懲戒解雇理由ランキングTOP5|絶対気を付けてほしいケースを厳選

懲戒解雇理由ランキングTOP5|絶対気を付けてほしいケースを厳選

著者情報

籾山 善臣

籾山 善臣

リバティ・ベル法律事務所

神奈川県弁護士会所属。不当解雇や残業代請求、退職勧奨対応等の労働問題を数多く担当している。【著書】長時間残業・不当解雇・パワハラに立ち向かう!ブラック企業に負けない3つの方法 【連載】幻冬舎ゴールドオンライン:不当解雇、残業未払い、労働災害…弁護士が教える「身近な法律」、ちょこ弁|ちょこっと弁護士Q&A他 【取材実績】東京新聞2022年6月5日朝刊、毎日新聞 2023年8月1日朝刊、週刊女性2024年9月10日号、区民ニュース2023年8月21日

悩み

どのような理由で懲戒解雇がされることが多いのか知りたいと悩んでいませんか

懲戒解雇は労働者に対して最も重い懲戒処分であり、いわば極刑と言われるものです。自分が懲戒解雇を言い渡されてしまう可能性があるのか心配ですよね。

懲戒解雇の相談を受ける中で、とくに注意してほしいもの5つを厳選してランキングにすると以下のとおりです。

1位:横領等の社内での犯罪
2位:重大な業務命令違反
3位:パワハラ・セクハラ
4位:2週間以上の無断欠勤
5位:重大な経歴詐称

懲戒解雇理由については、就業規則で定めておく必要があり、就業規則に記載されていない理由によって懲戒解雇をすることはできません

また、懲戒解雇が法律上有効となるのは、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当と言える場合に限られています。

懲戒解雇の理由が不当な場合には、労働者としては冷静かつ適切に対処していく必要があります。

実は、本当に懲戒解雇が許される理由なのかは、とても厳格に判断されます。なので、会社は安易に労働者を懲戒解雇することはできません

この記事をとおして、懲戒解雇の理由について、労働者の方にわかりやすく説明することができれば幸いです。

今回は、懲戒解雇理由について、絶対に気を付けてほしいケース5つ厳選したうえで、ランキングにして解説していきます。

具体的には、以下の流れで説明していきます。

この記事でわかること

この記事を読めば、どのような理由で懲戒解雇されてしまうことが多いのかがよくわかるはずです。

1章 懲戒解雇理由ランキングTOP5

多くの懲戒解雇の相談を受ける中でも、その理由については一定の傾向があります

どのような理由で懲戒解雇されることが多いのかを知ることで、懲戒解雇されてしまうリスクを減らすことができるでしょう。

懲戒解雇の相談を受ける中で、とくに注意してほしいもの5つを厳選してランキングにすると以下のとおりです。

1位:横領等の社内での犯罪
2位:重大な業務命令違反
3位:パワハラ・セクハラ
4位:2週間以上の無断欠勤
5位:重大な経歴詐称

懲戒解雇理由ランキングTOP5

それでは、順番にこれらの懲戒解雇理由について説明していきます。

1-1 1位:横領等の社内での犯罪

懲戒解雇理由ランキングの1位は、横領等の社内での犯罪です

社内で犯罪行為があると、会社内の秩序は大きく乱されてしまうことになります

他の従業員は不安で働きにくくなってしまいます。また、重い処分が下されなければ、他の従業員の中にも、少しくらい悪いことをしても良いと考えてしまう方が現れてしまいます。

例えば、社内で会社のお金を横領する方が出ると、会社の秩序は乱れてしまい、放置すれば私利私欲のために会社の財産を使うものが出てきてしまいます。

また、他の従業員の財布などを盗む従業員がいた場合に、これを放置すれば、安心して仕事をすることが難しくなってしまいます

また、会社で暴力行為や傷害行為があったような場合に、乱暴なことをする人が出てきてしまい、これを放置すれば大きなけがをする方も出てきて、仕事どころではなくなります。

このように会社内で横領等の社内での犯罪が発生した場合には、会社側も懲戒解雇をもって対応し規律を維持しようとするのです。

1-2 2位:重大な業務命令違反

懲戒解雇理由ランキングの2位は、重大な業務命令違反です

会社の業務命令に従わない者が出てくると、従業員は自分にとって都合の良い仕事だけ行い、嫌な仕事は行わないようになってしまいます。

そうすると、仕事は回らなくなってしまいますし、会社に大きな損害が生じてしまうこともあります。

例えば、東京から大阪への異動を命じた場合において、大阪は嫌いだから異動に応じたくありませんと言う労働者が現れたとしましょう。

このように異動を拒否することが許されるようになってしまうと、皆行きたい異動先にしかいかなくなってしまい、人員配置は難航することになります。

また、この取引先に対してアポイントをとって商談をしてきてくださいと指示した場合に、この取引先は嫌いなので行きたくないですと断る従業員が現れたとしましょう。

会社においてターゲットを定めて営業計画を作っているにもかかわらず、従業員がこれを拒否することが許されてしまえば、事業を行うことは難しくなってしまいます

1-3 3位:パワハラ・セクハラ

懲戒解雇理由ランキングの3位は、パワハラ・セクハラです

昨今では、企業も、コンプライアンス意識が高まっており、ハラスメントについて厳しい対応を行うことが増えています。

例えば、部下に対して、乱暴な物言いを繰り返したとされたり、胸ぐらを掴んだとされたりして、懲戒解雇を言い渡されることがあります。

また、異性の従業員に触ったとされたり、異性の従業員に対して性的な言動を行ったとされたりして、懲戒解雇を言い渡されることがあります。

ただし、ハラスメント行為をしたとしても直ちに懲戒解雇を行うことが許されるわけではありません

犯罪行為に該当するようなハラスメントや改善指導が行われたのに執拗に行われるハラスメントなど、悪質なハラスメントでなければ懲戒解雇は重過ぎるとされがちなのです。

1-4 4位:2週間以上の無断欠勤

懲戒解雇理由ランキングの4位は、2週間以上の無断欠勤です

2週間以上無断欠勤を継続する場合であり、出勤を促されてもこれに応じないような場合には、懲戒解雇をされる傾向にあります。

行政通達では、2週間以上正当な理由なく無断欠勤し、出勤の督促に応じない場合が、予告なく労働者を解雇できる事例の一つとして挙げられているためです。

企業としては、従業員が出勤しないと仕事が回らなくなってしまいますし、欠勤の理由もわからないといつになれば出勤してもらえるのかもわかりません。

業務に支障が生じないようにするためには、新しい従業員を採用する必要も出てきます。

1-5 5位:重大な経歴詐称

懲戒解雇理由ランキングの5位は、重大な経歴詐称です

会社側が本当のことを知っていれば、その労働者を採用しなかったというような重大な経歴を偽っていた場合には、懲戒解雇されることがあります。

例えば、学歴や職歴、犯罪歴などを偽るような場合です。

職歴について、これまでに働いたこともないような大企業の名前を記載するようなことが許されてしまうと、採用した後のギャップにより会社に大きな損害が生じてしまいます

2章 懲戒解雇理由は就業規則で定められている

懲戒解雇理由については、就業規則で定めておく必要があり、就業規則に記載されていない理由によって懲戒解雇をすることはできません

判例では、懲戒するには、就業規則において懲戒の種別と事由を定めておくことを要するとされているためです。

就業規則において定められていない事由により、懲戒処分を行う場合にはその懲戒処分は無効となります

例えば、就業規則には、懲戒解雇の理由として、以下のような規定が置かれていることが多いです。

就業規則〇条(懲戒の事由)
労働者が次のいずれかに該当するときは、懲戒解雇とする。
①重要な経歴を詐称して雇用されたとき。
②正当な理由なく無断欠勤が14日以上に及び、出勤の督促に応じなかったとき。
③正当な理由なく、しばしば業務上の指示・命令に従わなかったとき。
④故意又は重大な過失により会社に重大な損害を与えたとき。
⑤会社内において刑法その他刑罰法規の各規定に違反する行為を行い、その犯罪事実が明らかとなったとき(当該行為が軽微な違反である場合を除く。)。
⑥許可なく職務以外の目的で会社の施設、物品等を使用したとき。
⑦職務上の地位を利用して私利を図り、又は取引先等より不当な金品を受け、若しくは求め若しくは供応を受けたとき。
⑧正当な理由なく会社の業務上重要な秘密を外部に漏洩して会社に損害を与え、又は業務の正常な運営を阻害したとき。

このように会社の就業規則を確認することにより自分がどのような場合に懲戒解雇をされることになるのかについては、把握することができます

3章 懲戒解雇が法律上有効となる理由

懲戒解雇が法律上有効となるのは、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当と言える場合に限られています

労働契約法では、懲戒処分は、客観的に合理的な理由がなく社会通念上相当と言えなければ、無効になるとされているためです。

労働契約法第15条(懲戒)
使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。

そして、懲戒解雇については、懲戒処分の中でも最も重い処分であるため、合理性や相当性はとても厳格に判断されることになります

例えば、就業規則上の懲戒解雇事由に該当するように見える場合であっても、客観的に合理的な理由がなく社会通念上相当と言えなければ、懲戒解雇は無効となるのです。

4章 懲戒解雇の理由が不当な場合の対処法4つ

懲戒解雇の理由が不当な場合には、労働者としては冷静かつ適切に対処していく必要があります

会社側は不当な懲戒解雇であっても強行してくることがあり、労働者が何も行動を起こさなければ懲戒解雇が有効な前提で手続きは進められてしまうためです。

前職を懲戒解雇により退職されたことになってしまえば、転職を行うことも簡単ではなくなってしまいます

そのため、労働者としては、懲戒解雇の理由が不当な場合には、以下の対処をすることが考えられます。

対処法1:弁護士に相談する
対処法2:通知書を送付する
対処法3:交渉をする
対処法4:労働審判・訴訟を提起する

懲戒解雇の理由が不当な場合の対処法4つ

それでは、これらの対処法について順番に説明していきます。

4-1 対処法1:弁護士に相談する

懲戒解雇の理由が不当な場合の対処法の1つ目は、弁護士に相談することです

懲戒解雇をされた場合には、法的な見通しを分析したうえで、一貫した対応を行っていく必要があります。

一度、矛盾した発言や対応をしてしまうと、後からのリカバリーすることが難しいこともあります

また、懲戒解雇の事由に応じて早期に適切な証拠を集めることができるかどうかが結果に大きく影響しておきます。

そのため、懲戒解雇をされた場合には、早い段階で弁護士に相談することがおすすめなのです

ただし、解雇問題については非常に専門性が高い分野であり、弁護士であれば誰でもいいというわけではありません。

労働問題に詳しく解雇問題の実績が多い弁護士を探した方が良いでしょう。

4-2 対処法2:通知書を送付する

懲戒解雇の理由が不当な場合の対処法の2つ目は、通知書を送付することです

懲戒解雇が不当である場合には、早い段階で、会社に対して、懲戒解雇は無効であると通知することになります。

何も言わずに放置していると、労働者も解雇が有効であると認めていたと言われたり、働く意思を失っていたと指摘されたりしてしまうためです

また、併せて、会社に対して、解雇理由証明書を請求することになります。

解雇理由が明らかになれば、見通しがより明確になりますし、どのような反論や証拠を準備すればいいのかが分かります。

とくに懲戒解雇の場合については、後から会社側が解雇理由を追加することが難しくなります。

4-3 対処法3:交渉をする

懲戒解雇の理由が不当な場合の対処法の3つ目は、交渉をすることです

会社に対して懲戒解雇が無効である旨を通知して、会社側から回答があると、争点や見通しが見えてきますので、話し合いで折り合いをつけることが可能か協議することになります。

書面や電話、対面など、色々な方法がありますが、事案に応じて適切な方法を選択することになります。

4-4 対処法4:労働審判・訴訟を提起する

懲戒解雇の理由が不当な場合の対処法の4つ目は、労働審判・訴訟を提起することです

話し合いにより解決することが難しい場合には、裁判所を用いた解決を検討することになります。

労働審判とは、全3回の期日の中で調停による解決を目指す手続きであり、調停が成立しない場合には裁判所が審判を下します。早期に実態に即した解決をすることが期待できます。

ただし、審判には労働者も会社も異議を出すことができ、いずれかが異議を出したら通常の訴訟に移行します。

訴訟については、期日の回数の制限などはとくになく、月1回程度の頻度で期日が入り、交互に主張を繰り返していくことが多いです。解決まで1年以上要する傾向にあります。

5章 懲戒解雇問題に強い弁護士を探すなら労働弁護士コンパス

懲戒解雇問題に強い弁護士を探したい場合には、是非、労働弁護士コンパスを活用ください

労働問題は非常に専門的な分野であり、弁護士であれば誰でもいいというわけではありません。

労働弁護士コンパスでは、労働問題に注力している弁護士を探すことは勿論、地域や個別の相談内容から、あなたにマッチする最高の弁護士を探すことができます

初回無料相談や電話・オンライン相談可能な弁護士であれば、少ない負担で気軽に相談をすることができます。

どのようにして弁護士を探せばいいか分からないという場合には、まずは試しにこの労働問題弁護士コンパスを使ってみてください。

6章 まとめ

以上のとおり、今回は、懲戒解雇理由について、絶対に気を付けてほしいケース5つ厳選したうえで、ランキングにして解説しました。

この記事の要点を簡単に整理すると以下のとおりです。

まとめ

・懲戒解雇の相談を受ける中で、とくに注意してほしいもの5つを厳選してランキングにすると以下のとおりです。
1位:横領等の社内での犯罪
2位:重大な業務命令違反
3位:パワハラ・セクハラ
4位:2週間以上の無断欠勤
5位:重大な経歴詐称

・懲戒解雇理由については、就業規則で定めておく必要があり、就業規則に記載されていない理由によって懲戒解雇をすることはできません。

・懲戒解雇が法律上有効となるのは、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当と言える場合に限られています。

・労働者としては、懲戒解雇の理由が不当な場合には、以下の対処をすることが考えられます。
対処法1:弁護士に相談する
対処法2:通知書を送付する
対処法3:交渉をする
対処法4:労働審判・訴訟を提起する

この記事がどのような場合に懲戒解雇されてしまうのか不安に感じている労働者の方の助けになれば幸いです。

以下の記事も参考になるはずですので読んでみてください。

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籾山 善臣

籾山 善臣

リバティ・ベル法律事務所

神奈川県弁護士会所属。不当解雇や残業代請求、退職勧奨対応等の労働問題を数多く担当している。【著書】長時間残業・不当解雇・パワハラに立ち向かう!ブラック企業に負けない3つの方法 【連載】幻冬舎ゴールドオンライン:不当解雇、残業未払い、労働災害…弁護士が教える「身近な法律」、ちょこ弁|ちょこっと弁護士Q&A他 【取材実績】東京新聞2022年6月5日朝刊、毎日新聞 2023年8月1日朝刊、週刊女性2024年9月10日号、区民ニュース2023年8月21日

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