
2025年5月2日
法律一般
法律の条・項・号の読み方や書き方、見分け方|条文に1項は書かない?
法律については、条を細分化したものが項、更に項を細分化したものが号となります。読み方は、「じょう、こう、ごう」です。今回は、法律の条・項・号の読み方や書き方、見分け方を解説していきます。
2025/09/04
法律一般
直ちに・速やかに・遅滞なくというのがどのような意味で使われているのか知りたいと悩んでいませんか?
何日か明確に書かれていないためにどの程度の期間を指しているのかわかりにくいですよね。
直ちにとは今すぐに、速やかにとは可能な限り早く、遅滞なくとは事情の許す限り早くという意味です。
どれくらいの日数かその場面により異なりますが、早い順に並べると「直ちに→速やかに→遅滞なく」となります。
直ちに・速やかに・遅滞なくとの文言は、条文でも多く用いられています。
ビズネスや契約の際にこれらの言葉を用いる際には、その特性を理解したうえでトラブルにならないように注意しましょう。
実は、これらの言葉の違いをよく理解せずに用いている例を目にすることが少なからずあり、気を付けた方がいいと感じることがあります。
この記事をとおして、直ちに・速やかに・遅滞なくの正しい使い方を多くの方に知っていただくことができれば幸いです。
今回は、直ちに・速やかに・遅滞なくとはどのような意味かを説明したうえで、例文やどれくらいか(何日か)を簡単に解説します。
具体的には、以下の流れで説明していきます。
この記事を読めば、直ちに・速やかに・遅滞なくの使い方がよくわかるはずです。
目次
直ちに・速やかに・遅滞なくは、いずれも「すぐに行動すること」を意味しますが、その強さやニュアンスが少しずつ異なります。
直ちにとは、「即時に」、「まさにすぐに」という意味で、いかなる理由があっても遅れてはならない強い即時性を持っています。
例えば「直ちに退去せよ」と書かれていれば、今すぐに行動しなければならないことを指します。
このように「直ちに」は最も厳格な表現であり、猶予が一切ないことを示しています。
速やかにとは、「可能な限り早く」という意味で、訓示的なニュアンスを持っています。
必ずしも「即時」ではありませんが、先延ばしにすることは許されず、できるだけ早く行動することが求められます。
例えば「速やかに報告すること」とあれば、準備に必要な時間をとったうえで、できるだけ早く報告する必要があります。
「遅滞なく」は「事情の許す限り早く」という意味です。
合理的な理由による遅れは認められるものの、不要な引き延ばしは許されません。
例えば「遅滞なく引き渡す」とあれば、交通事情や業務上の都合を考慮しつつ、できるだけ早く対応することを意味します。
「直ちに」の読み方は、「ただちに」です。
「速やかに」の読み方は、「すみやかに」です。
「遅滞なく」の読み方は、「ちたいなく」です。
「直ちに」「速やかに」「遅滞なく」は、早さの度合いを示す言葉ですが、どのくらいの日数を意味するかは一律には決まっていません。
なぜなら、これらの表現は抽象的であり、言葉そのものの強弱に加えて、使われる場面や事情によっても解釈が変わるからです。
法律や契約では柔軟に判断されることが前提になっています。
例えば、「直ちに」はもっとも即時性が強く、基本的には「当日」「即日」とされます。状況に寄ってはもう少し期間の猶予があることもあります。
「速やかに」は「数日以内」が目安とされる場合がありますが、場面によっては「14日」や「20日」程度まで認められることもあります。
「遅滞なく」は「おおむね1週間程度」が目安とされる場合がありますが、場面によっては1か月程度とされることもあります。
このように整理すると、早さの強さは「直ちに→速やかに→遅滞なく」という順になります。
ただし、求められる具体的な期間は、言葉の違いだけでなく場面や内容によっても左右される点に注意が必要です。
銃砲刀剣類等所持取締法17条1項の「すみやかに」という用語が憲法31条に違反するかを判断した裁判例があります。
この裁判例では、即時性は、直ちに→すみやかに→遅滞なくの順に弱まっていると判示されています。
また、これらの文言が何日以内という数量的観念と違い、価値判断を伴うことが判示されています。
“裁判例”
「すみやかに」は、「直ちに」「遅滞なく」という用語とともに時間的即時性を表わすものとして用いられるが、これらは区別して用いられており、その即時性は、最も強いものが「直ちに」であり、ついで「すみやかに」、さらに「遅滞なく」の順に弱まつており、「遅滞なく」は正当な又は合理的な理由による遅滞は許容されるものと解されている。…
ところで「すみやかに」というのは、「何日以内に」という数量的な観念とちがつて、価値判断を伴う用語であつて、その判断には解釈を必要とするのであるが、このことは「直ちに」「遅滞なく」についても同様であり、さらに広く法律用語の大部分についても共通の性格であつて、ひとり「すみやかに」の用語にのみ限られたものではない。
(参考:大阪高判昭和37年12月10日高等裁判所刑事判例集15巻8号649頁)
「直ちに」「速やかに」「遅滞なく」は、法律の条文や契約文書で実際に多く使われています。
そのため、どのような場面で登場するのかを具体的に確認しておくことが大切です。
例えば、憲法・刑事訴訟法・民法などの重要な法律でも頻繁に使われており、それぞれに求められるスピード感を読み取ることができます。
以下では、代表的な条文を取り上げて見ていきましょう。
「直ちに」は、憲法など最も基本的な法律に登場します。即時性が強く求められていることがわかります。
これらの例からも、「直ちに」が猶予を許さず即時の行動を求める表現であることがわかります。
「速やかに」は、刑事手続や行政実務の条文でよく使われます。即時ではないものの、できる限り早い対応を求めています。
このように「速やかに」は、一定の準備や調整を前提にしつつ、迅速に行動する義務を課す際に使われます。
「遅滞なく」は、民事や行政の場面でよく登場し、事情を踏まえた上で迅速に行うことを意味します。
これらの例文からも、「遅滞なく」は事情の許す範囲で早く対応することを求めていると理解できます。
「直ちに」「速やかに」「遅滞なく」という言葉を使うときには、誤解を避けるために注意が必要です。
これらは抽象的な表現であり、受け取り方によってトラブルにつながることがあるからです。
例えば、日数を特定するのかどうか、状況によって使い分けるのかなど、実務上の配慮が求められます。
直ちに・速やかに・遅滞なくを使用する際の注意点としては、以下の3つがあります。
それでは、それぞれの注意点について順番に見ていきましょう。
「直ちに」「速やかに」「遅滞なく」だけでは、受け取る側にとって具体的にいつまでなのかが不明確になることがあります。
例えば「速やかに提出すること」と書いても、人によっては「数日以内」と解釈したり、「2週間以内」と理解したりする可能性があります。
誤解を避けるためには「3日以内に」のように、日数を明示しておくことが有効です。
「直ちに」「速やかに」「遅滞なく」を区別せずに同じように使ってしまうと、相手に誤解を与えたり、現実にそぐわない要求となったりする危険があります。
これらの言葉には即時性の強弱があり、本来は場面に応じて使い分けるべきだからです。
すべてを一律に扱うと、必要以上に厳しい期限を課してしまったり、逆に緩やかな表現を使って本当に急ぐべき案件が遅れてしまったりする恐れがあります。
例えば、そこまで急ぎではないのに毎回「直ちに」などの表現を使っていては、過度な負担を強いてしまいます、相手からの反発も受けるでしょう。
状況に合わせて適切な表現を選ぶようにしましょう。
「直ちに」「速やかに」「遅滞なく」という言葉は、同じ文言であっても使われる場面によって解釈が変わることがあります。
その理由は、これらの言葉が抽象的で、条文や契約で用いられる際に「何をどのくらいの速さで行うべきか」が、状況に応じて判断される仕組みになっているからです。
例えば、速やかに手続きを行うなどの記載がされている場合であっても、その手続きに1か月程度かかるのが通例であれば、1か月程度でも「速やか」と判断されることがあります。
つまり、これらの言葉を使う際には、「文言そのものの意味」だけでなく「どの場面で使われているのか」によって解釈が変わる点を意識することが大切です。
場面を踏まえて理解することで、より適切に行動し、不要なトラブルを避けることができます。
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以上のとおり、今回は、直ちに・速やかに・遅滞なくとはどのような意味かを説明したうえで、例文やどれくらいか(何日か)を簡単に解説しました。
この記事の内容を簡単にまとめると以下のとおりです。
まとめ
・直ちに、速やかに、遅滞なくの意味を整理すると以下のとおりです。
・「直ちに」の読み方は「ただちに」、「速やかに」の読み方は「すみやかに」、「遅滞なく」の読み方は「ちたいなく」です。
・直ちに・速やかに・遅滞なくの早さの強さは「直ちに→速やかに→遅滞なく」という順になります。
・直ちに・速やかに・遅滞なくを使用する際の注意点としては、以下の3つがあります。
注意点1:期間や日数を特定する
注意点2:状況に応じて文言を使い分ける
注意点3:場面ごとに解釈が変わる点に注意する
この記事が直ちに・速やかに・遅滞なくというのがどのような意味で使われているのか知りたいと悩んでいる方の助けになれば幸いです。
以下の記事も参考になるはずですので読んでみてください。
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