公的機関・総合商社を経て磨かれた「事実徹底主義」
― 外資系企業の労働問題と役員法務に挑む内田拓志弁護士の視座 ―

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弁護士を志した原点と18年の歩み

――弁護士を志したきっかけと、これまでのキャリアについて教えてください。

端的に言えば、困っている人の役に立ちたい、社会の役に立ちたいという思いです。現実に紛争が起きている以上、それを取り除く役割を担いたいと考えました。

登録から18年になりますが、特別な転機があったというよりは、流れの中で専門性が磨かれてきた感覚です。目の前の案件に真摯に向き合い続けた結果、外資系企業の労働問題役員法務といった分野に強みが形成されていきました。

国土交通省と総合商社で培った視点

――国土交通省および総合商社でのご経験は、現在の実務にどのように活きていますか。

国土交通省では、2017年から2019年まで任期付き公務員として勤務しました。役所は想像以上にルールや根拠を重視する組織です。「その行動の根拠は何か」を常に求められる環境でした。その経験により、思いつきではなく、常に明確な根拠を持って考える習慣が身につきました。

総合商社では、M&A、社員による情報持ち出しへの対応、契約書レビューなど幅広い業務を担当しました。仕事の約半分は英語で、海外案件にも深く関わっていました。

インハウスの特徴は、事業部門の方がすぐ近くにいることです。「こうしたい」というビジネス上の意思をダイレクトに聞ける。だからこそ単に「法律的にNO」と言うのではなく、「リスクをどう管理すれば実現できるか」を一緒に考える姿勢を大切にしていました。

労働問題と向き合い続ける理由
労働問題と向き合い続ける理由

――先生が労働問題に注力されているきっかけは何でしょうか。

最初に所属した事務所が労働案件を多く扱っていたことがきっかけです。自然とこの分野に携わるようになりました。

実際に取り組む中で、労働問題は非常に奥が深いと感じました。法律論だけでなく、「実際に何が起きていたのか」という事実の積み重ねが勝敗を分ける分野です。そこを丁寧に掘り下げていく作業に、やりがいを感じています。

――労働者側・使用者側の双方を扱う強みについて教えてください。

双方を経験していることで、「相手方が何を考えているか」「どのような証拠を持っていそうか」がある程度予測できます。

例えば、労働者側の相談を受けているときでも、「会社側はここを主張してくるだろう」「この材料は強い」「ここは弱い」といった見通しを立てることができます。交渉の場面では、それが非常に有利に働きます。

相手の出方を見据えたうえで戦略を立てられることは、大きな強みだと思っています。

――外資系企業の労働問題については、どのような特徴がありますか。

外資系企業の場合、退職勧奨の際に「パッケージ(退職金の上積み額)」の交渉が中心になることが多いです。

私は、不当解雇として争いが顕在化する前の段階から関与し、個別事情を掘り下げてアピール材料を整理します。その結果、パッケージの金額を大きく引き上げることができた事例もあります。

また、金銭面だけでなく、「在職期間を延ばす」「退職理由の表現を調整する」といったオプション交渉も行います。

――先生は英語や海外案件も対応可能なのでしょうか。

はい、対応可能です。商社での勤務経験があり、業務の約半分が英語でした。英文契約書のレビューや海外案件に日常的に関わっていました。

労働案件でも、オファーレターや評価書面、就業規則、メールのやり取りが英語で作成されているケースは少なくありません。翻訳に頼るだけでは見落としがちなニュアンスや表現の差異を踏まえて、証拠を読み込むことができます。

役員法務と高難易度案件への対応

――役員解任紛争や株主代表訴訟など、高難易度案件にも多く対応されていますね。

役員法務は、扱える弁護士が限られる分野だと思います。株主代表訴訟役員解任紛争は、法的論点が複雑であるだけでなく、経営判断や企業統治とも深く結びついています。非常に慎重な分析と戦略が求められます。

実際に担当してきた案件の中には、億単位の請求が問題となるものも少なくありません。金額が大きいという意味でも重みがありますが、それ以上に、役員個人の名誉やキャリア、企業の信用に直結する点で難易度が高いと感じています。

――その様な案件では、具体的にどのような点を意識して対応されているのでしょうか。

過失がない役員については、その立場や意思決定プロセスを丁寧に整理し、責任がないことを明確に主張します。一方で、仮に問題があった場合でも、それが個人の責任なのか、組織全体の統制の問題なのかを冷静に分析し、合理的な解決を目指します。実際に請求が棄却された事案もあります。

役員解任は、構造としては労働事件の解雇に似た側面があります。正当な理由の有無が核心になりますが、経営判断の裁量や取締役としての義務との関係を踏まえて、より高度な整理が必要になります。

私は、法律論だけでなく、企業内部の意思決定プロセスや実務の現実も踏まえながら、現実的かつ合理的な着地点を探ることを心がけています。

「事実を落とさない」という信念
「事実を落とさない」という信念

――先生が弁護士として活動する中で、最も大切にしていることは何でしょうか。

法律論よりもまず「事実を落とさないこと」です。依頼者の話をとにかく掘り下げる。そこに決定的な事実が隠れていることが多いのです。

相手方が訴訟で出してきそうな不利な材料まで想定し、事前に把握するよう努めています。「そのとき、誰がいましたか」「メールは残っていますか」「評価面談では何と言われましたか」といった具体的な部分を確認します。

依頼者からは「親身になって的確にやってくれた」と言っていただくことが多いですね。

私の座右の銘は「凡事徹底」です。当たり前のことを、徹底してやる。その積み重ねが結果を左右すると考えています。

顧問業務における価値提供と企業との向き合い方

――先生は企業の顧問業務も多く担当されているとうかがいました。顧問弁護士として大切にしていることは何でしょうか。

一番大切にしているのは、企業との距離感を近く保つことです。

顧問契約は、問題が起きたときだけ対応する関係ではなく、日常的に相談していただける関係であるべきだと考えています。そのため、まずは「何をしようとしているのか」を丁寧に聞きます。企業側の意図やビジネスの背景を理解したうえで、リスクをどう減らすかを一緒に考えます。

商社での経験を活かし、単に「NO」と言うのではなく、「どうすれば実現できるか」「どの程度のリスクを許容するか」と言った部分に踏み込むことを意識しています。

――企業の意思決定プロセスを理解していることは、どのように活きていますか。

商社でインハウスとして勤務していた経験から、社内でどのように稟議が回り、どのような視点で判断されるかを理解しています。

そのため、経営層が気にするポイントや、現場が実務上困る部分を踏まえた助言ができます。理屈として正しいだけでなく、「現実に動かせるアドバイス」であることを意識しています。

顧問先からは「話をきちんと聞いてもらえている」「抽象的ではなく具体的に整理してくれる」と言っていただくことがあります。

刑事事件や家事事件への取り組み

――労働問題や役員法務以外にも、幅広い案件を取り扱われていますね。どのような分野に注力されていますか。

刑事事件は多く扱っています。特に、逮捕直後や勾留前の対応には力を入れており、釈放率の高さには自信があります。

刑事事件はスピードが非常に重要です。初動対応がその後の展開を大きく左右します。事実関係を迅速に把握し、必要な主張や証拠を整理することで、早期の身柄解放や有利な展開につなげています。

――家事事件や一般民事についてはいかがでしょうか。

相続案件では、遺産分割や遺留分侵害額請求などを扱っています。相続は法律問題であると同時に、家族間の感情の問題でもあります。法的整理だけでなく、当事者間の関係性にも配慮した解決を意識しています。

離婚問題も扱っています。感情が先行しやすい分野ですが、冷静に事実を整理し、現実的な落としどころを探ることが重要です。

人となりと、読者へのメッセージ
人となりと、読者へのメッセージ

――先生のご出身は茨城県でしたね。どのような環境で育たれたのでしょうか。

茨城県ひたちなか市の出身です。海や自然が身近にある環境で育ちました。地元の公園や海辺の風景はいまでも記憶に残っています。

派手な環境ではありませんでしたが、落ち着いた土地柄の中で、地道に努力することの大切さを自然と学んだように思います。いまの仕事においても、派手さよりも堅実さを重視する姿勢につながっているかもしれません。

――休日の過ごし方についても教えてください。

ワインが好きで、ワインエキスパートの資格も取得しています。休日や、大きな案件が一段落したときにゆっくり楽しむことが多いです。

代表訴訟のように数年単位で続く案件もありますので、良い解決に至ったときの一杯は格別ですね。

――読書もお好きだとうかがいました。

なるべく多く読むようにしています。宮島未奈さんの作品、『成瀬は都を駆け抜ける』などが好きですね。

登場人物の行動力や発想に触れると、自分の考え方を見直すきっかけになります。法律実務は現実的で冷静な判断が求められますが、ときには視野を広げることも大切だと思っています。

――最後に、このインタビューを読んでいる方へメッセージをお願いします。

労働問題や役員紛争、刑事事件などに直面すると、自分が否定されたように感じてしまう方が多いと思います。

しかし、それが本当に正当な評価なのかは別の問題です。あなたは必ずしも否定されるべき存在ではありません。

精神的に厳しい状況にあるときほど、一人で抱え込まずにご相談ください。早い段階で事実を整理できれば、選択肢は広がります。遠慮なく、気軽にご連絡いただければと思います。

インタビューを受けた弁護士

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内田拓志弁護士

弁護士法人福田・木下総合法律事務所

【電話相談可/メール問合せ可】法律事務所、官公庁(国土交通省)、商社での実務を含め、弁護士歴18年以上。個人・企業を問わず、依頼者が目指す解決に向けて豊富な実績と経験があります。まずはお気軽にご相談ください。

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