の録音以外に証拠化する方法の1つ目は、メールやチャットで確認することです。
ミーティングが終わった後にその要点をメールやチャットで確認することにより、証拠に残すことができます。
あなたが残しておいた方が良いと感じる事項について、メールやチャットで送るようにしましょう。
ただし、メールやチャットで確認した内容は、会社側の証拠にもなります。
あなたに不利な内容が記載されていれば、会社側に有利な証拠として使われてしまう可能性もあることに注意が必要です。
退職勧奨の録音以外に証拠化する方法の2つ目は、家族や友人に相談の連絡をすることです。
ミーティングで言われた内容をLINEなどで家族や友人に相談しておくことで、証拠とできます。
ミーティングの直後に具体的な発言内容等を相談していれば、実際にそのような発言がされたものとうかがわれる事情となるためです。
ただし、退職条件の内容等が同僚に広まってしまうと、退職条件の交渉を行いにくくなってしまうこともあります。
そのため、誰にどの程度の相談を行うかということは慎重に検討した方が良い場合もあります。
退職勧奨の録音以外に証拠化する方法の3つ目は、メモに残しておくことです。
記憶が新しいうちに手帳等にメモをしておくことにより、そのような会話が実際に行われたことが説得力をもつがあります。
メモをする際には、会話の内容や文脈を具体的に記載するといいでしょう。
また、後から記載したものではなく、ミーティングがされた日に記載したものであることがわかるように工夫するといいでしょう。
WORDデータなどで作成する際には印刷したうえで、公証役場で確定日付を入れてもらえば、遅くとも確定日付を押された日までに記載されたものであることを立証できます。
退職勧奨の録音でよくある疑問としては以下の3つがあります。
それでは、これらの疑問について順番に解消していきましょう。
A.退職勧奨の録音については、事前に伝える義務はありません。
むしろ、事前に伝えることで、会社との関係が悪化してしまったり、有用な証拠を獲得することが難しくなってしまったりすることが少なくありません。
A.退職勧奨の録音を拒否された場合には、退職勧奨の面談を拒否することが考えられます。
退職勧奨はあくまでも労働者の自発的な退職意思を形成する範囲で許容されているものにすぎず、労働者の意思を無視して行うことはできないためです。
例えば、退職勧奨の録音を拒否されたら、「それでは退職勧奨するのをやめてください。」と言えば足ります。
A.退職勧奨の録音をする際の注意点としては、録音についてはあなたに不利な証拠となることもある点です。
録音については一部のみを切り取って証拠とするということが行いにくく、一部にあなたに有利な発言があっても、他にあなたに不利な発言が多く含まれているようなことがあります。
例えば、あなたが人事担当者から罵倒されているような場合であっても、あなたが売り言葉に買い言葉で、罵倒し帰しているような場合には、有利な証拠とならないことがあります。
また、あなたが乱暴な言葉遣いをしていたり、横柄な態度をとっていたりすれば、コミュニケーション能力や業務態度に問題があったことの裏付けとされることもあります。
このように退職勧奨の録音については、あなたに不利な内容が含まれていても、有利な部分のみを切り取って証拠とすることが難しいことを知っておいた方が良いでしょう。
退職勧奨を録音する際には、裁判官が聞く可能性もあることを意識したうえで、あなた自身も落ち着いて冷静に話すようにしましょう。
退職勧奨に強い弁護士を探したい場合には、是非、労働弁護士コンパスを活用ください。
労働問題は非常に専門的な分野であり、弁護士であれば誰でもいいというわけではありません。
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以上のとおり、今回は、退職勧奨の録音は違法でないことを説明したうえで、退職交渉や退職面談を録音すべき理由と注意点を解説しました。
この記事の要点を簡単に整理すると以下のとおりです。
この記事が退職勧奨をされているものの人事との面談を録音していいのか悩んでいる労働者の助けになれば幸いです。
以下の記事も参考になるはずですので読んでみてください。
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鈴木晶
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籾山善臣
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