陳述書とは？書き方の例文と簡単なポイント３つ【テンプレート書式】

陳述書がどのようなものか知りたいと悩んでいませんか？

裁判所に陳述書を出したいけど、どのように陳述書を書けばいいのか分からないという方もいますよね。

陳述書とは、当事者や第三者が認識した事実や意見を裁判所に提出する書面のことです。

陳述書の目的は、客観的な証拠がない部分の立証の補完や尋問の際の聞き漏らし防止、相手方や裁判所の証人尋問の準備などがあります。

陳述書の書き方としては、自分の立場や事件との関係を簡単に記載したうえで、時系列に沿って事実関係を説明していき、最後に裁判所に伝えたい意見を記載することが多いです。

陳述書を記載するにはいくつかのポイントがあり、これらのポイントを守って記載していくことで良い陳述書となります。

一方で、とりとめもなく書きたいことだけ記載しているとＮＧな陳述書となってしまい裁判官に響かないので、注意が必要です。

実は、訴訟では客観的な証拠がすべて揃っているというケースはほとんどなく、陳述書や証人尋問を上手に活用していくことが重要となる場面があります。

この記事をとおして、陳述書の実務上の取り扱いや運用について、弁護士としての経験を踏まえ、誰でもわかりやすいようにお伝えしていくことができれば幸いです。

今回は、陳述書とは何かを説明したうえで、書き方の例文と簡単なポイント３つを解説していきます。

具体的には、以下の流れで説明していきます。

この記事を読めば、良い陳述書を書くにはどうすればいいのかがよくわかるはずです。

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１章　陳述書とは

陳述書とは、当事者や第三者が認識した事実や意見を裁判所に伝える書面です。

読み方は、「ちんじゅつしょ」です。

証拠の一つであり、陳述書に記載された陳述内容により事実関係を立証するものです。

例えば、訴訟について口頭弁論期日が繰り返され、双方、主張や立証が出尽くしてくると、裁判所から今後の進行について聞かれます。

和解が難しく証人尋問に進むことになると、次回期日までに証人の陳述書と人証申請を提出するようにとの指示をされます。

裁判所は、陳述書を見て、本当にその証人の尋問をする必要があるかなどを判断します。

陳述書には、主張書面には記載しにくいような背景事情や事実経緯なども記載していくことで、裁判所により深く立体的に事実関係を知ってもらうこともできます。

客観的な証拠がない部分は、陳述書や尋問で立証していかざるを得ないので、陳述書を上手に活用することは訴訟上も大切です。

２章　陳述書を出すのは何のため

陳述書については、尋問まで進む場合には、裁判所からどの事案でも提出を求められることになります。

具体的には、陳述書を出す目的としては、以下の３つがあります。

それでは、これらの目的を順番に説明していきます。

２－１　目的１：証拠の補完

陳述書の目的の１つ目は、証拠の補完です。

書類や録音、写真などの客観的な証拠では立証しきれていない事実関係について、陳述書で補完していくことになります。

また、客観的な証拠からは一時点の「点」としての事実しか分からないので、陳述書や尋問で、これらの点としての事実を時系列に沿って「線」で繋げていく意味もあります。

２－２　目的２：尋問の聞き漏らし防止

陳述書の目的の２つ目は、尋問の聞き漏らし防止です。

証人尋問には制限時間がありますし、当日どのように受け答えするかによっても、聞き漏らしが発生してしまうことがあります。

このような聞き漏らしが生じても、陳述書に記載しておけば、陳述書から事実関係を認定してもらえる可能性があります。

そのため、陳述書は尋問の聞き漏らしのリスクを回避するという目的もあるのです。

２－３　目的３：証人尋問の準備

陳述書の目的の３つ目は、証人尋問の準備です。

相手方や裁判所は、証人が当日どのようなことを話すのかが分からないと、尋問内容を用意しにくいです。

当日、主尋問を聞きながら尋問事項を用意していくこともありますが、証拠や時系列に沿ってじっくり時間をかけて尋問事項を作ることで充実した尋問になります。

そのため、陳述書については、主尋問の内容の先出してとしての意味があり、相手方には反対尋問や裁判官には補充尋問の準備の機会を与える意味があります。

３章　陳述書の書き方例文【ｗｏｒｄテンプレート書式ダウンロード】

陳述書のテンプレート書式は、以下のとおりです。

３－１　タイトル（①）

タイトルとして、「陳述書」と記載しておくのが通例です。

３－２　陳述内容（②）

陳述内容については、まず冒頭で自身の立場や事件との関係を簡単に説明すると良いでしょう。

その後、具体的な争点と関連のある部分にフォーカスしながら、時系列に沿って具体的に事実関係を記載しておきましょう。

末尾に、自分が裁判所に伝えたい意見を記載しておきます。

３－３　作成日（③）

作成日については、とくに決まりはないので、署名押印した日を記載しておくといいでしょう。

３－４　住所（④）

住所については、記載したくない場合には省略してもいいでしょう。

とくに、相手方に住所を秘匿しないような場合には、記載しないようにしましょう。

陳述書は証拠として写しを相手方に交付する必要があるためです。

裁判所による案内でも、「陳述書に非開示を希望する住所や勤務先などの情報を記載しないでください」との記載がされています。

（出典：陳述書の作成について｜仙台家庭裁判所）

３－５　氏名（⑤）

陳述書については、作成者の署名をし、氏名の右横に押印をしましょう。

４章　陳述書を書く際のポイント！

陳述書を書く際には、ポイントがあります。

ポイントを意識することで、伝えたい事実関係を裁判官にしっかりと理解してもらえる説得的な陳述書になります。

具体的には、陳述書を書く際のポイントとしては、以下の３つがあります。

これらのポイントを順番に説明していきます。

４－１　ポイント１：事実関係は具体的に記載する

陳述書を書く際のポイントの１つ目は、事実関係を具体的に記載することです。

抽象的な記載になってしまうと、主観的な評価が入ってしまい、裁判官が見てもなぜそのような陳述となっているのか根拠がわかりません。

どこで、だれが、だれと、なにを、どうしたのかを記載していくになります。

例えば、「私は乙川に対し、現金３００万円を貸し付けました。貸付けは私の自宅で行い、」などの記載をします。

４－２　ポイント２：時系列に沿って記載する

陳述書を書く際のポイントの２つ目は、時系列に沿って記載することです。

「令和７年２月１日」などの記載をしたうえで、事実関係を記載しておきましょう。

いつのことを指しているのか分からないと、事実の特定が不十分であり、その事実が本当にあったのか、どのような意味を持っているのかが判断できないことになります。

４－３　ポイント３：一文を短く簡潔な表現にする

陳述書を書く際のポイントの３つ目は、一文を短く簡潔な表現にすることです。

一文は長くても３行であり、基本的に１行～２行で一度「。」を入れて区切りましょう。

一文が長くなるほどに、主語や動詞、目的語の関係が不明確となっていくためです。

また、難しい表現や単語は使わずに、高校生でもわかるような表現を用いるようにしましょう。

５章　ＮＧな陳述書３つ

陳述書は、書き方によってはあまり意味がないものになってしまいます。

自分の書きたいことだけ記載しても、裁判官に響かなかったり、訴訟と関係なかったりするためです。

例えば、ＮＧな陳述書の例としては、以下の３つがあります。

それでは、これらの例について順番に説明していきます。

５－１　ＮＧ１：主観的・感情的な陳述書

陳述書で最も避けたいのは、主観的・感情的な書き方です。

なぜなら、「自分はこう思った」「相手がひどい」など感情に偏った内容は、客観的な事実として受け止められにくいからです。

例えば、「相手の態度が冷たく、腹が立ったので抗議した」と書いても、それだけでは裁判官には状況が伝わりません。

その代わりに、「令和７年３月１日に相手から『〇〇』と言われ、私はその場で『△△』と返答した」というように、事実を具体的に記載しましょう。

感情ばかり強調するよりも、「いつ」「どこで」「だれが」「何をしたか」を淡々と書きましょう。

感情表現を抑えることで、裁判官に冷静で信頼できる印象を与えられます。

５－２　ＮＧ２：内容が整理されていない陳述書

次に避けたいのは、内容がバラバラで整理されていない陳述書です。

理由としては、時系列や論点が混在していると、読んでも何を伝えたいのか分かりづらくなってしまうからです。

例えば、いつの話をしているのか特定されていなかったり、時系列が前後したりすると、読み手は理解しにくくなります。

このような場合には、「最初に立場」を記載し、「次に時系列に沿った事実経緯」、「最後に意見」という構成を意識して整理すると良いでしょう。

伝えたい思いを正しく届けるためにも、構成の整理を怠らないようにしましょう。

５－３　ＮＧ３：抽象的不明確な陳述書

最後に避けたいのは、内容があいまいで分かりにくい陳述書です。

いつ・どこで・いくら貸したのかが分からないと、裁判官は事実を正確に判断できないからです。

例えば、今回のような貸金トラブルで「乙川にお金を貸したが返してもらえない」とだけ書いても、具体的な状況が伝わりません。

これに対し、「令和７年２月１日、私の自宅で乙川に現金３００万円を貸し付け、『年内に返す』と約束された」と書けば、事実が明確になり説得力が増します。

陳述書は感想ではなく、事実を説明する書面なので、「いつ」「どこで」「だれが」「何をしたか」をはっきり書くことを意識しましょう。

６章　陳述書の書き方についてよくある疑問

陳述書の書き方について、よくある疑問としては以下の９つがあります。

それでは、これらの疑問を順番に解消していきましょう。

６－１　Ｑ１：陳述書は嘘ばかり？

A.「陳述書は嘘ばかり」と言われることもありますが、そうとは限りません。

陳述書はあくまで本人の見聞や体験を基にした事実の説明です。

そのため、人によって認識が異なることは珍しくなく、自分の認識と異なると嘘をついているように見えてしまうことがあるのです。

６－２　Ｑ２：陳述書に法的な効力はある？

A.陳述書は、裁判所で証拠の一つとして扱われます。

ただし、本人の主張を書いた書面にすぎないため、それだけで結論が決まるわけではありません。

裁判官は、他の証拠などと照らし合わせて、整合性があるかを確認し、信用性を判断します。

つまり、陳述書に記載された陳述内容がそのまま直ちに事実と認定されるわけではありませんが、信用できると判断されればその通りに認定してもらえることもあるのです。

６－３　Ｑ３：陳述書に対する反論の書き方は？

A.陳述書に対して反論をしたい場合には、あなたの主尋問で反論を出す方法、反対尋問で相手の陳述の信用性を崩す方法、最終準備書面を提出する方法などがあります。

最終準備書面で陳述書への反論を記載する際には、陳述書の該当箇所を引用したうえで、これに対する反論を記載します。

６－４　Ｑ４：陳述書を出すタイミングは？

A.陳述書は証人尋問の前に提出することが多いです。

その際には、裁判所から「次回までに陳述書を提出してください」と指示される傾向にあります。
証人の採否や時間、順番を判断したり、相手や裁判官が準備をしたりするための書面なので、締切日を必ず守って提出しましょう。

６－５　Ｑ５：陳述書の押印は実印？三文判？

A.特に決まりはなく、三文判などでも問題ありません。

陳述書は本人が作成したことを示すためのものなので、認印でも有効です。

６－６　Ｑ６：陳述書に住所書かなくもいい？

A.はい、住所は省略しても構いません。

陳述書の写しは相手方にも渡るため、プライバシーを守る目的で非記載にすることもよくあります。

裁判所も、「非開示を希望する住所や勤務先は書かないように」と案内しています。

６－７　Ｑ７：陳述書の作成日として記載する日付は？

A.陳述書に署名押印した日を作成日として記載すれば大丈夫です。

６－８　Ｑ８：陳述書はホッチキスで留めるべき？

A.複数枚にわたるときは、下部中央にページ番号を振って、ホッチキスで留めましょう。

ホッチキスは左側二箇所留めとするのが一般的です。

６－９　Ｑ９：陳述書を頼まれたら拒否してもいい？

A.はい、強制ではないため拒否できます。

陳述書はあくまで本人の自由意思で作成するものです。

ただし、あなた自身が当事者で、裁判所から陳述書の提出を求められたら、基本的には従った方が良いでしょう。

合理的な理由なく拒否すれば、あなたに不利な判断となる可能性もあるためです。

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８章　まとめ

以上のとおり、今回は、陳述書とは何かを説明したうえで、書き方の例文と簡単なポイント３つを解説しました。

この記事の内容を簡単にまとめると以下のとおりです。

この記事が、陳述書がどのようなものか知りたいと悩んでいる方の助けになれば幸いです。

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