2025年5月2日
法律一般
法律の条・項・号の読み方や書き方、見分け方|条文に1項は書かない?
法律については、条を細分化したものが項、更に項を細分化したものが号となります。読み方は、「じょう、こう、ごう」です。今回は、法律の条・項・号の読み方や書き方、見分け方を解説していきます。
2025/10/31
法律手続


訴額がどのようなものか知りたいと悩んでいませんか?
訴状に「訴訟物の価額」と記載されているのを見て、この金額は何だろうと感じたことも多いはずです。
訴額とは、当該訴訟において原告が裁判所に判断を求める目的物の価額です。印紙代や裁判所の管轄の基準となる金額です。
訴額の計算方法を簡単に整理すると以下のとおりです。

訴額に応じた訴訟の印紙代を早見表にすると以下のとおりです。

訴額については、まずは原告において計算して、これに応じ収入印紙を納めたうえで、不足がある場合には、裁判所から追納を求められることになります。
実は、訴額の計算は複雑であり、実務上の慣例に従い行われていることも多いことに加えて、裁判所によっても判断が変わることがあります。
この記事をとおして、訴額の実務上の運用について、私の弁護士としての経験に基づいて、誰でもわかりやすいように簡単に説明できれば幸いです。
今回は、訴額とは何かを説明したうえで、訴訟物の価額の計算方法や算定基準と印紙代を簡単に解説していきます。
具体的には、以下の流れで説明していきます。

この記事を読めば、訴額がどのようなものかがよくわかるはずです。
目次

“訴額とは”
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訴額とは、当該訴訟において原告が裁判所に判断を求める目的物の価額です。
正確には、訴訟物の価額と言います。
訴額は、印紙代や裁判所の管轄の基準となる重要な金額です。
印紙代とは、訴訟を提起する際に裁判所に納める収入印紙の金額のことです。訴額が高くなるほど納める印紙代の金額も増えてしまいます。
また、訴額が140万円以下であれば第1審は簡易裁判所、訴額が140万円を超えれば第1審は地方裁判所が管轄を有することになります。
例えば、訴額が200万円であれば、印紙代は1万5000円となり、第1審は地方裁判所に管轄があることになります。
訴額に誤りがあると裁判所からも補正を促され、手続きが円滑に進まないので、正しく理解しておきましょう。
訴額は、訴えで主張する利益によって算定するとされています(民事訴訟法8条1項、民事訴訟費用等に関する法律4条1項)。
類型ごとに訴額の計算方法や算定基準を整理すると以下のとおりです。

これらについて順番に説明していきます。
所有権に基づく不動産の明渡請求の訴額は、固定資産評価額の2分の1です。
物の明け渡し請求が所有権に基づくものである場合には、訴訟物の価額は目的物たる価格の2分の1とされています(昭和31年12月12日民事甲第412号高等裁判所長官、地方裁判所長あて民事局長通知)。
そして、目的物たる価格について、固定資産税の課税標準価格があるものについては、その価格を基準とするとされています(昭和31年12月12日民事甲第412号高等裁判所長官、地方裁判所長あて民事局長通知)。
なお、家賃滞納がある場合において、併せて未払い家賃の請求もする場合には、これは訴額には含まれません。附帯請求となるためです(民事訴訟法9条2項)。
離婚事件の訴額は、160万円とされています。印紙代は1万3000円となります。
離婚事件について、附帯処分等の申し立てをする場合には、以下のとおりとなります。
遺言無効確認訴訟の訴額については、遺言の内容に応じて、以下のとおりとされています。
不貞慰謝料請求事件の訴額は、請求する損害賠償の金額です。
例えば、慰謝料300万円と弁護士費用30万円を請求する場合には、訴額は330万円となります。
不当解雇事件の訴額については、地位確認とバックペイに分けられます。
雇用契約上の権利を有する地位の確認の訴額は、160万円です。算定不能であるためです。
バックペイの訴額、既に支払日が到来している金額に訴訟の平均審理期間である1年分を加えた金額となります(労働審判であれば3か月分を加えます)。
そのうえで、地位確認とバックペイのいずれか高い方の訴額を基準にすることになります。
雇用契約上の権利を有する地位の確認とバックペイは、いずれも解雇無効を原因とするものであり、主張する利益が共通しているためです(民事訴訟法9条1項但書)。
残業代請求事件の訴額については、未払い残業代として請求する金額です。
付加金は、附帯請求となるため、訴額には含まれません(民事訴訟法9条2項)。
例えば、未払い残業代300万円と付加金280万円を請求する場合には、訴額は300万円となります。
債務不存在確認訴訟の訴額は、不存在と主張している給付請求権の価額です。
給付請求権の額が明らかでない場合には、訴額不明として160万円とします。
債務不存在確認訴訟については、以下の記事で詳しく解説しています。
訴訟の印紙代については、訴額に応じて決まります。
早見表として整理すると以下のとおりとなります。

例えば、訴額が300万円であれば、印紙代は2万円です。
訴額が大きくなるほど印紙代も高額になります。
そのため、訴額を計算する際には、附帯請求ではないか、主張している利益が共通していないか、過大な請求となっていないかなどをよく確認しましょう。
訴額が決まるまでの流れを理解しておくと、訴状を提出する際に慌てずに済みます。
正しい手順を知っておくことで、時間や手間をかけずにスムーズに手続きを進めることができます。
例えば、訴額の計算から印紙の納付までの流れとしては、以下の3つの手順があります。

それでは、訴額が決まる流れと印紙納付の具体的な手順について順番に見ていきましょう。
まず、訴状を提出する前に「訴額計算の上申書」を作成します。
上申書とは、訴訟物の価額をどのように算定したかを裁判所へ説明するための書面です。
なぜこれが必要かというと、裁判所は訴状に記載された訴額だけでは判断できない場合が多く、根拠や説明を求めることがあるためです。
上申書を添付しておくことで、裁判所からの確認や補正を防ぎ、手続きをスムーズに進められます。
上申書を付けておくと、裁判所からも「ありがとうございます」とお礼を言われることもあります。
次に、訴状を提出する際には、上申書と一緒に収入印紙を納付します。
郵送で送るのであれば、レターパックライトの中に収入印紙も併せて入れておきます(紛失を防ぐため書類送付書などに同封物を記載しておきましょう)。
裁判所に持参して申し立てるのであれば、収入印紙も一緒に持っていきます。
訴状を提出した後、裁判所から「印紙代が不足しています」などと補正を求められることがあります。
この場合には、指示された金額分の印紙を追加で納付(追納)します。
補正とは、提出した書類に不備があるときに、それを修正・補完する手続きのことです。
印紙不足があっても、追納すれば訴えは有効に受理されますので、慌てる必要はありません。
例えば、訴額の計算で誤差が生じたり、附帯請求を含めていたりするケースでは、補正が行われることがあります。
このようなときは、裁判所の案内に従い、速やかに印紙を追加して手続きを完了させましょう。
訴額についてよくある疑問としては、以下の5つがあります。
それでは、訴額に関する5つの疑問点を順番に見ていきましょう。
A.訴額算定不能の場合の訴訟物の価額は、160万円とされています。
A.遅延損害金は、訴額には含まれません。
なぜなら、遅延損害金は「附帯請求」にあたるためです(民事訴訟法9条2項)。
A.複数の請求を同時に行う併合請求の場合、訴額は基本的にそれぞれの請求を合計した金額になります(民事訴訟法9条1項本文)。
ただし、各請求の利益が共通している場合には、合算しないことも認められています(民事訴訟法9条1項但書)。
A.訴訟物の価額は、印紙代や管轄を決める際の基準となる金額であり、誰かが払うものではありません。
被告が敗訴した際に支払うことになるのは、請求の趣旨に記載された内容に応じて裁判所が判決した金額です。
訴訟物の価額に応じて決まる収入印紙代は、第一次的には原告が負担することになりますが、勝訴した場合には被告に請求できる場合もあります。
A.訴額通知とは、「訴訟物の価額の算定基準について」(昭和31年12月12日民事甲第412号高等裁判所長官、地方裁判所長あて民事局長通知)という通知のことです。
いわゆる訴額通知と呼ばれており、訴額の算定基準として参考にされています。
「訴訟物の価額の算定基準について」(昭和31年12月12日民事甲第412号高等裁判所長官、地方裁判所長あて民事局長通知).pdf
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以上のとおり、今回は、訴額とは何かを説明したうえで、訴訟物の価額の計算方法や算定基準と印紙代を簡単に解説しました。
この記事の内容を簡単にまとめると以下のとおりです。

まとめ
・訴額とは、当該訴訟において原告が裁判所に判断を求める目的物の価額です。
・訴額の計算方法や算定基準を整理すると以下のとおりです。
・訴訟の印紙代を早見表として整理すると以下のとおりとなります。

・訴額の計算から印紙の納付までの流れとしては、以下の3つの手順があります。
手順1:訴額計算の上申書を作成する
手順2:訴状とともに上申書と収入印紙を提出する
手順3:裁判所から補正の連絡があれば追納する
この記事が訴額がどのようなものか知りたいと悩んでいる方の助けになれば幸いです。
以下の記事も参考になるはずですので読んでみてください。
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