
2025年2月22日
不当解雇
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2025/04/25
残業代
残業代を請求しても負けてしまうのではないかと不安に感じていませんか?
未払いの残業代を請求したいと考えていても、負けてしまう可能性があると、中々、初めの一歩を踏み出すことができないですよね。
残業代請求で負けるとは、残業代の請求が認められないか、又は、少ない金額しか認められないことをいいます。
残業代請求で負けるケースは、労働者の主張立証が足りていない場合や会社側の反論が認められてしまう場合です。
残業代請求で負けないようにするためには、事前の準備を怠らず、法律や判例を踏まえて、適切な見通しと方針を立てることが大切です。
万が一、残業代請求で負けてしまった場合には、かけた労力や費用は無駄になってしまいますが、会社から損害賠償を請求されたり、悪評を広げられたりということは、通常ありません。
実は、残業代請求で負けることを必要以上におそれてしまっている方をよく目にしますが、残業代を請求することや裁判を行うことは法的な権利ですので、過度に委縮する必要はありません。
労働者の方が負けることを恐れずに残業代を請求しやすい社会を作っていくことで、残業代を払わない企業も減っていくことになります。
この記事をとおして、残業代請求で「負ける」ということについて、どのように向き合い、対策していけばいいのか、誰でもわかりやすく説明していくことで、少しでも労働者の方の不安を解消できれば幸いです。
今回は、残業代請求で負けるケース5つを説明したうえで、弁護士が負けないための簡単な対策を解説していきます。
具体的には、以下の流れで説明していきます。
この記事を読めば、残業代請求で負けないためにはどうすればいいのかがよくわかるはずです。
目次
残業代請求で負けるとは、残業代の請求が認められないか、又は、少ない金額しか認められないことをいいます。
残業代を請求すると本当に残業代の未払いがあったのかどうかが審理されることになります。
争いごとになりますので、会社側も反論をしてきますし、裁判官によっても判断は変わってきます。
例えば、あなたが300万円の残業代を請求したとしても、請求が1円も認められないということがあります。
また、数万円程度しか請求が認められないという可能性もないわけではありません。
このように残業代を請求しても、ほとんど手元に残らなかったり、費用倒れになってしまったりするような場合のことを負けると表現することがあります。
ただし、残業代請求は、法律や規則によりその金額が客観的に算定することができますので、他の類型と比較すると、労働者が完全に負けてしまうことが少ない類型でしょう。
残業代請求で負けるケースは、労働者の主張立証が足りていない場合や会社側の反論が認められてしまう場合です。
残業代を請求する権利は、一定の条件を満たしていないと発生していませんし、一定の事由により消滅してしまうこともあります。
例えば、以下の5つのケースでは、残業代請求をしても負けてしまう可能性があります。
それでは、これらのケースについて順番に説明していきます。
残業代請求で負けるケースの1つ目は、残業を立証できなかった場合です。
当然のことではありますが、残業代が発生するのは残業をした場合だけです。
例えば、残業を立証する証拠が何もないような場合には、あなたが残業をしたということが立証できず、残業代請求が認められない可能性があります。
また、残業をしたと証拠があったとしても、早出残業について始業時刻前に来るようにとの指示などがないと、労働時間とは認めてもらえないこともあります。
このように残業をしたと立証することができない場合には、残業代請求は認められず負けてしまうことがあります。
残業代請求で負けるケースの2つ目は、時効が完成していた場合です。
残業代請求には3年の時効があります。
例えば、2025年1月25日が支払日であった残業代については、2028年1月25日には時効が完成してしまうことにあります。
そのため、3年以上前に退職した会社に対して残業代を請求しようとすると、残業代は時効により消滅してしまっていて存在しないということもあるのです。
残業代請求で負けるケースの3つ目は、管理監督者に該当する場合です。
管理監督者に該当する場合には、時間外手当や休日手当を請求することができません。
労働基準法の労働時間や休日に関する規定が適用されないとされているためです。
そのため、もしあなたが管理監督者に該当する場合には、残業代請求をしても負けてしまう可能性があります。
ただし、管理職であっても、必ずしも管理監督者に該当するわけではありません。
むしろ、管理職として、残業代を支給されていないけど、実際には管理監督者に該当しない方がたくさんいます。
管理監督者に該当するかどうかについては非常に厳格に解される傾向にあるためです。
残業代請求で負けるケースの4つ目は、固定残業代の範囲しか残業していない場合です。
固定残業代が支払われている場合には、その金額分については既に残業代が支払われていたものと扱われます。
例えば、会社から、固定残業代が月に10万円が支払われている場合には、10万円を超える残業代が発生するほどの残業をしなければ、未払い残業代は発生しないことになります。
そのため、固定残業代の範囲しか残業していない場合には、負けてしまうことがあるのです。
ただし、固定残業代は、明確区分性を満たしていなければいけませんし、その実態から残業代としての性質を有しないと判断されることもあります。
固定残業代が法的に有効かどうかについては弁護士に見通しをよく確認するといいでしょう。
残業代請求で負けるケースの5つ目は、労働者に該当しない場合です。
労働者に該当しない場合には、労働基準法は適用されませんので、残業代を請求することはできません。
例えば、業務委託契約となっている場合、請負契約となっている場合には、労働者性が争いになります。
そして、労働者ではないと判断された場合には、残業代請求は認められないとの判決になってしまうのです。
ただし、労働者かどうかは、契約書の名前だけではなく、実態により判断されることになります。
そのため、業務委託契約や請負契約となっている場合でも、残業代を請求できないか弁護士に相談してみるといいでしょう。
残業代請求で労働者が負けてしまった裁判例についても、蓄積されてきています。
実際に労働者が負けてしまった裁判例をみることで、どのような場合に負けてしまうのかイメージしやすくなります。
具体的には、残業代請求で労働者が負けてしまった事例について、是非知っておいていただきたいものを3つ厳選すると以下のとおりです。
【事案】
従業員は、実習期間中に会社の指示で残業を行っていたと主張し、未払賃金と付加金の支払いを会社に求めました。従業員は、ICカードの記録や手帳の記載を残業の証拠として提出しました。
【結論】
裁判所は、従業員が主張する残業は会社の指示によるものではなく、残業代請求を認めませんでした。
【理由】
従業員が主張する残業内容(日報作成や発表会準備など)は、業務として義務付けられたものではなく、自己啓発活動や任意の取り組みと判断されました。
ICカードの記録は会社の施設滞在時間を示すに過ぎず、実際の労働時間を証明するものではないとされました。
また、手帳の記載も曖昧で信頼性が低いと認定されました。以上の理由から、未払賃金の請求は理由がないと判断されました。
【事案】
トラック運転手であった従業員が、勤務期間中に行った時間外労働や深夜労働、休日労働に対する割増賃金が未払いであると主張し、会社に対しその未払い分の支払いを求めました。従業員は、自らの勤務時間に基づき割増賃金の未払い額を算定し、その金額の支払いを請求しました。
【結論】
裁判所は、会社が支給した割増賃金が法定の割増賃金額を上回るものであったと認定し、従業員の請求を棄却しました。
【理由】
会社が、従業員に対して、各種割増手当と称する残業代が支払うことが労働契約の内容となっており、これは従業員も、説明を受けており、労働契約書からも認識了解していました。
そして、会社が支払っていた各種割増手当の金額は、従業員が申告した労働時間を基に算定した残業代金額を上回るものでした。
そのため、残業代の未払いはないとされました。
[事案]
従業員が会社に対し、早出出勤や休日出勤が労働時間として認められず未払い賃金が発生しているとして、その支払いを求めた事案。
[結論]
裁判所は、会社に対し一部の休日出勤分に関する未払い賃金12万9722円の支払いを命じましたが、早出残業部分については請求を認めませんでした。
[理由]
休日出勤については一部が法定休日の労働に該当し、未払い賃金の支払いが必要と判断されました。
一方、早出出勤については会社からの明確な指示や業務上の必要性が確認できなかったため、労働時間と認めませんでした。
残業代請求で負けないようにするためには、事前の準備を怠らず、法律や判例を踏まえて、適切な見通しと方針を立てることが大切です。
会社側も、労働者の残業代請求が認められないようにするために反論してきますので、労働者側も適切に対応して威嚇必要があるのです。
具体的には、残業代請求で負けないための対策として、是非行っていただきたい事項としては、以下の4つがあります。
それでは、これらについて順番に説明していきます。
残業代請求で負けないための対策の1つ目は、弁護士に相談することです。
残業代の請求を裁判所に認めてもらうためには、適切な法的主張や計算方法を検討したうえで、判例に基づいて見通しを立てたうえで、方針を決める必要があるためです。
そのため、法律の専門家である弁護士に相談して、サポートしてもらうようにしましょう。
ただし、残業代請求については、専門性が高い手続きであるため、弁護士であれば誰でもいいというわけではありません。
労働問題に注力していて、残業代請求について実績のある弁護士を探すといいでしょう。
残業代請求で負けないための対策の2つ目は、証拠を集めることです。
裁判所は、労働者と会社側の主張が食い違っている部分については、証拠に基づいて判断を行うことになります。
証拠がないと労働者が言っていることが正しいと信じてもらうことができず、会社側の主張が採用されてしまう可能性もあります。
例えば、残業代を請求する際には、少なくとも以下のような基本的な証拠を集めることができるといいでしょう。
その他、争点になることが想定される部分については、反論できるような証拠を集めることができるといいでしょう。
ただし、基本的な証拠については、現在手元にない場合でも、会社に存在すれば開示を請求する方法により、確保できる可能性があります。
残業代請求で負けないための対策の3つ目は、早めに通知書を送付することです。
残業代を請求する旨を記載した通知書を送付することで、時効の完成が6か月間猶予されることになるためです。
これに対して、残業代を請求する旨の通知を送らないでいると、刻一刻と3年が経過した部分から残業代が時効により消滅していってしまうのです。
時効の完成が猶予されている6か月の間に、証拠を集めたり、残業代を計算したり、交渉したりすることになります。
ただし、通知書については、正確に記載する必要がありますし、到達日も重要となりますので、弁護士に依頼するのであれば、弁護士に代わりに送ってもらいましょう。
残業代請求で負けないための対策の4つ目は、労働審判や訴訟を利用することです。
労働審判や訴訟を利用することで、裁判所の心証が示されることになり、法的に適正な残業代金額を回収しやすくなるためです。
会社側は、未払いの残業代が認められることが明らかな事案であったとしても、自身の主張に固執して、残業代の支払いに応じてこないことがあります。
このような場合に裁判所を利用することができないと、残業代を回収することは難しくなってしまいます。
示談は、労働者と会社側双方が合意して初めて成立するものであるため、会社側が支払いに応じない限りは、訴訟外で解決することはできないためです。
そのため、会社が不合理な理由により残業代の支払いを拒んでいる場合は、労働審判や訴訟を用いることで、残業代を回収できずに終わってしまう可能性を減らすことができます。
残業代請求でもし負けた場合によくある不安としては以下の3つがあります。
それでは、これらの3つの不安について順番に解消していきましょう。
A.残業代請求でもし負けた場合には、かけた費用や労力が無駄になってしまいます。
残業代を回収できなかったとしても、既に支払った費用は戻ってこないためです。
例えば、着手金が必要な弁護士に依頼した場合には、既に支払った着手金については負けてしまった場合でも戻ってきません。
また、会社の登記を取得するために要した費用や書類を郵送するために使用した費用、裁判所への申し立てのときに納付した収入印紙や郵便切手も戻ってきません。
加えて、残業代の請求を行う際に労働審判であれば平均3か月程度、訴訟であれば平均1年程度かかります。この手続に要した労力も無駄になってしまいます。
このように残業代請求で負けてしまうと、これまでの費用や労力が無駄になってしまうのです。
残業代請求のリスクについては、以下の記事で詳しく解説しています。
労働審判で負けた労働者がどうなるかについては、以下の記事で詳しく解説しています。
A.残業代請求で負けたとしても、そのことを理由として逆に損害賠償を請求されることは通常ありません。
なぜなら、労働者には、憲法上、裁判を受ける権利が保障されているためです。
ただし、会社に対する嫌がらせ等の目的で、嘘をついて明らかに事実と異なる内容の請求をしたような場合には、例外的に損害賠償が認められる可能性もあります。
A.残業代請求で負けたとしても、そのことであなたの悪評が広まってしまうということは通常ありません。
会社も第三者も、原則として、あなたの社会的信用を貶めるようなことできないためです。
当然ですが、残業代請求で負けてしまったとしても、負けた人の名誉を棄損しても良いということにはなりません。
また、会社側は、残業代を請求されたということ自体、あまり他の人に知られたくないと考えるのが通常です。
他の従業員からも残業代請求が相次いでしまえば、その対応にも多くのコストがかかることになりますし、次の裁判でも勝てるとは限らないためです。
残業代請求に強い弁護士を探したい場合には、是非、労働弁護士コンパスを活用ください。
労働問題は非常に専門的な分野であり、弁護士であれば誰でもいいというわけではありません。
労働弁護士コンパスでは、労働問題に注力している弁護士を探すことは勿論、地域や個別の相談内容から、あなたにマッチする最高の弁護士を探すことができます。
初回無料相談や電話・オンライン相談可能な弁護士であれば、少ない負担で気軽に相談をすることができます。
どのようにして弁護士を探せばいいか分からないという場合には、まずは試しにこの労働問題弁護士コンパスを使ってみてください。
以上のとおり、今回は、残業代請求で負けるケース5つを説明したうえで、弁護士が負けないための簡単な対策を解説しました。
この記事の要点を簡単に整理すると以下のとおりです。
この記事が残業代を請求しても負けてしまうのではないかと不安に感じている労働者の助けになれば幸いです。
以下の記事も参考になるはずですので読んでみてください。
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籾山善臣
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